2019/06/17 00:00 | 今週の動き | コメント(3)
今週の動き(6/16~22)
大谷翔平選手、今度は日本人メジャーリーガー初のサイクルヒット。見事ですね。野茂、イチロー、松井、ダルビッシュらの活躍により、日本人の活躍に驚くことはなくなりましたが、「オオタニサン」はイチローのように、日本人という次元を超えて、米国人すら驚くようなプレーを見せてくれる存在になったようです。いつも同じようなことを言っていますが(笑)、時代は変わるものだなと思います。
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先週の動き
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6/9(日)
・トランプ大統領が6月7日に発表された米・メキシコの共同声明に含まれていないが、メキシコとの間ではメキシコが米国から農産物を輸入することで合意していると発言
・韓国の文在寅大統領がフィンランド、ノルウェー、スウェーデンを訪問(〜16日)
・香港の民主派団体が中国本土に刑事事件の容疑者を引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」の改正案に反対する大規模なデモを実施
・カザフスタン大統領選挙(トカエフ大統領代行が勝利、反政府デモが発生)
・モルドバの憲法裁判所が親ロシア派のドドン大統領の職務を停止し、親欧米派の民主党のフィリプ首相を大統領代行に任命
・英国のゴーブ環境相(保守党党首選の有力候補)が20年前のコカイン使用を認める
6/10(月)
・トランプ大統領が6月中に米中首脳会談が実現しなければ対中追加関税「第4弾」を直ちに実施すると発言
・トランプ大統領がメキシコとの間で不法移民や安全保障問題に関する新たな合意を結んでおり、合意の内容は近いうちに公表され、合意の発効にはメキシコ議会の承認が必要であり、承認されなければ関税は再び課されるとツイート
・米下院の司法委員会がモラー特別検察官のロシア疑惑捜査報告書に関する公聴会を開催
・メキシコのエブラルド外相が米国と合意した不法移民対策は45日間で中間評価されると発言(6月7日に発表された共同声明には合意措置が期待する効果をもたらさない場合には追加の措置を協議し90日以内に発表すると規定)
・英国の保守党の党首選の立候補の受け付け締め切り(ジョンソン前外相、ラーブ前EU離脱担当相、マクベイ前雇用・年金相、レッドソム前下院院内総務、ハント外相、ゴーブ環境相、ジャビド内相、ハンコック保健相、スチュワート国際開発相、ハーパー議員の10人が立候補)
・日・スイス首脳会談(東京)
6/11(火)
・トランプ大統領が金正恩朝鮮労働党委員長から6月10日に「美しい手紙」を受け取ったと発言
・ギリシャ議会が解散(7月7日に総選挙予定)
・タイのプラユット暫定首相が新首相に正式就任
6/12(水)
・トランプ大統領が対中追加関税「第4弾」の発動について「判断期限はない」と発言
・トランプ大統領が20年大統領選において外国政府が対立候補の不利益な情報を提供してきた場合には受け入れるだろうと発言(6月14日にその場合には「FBIに知らせる」と釈明)
・米・ポーランド首脳会談(ワシントンDC)
・米財務省がイラン革命防衛隊の「コッズ・フォース」の関係企業への武器密売に関与したとしてイラク拠点の企業1社と2個人に経済制裁を科したと発表
・米下院の監視・政府改革委員会が20年の国勢調査の質問項目を決めた過程に関する情報提供を拒否したとしてロス商務長官とバー司法長官を「議会侮辱罪」に問う決議案を可決
・香港の民主派団体が「逃亡犯条例」の改正案に反対する大規模なデモを実施
・北朝鮮の金与正・朝鮮労働党第1副部長が韓国の金大中元大統領の李姫鎬夫人への弔辞と弔花を韓国側に手交(板門店の北朝鮮側施設「統一閣」)
・英下院が合意なき離脱(BREXIT)の阻止を目指す動議を否決
・イエメンの反体制武装組織「フーシ派」がサウジ南部のアブハ空港を攻撃
・安倍首相がイランを訪問(~14日)
・安倍首相とイランのロウハニ大統領が会談(テヘラン)
6/13(木)
・安倍首相とイランのハメネイ最高指導者が会談(テヘラン)
