2016/02/09 00:00 | 米国 | コメント(13)
米大統領予備選挙:ニューハンプシャーの展望
本日、ニューハンプシャー予備選挙が行われます。アイオワ後の展開ですが、予想通りの経過をたどっていますね。
●ドナルド・トランプの失速
まず共和党です。アイオワでの敗北後、トランプの支持率は急落し、33.7%から31.6%まで落ちてきました。
何度も述べているとおり、トランプのような勢い任せのアウトサイダー・タイプは一度崩れるともろいです。トランプの気性も考慮すれば、ニューハンプシャーで敗北すれば早々に撤退する可能性は十分にあります。
しかし、私は、ニューハンプシャーの時点では、まだトランプは粘る可能性があるとみています。理由は二つ。まず、ニューハンプシャーはアイオワと違って党員集会ではないので、トランプを支持する層もある程度は投票に行くことが見込まれます。
それと、ニューハンプシャーの判官贔屓です。トランプはもうダメだとなれば、逆に、もう少し「トランプ劇場」を見てみたいという雰囲気になっても不思議はありません。
いずれにしてもトランプが本命とならないことは昨年8月から言い続けているとおりなのですが、それが確定するのはもう少し先、もう一波乱あるような気がしています。
●テッド・クルーズの後退
アイオワの勝者テッド・クルーズの支持率は13.0%でマルコ・ルビオの後塵を拝しています。
もともとクルーズは、ニューハンプシャーでは共和党本流のジョン・ケーシック、マルコ・ルビオ、ジェブ・ブッシュらと拮抗する状態でしたが、ここにきてルビオが一気に支持率を上げたことにともない、後退しました。
クルーズはニューハンプシャーでは非常に厳しい状況にあります。理由は三つ。まず、ニューハンプシャーはアイオワと違って世俗的な州であり、宗教右派(evangelicals)の数はアイオワの3分の1といわれます。このためクルーズの最大の支持基盤である宗教右派の動員は期待できません。そして、宗教右派を支持基盤とする裏返しとして、クルーズには穏健な有権者を惹き付ける力がありません。
次に、ニューハンプシャーの判官贔屓です。これは対抗馬であるトランプとルビオに有利に働きます。
最後に、アイオワでベン・カーソンが撤退するという虚偽情報を流した不正行為をクルーズが認め、カーソンに謝罪したことです。これはトランプがアイオワの結果を無効と主張する論拠としたことでクローズアップされていますが、はっきり言ってトランプの主張はどうでもよくて(笑)、問題はクルーズがこの問題によって防戦一方になり、支持を失うことです。
●マルコ・ルビオの躍進
アイオワでトランプと僅差の3位につけたルビオの支持率は急上昇し、14.6%でクルーズ、ケーシック、ブッシュを抜き去り、トランプに次ぐ2位につけました。「アイオワ党員集会」の記事で、ルビオとしては、アイオワの勢いをどこまでニューハンプシャーに持ち込むことができるかがポイントとなる、と書きましたが、まさにアイオワでの予想を超えるパフォーマンスから一気に躍進した格好です。
私は、ニューハンプシャーはトランプとルビオの一騎打ちになると思います。おそらく僅差となり、どちらも1位を獲ることは十分にあり得ます。ただ、トランプは、1位を獲れなければかなりの痛手を負うのに対し、ルビオは僅差でおさえれば2位でも十分もちこたえられます。
なぜなら、トランプのブームが衰退していくのに対し、ルビオは、ケーシック、ブッシュ、クリスティという他の本流候補を突き放すことで、本流候補を自らに一本化させる流れを作り出すことができるからです。
ルビオが本命となることは昨年8月から言い続けてきました。面白いのは、ルビオは元々ティー・パーティーの支持を受けた候補者の一人であり、共和党の中ではかなり右寄りの保守派だったのですが、いまは「ザ・穏健派」という立ち位置にあることです。
ルビオの最大の強みは、共和党の中で誰もが受け入れることのできるおそらく唯一の候補である点です。中道で、弁が立ち、政策通で、安定感もある。若さを武器に新鮮みに欠けるヒラリーに対抗することも期待できる。ただ、童顔から「青二才」として扱われることで伸び悩んできました。それが、今回アイオワの勝利で一気にブレイクスルーできた感があります。
●バーニー・サンダースが優位
次に民主党です。アイオワ後、マーチン・オマリーが撤退し、ヒラリー・クリントンとバーニー・サンダースの一騎打ちになりました。
