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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/02/05 00:00  | 今週の動き |  コメント(2)

今週の動き(2/5〜11)


先週もまた雪が降りましたが、今回は積もらず。その後は天気も良くなりましたね。寒さは相変わらずですが・・。

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先週の動き
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1/28(日)
・フィンランド大統領選挙

1/29(月)
・マケイブFBI副長官が辞任
・米財務省が新ロシア制裁法に基づきプーチン政権とつながりの深い政治家や資本家のリストを発表(追加制裁は見送り)
・NAFTA再交渉第6回会合最終日(モントリオール)
・シリア国民対話会議(ソチ、〜30日)

1/30(火)
・一般教書演説
・FOMC(〜31日)
・ヴィクター・チャが駐韓大使の指名対象から外れたとの報道
・カタルーニャ州議会が新州首相の信任投票を延期

1/31(水)
・ロシアゲート問題を捜査するFBIと司法省にトランプ大統領に対する偏見があると非難する内容の共和党機密メモの公開の承認を政権が検討していることについて、FBIが同メモの正確性に問題があるとして「深刻な懸念」を表明する声明を発出
・シャノン国務次官が辞任を表明

2/1(木)
・英中首脳会談(北京)

2/2(金)
・下院情報特別委員会の共和党議員が共和党機密メモを公開
・トランプ政権が核戦略指針(NPR)を発表

2/3(土)
・イエレンFRB議長の任期終了(パウエル氏が新議長に就任)

2/4(日)
・ASEAN外相非公式会合(シンガポール、〜6日)

●ロシアゲートをめぐる機密メモの公開

下院情報特別委員会の共和党議員が、トランプ政権の承認を得て、FBIと司法省のロシアゲート捜査について、トランプ大統領への偏見があると非難する内容の機密メモを公開。

このメモは下院情報特別委員会のデビン・ニューネス委員長(共和党)の指示によって作成され、その公開には民主党そしてFBIから強い反対がありましたが、政権の承認を得て、ついに公開に踏み切りました。

メモの内容は以前から言われていたことで、FBIの捜査はトランプ陣営とロシアとのつながりに過大な懸念をもち、偏向していたというものです。

たとえば、FBIが「スティール文書」(英国情報機関MI6の工作員だったクリストファー・スティールが作成した文書で、トランプがモスクワのホテルで売春婦に放尿させたこと(「ゴールデン・シャワー」)など不名誉な情報をロシアが握っていたことを指摘している)に依拠して捜査を始めたこと、スティールが民主党から資金を得ていたことをFBIが令状申請の際に裁判所に報告していなかったことが問題視されました。

トランプは以前から、ロシアゲートは民主党(特にヒラリー・クリントン陣営)が自分を追い落とすためのでっち上げであるという趣旨の主張を繰り返してきました。今回のメモは、共和党議員、それも下院情報特別委員会のトップがその主張に加担したものであり、今後、ロバート・モラー特別検察官の捜査の信用性を失わせ、同特別検察官やロッド・ローゼンスタイン司法副長官を解任させる口実になるかもしれない、という点で注目されました。

ただ、内容を見ると、そこまでのものではない・・というのが正直なところです。

たとえば、トランプ側の最大の主張の一つは、前出のスティール文書がロシアゲート捜査の引き金になったというものでした。ところが、このメモでは、そうではなく、捜査の端緒はトランプの外交アドバイザーだったジョージ・パパドポロスの会話だったとされています。これは、トランプの主張を逆に崩すものです。

また、スティール文書を情報源としたこと、民主党の資金提供を裁判所に告げなかったことも、たしかに通常の手続きとは違ったことはFBIのイメージを害しますが、だからといって捜査の信頼性を失わせるほどのものかといえば、到底そこまでは言えません。

さらに、ニューネスは、メモの中で引用されている文書を実際には読んでいないことをFOXニュースのインタビューで話しています。これも逆にトランプと一部の共和党議員が政治的に利用する姿勢を示すものとして批判されます。

そういうわけで、このメモは大きなインパクトを与えるものとは考えられません。しかし、この問題はこれからも続くでしょう。

ただ、一つ述べると、民主党とFBIに組織的な「陰謀」があったという主張は、今の時点では根拠が薄すぎます。米国内にはこれをことさらに面白おかしく取り上げる人もいますが、ごく一部です。

日本の一部のメディアや言論人には、こうした米国内の一部の報道をとりあげ、日本ではあまり報じられていないことを良いことに、スクープのように強調する人がいるようです。しかし、ここは冷静かつ客観的に見ることが重要です。

さらに補足すると、もう一つ気になるのは、民主党にもロシアゲート疑惑があることです。これは以下の記事で述べました。

「今週の動き(11/6~12)」(17/11/6)

ロシアゲートは司法と政治の両方に絡む問題であり、それだけに様々な側面と見方があるので、何が本当にポイントになっているか細かくフォローする必要があります。本メルマガでは米国内の論調を正確にお伝えします。

●一般教書演説

トランプ初の一般教書演説。なかなか面白いパフォーマンスでした。今週解説します。

●イエレンFRB議長の退任

これはぐっちーさんが解説してくれると思いますが、ジャネット・イエレン議長のバランス感覚とリーダーシップは米国のエコノミストから極めて高い評価を受けていました。何が起こるか予測が難しいトランプ政権において、このような安定感をもったFRB議長がいたことは幸運だったといえるでしょう。

