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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/07/25 00:00  | 今週の動き |  コメント(0)

今週の動き(7/24~30)ロシアのウクライナ侵攻、ドラギ辞任、英保守党の党首選、スリランカ危機、米議会襲撃事件の公聴会


コロナ感染者が再び急増していますね。私の周りでも感染したという話をよく聞きます。日本に限らず、感染が再拡大している国は結構あります。しかし、多くの国で重症化の例は明らかに減っており、活動制限を再強化する動きはほとんど見られません(中国を除く)。バイデン大統領も感染しましたが、79歳の高齢ということもあり、トランプ大統領(当時)の緊急入院も頭によぎりましたが(当時の記事はこちらを参照)、体調は良く、仕事も続けているということ。何よりです。

各国の国境もどんどん開放されています。しかし日本は相変わらず検査などの規制が厳しい。これでは出張した場合、帰国直前に現地で検査しなければならず、それ自体大変な手間ですが、陽性などになったら目も当てられません。ということで、まだ慎重に考えざるを得ませんね・・早くコロナを恐れずに済む社会になって欲しいものです。

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先週の動き
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7/17(日)
・ウクライナのゼレンスキー大統領がベネディクトワ検事総長とバカノフSBU長官を解任

7/18(月)
・ロシア国営ガスプロムがユニパーを含む欧州のエネルギー企業に「不可抗力」により供給を保証できないと通告
・EU・アゼルバイジャン首脳会談(ガス輸入の倍増で合意)(バクー)
・EU外相理事会(ブリュッセル)
・英国の与党・保守党の党首選第3回投票(スナク前財務相が1位)
・日韓外相会談(東京)

7/19(火)
・ロシア・イラン・トルコ首脳会談(テヘラン)
・ロシア・イラン、ロシア・トルコ、イラン・トルコ首脳会談(同)
・ウクライナのゼレンスキー大統領がゴルベンコSBU副長官と5州のSBUトップを解任
・バイデン大統領夫妻とウクライナのオレナ・ゼレンスカ大統領夫人が面会(ワシントンDC)
・バイデン大統領が海外で米国人を不当に拘束しているテロ組織や犯罪集団に制裁を科すことを可能にする大統領令に署名
・米主催のサプライチェーンの強化に関する閣僚級会議(オンライン、~20日)
・イエレン財務長官が訪韓(~20日)
・米上院が半導体法案の採決に進む方針を可決
・米下院が同性婚の権利を保護する法案を可決
・米国務省が人身取引報告書(22年版)を発表
・台湾の蔡英文総統とエスパー前国防長官が会談(台北)
・英国の与党・保守党の党首選第4回投票(スナク前財務相が1位、モーダント通商政策担当相が2位)
・岸田首相と韓国の朴振外相が会談(東京)

7/20(水)
・米国がウクライナに高機動ロケット砲システム「ハイマース」4基を追加供与すると発表
・ウクライナのオレナ・ゼレンスカ大統領夫人が米議会で演説
・米上院の超党派の議員団が選挙人集計法の改正法案を提出
・イタリア上院がドラギ首相率いる内閣の信任投票を可決
・英国の与党・保守党の党首選第5回投票(スナク前財務相が1位、トラス外相が2位)
・スリランカ議会がウィクラマシンハ首相を大統領に選出

7/21(木)
・バイデン大統領が新型コロナウイルス感染を発表
・アスペン安全保障フォーラム(バーンズCIA長官、ムーアMI6長官らが講演)(コロラド州アスペン)
・米連邦議会襲撃事件の下院特別調査委員会が第8回公聴会を開催
・ロシアのプーチン大統領とサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が電話会談
・ノルド・ストリーム1の稼働停止が終了、ガス供給を再開
・ロシア・ハンガリー外相会談(モスクワ)
・イタリアのドラギ首相が辞表を提出(マッタレッラ大統領が上下院の解散を表明)
・ECB定例理事会(政策金利を0.5%引き上げ)(フランクフルト)
・インド議会がムルム前ジャルカンド州知事を大統領に選出
・スリランカでウィクラマシンハ新大統領が就任
・メルコスール首脳会議(アスンシオン)

