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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2005/11/22 14:37  | 社会 |  コメント(12)

瀬川さんとホリエモン


改めて将棋の瀬川さんのプロ棋士昇格にはいろいろ考えさせえられる事がある。もちろん本人の努力のすさまじさは当然だ。よくも忙しいサラリーマン生活をしながら、プロ棋士を相手に勝率7割なんて成績を残したものだ。また、嘆願書が出されたタイミングが丁度良かったという事も否定はしない。
しかし、この問題には我々の社会の参考になる様々なヒントが含まれていると言える。


瀬川さんは35歳、独身、ホリエモンが33歳だから実は同世代といっていい。しかし、片や年寄りに疎まれ、かたや世の中的にもよっくやったといわれる訳だから、その差は一体なんだろう。


翻ってみるとホリエモンは何も悪い事をしていない。しぶとく自分で這い上がってきて、開かないドアをこじ開け、法律違反もしていないのに年寄り連中からルール違反呼ばわりされた。抜いても抜いても生えてくる雑草のような根性で古い経営体質の会社に対し挑戦状をたたきつけたといえ、それだけ金融界は自由だった、とも言えるが、ともかくも力さえ足れば、金さえあればと、彼は歯を食いしばってのし上がってきたのだ。


しかし、瀬川さんの将棋会にはいくら強くても絶対にのし上がれない壁があった。奨励会の25歳という年齢制限はいくら瀬川さんが強くても、もうどうしようもないルール、それも将棋会独自のルールだ。いくら逆立ちしてもどうしようもない、独特の閉鎖社会固有なルールを変更するのは通常困難を極める。まして、伝統のあるこの将棋会である。私には殆ど不可能に思えた話だった。


しかしそれを押し切ったのが62歳になられた米長将棋連盟会長の存在だ。
米長さんとて、これには相当のご苦労があったと思う。内部でもここで例外を作ってはこれまでの人はどうなるのか・・・などと、相応の反発があったやに聞く。しかし、ここで先例にとらわれていては未来はないとご判断され、英断を下した。


瀬川さんは努力を繰り返し、500万の収入が200万になっても挑戦したいという嘆願をし、これを過去の例にとらわれずにとりあげた・・・・
ホリエモンにぶつぶつ言ってる暇があるのなら、今残された年寄りの役割とは実はこれではないのか?? 


世の中、大学を出て、一度でもサラリーマンになってしまえばそうそう他の事はできない。仮に40を過ぎて、私の会社に金融業務の経験はないが、営業などで素晴らしい成績を上げていて、金融を独学で勉強し、給料が半分でも良いからチャンスが欲しい、という人が来た時にチャンスを与えてあげられるかどうか?
そういう人が都市銀行の扉を叩いたからといって彼等は雇ってあげらるのかどうか。
少し飛躍するが、不足しているといわれる小児科のドクターだって、例えば子育ての終わった主婦に特別枠で医師検定試験を儲け、一定の試験を3年ごとにクリアーするという条件で特別資格で医師として働けないのか・・・などなど、米長先生のように前例にとらわれなければ、年寄り達によって若い人々に道を開いてあげる事は実はいくらでも可能なのではないか、という気がするのだ。


年寄りがいつまでも成功体験をもとに既得権益にしがみついていてはまさに、ホリエモンのようなブルドーザー的パワーのあるもののみがのし上がって来て、それこそ森元首相などがおっしゃるように「野の中のためにならない」のではないか。その一方で今回のような、長老こそが下せる英断というものが世の中のあちこちの分野にあるのではないか、改めて感じた次第である。


今をときめく宮里藍選手も、デビュー当時、あのへそだしルックはけしからん、とベテランの方々からかなり非難を浴びたと聞く。それが


「可愛いくていいじゃない?」


という樋口会長の一言で誰も文句が言えなくなったという話も聞いた。樋口会長を長老呼ばわりするにはいささか抵抗はあるが、これがなかったら女子プロゴルフ界などはいまだに田舎のあかぬけないおねーちゃん達の運動会の延長線上で(失礼!!)、これだけの人気にはならなかっただろう。


日本は特に長老社会という面が伝統的にある。これを逆手にとって、ここは年寄りが最後の一仕事で、次の世代の頭に痞えた大石を取り除いて頂く時がが来ているのではないだろうか。次の米長邦夫はどこから出てくるのか、楽しみにしてみたい。

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12 comments on “瀬川さんとホリエモン
  1. 脇の愛読者 より
    Unknown