ニューハンプシャーではサンダースの支持率が53.3%に対してヒラリーの支持率は40.5%。ここに来てサンダースが伸び悩み、ヒラリーが伸びて差が縮まってきましたが、依然としてサンダースが大きくリードしています。
サンダースがなぜここまで優位に立つのかは以前の記事で述べたとおりなので繰り返しません。ただ、ここであらたに注目すべきは直前の4日に行われたテレビ討論会です。これは大変面白かった。両者が一騎打ちとなる初めての討論会であり、両者の主張が真っ向からぶつかり合いました。
ここではっきりしたのは、サンダースの情熱、インスピレーション、政策論が圧倒的だったことです。これに対してヒラリーは、サンダースの政策は全部無理、自分の方が現実的、漸進的であるとして反論するのみ。
要するに、サンダースがビジョンを語るのに対し、ヒラリーはプロセスを語ることしかできていないのです。実際のところ、サンダースの言うことはかなり無理があります。政策はすべて財政的に難があり、現実性がありません。ウォールストリート批判も個人的にはポイントがずれていると思います。ただ、サンダースの情熱、一貫性、魅力的なキャラクターは、すべてヒラリーに欠けている資質です。
ヒラリーは、キャリアをみれば、間違いなく史上最強の大統領候補です。その強さ、安定感、優秀さは圧倒的です。しかし、とにかく魅力に乏しい・・信頼できない・・人気がない。これは、誰からも愛された魅力あふれる夫のビル・クリントンとはまったく異なる点です。
しかも前回の敗北から8年経ち、今さらというか、新鮮さを欠く点も痛いところです。これまで何度も述べたとおり、ニューハンプシャーで敗れてもヒラリー有利は変わらないでしょう。おそらくスーパー・チューズデーで大勢は決します。しかし、サンダースとの討論は、大統領本選でのヒラリーの弱点をあらたに実感させたように思います。
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13 comments on “米大統領予備選挙:ニューハンプシャーの展望”
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ようやく見えてきましたね。カリスマとヴィジョンに欠けるヒラリーはまたしても負けるのか。オバマはぐっちーが告発したリーマンショック(証券詐欺)の落し前をつけられず辞めていくし、ヒラリー共々ウォール街との関係が足を引っ張る。だから共和党はサンダースが怖いだろう。しかしルビオとライアンが組めば、クリントン・ゴアの再来か。下院議長より継承権を上げた方がいいかもしれない。JDさんにライアンの優秀性は教えてもらいましたが、しかしサマーズのようにどうしても外見に滲みでてしまうものがある。でしゃばるとサンダースを引き立ててしまうかもしれない。しかしサンダースの外交はオバマの二の舞にならないだろうか。ということでルビオに期待したいが、この3人なら一安心か。だが米国衰亡史を知るぺルドンさんがトランプの可能性を示唆しているのが不気味だ。
ルビオ・・演説会精彩欠けていた・・
それがどの程度・・数字下げるか・・
トランプに・・カード・・
サンダーズ・・
解説・・アメリカ人・・本物求め始めた・・
出馬・・CNN・・流した?・・寝起きの一瞬・・確かではない・・
JDさん確かめて・・・
まだよく分からないですね。私はルビオ対ヒラリーと思っていますが・・
ルビオは他の候補者から集中砲火を受けて苦しんでいましたが、私はあまり影響しないような気がしました。まあ、ケーシックやブッシュと票を取り合うことが心配ですが、これは致し方ないところ。
ブルームバーグは昨日FTに対して出馬を検討している旨話したそうですね。私は今の時点では彼のことを気にする必要はないと思います。
あちらの専門家は・・
ニューハンプシャーの結果を・・待っていると予測してますね・・
僕は出ると思いますね。
候補者全員が小物だから・・絶好の機会・・候補者全員が・・背筋がゾーとしてているんじゃ・・・(笑
NHのPREPUBLICAN DEBATEですが、ルビオはイマイチでしたね。自分の言葉で言っていないのが、国民にどう伝わっているのでしょうか。あれで国を率いるPresidencyの資質やPoliticsを語っているのは頼りがいがなくマイナスだと思いました。
もちろん、出馬の可能性はあります。
