2016/02/19 00:00 | 米国 | コメント(3)
米大統領予備選挙:サウスカロライナ・ネバダの展望
週末の20日(土)にサウスカロライナ予備選(共和党)とネバダ党員集会(民主党)が行われます。「ニューハンプシャー予備選」で述べたとおり、この二つの予備選は、トランプとサンダースという反主流派の旋風をはかる試金石となります。
まずサウスカロライナ予備選(共和党)。代議員数は50。アイオワは30、ニューハンプシャーは23ですから、両方の合計とほぼ同数という大規模州です。
しかも、比例配分制だったアイオワ、ニューハンプシャーと異なり、ハイブリッド型の勝者総取り制。全面的な総取りではありませんが、1位の候補者がかなりの数の代議員を獲得することが可能になります。
世論調査をみると、相変わらずドナルド・トランプが突っ走っており、34.5%で2位のテッド・クルーズ(17.3%)、3位のマルコ・ルビオ(16.8%)を突き放す状態。もっとも、この数日は少し下降気味です。
本来サウスカロライナは2位のクルーズのような強固な保守派にとって最も有利な場所です。サウスカロライナは宗教右派(evangelicals)が64%にのぼり、アイオワ(56%)を上回ります。ティー・パーティーの影響力も強い。アイオワのようにクルーズがトランプの上をいく可能性は十分にあります。
ただ、最近の動きとして特筆すべきは、サウスカロライナの知事であるニッキー・ヘイリーが3位のマルコ・ルビオ支持を表明したことです。インド系米国人にして初のサウスカロライナ州の女性知事というヘイリーは存在感も人気も抜群で、彼女のバックアップは大きな追い風となります。これもあってか、最近ルビオの支持率は大きく上昇し、2位のクルーズに肉迫しています。
また、サウスカロライナは退役軍人が多い州でもあり、太平洋戦争で幾度となく登場する空母ヨークタウンが展示されていることでも有名です。これは本流の保守派であるルビオに有利に働くとみられます。
トランプの勢いはまだまだ強いので、連勝する可能性も高いですが、クルーズとルビオにも有利な条件がそろっているので、どこまで差を詰められるかが見所です。それにしても、共和党本流にとって頭が痛いのは、何と言っても候補者の一本化が進んでいないこと。
本来ならニューハンプシャーでルビオが勝って、すんなりと一本化という流れが見えていたのですが、「ニューハンプシャー予備選」で述べたとおり、テレビ討論でのクリス・クリスティの「ルビオは25秒のオバマ批判を繰り返すだけ」攻撃が効果的すぎました。そしてジェブ・ブッシュとジョン・ケーシックが盛り返すという共和党本流にとっては悪夢の展開。
サウスカロライナはハイブリッド型の総取り制と述べましたが、このような総取り制の選挙区は、スーパー・チューズデー後、3月15日のフロリダを皮切りに続々と登場します。総取り制の選挙区の多くはブルー・ステート(リベラルが強い州)であり、このため中道・穏健の候補にアドバンテージがあります。
したがって、主流派の候補が巻き返すには好都合といわれるのですが、今回の選挙の難しさは、クルーズはともかく、トランプが保守か穏健かという次元を超えた存在である点にあります。「NY価値観」を体現する人物という意味ではリベラルといえないこともありません。
このため、後半戦が主流派にとってチャンスになるというこれまでのセオリーがどこまで通じるのかちょっと不安です。少なくとも主流派はこの段階に至るまでに候補者を一本化する必要があるでしょう。
次にネバダ党員集会(民主党)。バーニー・サンダースは、選挙資金の積み上げと幅広い支持を集めることでヒラリー・クリントンを猛追。
何度も述べてきたとおり、ネバダはヒスパニックが多いので、ヒラリー絶対優位のはずでしたが、世論調査をみると、ヒラリー46.5%、サンダース46.0%とかなり拮抗しています。
サンダースの主張は低所得者層を惹き付けるものですが、マイノリティには低所得者層が多いので、勢いが増すとマイノリティにも訴求力が増す可能性があります。しかもマイノリティのすべての支持を奪う必要はなく、ある程度切り崩せば十分。
もともとヒラリーにとっての「ファイアーウォール」は次のサウスカロライナだと言われていたのですが、ネバダで負けるようなことがあれば、これもどこまで通用するのか・・という話になってきます。
それでも大勢をみればヒラリーの優位は動かないのですが、どこまで混戦が続くのか・・という状況にはなってきます。そういう意味でネバダでどこまでサンダースがヒラリーを追い詰めるのか、今後の選挙戦を占う試金石となります。
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3 comments on “米大統領予備選挙:サウスカロライナ・ネバダの展望”
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ヒラリーは・・
一戦も落とせない戦いでしょうね・・
法皇がトランプを・・「キリスト教徒ではない」
昔なら・・破門・・
とあれ・・ここでトランプ勝てば・・三段跳びになる・・
どうなりますかね・・・(笑
ネバダはそこまでではないですが、SCでも善戦するとマイノリティ州でもサンダースがいけるということで後半戦までもつれ込む可能性が出てきます。最後のファイアーウォールはスーパー・デリゲートですが。
トランプのその後の言動が爆笑ものでしたね。まあ、米国ではカトリック=キリスト教徒ではありませんが。ジェリー・ファルウェルのローマ法王批判をみても分かるとおり、evangelicalの支持はローマ法王とは無関係です。
法皇の発言・・驚いた・・勇気ある発言・・法皇にのみ許される・・誤解としても・・
としても・・
時期が悪い・・・(笑