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2016/03/31 00:00  | 米国 |  コメント(8)

米大統領予備選挙:党大会の展望


ミャンマーでは昨日、新政権が発足しましたね。私はこちらがむしろ専門なので、いずれ詳しく解説したいですが、最近はすっかり大統領選ブログとなっているので、とりあえず米国の話を続けます。

最近、コメント欄が活発になっていて、ありがたいことです。大変勉強になります。

トランプの外交論については、相変わらずまともなアドバイザーが集まっていないこともあり、今の時点でまともに取り合うことはなかなか憚られます。強いて言えば、今は各論や個別の政策論よりも、全体として彼がもっている世界観や哲学、それは多数の米国人の支持をかき立てる彼一流のポピュリズムの表れと言えますが、これをよく考える方が有益でしょう。

駐留米軍に関する発言も、アジアに知識と関心のない米国人の見方を象徴する一面があり、その意味で注目に値します。これはこれで我々が受け止めざるを得ない現実です。

米国ではイースター休暇もあり少し落ち着いている様子ですが、最近顕著にみられるのは共和党のトランプ降ろしです。トランプに唯一対抗できる候補であるテッド・クルーズは、「スーパー・チューズデー(補足)」で述べたとおり、本来は到底共和党の議員が支持できる人物ではありません。

それが、カーリー・フィオリーナに続き(彼女はアウトサイダーなので特に注目される動きではありませんが)、なんと本流のジェブ・ブッシュミット・ロムニーリンゼー・グラムなどがクルーズ支持を表明するに至りました。これは驚きでした。トランプによる共和党の「敵対的買収」はどうしても許せないということでしょう。そのクルーズとトランプは、これまた見苦しいお互いの妻をめぐる中傷合戦を展開しています。

さて、トランプとヒラリー・クリントンが勝利を重ねる中で、注目されているのは共和党と民主党の全国党大会の展望です。

共和党については、「ミニ・スーパー・チューズデー」で述べたとおり、トランプが過半数の代議員を獲得するには至らず、ブローカード・コンベンションに持ち込まれる可能性が高いとみられます(もっとも、最終日6月7日のカリフォルニア(代議員数172人)で大勝すればギリギリ過半数に達するという見方もあります)。しかし、何度も述べているとおり、この場合でも、圧倒的な支持を集めるトランプ以外の者を指名するのは至難の業です。

それはそれとして、トランプ以外の者で有力候補と言われるのはポール・ライアン下院議長。ライアンは今のところ党大会の委員長の仕事に徹すると述べていますが、下院議長のときも固辞しながら、周りにかつがれる形で就任しましたから、どうなるか分かりません。知性、経験、バランス感覚、見栄えの良さとすべてがそろったライアンは、共和党本流からすれば申し分のないエースです。

もう一人の候補はジョン・ケーシック。共和党全国委員会(RNC)のRule 40(b)は、予備選で最低でも8勝していることを候補者の条件として義務づけています。ケーシックはオハイオしか勝っていないので、この基準を適用すると無理ですが、RNCのルールは変更されるとみられています。

それでもある程度は勝利を重ねないとケーシックが支持を得るのは難しいでしょう。この点、ライアンは予備選にそもそも出ていないので別格扱いとみられます。

次に民主党ですが、ヒラリー起訴の可能性が最近になってますます真剣に取り沙汰されています。メールの流用のみならず不正利用の疑惑も持ち上がっているからです。仮にヒラリーが起訴される事態になった場合、民主党もブローカード・コンベンションに突入します。

ではバーニー・サンダースになるのかといえば、これも非常にもめるとみられます。というのも、サンダースはこれだけ支持を集めているとはいえ、元々は民主党員ではなかった(無所属)議員です。予備選であればともかく、党大会で74歳の非民主党員が支持を集めることは想定しがたい、という見方があります。

それでは誰が指名されるのか。有力候補といわれるのはエリザベス・ウォーレンです。こちらもサンダースに負けないぐらいの極左ですが、サンダースと違って堂々たる民主党員であり、実績と経験もある程度評価されています。

