2015/06/17 00:00 | 中東 | コメント(6)
トルコ総選挙
■ トルコ総選挙、与党が初の過半数割れ クルド系政党躍進(6月8日付ロイター記事)
「トルコの政策金利据え置きと総選挙」で説明したとおり、この選挙は、トルコの未来を決定づける重要な選挙でした。与党AKPは得票率50%を割り、過半数の議席を獲得することもできませんでした。
主な要因はエルドアン大統領の強権的な独裁に対する反発ですが、上記の記事で指摘したクルド政党HDPに議席が流れたことも大きかったといえます。
これは、「クルドのオバマ」ことデミルタシュ党首のカリスマ的人気もありますが、国境地帯での「イスラム国」との戦いにおいて、トルコ政府がクルド人たちを守らなかったことが大きく影響しています。また、経済の失速も響いています。AKPの支持の源泉は、近年の目覚ましい経済発展にあったからです。憲法改正どころか、党幹部は敗戦の責任を問われることにもなりそうです。エルドアンの影響力低下も避けられないでしょう。
■ トルコ首相が辞職へ、総選挙での与党過半数割れ受け(6月10日付ロイター記事)
早速にダウトオール首相は辞任する意向とのこと。エルドアンの独り相撲でとばっちりを食った感もありますが、先に述べたとおり、AKPへの不満はエルドアン問題に限られるものではなかったので、やむなしというところでしょう。
得票率は、①AKP41%、②CHP(中道左派政党)25%、③MHP(極右政党)16.5%、④HDP(クルド政党)13%。HDPはクルド政党として初の10%超え。デミルタシュ党首のギャンブルが見事に功を奏しました。HDPは本格的にトルコ政治に参加していくことになりますが、色々面白い人材をそろえており、どうなるかなかなか興味深いです。
こうなると、次の焦点はAKPがどのような連立を組むかですが、世俗政党であり、長年ライバルの関係にあったCHP、上記のとおりクルド問題からエルドアンと折り合いの悪いHDPと組む可能性は極めて低いです。しかしMHPと組むことにも多大な政治的リスクがあります。
選挙結果が経済に与える影響ですが、とりあえずマーケットにサプライズ的な反応はありません。今回の結果を織り込んでいたのでしょう。現在、トルコ経済は、15年第1四半期の成長率が2.3%と前期より落ち込み、インフレ率も高く、リラ安、金利上昇、株価下落のトリプル安の状況。しばらく調整期間が続きそうです。
まずは政治状況の安定が望まれますが、「トルコの政策金利据え置きと総選挙」で説明したとおり、エルドアンの経済政策に対して懐疑的な見方をする内外の投資家は少なくなかったので、長い目で見れば悪い話ばかりでもない・・かもしれません。
長期的に見れば、トルコは若年層の人口が厚く、消費市場のポテンシャルはまだまだ高いといえます。また、欧州・中東・アジアを連結する地政学的に重要な場所に位置しており、周辺諸国を含めた広範囲にわたるマーケットの形成、エネルギー供給におけるハブとしての機能は大きなアドバンテージといえます。
こうしたアドバンテージを生かすためには周辺関係国との安定した外交が鍵となりますが、この点については次回述べたいと思います。
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6 comments on “トルコ総選挙”
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早速・・
プーチン大帝・・走ってくるな・・・(笑
JDさん、はじめまして。
ペルドンさんも(^^)
いつも楽しく(難しいですが(^_^;)拝見させていただいてます。
最近、政府も教育界も「グローバル人材の育成」と盛んに言っています。
私の住んでる田舎でも、教育委員会が「グローバル人材の育成」を高らかに謳って、人材交流や高校生の留学の後押しやらをやってるようです。
本当の意味で、中高生のためになる「グローバル人材の育成」とは何でしょうか?
選ばれた者だけではなく、一般的な子供たちにもできることを教えていただければ有難いです。
トルコ、ロシア制裁でなにげに得をしていますね。
はじめまして、ありがとうございます。
暖かいお言葉、大変励みになります。
教育については、私も(まだ子どもがいないのに)やたら関心が高く、色々と思うところがあります。
来週、「Q&A」のコーナーをつくりますので、そこでお答えしてみたいと思います。
始めまして・・
>>グローバル人材の育成・・
よく判りませんね・・
縄文時代でさえ・・シベリアの石器・・物々交換・輸入してたのだから・・
あの当時から「グローバル人材」あったのは確かでしょうねぇ・・・(笑
その港、十三港でしょうか。シベリアの港、冬凍結か。縄文時代今より温暖?現代のグローバルとは資本のITによる国境を越えた瞬時取引、ということはわれらが本尊ぐっちーの領域か。この時代の日本の強み、著作に解答が書いてあった気がする。