ただ、まともな候補(ヒラリーと共和党本流)が出てくれば、まず彼に勝機はありません。釈迦に説法でしょうが、そのぐらい独立系候補が勝つのは至難の業です。
だからこそ、彼も(報道ベースですが)サンダースとトランプが出てきた場合、という条件付けをしているのです。
ヒラリー対トランプのシナリオでも出てくる可能性はあるようですが、その場合でも、ヒラリーの票を食うという波乱要因になるだけでしょう。
たしかにルビオは精彩を欠いていました。これまでのディベートでは良かったのですが、センターステージに立って(特にクリス・クリスティの攻撃は強烈でした)、経験不足が出てしまったのでしょう。
それでもここまで悪く言われるのはそれだけ注目される存在になったからであって、有名税でもあります。批判されるのも、キャリア不足とか、憶えてきたことをそのまま繰り返すだけ、というそれほど致命傷とも思えないもので(他の候補者は過去のディベートでもっと酷い失態を演じています)、私がひいき目過ぎるのかもしれませんが、ちょっと酷かなと思います。
まあすべてはニューハンプシャーの人がどう見るかですね・・
日々の筋肉トレーニングも・・
インフルエンザには・・敵わなかったか・・
お大事に・・
それとも・・
予備選の決着が付くまで・・自宅待機してますか・・・(笑
不老不死の霊薬・・
飲んでみる・?・・・₍笑
サンダースさんの演説等、Youtubuで見ました。
違う政党なので比較対象としておかしいですが、頼れる家父長としての圧倒的な父性、昔からずっと自分の頭で考え行動してきた老教授のような知性といった、ジェフ・ブッシュさんには無い資質を見事に持ってるなあっていうのが感想です。
政治的名門として、全てを受け継いできてるブッシュさんは恵まれてるけど、親や兄の世界の受け売りになってしまってるんでしょうね。
ヒラリーさんは大統領になってからの政策ビジョンも実現プロセスのプランももう出来上がってしまってるのだと思います。面白味はないかもしれませんが、安定した政権運営になると思います。
サンダースさんはビジョンは素晴らしいのですが、財源の裏付けは不透明で、その思想は、議会において強力な野党だけじゃなく、与党内でもアウトサイダーなんでしょう。
最悪の場合、日本の民主党政権の理想主義のビジョンマウンテンさんみたいに、レームダックになる心配すらありそうです。
政治における理想主義はものすごく魅力的ですが、ドイツにおけるメルケル首相はいま苦しんでいますし、現実のしっかりした裏付けがなければ本当に厳しいものなんだと思います。
だけど、アメリカで国公立大学授業料の無料化を実施してどうなるかは本当に見てみたいです。そして、できることなら日本政府にもやってもらいたいものです。
お金のない家庭の辛さは、世襲や進学校エリートできた政治家のみなさんには体感的にわからないものだと思います。夫婦までなら共働きなどして耐えることもできますが、子どもを育てる段階で苦しさは加速します。
お医者さんの世界ですら、小児科の診療報酬は安く設定されています。
若い親は収入が少なく、それでいてお医者さんにかかる頻度が多いからです。
学校教育だけ、高いまま安定してるというのは絶対に根本的にどこか間違っています。ましてや大学授業料値上げなんて、文部省の人にもサンダース上院議員の演説聞いてもらいたいです。
ニューハンプシャーでは・・
民主・共和党共々・・アウトサイダーが勝利を占めた・・
民主的革命の始まり・・と看做されている・・
トランプの勝利・・
予想に反し・・年齢並びに各層から・・平均的に支持を集めた・・
高卒者・労働者層が支持者との・・あちらの分析は粉砕された・・
ケーシック・・予想外の二位(一%支持率・泡沫候補だった)・・ブッシュも浮上して来た・・ルビオ寸止めになった・・アイオワの勝者は辛うじて踏みとどまった・・
サンダースの勝利・・
クリントンの個人攻撃も・・跳ね返した・・
資金も支持者も更に集まり・・サンダースフィバァーが・・全国的に広がる兆しが・・濃厚になった・・
ヒラリー陣営は・・作戦の練り直しを始めたとか・・
最後まで・・戦闘は続く気配が生じている・・
ますます・・ブルムバーグ出馬の可能性高まった・・
オバマの功績・・
黒人が大統領になれるなら・・
ユダヤ人が・・女性が・・不動産屋の博打打が・・第三政党出が・・
大統領になっても・・少しもおかしくない・・
そんな風潮を産み出した・・・(笑