他に考えられるのはジョセフ・バイデン副大統領。一度は長男を失った悲しみから出馬を断念しましたから、まさかという話ですが、ブローカード・コンベンションという緊急事態になれば、環境が変わったことを理由に再度出馬を検討するかもしれません。

なお、パードゥンさんからコメント欄で、党大会に出席できるのかとの質問がありましたが、メディアであれば日本の記者も入場しています。ただ、一般人が入るのは難しいと思います。これは単に席数というかロジの問題と思います。大使館員も入ってはいなかったと思います。

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8 comments on “米大統領予備選挙:党大会の展望
  1. ペルドン より
    ブローカード・コンベンション

    どちらも・・
    可能性あるにしても・・
    賭博映画じゃあるまいし・・
    切り札の一枚・・
    袖の中から・・出てくることはないでしょう・・
    出てくれば・・
    どちらの党も・・テーブルがひっくり返る・・

    共和党・・
    ヒラリーの悪行一覧・・流布し始めましたね・・
    読めば・・お目目・・クラクラ・・
    いくら・・
    司法長官・・Hilaryの友だとしても・・
    綱に親指・・寄り切られるか・・打っちゃりか・・・(笑

  2. 空の財布 より
    いやはや…

    アメリカ連続TVドラマよりも数倍面白い大統領選挙選ですね。
    いずれは映画になるんでしょうかね、マネーショートみたいに。
    この映画は私には面白かったです、久しぶりに映画館で観ましたが、生での鑑賞は迫力がありますね。

  3. パードゥン より
    2世とかを準大使館員の嘱託にして

     メディアとは異なった党大会情報をとってこないと
    外交部門としてまずいのでは?  中国系アメリカ人はやってるでしょう
    アメリカ外交工作は日本は第2次大戦でも中国にやらってぱなしですからね

     JDの奥さん、アメリカ人?  まだなら、ぜひ(笑)
    民主党に1名、 共和党に1名
    乙武さんじゃやあるまいし、無理?(笑)

  4. 下北のねこ より
    Listening

    エリザベス・ウォーレンさんの英語、とっても聞き取りやすいですね。
    英文の意味わからないから、どうってこともないけど、単語の一つ一つまで聞き取れるように話す方は人としていいなあって思います。

  5. みんみん より
    まだまだドラマは続く

    ヒラリーとトランプで決まり・・という訳でもないのですね。
    また折にふれて教えてくださいませ。

    アメリカの反知性主義に私は興味があります。森本氏の本を読んで、アメリカは徹底した知性主義が社会の根底にある。アンチテーゼとしての反知性主義がある、と私は受け止めたのですが・・理解できてはいません。
    私は仏教徒で不可知論者ですので、知性には限界があると思っています。

  6. 下北のねこ より
    伊勢志摩サミット

    伊勢志摩サミット参加外相の広島訪問決定、外務省、心に伝わるいい仕事しましたね。こういうニュースっていいなあって思います。

  7. パードゥン より
    各外相の了解、大丈夫かな?

     いい話とは思うけど、外務省はつめが甘いというより
    企画すれば参加してくれると思っているようなとこ、ありませんか?
    原則賛成でも
    皆さん国内問題かかえてるから、実施してから発表でもいいのに

     被害者ずらするなとかいって、慰安婦とか再燃しないといいけど
    ロシア抑留の世界遺産あたりも、波及判断をあやまったからなあ

  8. 神の見えざる手 より
    下北のねこ

    アメリカでの核セキュリティーサミットの後で、核拡散防止が最近のテーマとしてクローズアップされてるから、今回その点は大丈夫じゃないかなあ。
    余計な思惑も無いし。

    最近、クルーグマン教授にオフレコ内容暴露されちゃったり、安保法案審議で、自民党憲法調査会や内閣法制局が長谷部教授の考え方を読み違えて与党側参考人に選任し、集団的自衛権は違憲と発言されたり、世界遺産でゴタゴタあったり、なんか思惑が入れると神様がどっかで見ていて何か起こしてるような気がします。

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