7/22(金)
・米国がウクライナへの2億7,000万ドルの追加軍事支援を発表
・ロシア、ウクライナ、トルコ、国連が穀物輸出の再開に向けた合意文書に署名(イスタンブール)
・ロシア中銀が政策金利を引き下げ(9.5→8%)
・ワシントンDCの連邦地裁陪審がバノン元首席戦略官に議会侮辱罪で有罪評決
・中国恒大集団が夏海鈞CEOの辞任を発表
・岸田首相が22年版の防衛白書を閣議で報告

7/23(土)
・ロシア軍がウクライナのオデーサの商業港をミサイルで攻撃

●ロシアのウクライナ侵攻

ロシア軍によるウクライナ侵攻は、本日(7月25日)で154日目を迎えました。ちょうど5か月が経過したことになります。

ロシア軍は引き続きドネツク州の制圧を目指し、スラビャンスク、シベルスク、バフムト各方面で攻撃を続けていますが、大きな前進はみられません。ショイグ国防相は東部部隊集団を視察し、ウクライナの長距離ミサイルと砲撃システムを優先的に攻撃するよう指示しました。このような具体的な作戦の方針を公表するのは異例であり、ハイマースへの強い警戒がうかがわれる動きです。

ラブロフ外相は国営メディアのインタビューで、米欧が強力な兵器を供与したことにより、ウクライナでの「軍事作戦」の状況は変わったとして、ドンバスのみならず南部のザポロジエ州、ヘルソン州なども軍事作戦の目的となると発言しました。これまでの攻撃や各地での併合に向けた動きを見ていれば明らかなことでしたが、ロシア政府高官が公式に明言するのは初めてのことです。プーチン大統領が7月7日に下院での会合で、「我々はまだ何も本気で始めていない」と述べたことにも通じる発言でした。

一方、バーンズCIA長官はアスペン安全保障フォーラムで、ロシア軍の損害について、約1万5,000人が死亡し、その3倍の数が負傷しているとの推計を示した上で、ロシア軍は人的被害がより少ない長距離砲などを使った戦闘に軸足を移している、ウクライナ軍の損失はロシア軍を少し下回ると述べました。なおウクライナは、ロシア軍の死者は3万8,700人を超えると発表していました。

米国は、ウクライナに対する2億7,000万ドルの追加軍事支援を発表しました。ハイマース4基、自爆型ドローン「フェニックスゴースト」580機などが含まれています。

プーチンは、テヘランを訪問し、イランのライーシ大統領とトルコのエルドアン大統領と会談しました。旧ソ連圏以外の国を訪問するのはウクライナ侵攻後初めてです。シリア内戦について話し合うための会合ですが、今回はウクライナでの戦争が大きなテーマとなり、特にトルコとは穀物輸出について話し合われました。その後、イスタンブールで、ロシア、ウクライナ、トルコ、国連の4者の協議が進展し、穀物輸出の再開に向けた合意文書への署名が実現しました。

しかし、その翌日、ロシア軍がオデーサをミサイルで攻撃したとウクライナが発表。ゼレンスキー大統領はロシアを非難しましたが、トルコの国防省はロシアは攻撃への関与を否定していると発表しました。また、トルコのアカル国防相はウクライナのレズニコフ国防相、クブラコフ・インフラ相と電話会談し、ウクライナから輸出に向けた作業に支障は生じていないとの説明を受けたと表明しました。

ノルド・ストリーム1によるロシアから欧州へのガス提供は、予定どおり7月21日に再開しました。また週初めには、ゼレンスキーがベネディクトワ検事総長とバカノフSBU長官を解任するという動きもありました。

これらの最新の動きを踏まえ、現状と展望について解説します(※メルマガで解説)。

●ドラギ辞任と解散総選挙

イタリアのドラギ首相がマッタレッラ大統領に再び辞表を提出し、今回は受理され、同大統領は上下院の解散を発表。総選挙が9月25日に実施されることになりました。年後半に選挙が行われるのはイタリアでは戦後初めてのことです。