・ホルムズ海峡近くのオマーン湾で日本の海運会社が運航するタンカーを含む2隻のタンカーが何者かの攻撃を受けて炎上、ポンペオ国務長官は「イランに責任がある」と発表
・トランプ大統領が安倍首相のイラン訪問に謝意を表しながらもイランとの取引を検討するのは時期尚早とツイート
・トランプ大統領がサンダース大統領報道官の今月末の辞任を発表
・日米閣僚級通商協議(ワシントンDC)
・米上院が東アジア・太平洋担当国務次官補にデービッド・スティルウェル元空軍准将をあてる人事を承認
・上海協力機構(SCO)首脳会議(キルギス・ビシュケク、~14日)
・英国の与党・保守党の党首選挙の1回目の議員投票(1位ジョンソン前外相、2位ハント外相、3位ゴーブ環境相)
・欧州議会におけるEU懐疑派の「国民連合(RN)」「同盟」「ドイツのための選択肢(AfD)」を含む9政党が新会派「アイデンティティーと民主主義(ID)」を結成(「国家と自由の欧州」は解消)、リベラル派の「欧州自由民主同盟(ALDE)」は「欧州刷新(RE)」に名称変更
・ユーロ圏財務相会合(ルクセンブルク)
・台湾の与党・民進党が20年総統選の予備選で蔡英文総統が勝利したと発表
6/14(金)
・トランプ大統領が6月13日に起きたタンカー攻撃について「イランが行った」と発言
・英国が6月13日に起きたタンカー攻撃について「ほぼ確実にイランに責任がある」と発表
・イランのザリーフ外相が6月13日に起きたタンカー攻撃について「Bチーム」による「妨害外交」の一環との見方を表明
・米政府当局者によればイランが6月13日に中東のホルムズ海峡付近を飛行していた米国の無人偵察機に対して地対空ミサイルを発射していたとCNNが報道
・日米首脳電話会談
・EU財務相理事会(ルクセンブルク)
・G20エネルギー・環境閣僚会合(長野県軽井沢町、~16日)
6/15(土)
・香港の林鄭月娥行政長官が「逃亡犯条例」の改正を期限を定めず延期すると表明
・米国の2000億ドル分の中国製品に対する追加関税の税率の25%への引き上げが本格的に適用
・パプアニューギニアのブーゲンビル自治州の独立を問う住民投票
●安倍首相のイラン訪問とホルムズ海峡での日系タンカー攻撃
安倍首相がイランを訪問し、ロウハニ大統領とハメネイ最高指導者と会談しました。その意義については以下の記事で述べたとおりです。
・「安倍首相のイラン訪問」(6/10)
しかし、ハメネイは、会談において、米国とイランの緊張緩和に向けた「日本の誠意と善意は疑わない」としながらも、米国に対する不信感を強調し、「トランプ大統領に伝えてもらうことはない」と述べ、これまでどおり対話を拒否する姿勢を安倍首相に伝えました。会談後、ツイッターでも同様の厳しいコメントを掲載しています。
トランプも、安倍首相のイラン訪問に謝意を表しながらも、イランとの取引を検討するのは時期尚早とツイートしました。米・イラン関係の仲介については目に見える成果はなかったことになります。
そして、衝撃だったのは、安倍首相とハメネイの会談中、ホルムズ海峡近くのオマーン湾で、日本の海運会社「国華産業」が運航するタンカーを含む2隻のタンカーが何者かの攻撃を受けたことでした。米国はイランによる攻撃と断言し、これにサウジや英国が同調しました。
米国はイランの関与を示すビデオ映像も公表しています。国防総省はイランの高速ボートがタンカーに接近して吸着型機雷を仕掛けて攻撃したとみており、ビデオ映像にはイラン革命防衛隊のものといわれる小型船が不発に終わった機雷を回収している場面が映っています。
これに対し、イランは関与を否定。ザリーフ外相は米国の「Bチーム」による「妨害外交」の一環であると述べています。Bチームとは、米国のボルトン大統領補佐官、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、UAEのムハンマド・ビン・ザイド皇太子ら対イラン強硬派を指す言葉とされています。
安倍首相のイラン訪問の評価とタンカー攻撃の分析について、現時点でのコメントを述べます(※メルマガに限定)。
