2007/08/22 14:13 | サブプライム | コメント(9)
藤川が何回持つのか・・・・
出張続きで失礼しました。マーケットが落ち着いているすきに・・・という訳でいろいろ用事を片付けて参りました。
マーケットは落ち着きましたね、というメールを頂きますが、そりゃそうですって。藤川が投げているんですから。これで落ち着かなかったらもう切り札はない。今のうちに打線を組み替えておいて一気に逆転してしまわないと、頼みの藤川もそうそう長くはもちません・・・・
今回の無制限一本勝負の資金供給、及び緊急利下げは過去の轍を踏まぬよう、とにかく資金繰りがつまらないようにという処置をとった訳です。ブラックマンデー、LTCMクラッシュの教訓は資金が取れなくなった金融機関が仕方なく、お金になるものを投げる(国債、MBSなど)ので余計な所まで大混乱になるということで、今回はこれは回避されている。
いざとなれば金はすぐ取れるぞ、ということで余計なものを投げずに済んでいる訳ですね。しかし本質的な信用収縮問題、クレジットクランチ(お互いのクレジット内容がきちんと把握しきれてない)という状況は何一つ変わっていないということもまた事実です。
これまでの動きを整理すると・・・・
まず、第1段階では。 住宅市場がピークアウトして、リファイナンスを繰り返しその借り換えメリットを享受していた住宅ローンの返済率が低下、そこに留まらず、一番弱いサブプライム住宅ローンから潰れていった・・・
これがCDOに大量に組み込まれていたために、多くのCDOエクイティーが無価値になり、特に2005年から買いあがり続けたローンポートフォリオにおいて、対数の法則という名目で(分散させていても債券のベクトルは一方向にしか動かないというという基本中の基本を忘れた投資かも悪いけどね)そのシニア債券が(AAとかの格付けがついていた、と言い訳をしている)事実上価格算出が不可能な状態まで毀損された・・・というCDOにまつわる問題がひとつ。
これはレバレッジがかかっているので、サブプライムはGDPの3%しかないから大丈夫といっていたエコノミストたちが見逃す原因となった商品でもあります。そしてこの問題・・・・
つまり自分の持っている債券が実際はいくらなのか、という価値算定は恐らく1?2ヶ月はわからない。さらに重要なのは、社債と違ってCDOという仕組み上の債券を買っているためにとんだエクイティーが復活することが無いため、価格が戻る可能性はゼロ、という点ですね。
第二段階・・・・
これが見逃されているケースが多いのですが実はこちらが本家本元。住宅ローンの返済率の下落はクレジットの高いMBSをも直撃します。但し、こちらはクレジットの問題ではなく返済率の低下によるデューレーションの長期化がMBSマーケットのクラッシュを生んだ。ベアスターンズのモーゲージファンドが潰れたのはこのせいです。
これはクレジットとしては高いので様々な担保に供されているために主にレポ市場での追証問題が資金繰りを圧迫させたということになります。信用度の低いサブプライムが担保に取られない、というよりデューレーションの上昇による価格低下が引き起こした追証問題を忘れてはなりません。(今日の日経金融一面はめずらしく、きちんと書いているがこの話にも言及しないとカントリーワイドのリスク説明としては不十分)
こちらはもともと信用度は高いので、ゆくゆくは、ローンの返済率があがってくればもちろん解消される問題ではありますが、現状返済率はますます低下しており、手元のMBSのデューレーションが長期化している訳で、少しでも金利が上がるなら、とんでもない損失をする可能性を抱えている・・・
ということで緊急利下げになる訳ですね。
そして第3段階。
多くのHFが上記の理由で毀損しているので解約が殺到していますが、実際の支払いは来月。その資金が入金されるかどうか、今の段階ではだれもわからないため、相当数のHFが破綻すると見られ、その規模はLTCMを超えるでしょうという、これはこれからの話。
更に、第4段階として。
これは私の懸念ですが・・・・
当然保有しているCDSをHFなどは行使するはずですが、このときに、オプションを保有している相手が倒産していると、元来プロテクトしている筈の自分の債券も同時の破綻するので、恐らくトリガーを引いた方も潰れるのではないか・・・というのが私の予測。 CDSによるプロテクションの喪失の可能性がその他の、全くサブプライムと無縁の企業のクレジットリスクを誘発させること・・・・が最終章か、と想像しています。
そしてそして欄外のリスクとして・・・
まだ日本では騒がれていないのですが、ここで指摘問題が遂におきた。
みんなで沈静化を図って、世界中の中央銀行が資金を供給している最中、約一名、俺は関係ないとばかりに利上げをした国がある・・・・それが世界最大の外貨準備高を持つ国という怖さ・・・・が昨日起きてしまった。
中国は金融市場としての規模が小さいからこれも影響ない、とエコノミストはテレビでまたしゃべるのだろうが、とんでもない。金融市場というのは信用の連鎖なのですよ。
我々プロからみれば世界最大の外貨準備保有国である中国がG7と足並みがそろわない、何をするかわからんぞ・・・・という恐怖感こそ恐怖。もっというと、これを事前に阻止できなかったバーナンキ、特に中国には圧倒的な人脈があるはずのポールソンが事の重大性に気づいておらず、何の根回しもしなかったのではないか??という恐怖まで喚起させてしまった。
昨日、アメリカの大多数の有力ファンドマネージャーはこのニュースには実際震え上がった。まさか、ほんとに利上げするの?? 中国ですらコントロールできないの?? ましてロシア、アラブときたらどうなるんだろう・・・・である。
中国の利上げの必然性は誰もが認めているし4回目だから目新しいものではない、というのであればあほも休み休み言いなさい、ということ。
ここでやるというのは、ノルウェー中銀が利上げするのとは訳が違うのだ。曲がりなりにも世界一の外貨準備高(しかも殆どドル)を持つ国のビヘイビアーであるから第3段階まで事が進んだときにはだれも止められないのではないか・・・・・と真剣に心配している訳ですね。誰も書かないけど・・・
繰り返しますが金融市場は信用の連鎖の上になりたっています。グリーンスパンという稀有な才能があったからこそ、最後は何とかできるだろうという信頼感が醸造されてたためにこれまでは「くもの糸」が切れなかったのです。このあたりはよく考えて頂いた方がよろしいかと存じます。同じ日経金融一面に「中国リスク、世界の火種」とあったのでおー、さすがに日経、分かっている人もいるのね、とびっくりしたら・・・・やっぱりぜんぜん違う話でした・・・・残念!
