2005/09/27 09:34 | 社会 | コメント(17)
世界を牽引する日本経済
せっかく慶応義塾大学病院を昨日ほめたら、しっかり学生がマリファナ(大麻)所持で逮捕。こちらを見て頂いてる方にもOBが多数おられる経済学部の学生も一緒・・・なんとも情け無い話であります。
新聞によると二人は小学校から親友だった、と書いてあるので、確かめてませんが幼稚舎出身なんでしょう。まあ、ここから来る人はいろいろ問題のある人は昔から多かったのですが、如何せん福沢先生の同級生の孫、なんてのがごろごろしてまして、そういう方は妙な問題をおこしても、簡単にもみ消せた時代です。その意味で時代が変わってきた(もみ消しづらくなってきた)という、妙な感心の仕方をしているのは私だけでしょうかね。いずれにせよ、しまらんことになってしまい、申し訳ありません・・・
さて、バブル時代を彷彿させるような見出しでありますが、半分本気です。マクロにおいては今朝、かんべえ先生がご指摘されているIMFの数字がポイントです。さすがですな。
溜池通信 http://tameike.net/comments.htm#new
ぐっちーの現場感覚からも同じような結論になります。
株式の時価総額が2003年のほぼ倍になっていることによる資産効果については先日申し上げました。
昨日の東証は結果的にインデックスで233円も上がっていますが、ここでも書いたとおり銘柄は完全に一回転しており、中身が入れ替わりつつあります。特に中国特需で湧いた建設機械や日本の薬籠中の秘といわれる工作機械に一度利食いの売りがでて、普通だとこれでマイナスで終わるのですが、そのマネーが更に内需関連の建設(既に一頃買われ続けた)、出遅れ気味の金融(信託銀行や地銀)、出遅れ気味の重厚長大産業(三井造船、積水化学など)にシフトされてきています。この傾向は今日も続くでしょう。で、結果的にインデックスがプラスになってしまうのですから恐れ入ります。
そして驚いた事に建設機械の売りはそのままアメリカでも続いたのです。キャタピラーは確かにダウングレードはされましたが、ほぼ織り込み済みのもので、日本の建設機械売りがそのまま引き継がれただけなんですね。ついに株式市場も日本を見て動き始めたぞ、という点を私は重視します。まるでバブルの頃のようでありますな。出来高も既に更新している訳ですからあまり不思議ではないかもしれませんがね。
さて、引き続き旺盛なアメリカ人の買いを受けている訳ですが、小泉政権の衆議院安定多数による日本における改革の進展、という面ももちろん重視されていますが、実態はずばり「中国効果」と申し上げて良いでしょう。特に輸出関連はもう、ノーエクスキューズでこれが最大のファクターです。そうなると、中国経済はさすがにバブルなので日本も危ないぞ、という論調が特に経済学者や、エコノミストの方々からは聞こえるのですが、答えはノー。なぜか・・・簡単です。中国経済はバブルじゃないからです。
バブルというのはかんべえ先生の定義にもありますように、なぜか、一つのもの(例えばチューリップの球根)に国民の全てが全財産をぶち込むような行為の事をバブルというのです。そういえばグリーンスパンは昨日の講演会ではアメリカ住宅市場をバブルとは呼んでません。フロス(あわ)と呼んだのです。このあたりのニュアンスの使い分けは見事ですね。
そしてこの定義で行くと中国の何処にもバブルなんてない。
人口の10%にも満たない人々が車を買ったり、不動産を買ったり、日本に買い物に来たりしてしているわけです。確かに年収一億円以上の人口は日本より多い。その購買力は他を圧倒しているとは言え、片方で年収100万円もないような人々が何億人もいる。・・・これが社会問題を発生させる原因というならアグリーです。でもだからバブルじゃー、ないんです。8億人の中産所得者が生まれてみんなでマンションを買い始めたらバブルですね。しかし、それには程遠く、一部金持ちの極めて正常な消費行動と定義するべきでしょう。
このようにバブルへの道筋は国民大多数が豊かになっていくところから始まります。16世紀のオランダも日本もこのパターンでした。実はトヨタの中国進出の仕方を見ているとこれがよーく理解できます。
トヨタは90年代半ばまで中国進出には大変消極的な一社に数えられていました。VWがいち早く進出したのですが、売っているのは10年も遅れたモデルのラビットで、そこにカローラを持っていったところでたいして儲からん、いづれ所得が増えて、日本の高度成長のように、次はコロナ、マーク2、そしていつかはクラウンとなるので、まあ、せいぜいマーク2を買える位になってから進出すればいいや、というのがトヨタの戦略でした。
