2016/03/01 00:00 | 米国 | コメント(6)
米大統領予備選挙:スーパー・チューズデーの展望
いよいよ本日始まるスーパー・チューズデー。米大統領予備選挙の序盤戦最大の山場です。主なポイントは以前の記事で説明しましたが、ここでは直近の動きを中心にあらためて解説します。
上記記事で書いたとおり、スーパー・チューズデーで獲得される代議員数は圧倒的です。ネバダが終わった時点でドナルド・トランプは82人を獲得していますが、スーパー・チューズデー一日で獲得される代議員は実に595人。数だけをみれば、ここまでの戦いはまさに前哨戦に過ぎないということになります。
とはいえ、序盤戦での勢いは当然スーパー・チューズデーに持ち越されるわけですから、その意味でこれまでの戦いは大きな意味をなします。重要なのは代議員の数よりも勝ち方の内容ですが、この点、トランプは、北東部のニューハンプシャー、南部のサウスカロライナ、西部のネバダと地域的にバランスよく勝利し、かつ若年層から高齢者層、低学歴層から高学歴層、保守から穏健、そして宗教右派とヒスパニックの両方の支持を得ている点が注目されます。
ここまで見事な勝ちっぷりの共和党の候補は近年存在せず、またテッド・クルーズとマルコ・ルビオというライバルの支持層を切り崩したトランプの勢いは無双であり、スーパー・チューズデーでも多くの州で勝利する可能性が高いといえます。特に大票田で宗教右派が強い保守的なテキサス(155)、ジョージア(76)といったところが注目されます。
最新の世論調査をみると、テキサスではクルーズが1位をキープしていますが、アラバマ、ジョージア、マサチューセッツ、ヴァージニアではルビオが2位につけており、オクラホマでは3者が接戦の状況。トランプ、クルーズ、ルビオの3強の中でルビオだけはまだ一勝もしていないので、何とか勝利を得たいところです。
そして、スーパー・チューズデーが終わり、その後、カンザス、ケンタッキー、ルイジアナ、メイン(5日)、ハワイ、アイダホ、ミシガン、ミシシッピー(8日)、DC(12日)などが終わると、3月15日のフロリダとオハイオを皮切りにいよいよ勝者総取りの州(winner-take-all)が登場します。
フロリダはジェブ・ブッシュが撤退したので、地元候補のルビオの勝利がほぼ確実視されます。オハイオでは地元候補のジョン・ケーシックが有利です。しかし、万が一にもトランプがフロリダとオハイオのいずれかあるいは両方を獲るようなことがあれば、選挙戦の流れは大方決まってしまうでしょう。
つまり、3月前半の選挙戦の結果によっては、トランプ勝利というシナリオが真の意味で現実味を帯びてきます。このような不穏な(笑)状況の中で、最近注目されるのは、共和党本流の中からトランプ支持の動きが出てきたことです。
まず2月24日にダンカン・D・ハンターとクリス・コリンズの2人の下院議員が支持表明。連邦議会議員から支持者が出るのは初めてのことです。ちなみにダンカン・D・ハンターの父ダンカン・ハンターは下院軍事委員会の委員長を務め、2008年には大統領選にも出馬した大物です。
そして26日にはクリス・クリスティが支持表明。続いてクリスティを支持していたメイン州の知事ポール・ルバージュも支持表明。
クリスティは6日のテレビ討論会でルビオを追い詰め、ニューハンプシャーでのルビオの敗北の原因を作った張本人ですから、(自身も共和党本流候補の一人でしたが)共和党本流にとっては本当にとんでもない男です(笑)。
また、28日にはジェフ・セッションズ上院議員も支持表明。超保守の議員ですが、テッド・クルーズがよほど気に入らないのでしょう。アラバマが地元なので、これまたスーパー・チューズデーでトランプには追い風になるとみられます。
勝ち馬に乗る(bandwagon)動きが露骨に出てきたということですね。正直、ハンター(父)、クリスティ、セッションズほどの実績ある議員にふさわしいとは思えない、恥知らずな行動のように見えますが(実際党内では激しい批判が寄せられています)、トランプのこれまでの戦績を振り返ると、序盤戦でここまで完璧な勝利の結果を残したのだから、致し方なし、でしょうか。
