2007/11/27 09:37 | 金融全般 | コメント(19)
飛ばし
放送禁止用語だ(笑)、と元山一の方に言われましたがこれは完璧な飛ばしです。
11月26日
ブルームバーグ・・・欧州銀最大手のイギリスHSBCホールディングスは傘下のストラクチャート・インベストメント・ビークル(SIV)を救済するため、同SIV資産の(450億ドル=4兆8784億円)を引き受けると発表した。・・・・・これらのSIVの投資家は保有する証券をHSBCが新たに設立する運用会社の債券と交換することができる。
前半部だけ見ていると、HSBCが毀損したSIVの資産を自分のバランスシートに取り込んだように見える。当初我々もそう捉えたのですが・・・しかし、後半部で明らかに新しいビークルを設立して、そちらの債券に乗り換えてくださいとやっているので、これは完全な飛ばしに見える。恐らく中身は20%程度の価値しか残っていないだろうから、元来はそこまで減額して飛ばさなければならないが、どうやら100のものを100で買い取りに行ったようで、これはもし事実だとすると、よくもこんなことが許されるな、ということになる。
もともとSIVという仕組み自体、銀行の別働隊なので連結するべきだ、という意見が強かったのですが、シティーなどの銀行側は投資会社に純粋にビジネスとして委託しているのでこれは完全に本隊の運用とは別、と強弁していた投資手法であります。
分かりやすく言うと、この箱を維持する(この箱でCDOを買うわけですが)にあたって、短期資金の融資を受けており、その融資は明らかに箱の作成者(シティーだったりJPだったり、UBSだったり)の信用補完を受けていると考えられるので、これは連結するべきだ、とわたしは主張してきたのだが、こういう事態を考えるとこの問題は大変大きな問題をはらんでいることがわかりますね。
因みにこのSIV、昨日も申し上げました通り、一体どのくらいあるのか把握しているとは言い難く、CDOの損害規模が大きくぶれるのもこのSIVが原因です。ただ、明らかに箱を分解して資産が売れるような状況ではないということが分かっただけでもインパクトが大きかった訳です
さて、更に。
このSIV,資産価値の毀損という点では広くCDOの毀損と同じ現象と考えていただいて結構です。問題は銀行のバランスシートで抱えていた場合、その原資はまあ、銀行預金だったりするので、取り付けでも起きない限り、もちろん引き当ては必要ですが、なんとか維持できます。時間をかけて償却可能なんですね。
所がこのSIVは短期資金(ABCPと呼びます)で調達していますので、6ヶ月とか最長でも9ヶ月後には短期資金を返済し、借り替えなければならない。その圧力がひたひたと向かっており年末超えのドル調達金利は5%を超えてきたという事実。つまり完璧な時限装置つきであります。
週明け早々FRBが20億ドル資金供給をしてきたのはこのABCPによる資金調達を睨み、借り換えができなければ即破綻(原債権であるCDOは売れない・・・価格が付かない)、従ってこれらの箱を大量に保有している金融機関はABCPの引き受け手に返済を迫られる、というとんでもない状況が生まれつつある、事をおそれた為です。SIVは危ないよ、といっていたこちらの予測がまたあたってしまったという、なんとも情けない話ですな。
更に更に・・・
それらの短期資金の出し手を調べてみると・・・またぞろ、シティー、だとかJPだとかSIVを作ったのと同じ面子がそっくり出てくのです、実は。
つまり、さすがにシティーの作ったSIVにシティーが金を出すのはまずいので、彼らは例えばJPが作ったSIVに融資する。そして、逆にシティーが作ったSIVにはJPが融資をする・・・・こういう壮大なマッチポンプみたいな事が白昼堂々と行われていたのでありますね。おそろしい・・・・
それからお詫び。農林中金に海外の支店がない、と申し上げましたら「あるよ」、とご指摘を受けました。確かにあります。ただ、資金の性格上、海外での営業拠点がない、と申しあげたつもりです。もちろん立派な経済調査部もありますし、それらを支える意味での支店が存在しておりいます。農林中央金庫の数名の方、ありがとうございました。他にも数名ご指摘がありましたので、そちらのコメントは公開させて頂きました。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
19 comments on “飛ばし”
コメントを書く
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
SIVでいまだにそのような行為が、米国ですらまかり通っているんですね・・・(ため息)。日本のことは考えないようにしようかなーハハハ・・・
P.S.
拙ブログにてグッチーさんを紹介しておきました◎
今日の話は私にもよくわかりました。SIVのために、FRBが動いていて、しかも債権の100%引き受けをやるために存在する。しかも出資はマッチポンプになっており、俯瞰しないと関係性が分からない。
大きな話だけど、やっていることは、単純なのですね。って素人がおもってしまいました。
最後に困るのは、誰なのでしょうか?