ところが何が起きたか・・・あわてて中国に進出して、一番組みたくない第一汽車と合弁会社を作る羽目になった。
中国における圧倒的金持ち層の出現が予想を覆し、カローラはおろかマーク2を素っ飛ばして突然クラウンが欲しい、と言い出した訳です。ご存知の通り合弁会社の天津第一汽車の第1号現地生産者はなんとクラウン、であります。当時奥田さんが「20年分吹っ飛ばした」とおっしゃったというような有名な逸話も残ってます。
頂点から消費携帯が形成されていく、「シャワー的資本主義」を展開して来る訳ですから従来の枠組みでは語れないでしょう。高級品から売れているということがある限り、こんなものバブルになりようがないのです。シャワーがずーと下に落ちてきてしずくがかなりたまるまで・・・まだまだ相当時間が掛かるはずです。新日鉄やJFEの自動車用薄板が中国で圧倒的なシェアーをとっているのはこういう高級車に対応するようなきめ細かい圧延技術などの分野で日本の技術が他を圧倒しているからに過ぎません。ここまで来るのに20年くらいかかる、と思って悲嘆にくれていたら2年で来てしまった、というのが鉄鋼各社の本音でしょう。ついでに原油まで上がってしみあい、シームレスパイプではほぼ100%のシェアーを持っている訳ですから笑いがとまらん、とはこの事です。ですからアメリカ人の金もここに向かってくる、という訳です。
前に資生堂の福原会長(関係ないですけどこのお名前で中国では大変得をされるそうです。そう、福、の字が好まれるんですね!)とお話する機会がありましたが、もう日本と同じラインアップで最新のものを持っていかないと中国ではマッタク売れない、とおっしゃってました。
そういえば私が高校の頃ありましたねー、初めて使う男性化粧品はバイタリス(これはたしかライオン)、で大学に入るとMG5かなんか使って社会人になるとブラバスってなコースがありましたな、といったら大笑いをされ、そうそう、まあ、ブラバスから入っちゃうイメージね、とおっしゃってました。(このフレーズがわかる方は立派な中年ですな!)
ということで中国はバブルではなく、国内も構造改革による経済活性化が成長を押し上げる、ということになれば鬼に金棒、でございます。
実は逆に危ない橋、というのもいくつかあるのですが、これはまた機会を改めて・・・
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17 comments on “世界を牽引する日本経済”
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ぐっちーさんとはそんなに年齢が違わないはずですが、バイタリスやMG5っていうのは、ちと古過ぎるような(笑)。我々の世代は最初からブラバスだったと記憶してます。その後に、アウスレーズやタクティクスかな。
中国の場合、消費ではなくむしろ設備投資が問題だと思います。
各地方が一斉に炭坑や工場の生産増強に走っているので、いずれはそこら中で在庫の山を抱えて、一気に不景気になりそうな気がします。まあそれはそれで真っ当な景気循環なのですが、今の中国で景気が落ち込むとどうなるんでしょうね?
マクロ的観点ではBaatarismさんのおっしゃる通りだと思います。足元、機械などの在庫が積み上がり、日本からの輸出が減速した主因でしょう。もちろん、中国政府の投資抑制策が効いた部分もありますが。一方、政治的な観点からは、ぐっちーさんご指摘のように貧富の格差は大きな問題です。もう、対日デモといった「ガス抜き」も通用しないでしょうから。
>システム5.1さん
確かに貧富の格差は非常に大きな問題ですね。あと、都市住民と農村住民の間には単なる貧富だけではなく、戸籍制度による権利の格差もあります。このような格差による農村部の不満は、中国の抱える爆弾だと思います。
今年に入ってから各地で農民暴動が起きていますが、不況になるとさらに暴動が増えるんじゃないかという気がします。
>Baatarismさん
>このような格差による農村部の不満は、中国の抱える爆弾だと思います。
これ不思議な事に、当の中国人エリートの多くはそんなに心配はしていないですね。
「そんなの潰せばよい」で話が終わってしまいます。
それも無理からぬ話で、日本と違い歴史的に農村経営が時の権力者にとって課題となった事は無いと言って良いのでは?