その一方で、反トランプの動きも加速しています。今週号のThe Economistは表紙と「Time to fire him」という記事で、アンクル・サムをトランプに変えたイラストを用いて、反トランプの特集をしています。
NYタイムズ、ワシントンポストといった他の有力メディアも一層トランプ批判を強めています。上記The Economistの記事も述べているとおり、これまでトランプ以外の候補者は、トランプの勢いを軽んじていたこと、トランプに絡むと事故に巻き込まれてしまうことから(笑)、討論会でもテレビ広告でも、正面から彼を批判することを避けてきました。
しかし、事ここに至り、25日のテキサスでの討論会では、いよいよルビオもクルーズも、トランプに的を絞って、なりふり構わず総攻撃をかけました。ルビオもクルーズもトランプの弱点を効果的に突き、かなり良い仕事をしたと評価されています。特にルビオは、トランプのお株を奪うような攻撃性とユーモアを見せ、これまでの流暢ではあるが堅苦しく、またタフに見えないというイメージから脱却を図り、それなりに成功したといえます。
もっとも時既に遅し、という印象は否定できません。また、トランプも勝者の余裕か、他の候補からの攻撃を歯牙にもかけず、王者の風格が漂ってきた感もあります。そういうわけで、プロ・トランプとアンチ・トランプ、二つの流れが強まってきました。果たしてこれがどう影響するのか、まずはスーパー・チューズデーの結果次第です。
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6 comments on “米大統領予備選挙:スーパー・チューズデーの展望”
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ルビオ・・
形振り構わず・・攻撃・・する度・・チンピラになっていく・・
以前からの支持者・・違う人格を観ているようだ・・
やはり・・下院止まりか・・溜息が出る・・
クリスティ・・
常に勝ち馬に乗る男・・として有名・・今回も乗ったのでしょう・・
率直に言って・・ルビオもクルーズも・・まだ小物・・
ヒラリーには勝てない・・
ダブルスタンダードヒラリーを共和党が・・追い詰めれば追い詰める程・・
ヒラリーはサンダースを・・盾にする。サンダースを副大統領に・・と言えば・・苦手な若年層・・労せず付いてくる・・
民主・共和党も・・気がかりは・・ただ・・ブルムバーグ・・
愛国心に萌えれば・・燃えれば・・必ず・・御登場・・
エコノミスト表紙・・まだ早すぎる・・・(笑
当方です・・
間違えてしまいました・・失礼・・・!
偉くなった人には独特の習性ってやっぱりあるような気がします。
クリス・クリスティさんのようなタイプの政治家には、一般人の持つ道義的な恥ずかしさなんか微塵もないんでしょう。だから批判も届かない。
こういうボロクソ言える対象の政治家って、面白くて意外に好きです。
日本だったら、「平成の小早川秀秋」(ボンボンの彼を明智光秀に例えるのは褒めすぎ)とか、あと「しんきろう」さんとか。
こうなってくると、トランプさんが、誰を副大統領候補に選ぶか、今から楽しみです。(個人的にはジェフ・ブッシュに期待だけど、「ブッシュ」って名前が今回の敗退の原因になってる以上無理だろうなあ)
ただ、本当に実務力に長けた信用の高い人をパートナーに選ばなければヒラリーさんには勝てないと思います。
民主党はサンダースさんに頑張ってほしいなあ。
トランプを支持してる人たちは、現状に不満はあっても「どうにでもなーれ」みたいな気楽さあるんだろうけど、サンダース支持者は現実の生活苦や社会問題を反映してるところ大きいと感じるんですよね。
本当に苦しんでる人の意向って、相手にされないのが普通だから、サンダースさんの公約がどこまで通用するか、期待してます。
響きがヨーロピアン調でなかなか素敵だと思いません?\(^o^)/
ヒラリー 副大統領指名にオバマ
実質10年大統領プラン
(スーチーも傀儡するそうだし、2年間・・・許して)
銃規制・オバマケア修正・議会対策に時間がかかるんで
イャ、オバマのプーチン計画では無いですよ。
反トランプの票が割れて、ヒラリーを食ってしまうので、反トランプキャンペーンでもやるのでは? ぺルドンはスペイン語の冠詞をつけるべき?