はじめまして!
いつも記事参考にさせていただいております。
おかげで、日経は適当に読み流しております。
今US$=107.35です。
ABXの下げ止まりは・・・。
http://www.markit.com/information/products/abx.html
USカントリーワイド社の株価をチェックしてみます。
すいません。
タイトル入れ忘れました・・。
26日発表のニューヨーク連銀の声明文中の「年越しの金」の意味がわかりました。
「金がないから年も越せねぇ」なんていうことがアメリカにもあるのかと不思議に思っていました。
コレって”融通手形”を親と子がきりあっていると言う事ですか
もう滅茶苦茶ヤバイじゃ無いですか
偽ドルを偽ユーロと交換すると言われても、次は偽ユーロを偽元、偽ルピーと偽円交換となって、ますます絡み合い、ゴルディオンの紐でありますねえ。
あちらさんでも、離れ座敷の発想以外浮かばないのは、人種間に差はないという証明になりますな。
こんな時こそ米大統領が蛮勇を振るわねば・・・ダメか?やはり青い靴を履いてらっしゃるのでしょう。
お米ちゃん、
NHKではサプライズ債権、サブプライム関係五千億あると四時、朝の!!iのニュースであります。
とすれば、
海外営業はなくても立派に損害を受けられるし、調査部はない方が損害を受けにくい、という立証にはなるということでござんしょ。
ぐっちーさんのお喋りが公開の引き金を引いたとすれば、勲五等は保証されたな!
早撃ちぐっちー・・・であります。噂だけど・・・
初コメです。
日経だったかな?に、世界中の店頭デリバティブの想定元本の合計は5京円に達しているとあったと思いますが、これって今回のサブプラ問題から影響することはありませんか?私には全く想像できません。
たしかデリバティブの拡大は資本経済を揺るがすとバフェットが指摘してましたが・・・
いつもながら、それだけの知識量でよくこうした記事を偉そうに書く勇気があるなと、感心しいます。こちらで日経の揚げ足取りをしているのと同じく、私も某経済誌でこちらの素人的な勘違いを訂正する作業を行っていますので、いつか見かけたら読んでみてください。
ぐっちーさんが、ここ暫くはシートベルトが必要!と、言っておられた通りの乱高下で振り回されています。これだけ激しいと情報の早い者勝ちですね。
もしかして誤魔化し続けるには輪転機を回し続けるしか方法が無いのですか?。
すると株式市場的には巨大なバブルが発生するのでしょうか?。
最近クオリティ悪化してない?
事実4に対してきとーな話6ぐらいの割合では。
本人が分かって脚色つけてる分もありそうなので、またブログの上での話しなのでしょーがないけど。
・HSBCが発表したスキームはもう一回勉強した方がいいぞ
・JPはSIV持ってません
・SIVの資産の中身調べてみれば(Fitchのレポートが良)
・レバレッジド・ローン→意味分かってる?
今日のお昼に出てたアブダビの件もやはり「飛ばし」なのでしょうか。欧米発の不良債権がアラブにまで波及する。これが私の単なるお馬鹿ミスリードであればいいのですが・・・。
読ませて頂いたのですがそんな見る人が見ればすぐに分かるようなことをして延命措置になるのでしょうか。
それなら今回のシティのアブダビ?から出資してもらう方がずっとましのように思えます。
HSBC plans to gradually shut down two bank-sponsored SIVs and take $45 billion in mortgage-backed securities and other assets owned by the funds onto its own balance sheet.
この後が無料では読めません^^;
先行きに関しては悲観的でいいのでしょうか。
稼いだお金は、生きていますか?
こんばんは。
京橋のママに、年初に「今年は五黄の年だから、
『天変地異が起こる』『株は乱高下する』『リセットする』」と聞いていましたが、どうやらその通りになりそう。占星術って不思議です。
来年はどんな年になるんでしょうかね。京橋のママに今度会ったら聞いておきます。
p.s.証人喚問が決まった額賀財務相が行ったとされる料亭はミシュラン三ツ星の濱田屋でしたね。
SIVって、昔日本の色んな金融機関が相乗りしていた住専みたいですね。
いつも勉強させてもらってます。
ノウチュウ大本営発表のCDO毀損の金額って、ちょっと甘すぎませんか?
ニュース見ながら吹き出してしまいました。
欧米の金融機関は「連環の計」に引っ掛かっているだけなのでは?。
いずれ中国から炎上する軍艦が突入して来るかも!!。