2017/12/12 05:00 | 中東 | コメント(4)
米国のエルサレム首都認定(1):背景
■ トランプ米大統領、エルサレムをイスラエル首都と正式認定(12月6日付ロイター)
世界を揺るがした衝撃的な宣言でした。もともと米国では1995年に制定された「エルサレム大使館法」によって大使館をテルアビブからエルサレムに移転することが定められていました。歴代大統領は6か月ごとに移転を延期する決定を行う(ウェイバーに署名する)ことでこれを回避してきました。
トランプ大統領は、大統領選で、エルサレムの首都認定と大使館の移転を公約として掲げていました。しかし、最初の6か月目が到来した時点での6月には、やはりウェイバーに署名しました。トランプといえど、さすがに大統領となれば、中東和平に与える影響を考慮して現実的な判断を行わざるを得ない・・しかも中東和平を目標に掲げたのだから尚更そうだろう・・と思わせました。
それが今回の宣言。事前にパレスチナ自治政府には通告をしており、その上でエルサレムに関する演説を行うと発表していたので、サプライズではありませんでしたが、それにしても、なぜ・・という疑問は多くの人が抱いただろうと思います。
今回は、トランプがこの宣言に至った背景を解説します。それを踏まえた上で、次回、トランプがこの宣言で何を意図したのか、そして、この宣言はどのような影響を与えるのかを考察します。
※ここから先はメルマガで解説します。アウトラインは以下のとおりです。
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米国のエルサレム首都認定(1):背景
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●在米ユダヤ人
●白人エバンジェリカル
●選挙対策
●内政と外交
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あとがき
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今回は米国のキリスト教が大きなテーマになりましたが、これは、以前に解説した南部の文化と並んで、我々日本人にとって理解することが非常に難しい問題と思います。
・「シャーロッツビル事件と南部の文化」(17/8/24)
私はキリスト教徒ではありませんが、米国に住んでいた頃、毎週末教会に通い、週に数回「バイブル・スタディー」といわれる聖書の勉強会に参加した時期がありました。もともとは友人の学生に誘われ、英語の勉強になるだろうと思い、また知的好奇心もあって参加したのですが、これが非常に面白い経験でした。
バイブル・スタディーは、以下の記事で述べましたが、社会科学のようなアプローチで聖書の一言一句に向かい合い、それを日々の生活にどう生かすかを議論するもので、おそらく日本人がイメージする「宗教の勉強」とはかなり異なります。どちらかと言えばゼミに近く、知的刺激に富む営みです。
・「リチャード・ホフスタッター『アメリカの反知性主義』(1)/(2)」(15/10/26・27)
また、教会の行事がとても居心地が良い。気楽にふらっと行くと、ようこそ来たと暖かく迎えてくれて、ワインやアイス、軽食などをふるまってくれます。アジア人でも気にされないし、「自分はキリスト教徒じゃないけど・・」と言っても「気にしなくていいよ」と言ってくれます(回心して欲しいとは思っているでしょうが・・)。
宗教的行事ばかりではなく、野球やボウリングをしたり、映画を見に行ったり・・どこかサークルかコミュニティ活動のようなノリで、明るく開放的な雰囲気がありました。若者も多く、親友もできました。こういう経験をすると、これ、意外に悪くない・・という気分になります。この程度の経験で米国の宗教や社会を語ることなどできませんが、色々な文献を読み、映画やドラマを見て、米国人と話し、考えてみると、少なくとも彼らにとっての「宗教」とは、我々が短絡的にイメージする「神秘主義」「非科学」とはまったく異なる、深い精神性のある文化なんだと気づきます。
エバンジェリカルって何・・?エヴァンゲリオン?・・米国人、やっぱついていけないわ・・などと思わず、オープンな目で見て、その上で自分なりに考えてみて欲しいと思います。私も、そういう理解を深める手助けをしたいと思っています。
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4 comments on “米国のエルサレム首都認定(1):背景”
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某F民放…一方で、政府内からは「バランスの問題だ。国際均衡について、何を考えているかわからない」といった、困惑の声も上がっている。
政府内の誰だよ…(笑)
何の違和感もなく・・
読みましたよ・・
そういう全方位的なアプローチが必要でしょうね・・
別名教養・・とも言うけれど・・
次稿・・楽しみ・・
( ^ω^)・・・(笑
圧巻、というか、こんな分析があるんだ!と、JDさんの英知の集積というか、そのスケールにも圧倒されました。
ほかのメディアでは絶対に読めない内容ではないかと。
そして、事実を表面的に並べるだけでなく、過去・現在・未来がつながっていて、読み応え満載で、ブリーフィングの域は完全に超えています(笑)
単なる一読者で偉そうですが・・・、ぜひお奨めしたい、推薦図書のような記事だと感じました。
アラバマ州で民主党が勝つ事は、通常なら、ありえない。人気絶頂だった頃のオバマ大統領が、約40パーセントを取ったのが近年での最高値。
もし民主党のダグ・ジョーンズ候補が勝てるとすれば、敵失に因る以外にない。
その可能性は二つ。一つは共和党内の分裂。もう一つは、女性たちの裏切り。
アラバマ州選出のもう一人の上院議員は、Richard Shelby。10日日曜日の午前中に珍しく地元テレビに出演して、私はロイ・ムーア候補に事前票を投じなかった、と明言した。
「日曜日の午前中」とは微妙な時間帯。熱心な福音派の人達はテレビの前には居ない。教会に行っている筈。つまり、コアではない支持者を狙って離反を促した。
もう一つは、女性たちの裏切り。「裏切り」というのは、党派的ロジックに対する裏切り。何と言っても、性的異常者の疑いが濃い人間に一票を投じることは出来ない。こう考える女性有権者がどの位居るか?
民主党のアル・フランケン上院議員も、同党の女性上院議員達によって辞職に追い込まれた。
女を敵に回したら、出世できません。