2025/05/19 06:30 | メルマガ | コメント(0)
第304号 サプライズとなった米中関税交渉進展
先週は米中関税交渉に動きがありました。それ以前のデータを元に発表されている統計については、こうした直近の交渉を踏まえて今後の見通しをお伝えするようにしています。先行きが非常に見通しにくい環境ですが、皆様のリスク管理のお役に立てれば幸いです。
●先週のマーケット
・4月の投資資金フロー
●今週の米国経済統計(予想)
●先週の米国経済統計(結果)
●経済統計分析
1. 米CPI・PPI 4月
・CPI 4月
・PPI 4月
・米企業進まぬ価格転嫁
2. 米小売売上4月
3. 新規失業保険申請件数
4. 最上位格付けを失った米国債
●あとがき
それでは、さっそくまいりましょう。
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あとがき
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今週もお付き合いいただき、ありがとうございました。
本文でもしばしば出てきた、米中貿易関税引き下げの動き、もうずいぶん前の話のような気がしますが、まだ先週初めの出来事です。
正直どうなるのか予想がつかなかったというのもありますが、第一期トランプ政権の対中交渉を見るかぎり、簡単に米中交渉が進展するとは思っていませんでした。したがって、米中が早期に大幅な関税引き下げで合意したことは、筆者とって大きなサプライズとなりました。
週初、スイスで閣僚級貿易協議を行い、会合後に共同声明を発表、米中が90日間の関税率大幅引き下げで合意し、米国の対中関税は145%から30%に、そして中国の対米関税は125%から10%とすることに。もちろん、これは90日間の交渉期間中の一時的な引き下げで、交渉がスタート地点についたということですが大きな前進です。
会合後、ベッセント長官は記者会見で「双方の共通認識はどちらの側もデカップリングは望んでいないということだ。かなり高い関税措置は、事実上の禁輸措置で、どちらも望んでいないものだ。われわれは貿易をすることを望んでいる」と述べています。
そもそも、多くの外交の専門家などが、トランプ政権が行っている一連の関税交渉において、米国は中国とのデカップリングを目指しており、その過程においては同盟国を中心とした中国包囲網を築くことを目指しているという考えがよく示されていましたが、ベッセントの発言を見るかぎりその考え自体が大きく違っていたといえます。
実際には、トランプ政権は拡大し過ぎた関税合戦によって市場の混乱を招いたり、支持率低下が進んだりと、想定以上の影響に対し焦っており、関税交渉において早期の部分合意を強く望んでいた可能性があるのでしょう。結果として、トランプ政権は中国との結びつきを維持して、より現実的な方向で事態の収拾を図っていくことを選択したのかもしれません。
中国側としても、なんだかんだ言っても、米国という市場を失うのは痛いというのもあるのかもしれません。いずれにしても、双方100%を超える追加関税の掛け合うという事態は免れ、トランプ大統領も、中国とは完全にリセットしたと発言。ある程度まだ関税が残っているのであればリセットとは言わないだろ?とも思いますがまずは前進したのは喜ばしいことです。
しかし、忘れてはいけないのは日本の関税交渉はまだ何も終わっていないということ。
ここまで日本は、あくまで自動車関税を含めたセクター別関税を議論の中心とすることにこだわっており、その背景には、米中のデカップリングが進む過程では、日本としてもある程度の長期戦に臨むことが可能だと考えていた可能性があるのではないかということ。
しかし、米国が英国、さらに中国との暫定合意に達し、米中はデカップリングを望んでいないとなれば、日本の交渉姿勢にも何かしら修正が必要になる可能性があるのかもしれません。むしろ、米中交渉が進展した今、トランプ政権の焦りが大きく低下したとすれば、日本がここから早期合意に向け巻き返しをはかるのはそう簡単ではないかもしれません。今週は、赤沢担当相が3度目の渡米というニュースも流れていますが、果たして成果は見えるのでしょうか?
いずれにしても、先週発表された米中協議の結果は予想を上回るポジティブなもので、リスク資産にとってポジティブな材料であることは間違いありません。マーケット的には関税騒動はもうメインテーマではなくなってくるでしょう。トランプ大統領も”MARKET WILL GO HIGHER(市場はさらに上昇するだろう)”と再びの市場介入コメントを発信しており、ここのところの発言からは株式市場に興味が移ってきているご様子。
我々はまたトランプ関税というプロレスに付き合わされたとも思えなくもありませんが、日米交渉が終わっていない我々はまだ気が抜けませんね。
さて、関東地方は雨の日も増え、気温や湿度が上昇、不快指数が高まっています。皆様、季節の変わり目、体調にはくれぐれも気を付けて、今週もよい1週間をお過ごしください!
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