    今日のぐっちーさんのブログ、まったくおっしゃるとおりです。
    残念ながら長老になる前の段階ですでに例外を受け入れられない価値観を植え付けられている人がほとんどです。
    特に制度や人事に携わっている方たちは、その組織の中でも一際保守的なタイプの人間ですから、30代ですでに頑固者のような発想になっていますもの。
    奇抜な発想の持ち主は所詮はアウトロー、長老にはなれないんですよね。

  2. おおみや%バイト君 より
    無題

    田舎に引っ込んだ後、その道のドンになる予定
    ですので(爆、大いに参考にさせていただきます

  3. snowbees より
    ナベツネを追放せよ

    ナベツネは、有害無益だから一切の公職や名誉職から追放して自宅待機にせよ。(前立腺ガンの病人ゆえ)スポーツ紙のバカ記者と寄生虫の根来コミッショナが困るだけ。

  4. より
    あたしは、

    全ての分野において、退職者の嘱託、反対ですね。
     若い人に席を譲り、嘱託がやってる分野は若者の研修期間にに譲るべきです。

  5. RYU@会社員 より
    おっしゃる通り!

    まさに、おっしゃる通りと思います。
    いつまでもしがみついているのが年寄りですもんね。
    定年延長で年寄りの技術を活用しようなんて話もありますが、現場の技能者、技術者だけならまだしも、経営層も同じように役職定年を延長されたら堪りませんね。
    こりゃ、まさに老害だ。

  6. ひー より
    Unknown

    米長先生は昔、「兄貴二人は頭が悪いので東大に行きました、僕は頭がよいから将棋指しになりました。」
    と発言された事があり、なるほどナー、一流の棋士は
    100万人に一人、一方東大は年間3000人入学
    その時から大好きでした。

  7. Alglory より
    おっしゃるとおりです。

    殆どの人間って、本来の資質や適性を知らないままに人生を終えてしまうことが多いと思います。

    20代や30代で気づいたり、明確な目標ができる人はまだ幸福であるのかなと思います。
    40代でも遅くは無いと思いますし・・・・

    ユリウス・カエサルも高祖劉邦も40代で表舞台に発ちましたし。
    畑違い分野で経験なしだけで、その本人の可能性を消してしまうのはどうかなと思います。
    部署換えしたら、爆発的に成長した連中なんていっぱい居るわけですから。

  8. AEGIS より
    賛成

    米長さんの英断はすごいですね。米長さんのように矜持ある方が偉くなれたのは、棋士の世界は、個人の実力だけで勝負していくことが多いから、という面が大きいと思います。やはり勝負師の世界ですから。医療の世界は本来サービスの質で勝負することが世の中のためになるはずだと思いますが、超閉鎖的な世界で目を覆いたくなるような癒着体質が蔓延してるように思えますね。霞ヶ関の役人も一緒になって既得権益を擁護しようとしている。「企業努力の著しい欠如!」「サービス提供・社会貢献意識の欠如!」普通の感覚を持っているならば目を覆いたくなる人が多いだろうと思います。都銀というサービス業界もそうですよね。既得権益にすがっている人は、自分たちが日本経済の停滞や社会の閉塞感の原因で、しかも今後の将来の日本社会の発展にほとんど貢献していないのに、世の中に一応居させてもらっている訳ですから、「居候」の立場をわきまえて、せめて小さくなって首を潜めて黙っていてほしいですね。本当は、矜持のない老人は、社会の害悪なので、すぐに居なくなってほしいです。
    ですから、規制緩和・自由化は、簡単な問題ではないとしても、日本のように経済社会が成熟してくると、方向性としては間違っていないことだと思います。公務員の数なんか、無駄な人間は、どんどん減らせばいい。自由化は進めればいい。問題はSimpleじゃないですが、方向性は正しいと思います。

  9. AEGIS より
    Gradualism

    付言しておくと、方向性としては「自由化」を進め、実行に移す際には”Gradualism”を採用して、バランスをとることが、世の中的には、ごくありふれた「つまらない」やり方だろうと思いますが、私は現実的で大切だと考えます。
    Best PracticeとしてGradualism的なApproachが、大切で有効だと思えます。
    米長さんも、「余裕」とか「遊び」を意図的に作っておくことが大切だ、といった発言をされていたという記憶がありますが、これをぐっちーさんの御指摘のコンテクストに当てはめて考えれば、「柔軟性」を保つ、ということが重要、ということかと思います。
    「理念」「理屈」だけで堅苦しく判断しないで、色々な事情を考えながら柔軟に対応することが重要だ、ということでしょうか。
    ここまで書いてきて思ったのですが、「柔軟に対応する」ということと、「Gradualismを採用し、Case-by-Caseで、ある程度は無駄に思えることも敢えて容認する」ということの違いは、紙一重ですね(笑)。
    考えれば考えるほど、世の中やっぱり複雑で難しいですね・・・。
    老若男女を問わず、世の中には矜持を持っている人は大勢居るでしょうし、「老人=既得権益に安住している人」という構図も、単純すぎる気がします。
    ぐっちーさん御指摘の「医療」と「金融」の両業界を同等のように扱うことにも、やはり抵抗があります。金融の方が遥かに自由化の競争に晒されてきて、「企業努力」が進んでいるように思えます。「社会貢献」という点は私には良く分かりませんが。
    Dogmatism/Radicalismをサポートする気には到底なれません。
    考えれば考えるほど曖昧で平凡なコメントになってきます。
    どうしましょう・・・(笑)?

