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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/08/15 00:00  | 今週の動き |  コメント(0)

今週の動き(8/14~20)トランプ邸捜索、インフレ抑制法案、ペローシ訪台、ロシアのウクライナ侵攻、ワイオミング州予備選、豊永郁子氏の議論


お盆ですね。お休みをとっている方も多いかと思います。私の仕事も、比較的スローペースになっています。

しかし、世界情勢にお盆はありません。メルマガは手を緩めず、全力を込めて配信しますので、ご安心下さい。毎回、内容が濃すぎて困る、という方もいるかもしれませんが、複雑過ぎる、細かすぎてよくわからない、という場合には、ご質問をいただければ回答します。ご遠慮なくお聞き下さい。

お盆と暑さといえば、最近、私は朝早く(4時半か5時頃)起きてジムに行き、軽くウォーキング、ストレッチ、腹筋をするのが日課になりました。朝に外の空気を吸い、運動の後に風呂に入るのは爽快で、純粋に楽しいです。コロナもあって有酸素運動不足が続いていましたが、これで脂肪燃焼もはかどりそうです。

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先週の動き
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8/7(日)
・米上院がインフレ抑制法案を可決
・中国人民解放軍の台湾周辺の6か所での大規模な軍事演習(4日~最終日の予定だったが延長)
・台湾国防部が中国軍の航空機39機と艦船13隻の台湾海峡付近での活動と21機の「中間線」超えを発表
・ロシア軍がウクライナのザポロジエ原子力発電所を再び砲撃したとエネルゴアトムが発表
・ウクライナのオデーサ港からウクライナ産穀物を積んだ貨物船が出航

8/8(月)
・FBIがフロリダ州パームビーチにあるトランプ前大統領の別荘「マール・ア・ラーゴ」を家宅捜索したと同前大統領が発表
・ワシントンDCの連邦控訴裁判所がトランプ前大統領の納税申告書を含む財務記録の下院歳入委員会への開示を支持する判決
・中国人民解放軍の東部戦区が台湾周辺で合同演習を行ったと発表
・イラン核合意の再建に向けた米・イランの間接協議の終了(EUが最終文書を提示)(ウィーン)

8/9(火)
・米国でCHIPSプラス法が成立
・バイデン大統領がフィンランドとスウェーデンのNATO加盟承認文書に署名
・米司法省がボルトン元大統領補佐官の暗殺を計画した容疑でイランの革命防衛隊員を起訴
・中間選挙の予備選(ウィスコンシン、ミネソタ、バーモント、コネティカット)
・台湾国防部が中国軍の航空機45機と艦船10隻の台湾海峡付近での活動と16機の「中間線」超えを発表
・中韓外相会談(青島)
・クリミア半島のロシアの基地(サキ飛行場)で複数回の爆発
・ウクライナのゼレンスキー大統領がビデオ演説(ロシアの戦争はクリミアで始まった、それはクリミア解放で終わらなければならないと発言)
・ウクライナ産のオデーサ州のチョルノモルスク港からウクライナ産穀物を積んだ貨物船が出航
・ロシアの国営パイプライン運営会社トランスネフチがウクライナ経由の南部ドルジバ・パイプラインでウクルトランスナフタによってハンガリー、スロバキア、チェコへ輸送されていたロシア産原油の供給が8月4日に停止されたと発表
・イランの人工衛星「ハイヤーム」がロシアのロケット「ソユーズ」によってカザフスタンのバイコヌール宇宙基地で打ち上げ
・ケニア大統領選挙

8/10(水)
・トランプ前大統領が「トランプ・オーガニゼーション」の経営実態を巡る調査に対する証言を拒否するとの声明を発表
・中国が「台湾問題と新時代の中国統一事業」と題する白書を発表
・中国人民解放軍の東部戦区が台湾周辺での合同演習の終了を発表
・台湾国防部が中国軍の航空機36機と艦船10隻の台湾海峡付近での活動と17機の「中間線」超えを発表
・台湾の国民党の夏立言・副主席が訪中(~27日)
・北朝鮮の非常防疫総括会議(金正恩朝鮮労働党委員長が新型コロナウイルスとの戦いに勝利したと宣言、金与正朝鮮労働党副部長が金正恩党委員長が高熱を出していたと表明)(平壌)
・トランスネフチが南部ドルジバ・パイプラインを通じたハンガリーとスロバキアへの原油供給を再開したと発表

