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2019/03/22 05:00  | 歴史・法・外交 |  コメント(3)

所有権の歴史(1):ローマ法とゲルマン法


昨日は春分の日でお休みでした。本日も休暇をとって4連休にされた方もおられるかと思います。そうでない方も金曜ということで、本日は日々の世界情勢から離れて、歴史と文明に関わる大きなテーマの話をしたいと思います。といっても、週末にゆっくり考えるのに向いている、肩の凝らない内容にしますので、ご安心下さい(笑)。

以下の記事で「皇帝」の由来や英語の歴史を取り上げました。こうした身近な概念や言葉の成り立ちを知ると、ギリシャ、ローマ、ゲルマンの古代文明が西欧世界の思想や制度、文化の重要な基盤になっていることが感じとれると思います。

「天皇、皇帝、ローマ、共和主義」(17/12/29)
「英語の歴史」(1/25)

その中でもローマ法は、近代の私法学の発展において大きな役割を果たしました。その遺産は、英米法のみならず、その法体系を継受した日本法にも生きています。

たとえば、上記「天皇、皇帝、ローマ、共和主義」(17/12/29)では、ローマ法学の概念に「ドミニウム(領土の使用・処分権)」と「インペリウム(領土内の人・物に対する支配権)」があり、それぞれ「ドミヌス(主、王)」と「インペラトル(支配権者、軍司令官、「皇帝」の淵源)」に対応していることを説明しましたが、ドミニウムは、近代法学における物権的所有権(一物一権主義)につながっています。

我々が自明と考えている、一つの「物」に対する一人による絶対的な支配権としての「所有権」は、実は(当たり前ではありますが)歴史的産物です。一方、ローマ法に由来する「単独所有」とは異なる別の権利構成が「共有」です。

「共有」は、ローマ法ではなくゲルマン法の産物である、という考え方があります。ゲルマン法は、中世のカノン法などと並ぶ、ローマ法とは異なる歴史的な法体系として位置づけられています。

本日は、こうした所有権の歴史についてお話します。ローマ法とゲルマン法、そして近代ドイツのナショナリズムと進歩性について解説し、それが米国のニューディールと日本国憲法にまで影響を与えたことを考察します。

※ここから先はメルマガで解説します。アウトラインは以下のとおりです。

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所有権の歴史(1):ローマ法とゲルマン法
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●所有権の絶対性と近代の思想
●ローマ法の所有権
●ゲルマン法の所有権

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あとがき
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NZ銃撃は「移民政策のせい」 問題発言の豪議員、生卵投げ付けられる(3月17日付CNN)

NZ銃乱射事件の余波ですが、議員のパンチがすごいですね。ボクサーのような動きで1発、足りずに2発・・少年もさるもので、かわしながらカウンターを繰り出しているようです(苦笑)。少年は逮捕されたもののおとがめなく釈放され、議員は事情聴取を受けているようです。

多文化主義の豪州にもこんな極右議員がいるのか、これも最近の差別主義の風潮か・・と思うかもしれませんが、豪州には元々「白豪主義」という白人優位政策がありました。これを転換して一切の人種差別を撤廃したのは70年代です。

白豪主義は途絶えたかに思われましたが、90年代後半にその復活を唱える極右政党「ワン・ネーション」が立ち上がり、国政の議席を獲得します。いったんは議席を失いましたが、昨今の反移民思想の広がりを背景に直近16年の選挙で上院4議席を得ています。このあたりの事情も追い追いお話したいと思います。

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3 comments on “所有権の歴史(1):ローマ法とゲルマン法
  1. KB より
    脳みそぐったり

    いつもの、即効性のある記事や内容もとてもエキサイティングですし、現代史シリーズも好きですが、こういう「脳ミソの筋トレ系」の記事もいいですね。(疲労するのは私だけでしょうか・・?)
    行きつ戻りつ反復しながら、学生時代にちゃんと勉強しなかった自分を呪いつつ読んでいます(笑)
    とはいっても、JDさんの記事は時代背景やその時代の人々の考え方などが分かりやすく示されており、ガッツリ予備知識がなくても、興味をもって読み進められるので助かっています。

  2. china より
    おあずけ

    う~ん、久々にこの「おあずけ」がもどかしく感じました。
    続きを早く読みたいです。
    米国のニューディールにどういう影響をもたらすのでしょう・・。
    その先の日本国憲法は、やはり先方にお作り頂いた関係上、影響を受けているのでしょうか・・。いずれにしても期待値マックスにしてお待ちしております。

    先日ご紹介頂いた『ファーゴ』、Amazonプライムにあったので視聴してみました。
    (余談ですが、視聴前に予習したWikiで「R15+」指定がされている作品と書いてあったのでちょっと(いやかなり)ビビっていたのですが、最後のあのシーンだけは「ちょっとちょっと、何してくれちゃってるの」と思いましたけれど、とりあえず無事見終えることが出来ました。)
    にしても署長が女性(しかも妊婦さん)というのがこの閉鎖的な作品においてとても対照的で際立って感じました。最後のお説教に説得力を持たせるためでしょうか。

    物語の大部分はミネソタ州のミネアポリスやブレーナードで展開していくのですけれど、中西部の北側というくくりではノースダコタもこの世界観なのでしょうね。
    千葉とはちょっと違うけれど、確かにユニークな印象は受けますね。改めてアメリカって広いんだなと思いました。以前ご紹介されていたメーガン妃出演の『SUITS』みたいな、都会でエリートたちがバリバリ働く世界も、『ファーゴ』のような世界も、同じアメリカなのですよね。話が少し飛びますが、こんなに振り幅が大きな国で、もれなく支持を獲得していかなければいけない大統領選って、やはり大変だなと思いました。

    生卵の件、義憤にかられた少年が突然会場に現れて投げつけたのかと思っていましたが、すぐ後ろで結構冷静にスタンバっていますね。動画を撮っているところを見ると、彼のイデオロギー的に云々とかではなく、話題の人に生卵投げた件、的な、SNS欲を満たすための行動だったのかしら・・と思ったり。

  3. まだまだ新参者 より
    当たり前、だけど

    大きいテーマでありながら、「所有権」という我々に近い話。
    当たり前のことを正しく理解して、さらに人に興味を持ってもらえるように伝えるということは、できるようでなかなかできないもの。これは大切ですね、勉強になります。
    子供を持つ小生としては、「基本」「型」の大切さを最近強く感じています。「当然」と考えることもなく通り過ぎてしまうことでも、このように立ち止まり理解を深める、ということは私たち大人こそ意識してやるべきなのでしょうね。
    次号も楽しみにしております。

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