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9 comments on “藤川が何回持つのか・・・・”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
事の重大性は重々承知なのですが、未だに金利の操作と流動性リスクの抑制、クレジットものの価格暴落阻止との関係が明確ではありません。ムードを醸成する上でのアナウンスメント効果を日銀は狙うべきだとういうことでしょうか。
例えばわが国における90年代後半の金融危機の時のように、ピンポイントで元凶となっている商品を買い上げる仕組みを作ってしまった方がよほど効果的だと思います。問題となっている価格算定も含めて、専門の買取機構を作ってしまうのも一案でしょう。
FRBや日銀は「金融政策だけで景気対策は不可能だ」旨コメントをします。「安定雇用」「インフレ撃退」を目的とする金融政策運営とあまり混同しすぎることを彼らは嫌います。そう考えるとFRBはともかく日銀の利下げへのバイアスはかかりづらいと思います。
経済のグローバル化で、どこもタイヘンなことに・・・
そんな中で中国は、比較的被害が少ないような気がします。
特に上海市場なんか 関係ないよ?とばかりですね。
中国人の為の中国人による独立独歩の上海市場。。。だから中国政府も強気なんでしょうか・・・
うらやましいといえばうらやましい・・・
昨日といえば、中国個人投資家の香港株投資の試験導入の発表も驚きました。
この世界経済混乱のさなかに・・・
クレジットクランチよりも、自国のインフレ対策の方に目が向いちゃってるんでしょうか
よくわかりませんが・・・
どの様な毒が体に回り、死につつあるのか、
分かりましたが、その解毒薬の処方箋が添付されてませんぞ。箱船を造る時間はまだあるのでしょうか?
これが始まる前に、ローチさんの予言を聞いておくべきだった。手遅れか・・・
最大のドル保有国が中国、2番目がジャパン、ワンツーといけば、世界は滅びるのでしょうか?
そもそも、これら曲芸数学で嵌めた連中は、その終わりも予測出来ていたはずだから、下手人は高笑いしているか・・・終演すれば一段と強くなったアメリカを仰ぎ見ることになるか・・・
担がれ、稼がれたとニヒルに笑いましょう。ぐっちーさん、そまの笑いがよく似合うぜ・・・ほんと?
中国のリスクは多方面からありますね。中国製品の輸出減少の話と、中国株式市場の高値です。中国株についてはどこが評価を下げる口火を切るのでしょうか?もっと中国以前に、9月10月の危機がありますね。
今更何をやっても、
潰れるもんは、潰れる。
敗戦の責任をとって貰うべき人にはとって貰う。
それにしても、あれだけ何回も中国に行っていた
ポールソンは、何をしていたのか?
最終的に、ベンは、
ドルをばら撒いて、インフレにするのではないか?
そんなこと言ってもうちはもう株価高値
更新だしー豚肉が高くなってるしー
サブプライムとかお前らの銀行が馬鹿なんだろ
つーか黒石につぎ込んだ金いきなり赤字じゃねーか
返せアメ公目とか思ってるんでしょうかね。
はじめまして、
3ヶ月前位から読ませていただいております。
最近のマーケットの動きとこちらの記事で
怖くて怖くて昨晩は眠れないほど具合が悪くなって
しまい、とうとう朝方、泣く泣く「売り注文」。
丸の内OL時代に溜め込んだ全財産(日本株TOPIX投信)の全解約をしました。
これで胃痛、不眠からはおさらばです!
グッチーさんの有料情報は
資産額いくら持ってる方を対象にされているんでしょうか?
文中に『対数の法則』とありますが、これは『大数の法則』のタイプミスでしょうか?それとも債権の世界での専門用語にそうゆうものがあるのでしょうか?
ウィキペディアを見ると『重複対数の法則』というものと『大数の法則』があり、ぐっちー氏がどちらを述べられているのかわかりません。