8/11(木)
・ガーランド司法長官がFBIによるマール・ア・ラーゴの家宅捜索を認め、裁判所に捜索令状の公表を求めたと発表
・オハイオ州シンシナティのFBIの施設に武装した男が侵入を試みた後に逃走、警察当局者と銃撃戦となり射殺される
・台湾国防部が中国軍の航空機21機と艦船6隻の台湾海峡付近での活動と11機の「中間線」超えを発表
・ロシア軍がウクライナのザポロジエ原子力発電所を再び砲撃したとエネルゴアトムが発表
・ベラルーシのジャブロフカ飛行場で大規模な爆発
・ウクライナへの軍事支援を協議する国際会議(コペンハーゲン)
・ラトビア議会がロシアを「テロ支援国家」に指定する決議案を可決
・エストニアとラトビアが中国との経済的な協力枠組み(16+1)からの離脱を発表

8/12(金)
・フロリダ州連邦地裁がマール・ア・ラーゴの捜索令状を公表
・米下院がインフレ抑制法案を可決
・中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国人寿保険、中国石油化工(シノペック)、中国アルミ業、中国石化上海石油化工の中国の国有企業5社が米株式市場の上場廃止の申請を発表
・台湾国防部が中国軍の航空機24機と艦船6隻の台湾海峡付近での活動と6機の「中間線」超えを発表
・ウクライナのゼレンスキー大統領が戒厳令と総動員令の延長に関する2つの法案を議会に提出
・ロシアの22年4-6月期の実質GDP成長率の発表(前年同期比▲4.0%)
・サルマン・ラシュディが講演中に襲撃される(NY)

8/13(土)
・中国、ロシア、イラン、ベラルーシ、ベネズエラ等の35か国の国際軍事競技大会(12か国が開催地、~27日)

(8月上旬~中旬)
・北戴河会議(推測)

●FBIのトランプ邸捜索

FBIがフロリダ州パームビーチにあるトランプ前大統領の別荘「マール・ア・ラーゴ」を家宅捜索しました。

まずトランプが「FBIに襲撃された(raid)」との声明を発出。その後、ガーランド司法長官がFBIの捜索があったことを認め、裁判所に捜索令状の公表を求めたと発表しました。これを受け、フロリダ州連邦地裁が捜索令状を公表しました。

捜索令状によれば、容疑はスパイ防止法違反、政府文書の秘匿や損壊、捜査妨害のための政府文書の改変等の3つ。いずれも重罪です。押収物の多くは機密文書でした。

元大統領に対する家宅捜索も、捜索令状の内容を公開することも、極めて異例の事態です。トランプはもちろん、ケビン・マッカーシー下院院内総務をはじめとする共和党議員や候補者たちも猛反発し、司法省とFBIに恫喝のようなコメントを出しました。

まだ事態は流動的ですが、現時点でのコメントを述べます(※メルマガで解説)。

●インフレ抑制法案

インフレ抑制法案(Inflation Reduction Act(IRA)」が上下両院で可決されました。上院では賛否同数の末、ハリス副大統領兼上院議長による一票で51対50で可決(財政調整措置によるので、上院も過半数で可決)。下院では220対207で、いずれも民主党議員だけが賛成票を投じました。

IRAはバイデン大統領の署名によって近日中に成立します。以下の記事で述べたとおりの展開でした。

「シューマー・マンチン合意」(8/1)
 
上記記事で解説したとおり、この法案は名前こそインフレ対策ですが、実体は気候変動対策法案です。何度も浮上しては消えていった「ビルド・バック・ベター(BBB)法案」の縮小版ともいうべきものです。

縮小版といっても、歳出は4,330億ドルで、米国史上最大規模の気候変動対策となります。主要部分は再エネ支援、EV税額控除などです。また、医療保険への補助金の25年までの延長と薬価引き下げ(製薬会社との価格交渉制度の改革)が含まれています。

歳入は7,400億ドルを見込んでおり、歳出を大きく上回る規模で、3,000億ドルの財政赤字の削減が見込まれます。インフレ対策と銘打たれているのはこのためです。財源は、主に大企業への課税で、15%の最低法人税率の導入やIRSによる課税強化、それに企業の自社株購入への1%課税条項があります。