なお、chinaさんから、前回の記事のコメント欄で、「ニュースなどに出てくるロウハニ政権の意向は、ほぼハメネイ師の意向と思っても良いものでしょうか」とのご質問がありました。重要な指摘です。この点も含めて解説します。
●香港の「反送中」デモと逃亡犯条例改正の延期
香港で身柄を拘束した容疑者の中国本土への移送を可能にする「逃亡犯条例」の改正に反対する大規模デモ(「反送中」デモ)が発生。主催者発表によれば参加者は100万人に上りますが、香港の人口は740万人ですから、7人に1人が参加したことになります。
警察はデモの強制排除に乗り出し、催涙スプレー、催涙弾、ビーンバック弾を使用して負傷者が発生。14年の行政長官選挙の民主化を求めた抗議デモ(雨傘運動)を彷彿させる事態です。その衝突の様子は世界のトップニュースになりました。
雨傘運動を主導した学生団体の元幹部である周庭(アグネス・チョウ)さんは、6月9日にデモに参加した後、来日し、記者会見や講演で香港の危機を訴えました。
香港立法会は6月12日に審議を再開して20日に採決する計画でしたが、警察とデモの衝突を受けて審議を延期。そして15日、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が条例改正は期限を定めず延期すると発表しました。中国外務省も、香港政府の決定を支持すると発表しています。
危機はひとまず回避されたようですが、条例改正は撤回されたわけではなく、いまだ状況は不透明です。抗議デモは16日も行われる予定です。
香港では97年の返還後、「一国二制度」が導入され、建前上、高度な自治権が50年間(2047年まで)認められています。しかし、以下の記事で述べたとおり、実際のところ、すでに中国本土の実力による介入は始まっていました。
・「現地レポート(香港)」(18/7/4)
特に中国が経済発展を遂げる00年以降、自治権の形骸化と言論の統制が顕著になりましたが、それに対して香港市民が大規模な反発を見せたのが03年の「国家安全条例」への反対デモと先に述べた14年の雨傘運動でした。国家安全条例は、当時の胡錦涛体制に棚上げさせることに成功しましたが、雨傘運動では、要求は受け入れられず、デモは鎮圧され、主導者には実刑判決が言い渡されました。
今回の条例改正は、香港市民が中国本土の司法に服することを正面から認めるものです。事実上、中国の完全支配への道を開くものであり、雨傘運動を鎮圧された香港市民にとっても受け入れられるものではなく、今回の事態に至ったと考えられます。これまでの動きの分析と今後の展望について解説します(※メルマガに限定)。
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今週の動き
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6/16(日)
・香港の民主派団体が中国本土に刑事事件の容疑者を引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」の改正案に反対する大規模なデモを実施
・グアテマラ大統領選挙・議会選挙
6/17(月)
・米国の対中追加関税「第4弾」の公聴会(~25日)
・EU外務理事会(ルクセンブルク)
・ECBフォーラム(ポルトガル・シントラ、〜19日)
6/18(火)
・トランプ大統領が20年大統領選挙への再出馬を表明(フロリダ州オーランド)
・FOMC(~19日)
・英国の与党・保守党の党首選挙の2回目の議員投票
6/19(水)
・台湾の与党・民進党が20年総統選での蔡英文総統の公認指名を決定
6/20(木)
・EU首脳会議(ブリュッセル、〜21日)
・ASEAN首脳会議(バンコク、〜23日)
6/22(土)
・モーリタニア大統領選挙
●トランプ大統領の20年大統領選挙への再出馬表明
米大統領選については、来週(6月26日と27日)、民主党候補者のテレビ討論会が予定されています。そのタイミングで現時点におけるポイントを詳しく解説します。
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あとがき
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■ 豪「卵少年」、自身に集まった募金760万円を銃乱射の被害者に寄付(5月29日付AFP)
