2015/11/02 00:00 | 米国 | コメント(4)
米国大統領選:第3回共和党テレビ討論会
■【米大統領選2016】共和党討論会 候補者らが批判合戦(10月29日付BBC記事)
ついにドナルド・トランプが失速してきました。メッキが剥がれるのは思ったより早かったようです。彼の性格からして、いきなりやる気をなくして撤退、ということもあり得ると思います。
ちなみに今回の討論会では、マルコ・ルビオをマーク・ザッカーバーグの使用人と呼んでいるのはどういうことかと質問され、そんな発言がどこに出ているのかと切り返したところ、トランプ自身のウェブサイトに記載があったという呆れた一幕がありました。
トランプに代わり世論調査の首位に立ったベン・カーソンですが、最終的に候補者になることはあり得ないでしょう。ここまでは目立ったミスがありませんが、それは発言が少ないためであり、注目度が上がるにつれ、厳しい突っ込みを受けることになりますから(今回の討論会でも、旧約聖書のレビ記に記載のある「10分の1税」の導入という怪しい政策を突っ込まれていました)、本当の試練はこれからです。
3 回にわたる討論会で評価を上げているのはルビオ。おそらく最も有力な候補者となることは以前にも述べました。たたき上げ (self-made man)というバックグラウンドはカーソンにも引けを取らない強みですし、44歳という若さは68歳のヒラリー・クリントンに対してアピールできる強力な武器ですから、「勝てる候補」としても十分に認められます。
ちょうど45歳のポール・ライアンがジョン・ベイナーに代わる下院議長になったこともあり、共和党としてはこの2人を新しい党の顔として世代交代(generational shift)を強く印象づけられるでしょう。
特にルビオとライアンはいわゆる「政策オタク」(wonk)な面が共通しており、伝統的な「政治屋」とはかけ離れたイメージである点も清新です。歴代共和党指導部の中でも最も反知性主義の対極にあるペアといえます。
一方で、評価を下げ続けているのは当初本命だったはずのジェブ・ブッシュ。頼みの綱の豊富な資金も最近は勢いを失い、さらに兄ダブヤに応援を頼むという、これまでの方針を一転させる迷走ぶり。今回の討論会では、唐突にルビオを攻撃して、ルビオに「自分を批判することが状況を優位にする上で有効だと誰かに教わったのだろう」と切り返され、やりこまれました。
ルビオは勢いのみならず安定感抜群ということもあり、このまま着実に支持を広げればそのままゴールしそうな雰囲気を感じます。対抗馬となるのは保守派(特にティー・パーティー)の支持を受けるテッド・クルーズ。ちなみに彼も44歳。
それと、少し前の話になってしまいますが、ヒラリー・クリントンのベンガジ事件の下院公聴会。
■クリントン氏、ベンガジ事件やメール問題の追及かわす 下院公聴会(10月23日付CNN記事)
ここはさすが百戦錬磨のヒラリー、得意の度胸と弁舌で11時間にも及ぶ攻撃に耐え抜きました。この事件に執拗なこだわりを見せる共和党が逆に大きくイメージを下げた格好です。もはやこの問題をこれ以上拡大することは難しいでしょう。とりあえず大きな難関を乗り越えることに成功したというところです。
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4 comments on “米国大統領選:第3回共和党テレビ討論会”
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まだ混沌・・トランプの野心がどれ程大きいか・・誰にもわからない。今回は大人しくしてましたね。様子を見ていた。それが良かったとの評価もある。彼はノーガードで打ち合うのが・・得意。
レーガンが出てきた時も・・俳優上りに何が出来るか・・という酷評もあった。
今回は司会者側との乱闘がメインイベントになってしまった。
ただ・・ブッシュをカウンターしたルビオ・・ショートアッパー連打が光る。
ただそれだけでは・・(笑
ヒラリー聴聞会・・本番は本選挙が始まってからでしょう。
共和党は彼女のメールを握っているが・・総てを出していない。
聴聞会でも・・ヒラリーの友人が・・外交等の素人にも関わらず・・私的立場で・・国策等に介入していた・・これが明確になった。
まだ・・この点等・・逃げ切ったとは言い難い・・キリンも老いては・・の言葉もある。
どうなるでしょうかねぇ・・・(笑
よく知らないのですが、彼はティーパーティーにも相当近く、富裕層への課税をなくそうなどというイメージもあり、レーガンが米国の古き良き反知性主義を体現してしているとすると、未だに新自由主義の推進者で、なおかつモンロー主義も懸念される今の共和党の劣化を示す代表に見えます。多分偏見かも知れないのでライアン氏について教えて欲しいのですが、それにしても日本人は共和党びいきだったと思うのですが、なにかまともな党に見えなくなってしまった深層を診断してもらえればありがたいです。
ポール・ライアンは、ティーパーティーの支持を受けてはいますが、元々はジャック・ケンプ、ジーン・カークパトリック、ジム・ベネットといったサプライサイド経済論者・保守派知識人が設立した「エンパワー・アメリカ」出身のシンクタンカーであり、極めて理知的な人です。
今回の下院議長を受ける際も、フリーダム・コーカス(保守強硬派)全員の支持がなければ受けないと述べましたが、これは、保守強硬派の中にはライアンを嫌う人がいることを示しており、ティーパーティーとも一線を画しています。最近では弱者支援も重視しており、緊縮財政一辺倒ではないあたり、ジャック・ケンプの継承者の雰囲気を強めています。
レーガン時代を想起させる面があるのはそのとおりですが、どちらかといえばジャック・ケンプのように理論面を支えている役割がイメージされます。
仮に共和党(望ましくはルビオ)が大統領選で勝利すれば、下院議長として大きな政治資産を築き、有力な大統領候補となるでしょう。民主党が勝利すれば、下院議長であることはベイナーのように苦行の道になるおそれがあるので、早々に辞任するかもしれません。いずれにしても今回の下院議長就任の経緯をみても分かるとおり、戦略的に行動するタイプです。
ご指摘のとおり共和党はすっかりまともな人が少なくなってしまいましたが、おそらくライアンは数少ないまともな人で、しかも大統領にかなり近い位置にある実力者という点で、要注目の人物です。これから、折を見て記事でも取り上げていきたいと思います。
解説ありがとうございます。リーマンショックの後の共和党は多難ですが、議会はでは多数派ですからね。しかも下院議長の大統領承継順位は上院より上なんですね。もう淘汰されたのかもしれないネオコンと保守強硬派の区別もよくわかりませんのでそのうち教えてください。