上記記事で解説したとおり、この法案はバイデン政権にとって大きな立法成果となります。主なポイントはすでに解説しましたが、あらためてその意義と影響について述べます(※メルマガで解説)。

●ペローシの訪台

前回の記事(以下のリンク参照)で述べたとおり、ペローシ下院議長が台湾を訪問しましたが、その直後から中国は猛烈に反発し、前例のない激しい対応を見せました。

「ペローシの訪台」(8/8)
 
中国は8月4日から7日まで台湾周辺の6つの区域で大規模な軍事演習を行うと発表し、多数のミサイル発射や軍用機、艦船の派遣を行いました。演習は2日間延長され、10日になってから、ようやく中国は演習の終了を宣言しました。しかし、定期的なパトロールは継続すると表明し、台湾周辺に多数の軍用機と艦船を派遣しています。

ペローシは帰国後の記者会見で、中国は我々(ペローシ率いる代表団)の訪問を口実にした、中国は軍事演習によってニューノーマルを確立しようとしているが、それを許すわけにはいかない、中国が台湾を孤立化させることは許さないと述べました。

ペローシの訪台は、今後の米中関係と台湾をめぐる情勢に大きな影響を与えると考えられます。また、本件については、読者の方からも質問をいただいています。そこで今週、質問に対する回答も含め、あらためて今後について解説します。

●ロシアのウクライナ侵攻

ロシア軍によるウクライナ侵攻は、本日(8月15日)で175日目を迎えました。ほぼ6か月が経過したことになります。

ロシア軍は、主戦場のドネツクで攻撃を続けており、ゆっくりですが前進しています。ウクライナ軍はヘルソンでの反攻を続けています。ウクライナ軍の幹部は、ヘルソンは年末までに必ず奪還するとの見通しを示しました。

そうした中で、クリミア半島のロシアの基地(サキ飛行場)で複数回の爆発が起きました。少なくとも8機の軍用機が破壊されたと伝えられています。ロシアは攻撃は受けていないと発表し、ウクライナも攻撃を行ったことを公式には認めていません。

ただ、米メディアのPoliticoは、ウクライナの政府関係者が攻撃を行ったことを示唆したと報じています。また、攻撃があった当日に、ゼレンスキー大統領がビデオ演説を行い、ロシアの戦争はクリミアで始まった、それはクリミア解放で終わらなければならないと発言しました。

攻撃のあったロシアの基地は、ウクライナが支配しているヘルソンの地域から200キロの距離があり、これまで米欧が供与してきた長距離兵器では射程外になります。米国防総省高官は、ウクライナが供与を要請している地対地ミサイル「ATACMS」含め、クリミア攻撃が可能な武器は供与していないと述べました。ATACMSについては以下の記事で取り上げていましたが、ここで焦点が当てられたことになります。

「ロシアのウクライナ侵攻」(8/1)

また、ベラルーシのジャブロフカ飛行場で大規模な爆発がありました。これも、ウクライナは攻撃を行ったとは発表していません。

こうした最新の状況を踏まえ、現状と展望について解説します(※メルマガで解説)。

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今週の動き
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(※中間選挙の予備選など。メルマガで解説。)

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あとがき
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(寄稿)ウクライナ、戦争と人権 政治学者・豊永郁子(8月12日付朝日新聞デジタル)

ツイッターでも取り上げましたが、また強い違和感をおぼえる言説が登場しました。

>ウクライナ戦争に関しては、2月24日のロシアの侵攻当初より釈然としないことが多々あった。
>むしろロシアのプーチン大統領の行動は独裁者の行動として見ればわかりやすく、わからなかったのがウクライナ側の行動だ。
>英米の勧める亡命をゼレンスキー氏が拒否し、「キーウに残る、最後まで戦う」と宣言した際には耳を疑った。

「耳を疑った」とのことですが、私はむしろ、この文章に目を疑いました。

豊永氏が強調しているのは、ウクライナは自国領土内での戦闘を強いられている点です。戦闘を続けることで犠牲となるのはウクライナ人である、だからウクライナは早々に降伏し、被害を抑えるべきだ、という見解です。

この件については、橋下徹氏の見解に対するコメントという形で、2つの記事(こちらこちら)の「あとがき」で詳しく論じました。

ポイントは上記記事で書いたとおりですが、今回の豊永氏の寄稿に引きつけて、あらためて思うところを述べます(※メルマガをご覧下さい。この部分は無料版でも読めます)。

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