心配しているのは日本人だけ、という現実(笑
>ペパロニさん
ペパロニさんの話を読んで、以前やじゅんさんや雪斎さんのところで、梅棹理論における第一地域で生まれた近代思想は、第二地域でも通用する普遍的なものなのか、それとも第一地域でしか通用しない特殊なものなのかという疑問を書いたことを思いましました。
「そんなの潰せばよい」で中国社会がうまく行ってしまうのであれば、結局中国人は近代思想を理解していないことになり、中国については上の問いは後者が正解になると思います。
近代思想の普遍性を信じる人間としてはそうはなって欲しくないのですが、まあ願望で世界が動くわけでもないですからねえ。
ペパロニさん、Baatarismさん、どちらの答えも正解だと思います。今後、どっちへ進むかで世界での中国のポジションが大きく変わってくるんでしょうねえ。
世界を牽引する、というほどのことはないけれども、「日本以外は全部買えない」というのが今の世界経済ではないのかと。
それから都市部の中国人は、農村人口は中国人じゃないと思っているのだ、という説もあるようです。あの国には「国民」という概念がないらしいですよ。
システム5.1さま
Baatarismさま
ペパロニさま
いや、有難う御座います。3人のやり取りは永久保存版ですな。凄くレベルの高いブログに見えます。もう何も申し上げることはございません。有難う御座います。今後ともがんがん発言をよろしくお願い致します。
かんべえ先生
ひじょーに正しいですね。日本以外は買えなくなってきた・・・というのは正にマーケット心理を捉えてます。昨今のオイルマネーの入り方を見ていると、本当にそういう感じが致します。
またよろしくお願い申し上げます。
>かんべえさん
なるほどねえ。民主主義だけじゃなくて国民意識もないとは。だとしたら、今言われている中国の「ナショナリズム」なるものの本質も、欧米や日本で言うところのナショナリズムとは違っているのでしょうね。
日本や韓国、ベトナムでは、中国から輸入された中華思想が自国中心思想に変化し、さらにナショナリズムに発展していったという説がありますが、中国の場合は生の中華思想がナショナリズムの代用品になってるだけなのかもしれませんね。
>ぐっちーさん
中国ネタは好きなので、ついついいろいろ書いてしまいました。w
幸い喜んでいただけたようで、こちらもうれしいです。
反日デモ報道での二枚舌や、その後のネット規制方策を見ていると「表現の自由」や「世論誘導は悪いことである」という当たり前が中国政府には通用しないことを知りました。
「管理して何が悪い」という意識に近いという話も聞きます。
バッファロー66大尉さま
いつも有難う御座います。
そういう状況は確かですね。ただ、最近は現政権も磐石というよりは、結構「いっぱい、いっぱい」だったりするように感じています。近々上海に仕事で行くのでそのあたりも体感してこようかと思っているのですが・・・
私の中国政府に関する情報は「雑誌・選択」「溜池通信」「Ycaster-DayByDay」の受け売りでしかないので、ぐっちーさんが生身で体験してこられる「皮膚感覚」のようなものを是非拝読したいと存じます。
楽しみに待っておりますよ。
私も、基本的に受ける印象は、中国政府は余裕がない、必死だなという感じです。
Baatarismさんとかんべえさんのご指摘の通り、中国の内部は本当に複雑な状況にありますよね。
あれだけ巨大な、様々な民族とマインドを抱えこんだ国家が、自由や民主主義を保障せずにこれだけ長く存続すると、経済格差にせよ国民意識にせよ政策のレベルにせよ、相当の矛盾というか、負の資産を蓄積しているのは、ある意味当然な気がします。
中国の前近代性を嫌悪して、「西欧のように近代化を実現しないといけない」と主張した人は、魯迅の時代からいたわけで、今でも開明的な人は沢山いるはずですし、一概に中国人がどうとか言うのは難しい気がします。ただ、それは限られた知識人でしょうし、何より現体制(共産党独裁)が維持される限りでは、ブレークスルーを起こすのはなかなか困難なんでしょう(少なくとも緩やかにそういう方向に向かっていると思いたいところですが)。
いずれにしても、日本としては、こうした複雑な状況を踏まえた上で、中国の一体何が本当のところ脅威なのか、それをきちんと認識した上でとるべき行動を決めるべきだろうとは思います。
バッファロー66大尉さん
ご期待にそれるようにがんばります。
やじゅんさん
いらっしゃいませ(笑)。さすがですね。言いたい事を上手くまとめて頂きました。100%アグリーですね。
かなり久しぶりにVisitしてみたら・・・。僭越ながら、ぐっちーさんご指摘のとおり、すごいやりとりですね。メンバーの方々にしてみれば当たり前なのかもしれませんが、すごい!!言葉の端々からにじみ出てくる「味」というかニュアンスというか。これは凡人では絶対無理。そう簡単には出せない絶妙な味ですよ?。味わい深い。読んでいる皆さまがどこまで分かるかな????というのも楽しみ。。。
溜池通信でかんべえさんが述べられてましたが、佐藤優氏が近著『国家の自縛』で中国に民族ができていると指摘しているというのは、興味深い話ですね。
まだこの本は読んでないので、買って読まないといけないかなあ。
「中国人」としての民族意識が都市と農村の違いや地域感情を超えて広がると、中国も変わっていくのでしょうね。そのときは共産党も変質を余儀なくされるのでしょう。
これを読んで坂本龍馬が「日本人」という言葉を使ったというエピソードを思い出しました。