2015/06/16 00:00 | 米国 | コメント(3)
米国大統領選:TPPとヒラリー、ナンシー、エリザベス
これからは色気のある記事を書くとかコメント欄で言ってたくせにヒラリー・クリントンなんてお婆さんの話かよ、とペルドンさんのもっともなツッコミ。・・・まあ、月曜からお色気も何なので、週末が近くなるところで書いてみます(笑)。
ほか、近いうち、Q&Aとか、色々新しい試みをしてみたいと思っているので、楽しみにして下さい。さて、ペルドンさんのコメントに触発されて、今日はヒラリーの話を続けてみます。ついでにもう一人の美魔女(?)であるナンシー・ペローシにも触れます。
■ 米大統領、労働者支援法案の再検討・可決を下院に求める(6月13日付ロイター記事)
TPA法案は下院で可決されましたが、TAA(貿易調整支援)法案は否決され、結果として(TAAとセットになっているため)TPA法案は成立しませんでした。その背景には、オバマ大統領の所属政党である民主党から多くの反対者が出たことがあります。ここは非常にややこしいところなのですが、TAAは、自由貿易の拡大により失職した労働者を救済するための制度なので、民主党としては本来支持すべき制度です。
しかし、民主党(下院で民主党を束ねる立場にあるペローシ院内総務)としては、TPA法案の成立をどうしても食い止めたい、でもTPA法案が通ることは避けられない、そこでTPAをつぶすために戦術的にTAAに反対した、ということです。かんべえさんが書いているとおり、ペローシの筋書きどおりですね。
それはそれとして、これまでTPPに対する立場を明らかにせず、曖昧な態度に終始してきたヒラリー・クリントンが、昨日の記事(「民主党候補者の出馬状況」)でご紹介した土曜の決起集会の翌日の13日、ついに自己の見解を披露しました。
■ Hillary Clinton Says President Obama Should Listen to Nancy Pelosi on Trade(6月15日付Bloomberg記事)
■ TPPの恩恵受ける製薬会社は米政府に値引きすべき=ヒラリー氏(6月14日付ロイター記事)
「The president should listen to and work with his allies in Congress, starting with Nancy Pelosi.」・・・相変わらず分かりにくい表現ですが、大統領は(TPAを成立させないために)TAA法案を成立させなかったペローシらともっと話し合うべきだと述べているので、実質的に貿易自由化に反対の姿勢を示した格好です(ただし立場を明確には述べず、相変わらず言質をとられないようにしています)。
もともと自由貿易主義者であり、国務長官時代には、アジアへの「ピボット」を唱えたヒラリーがこのような態度をとることは、ある意味で変節といえます。その背景には、労組やリベラル左派の票を獲りたいことがあるのですが、この点については、いまだ出馬表明をしていない有力候補エリザベス・ウォーレンの影が付きまといます。
昨日の記事でご紹介したとおり、ウォーレンはリベラル左派から強力な支持を得ているところ、仮に出馬してきた場合、その票が彼女に流れるおそれがあるからです。そんなわけで、これまで自由貿易、TPPに対して口をつぐんできたヒラリーも、ここにきて立場を明らかにせざるを得ず、大統領選を意識してリベラル寄りの方針をとることが示されました。TPP交渉はますます混迷しそうですが、今後の大統領選の展開を読む上でも面白い材料となりそうです。
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3 comments on “米国大統領選:TPPとヒラリー、ナンシー、エリザベス”
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ロシアに大帝・・復元すれば・・
米国に二つの王朝出現か・・
国民・・嫌気させば・・ウォーレン女史・・自由の女神・・ト―テンポール・・
JD断固・・ヒラリー支持・・
アウィアに晩餐呼ばれたら・・
トーガの下は何もない状態で・・勇んで行くな・・・(笑
エリザベス・ウォーレンが出馬したらおもしろいでしょうね。バブル破裂後の会社にたいする罰金ビジネスは的外れなので、赤狩りならぬ不当利得のCEO(階層)狩りでガス抜きし体制安堵してくれるかもしれません。日本にとっても悪影響かもしれませんが、やはりウォール街がサブプライムの落し前をとっていない以上必要なことかもしれません。彼女も長い物には巻かれるかもしれませんが。ボルカールールもすっかり骨抜きになったようですがバーゼル3ともどもどんな影響があるのでしょうか。JDさんにはワシントンの経験から業界、日中韓のロビー活動の凄まじさといったものを書いてくれることを期待します。とても中国の賄賂の内情を笑えたものではないのでは?
ロビー活動、センシティブな話ですが・・高い金を使ってみんな雇っていますよ。私の友人も東洋経済オンラインで連載記事を書いているので参考になるかもしれません。
中国の外国人囲い込みについてはそのうち書いてみたいと思っています。