ドラギが辞表提出を決めたのは、信任投票において5つ星運動、同盟、フォルツァ・イタリアの3つの主要連立政党が棄権したからでした。信任投票は過半数の支持を得て可決されたものの、ドラギとしては、挙国一致体制でなければ自分の職責は果たせないという立場だったので、辞めるという決断に至ったということです。以下の記事で、5つ星運動と同盟が不信任に動けば解散総選挙に一気に傾くと指摘していましたが、その展開になってしまいました。

「ドラギの辞意表明」(7/18)

ドラギは新政権発足まで暫定政権を率いることになります。今後の展望について解説します(※メルマガで解説)。

●英保守党の党首選

英国の与党・保守党の党首選が2回行われ、1位のリシ・スナク前財務相と2位のリズ・トラス外相に候補者が絞り込まれました。第4回まで2位を維持してきたペニー・モーダント通商政策担当相が脱落しました。

これまでの選挙は議員投票でしたが、決選投票は16万人の党員の投票によって行われます。新党首が発表されるのは9月5日の予定です。今後の展望について解説します(※メルマガで解説)。

●スリランカの危機

スリランカでは、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が国外に逃亡した後に辞任(メールで辞表を提出)、ウィクラマシンハ首相が大統領代行を務める異常事態が続いていましたが、先週、議会が正式に新大統領として選出しました。

スリランカの情勢については、読者の方から、ぜひ取り上げて欲しいとのリクエストがありましたので、ポイントを解説します(※メルマガで解説)。

なお、スリランカについては17年に特別レポートを書いていました。以下のバックナンバーか総集編で読むことができますので、ご関心のある方はご覧下さい。19年の爆弾テロと20年議会選挙の記事もあわせてお伝えしておきます。

「コロンボ」(17/11/17発行メルマガ)
「総集編第2号:習近平の帝国とアジアの激動」(18/8/24)
「スリランカでの連続爆弾テロ」(19/4/29)
「スリランカ総選挙」(20/8/10)
 
●米議会襲撃事件の公聴会

米連邦議会議事堂襲撃事件の下院の特別調査委員会による公聴会の8回目が開催されました。初回と同様、金曜のプライムライムという異例の時間帯で行われ、トランプ前大統領の事件当日の187分の動きが未公開画像とともに明らかにされました。

当初、この公聴会はほとんど意味がないとみられていましたが、新しい証言や映像がどんどん出てきて、思ったよりもインパクトがあると評価されるようになっています(※メルマガで解説)。

バイデン大統領のサウジ訪問については、以下の記事で解説しましたが、訪問直後に急いで書いたので、説明が不足しているところがありました。読者の方からのリクエストもあったので、明日、補足の解説を配信します。

「バイデンのイスラエル・サウジ訪問」(7/18)
 
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今週の動き
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(※メルマガで解説。)

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あとがき
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「来るまで待とう」? プーチン氏、エルドアン大統領登場までの50秒(7月21日付ロイター)

遅刻の常習犯であるプーチン大統領を逆に待たせる、さすがエルドアン大統領・・と思っていたら、ちょうど2年前の20年にプーチンがエルドアンを待たせていたことがありました(1:50~)。このためエルドアンのしっぺ返しではないかと言われています。なお待っているプーチンの顔のアップを写したのもトルコ国営メディアでした。

ところが、さらに遡ると、実は16年にはエルドアンがプーチンを待たせていました

ということは、先に原因を作ったのはエルドアンだったのか。いや、プーチンが相手を待たせることはしょっちゅうですから、実はその前にも例があるのかもしれません。それにしてもこんなに何回もお互いに繰り返していたら、次はアイツの番だなと警戒しそうなものですが。次はプーチンの番なので、うまくエルドアンがかわせるかですね。

まあしかし、こんなどうでも良いことにこだわり続けて、強面のリーダーたちの執念は理解に苦しむところがありますね・・彼らのパワーゲームと比べると、安倍元首相の小走りがなんとさわやかだったことかと思います。

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