イエレン議長は、労働生産性の低さとともに女性の活躍の少なさも指摘しました。傑出した女性リーダーの例という意味でも大きな足跡を残したといえます。

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今週の動き
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2/5(月)
・パウエルFRB議長の宣誓式
・ASEAN防衛相非公式会合(シンガポール、〜6日)

2/6(火)
・ペンス副大統領が訪日(〜8日)

2/8(木)
・つなぎ予算が失効
・北朝鮮の朝鮮人民軍創建70周年

2/9(金)
・平昌五輪(平昌、〜25日)
・日韓首脳会談(平昌)

●政府閉鎖の回避

何度も繰り返されているドタバタ・・もはや喜劇ですが(笑)・・今週は5本目のつなぎ予算を成立させなければなりません。

前回の政府閉鎖の原因となったのは上院での否決ですが、今回、上院の民主党は、前回の失敗の反省もあり、協力姿勢を見せています。

しかし、下院では共和党のフリーダム・コーカスのつなぎ予算でしのぐことへの反対、民主党のDACA継続に向けた合意の要求が大きく(DACA失効は3月5日)、今回もかなり不透明な状況です。再び短期間の政府閉鎖が起こるかもしれません。

●平昌五輪

世界情勢との関連では、1月4日の米韓首脳電話会談で決定された五輪開催中の米韓合同軍事演習の中止、1月9日の南北閣僚級会談で決定された北朝鮮の五輪参加がありました。

「今週の動き(1/8~14)」(1/8)
「今週の動き(1/15~21)」(1/15)

今週は、この機会に北朝鮮をめぐる現状と展望を整理したいと思います。

ここで、トーマス・シャノン国務次官の辞任とヴィクター・チャの駐韓大使指名取り止めについても述べます。

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あとがき
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先週、「今週の動き」の配信は、日曜夜と月曜朝どちらが良いか読者の方のご意見をお聞きしましたが、日曜夜の方が良い、というご意見を多くいただきました。

ということで、これまでどおり、日曜夜(月曜午前0時)に配信したいと思います。

最近導入したFire TV、とても使いやすいですね。個人的にはApple TVより操作性が優れている印象です。

これでAmazonプライムをテレビで見ることが多くなり、先日は映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』を見ました。

『攻殻機動隊』は中学生のときに漫画の原作を読んでおり、スカーレット・ヨハンソンは『ゴーストワールド』(01年)、『ロスト・イン・トランスレーション』(03年)のときから強い印象がありました。それがこうして合流するとは。あと、レオス・カラックス映画の常連だったジュリエット・ビノシュが出ていたのに驚きました。

色々な評価があったようですが、私は楽しめました。ただ、ビートたけしはどう見てもビートたけしにしか見えず、そこは違和感ありましたが・・。

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2 comments on “今週の動き(2/5〜11)
  1. KB より
    冷静かつ緻密な・・・

    探偵のような、ロシアゲートの読み解き。ありがとうございます。

    昨年から指摘されているように、ロシアゲートは、民主党も抱える疑惑。
    トランプ劇場だけのテーマではない、ということですね。

    それにしても、イエレンさん「再指名されなかったことに本当に失望した」と。なんだかさみしいですね。

  2. 下北のねこ より
    ジャパニーズ・アニメ、ついに芸術の領域へ?

    ジャパニーズ・アニメの名作、攻殻機動隊(知ってるけど、見たこと、読んだことは無いです)の実写版にジュリエット・ビノシュ様が出ているとは、原作も含めて芸術として認められてるってことですよね。

    私にとってのジュリエット・ビノシュって、「存在の耐えられない軽さ」、「ポンヌフの恋人」そして「イングリッシュ・ペイシェント」、文字通りの名画ばかりです。(レンタルビデオの全盛期で、ツタヤで借りまくってたこの時期ばかりで止まってます。なんか今のレンタル店、空気が変わった感じで入りづらくなっちゃったので。)

    イエレンさんの退任、全く関係ない世界ながら、なんか残念です。
    女性のトップリーダーで成功する人って、高い知性もですが、それ以上に豊かな包容力が表に出てる人なんだろうなあってつくづく感じます。
    私の世代だと、「肝っ玉母さん」って、イメージの原形が心の中にあるんですが、ドイツのメルケル首相や日本の土井たか子元衆議院議長なんかがそうだと思います。扇千景さんも包容力は高そうな方とお見受けします。
    逆に、許容範囲が狭そうな方、今の東京都知事さんや韓国の前の大統領、アウンサンスーチーさんも残念だけど、自分のことでは闘えたけど、そっちの方なんだろうなあ。たぶん。
    存在が目立つだけに、失敗すれば単に自分だけのことじゃなく、属している組織そのものの危機に直結してしまうのが女性のトップリーダーの怖いところだと感じます。
    アメリカでヒラリー・クリントンさんやイエレンさんに続く、女性のスーパーキャリア、次はどんな方が現れるのか、さすがアメリカは、レベルが突き抜けてるので見るのが楽しみですし、期待してます。

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