「所有権の歴史(1):ローマ法とゲルマン法」(3/22)のあとがきで紹介した豪州の「卵少年」の後日譚。ただのやんちゃなボクサー少年ではなかったですね。
なお、少年に卵をぶつけられた極右議員のフレーザー・アニングは、5月18日の総選挙で落選しました。
・「豪州総選挙」(5/20)
ボクサーといえば(この話とボクサーは何の関係もないのですが(笑))、私が好きな漫画は、新井英樹『シュガー』『RIN』。あまり有名ではなく、とてもクセが強いので、一般受けはしないと思いますが、凄い作品と思います。続編が読みたいものです。
あとは、もちろん不朽の名作『あしたのジョー』。これについて書くと一回では終わらず、シリーズ記事になってしまうので、控えます(笑)。「リングでは世界一の男がおれを待っている」・・私が一番好きなジョーのセリフの一つですが、ここは『シュガー』でパロディにされていました(オマージュということで・・)。
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3 comments on “今週の動き(6/16~22)”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
自分の拙い知識や、思考を総動員して先週色々考えてみたことの何倍もダイナミックな見通しと分析で、そのギャップに笑うしかなかったです(笑)
安倍首相のイラン訪問について全く建設的な議論がなされず、とても残念に思っていましたが、悲観も楽観もすることなく、状況と今後の見通しをしっかり捉える視点が示されていて、気持ちがスッキリしました。
来週は、民主党候補者のテレビ討論会ですか‼︎ピート・ブティジェッジ楽しみです(笑)
なるほど、役割分担なのですね。
ハメネイ師との会談内容を見て、直前までのイラン(ロウハニ政権)の反応と180度違う対応に、私はてっきり、最近好き勝手ばかりやっている米国を、挙国一致で懲らしめにかかったのかと思ってしまいました。ニュースから伝わってくるロウハニ政権の前向きな発言で米国(と日本)を期待させ、そしていざ会談ではハメネイ師の一刀両断で叩き落とす。(でも冷静に考えたら、そんなことをしても誰も得をしないですよね。ご解説の通り、本音と建前、に納得です。)
しかしながらイラン国民は、ロウハニとハメネイのトーンの違いに気が付かないものでしょうか。それともイラン(国内)ではこのあたりの違いが伝わらないよう、情報統制がなされているのでしょうか。
香港はなんだかすごいことになっていますね。
はじめは「逃亡犯条例」改正が香港にもたらす意味が良くわかっておらず、なぜこんなにデモが拡大しているのだろうと不思議でした。引渡し対象に中国を加えることの意味が良く分かっていなかったのですが、いくつか記事を読んで理解に至りました。
罪は必ずしも「犯す」ものではなく、「作り上げられる」可能性もある・・ということですよね。
それらを踏まえもう一度メルマガを読み返してみると、香港の人たちの必死さや事の重大性が理解出来たような気がします。
習近平の訪朝、G20を前にしてあまりにも素敵なタイミングだったので、手打ちのための手土産を用意したのかと思ってしまいました。最近思うのですが、トランプの思考回路やパターンは結構分かりやすいので、中国側もそれを踏まえて手を打ってきたりしないのかな、と。トランプが欲しいのは選挙での勝利、そしてそれにつながる有権者へのアピール、だとすれば中国制裁に代わる有権者へのアピール材料をプレゼントすれば、手打ち(ディール)に応じてくれるのでは・・、なんて考えて訪朝した、と考えるのは甘すぎますでしょうか・・。(でも分かりやすいとは言え、出たとこ勝負のちゃぶ台返しも得意技だから、結果、面倒くさい交渉相手であることに変わりはないですね・・。)
トランプ大統領がイランを標的とした軍事攻撃を承認し、その後撤回したようですが、今回のはさすがに、ブラフではないですよね。
国防総省等はノーコメントのようなので、あまり気にしなくていいのか?
とはいっても、「戦争」の一歩手前のような状況だけに、事態の捉え方を教えてください。