    とりあえず米長さんの英断には拍手。
    それから、公務員の定員削減には賛成です。Gradualismは必要だと思いますが、それでも無駄な人員が存在することは確かだと思いますから。医療制度改革も必要だと思います。
    「老害」は、やはり、無視できない問題ですよね。世の中の「居候」(なのにうるさい)方たちには、立場をわきまえて、少し静かにするか、早く消え去ってほしいです。社会の発展阻害要因ですから。(「物理的に」消え去ってほしい、ということではありません。もちろん。)
    私もHappy Retirementしたいです(笑)。

  10. てけてけ より
    かなり凹みました。

    > 金融を独学で勉強し、給料が半分でも良
    > いからチャンスが欲しい、という人が来た時に
    > チャンスを与えてあげられるかどうか?

    たとえば、(いわゆる日本的経営の金融業なら
    ともかく)外資系でも、そうなのでしょうか?

    前職で素晴らしい成果を挙げたかはともかく
    まさに、わたしは独学で(ビジネススクールに
    通う、お金が捻出できないものですから)いま
    勉強をしているものですから。

    たしかに
    再就職の役にも立たない、その上
    運用できる資産を保有してもいないのに、資産を
    運用して利益を稼ぐ勉強をして、いったい何に
    なるのだろう? と、我ながら途方に暮れること
    は、しばしばです。

    ものすごく、これ
    つらいエントリでした。

  11. ぐっちー より
    ありがとうございます。

    脇の愛読者さん
    ご愛読感謝申し上げます。そう、ご指摘の通り年齢だけではないですね。30台でもくそおやじ、みたいな人は確かにいますもんね。(笑)今後ともどうぞよろしく・・

    おおみや%バイト君さん
    大いに期待しておりますぞ!!

    snowbeesさん
    個人的な好き嫌いを除けば彼こそプロ野球改革を加速させることができる長老なんですがね?・・・残念です。

    鴎さん
    いろいろな業種があるでしょうが、一般論として私も賛成であります。じゃー、年寄りはどうするって??
    自分で会社を興せばいいんです。どんどん挑戦していけば若者の模範にもなるでしょうよ・・・

    RYU@会社員さん
    ご賛同痛み入りまする。
    どうも経営者はみな去り際が悪いですね、日本の場合。ホント老害になってしまう。考え方ひとつだと思います。

    ひーさん
    なるほど。やはりモノが違うようですな。50過ぎて弱くなってきたときに息子のような年齢の棋士を尋ねて教えを乞うて、ついに名人をもぎ取った、という話も好きですね。羽生とか若手の棋士からもだから尊敬されるんだそうです。これはなかなか出来ない。

    Algloryさん
    その通りです。遅いなんてこたー、全くないですね。そういうチャレンジに門戸を閉ざす事の無いよう、心がけて行きたいと思ってます。

    AEGISさん
    随分本音で語っていただいているようで、ありがとうございます。お立場・・・・からするとかなり思い切った発言のように思いますが(笑)、そういう方が増えてくるといいんですけど、つい高給に誘われて民間に、おっと、これ以上は・・・(爆)

    てけてけさん
    傷つけてしまったのでしたらほんと申し訳ない。
    これは自戒を込めて書いたものなので勘弁してください。そうあってはいかん、ということですね。まあ、ということは現実は厳しいということになる事も認めます。やはり、どこかにアントレプレナー的な、米長さんのような人がいます。ただ相当軋轢を経てご判断されているのも事実です。外資系にはそういう名物オヤジが随分いたんですけどね、NYKの許可なく採用しちゃうなんていうのが。タダ最近は小粒になってしまったのも事実です。ただ努力は必ず報われます。信じて頑張ってください。

  12. Unknown

    瀬川さん子供将棋大会に参加してこどもとふれあいをしたら父母に大量にサインを求められサインをするとは想定していなくてサインの練習をしなくてはという事態になった由。
    将棋人気盛り上がりを見せています。
    将棋連盟は今後のプロ試験についてアンケートをしていますね。小生はもう答えておりますが。

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