2009/05/23 00:10 | 金融全般 | コメント(14)
GMシリーズ 1
早くも
「クライスラーよ、さようなら、GMよ、いらっしゃい」
というフレーズがにぎわっている。
クライスラーに代わってGMよいらっしゃい、ということで、チャプター11は完全に織り込んだようだ。 GMのチャプター11でどうなるか、というお話を少しずつ、思い出した順番でしていこうと思います。順不同、ですのであしからず・・・
まず、ボトムライン・・・・チャプター11以降、裁判所が再生計画を認定するまで(つまりつなぎ期間の貸し手の政府、銀行団、従業員組合などが最終合意に至るまで)、80%の給料は保証され、払い続けられます。
あろうことか、GMの従業員から
「そのまま、ずっともめててくれ」
という声が聞こえるのは当然です。ありえん・・・ですが。
そしてまず、いつも問題になるクレデリ。
どうせ日経がうそを書くから前もって書いておきます。
先日のISDAの発表だとざっくりこんな感じの残高になりますね。
金利デリバティブ 403兆ドル
クレデリ 38.6兆ドル
株式デリバティブ 8.7兆ドル
まあ、クレデリも3800兆円の残高があるので小さいとはいえませんが、金利デリバティブに比べればかわいいもんです。
さらに、これは全ての売り買いの残高を合計しているもの。
従ってA社からB社、C社とGMのクレデリを10億ずつ転売していくと、最終的にリスクを保有しているのはC社のみなので、10億しか当該エクスポージャーはないのですが、しかし、A,Bおのおのの会社の取引である20億も残高の中に入っていて、30億とカウントされるのですね。
このサイクルの中ではGMが倒産したときに最終的にカバーするのはC社なので10億がネットの残高ということになる。
そうなると事実上の残高はかなり小さいはずでして、おそらくゼロがひとつ違うだろうと思われます。従って残高だけで判断するのは大間違い。
ただ、金利デリバティブとの大きな違いはどこかというと・・・・
金利デリバティブなら、たとえば変動、固定の交換などを考えると四六時中(大体半年に一回なので毎日どこかで必ず)残高やプレミアムの決済が行われている。
オプションなどだと金利が1.5%になったら一気に行使されるプットオプション、というようなものもあるのでそれこそ日夜デリバリーが繰り返されるています。
一方のクレジットデリバティブ。
行使、という行為はどこかが倒産しないと行使に至らない、というきわめて特殊な構造をしている訳ですね。
要するに行使することが滅多にない。 金利デリバティブを扱っている人は毎日運転しているドライバーだとするとクレジットデリバティブを扱っている人はおよそサンデードライバーだということで、突然ブレーキを踏んで交通事故を起こしたり、渋滞を予測できずにつっこんっで言ったりという事故が起こりやすい、ということがいえます。
つまり「抜いたことのない伝家の宝刀」みたいなもんで、GMの場合そのかかわりあい方、はリーマンの比較ではありません。
考えられる最悪のパターンは
GMがつぶれた→クレデリを行使して安心していた→決済日になってもお金が入らないよ→でも相手はゴールドマンだから大丈夫でしょ→実は最後はAIGが持っていてそもそもカバーされるべき代金がカバーされなかった→入札してもGMの債権はあまりにも多すぎるので応札者がなく・・・・・
紙の上ではヘッジしているのだが、肝心のお金が入ってこないよ・・・・
という事態です。
まさにペーパードライバーがどこまで首都高を運転できるか、という話なので怖いといえば怖い。
怖いのは残高ではなく、こういう話だということですね。
これらを総称して「エグゼキューションリスク」と呼んでますね。
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14 comments on “GMシリーズ 1”
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聞かないで済んだら、
少なくとも今夜の安眠は保証されたのに・・
眠れないからと言って、必ず電話で起こす奴がいるんだよなぁ・・
ホワイトハウスに電話を入れるべきだ・・
真夜中三時の電話は神話になったな・・
そんな真夜中の電話は、他にも一杯あるのだろう・・
天が落ちてこないか、
心配して空を見上げているのを、杞憂と教わったけれど、
今夜から夜空を見上げているか・・
大隕石が落下してくる憂いもあるし・・・
トイレの話に戻してくれぇ・・・
ぐっちーさんのたとえがさえているので、わかったような気になります。
リーマンショックから、はや、8ヶ月。私のような一般人は、ようやく金融危機に慣れてきたところなのですが、これからまた、大きなショックがくるのですね。地震予告みたいですね。エントリー増やしてくださいね。いよいよの時は、サイレン鳴らしてくれるといいですね。
NYも再度下落相場が始まるというのがシロウトにも分かりやすい展開なんですが…
ぐっちーさんの現場感覚最重視の解説は、いつも感謝しながら読んでいます。市井の民草の私にとっても本当に貴重な存在です。
教科書丸暗記派にしてみれば身の毛のよだつこともあるんでしょうけど、そこがイイんですよね?。
陰ながら応援しております!
すごくよくわかった(気がします)。
グッチーさん こんばんは。
グッチーさんは何か書籍出されていますか?
もしくは出されるご予定は?
あれば是非読みたいのですが。
ググる前に投稿してしまった…。
クレデリについては、このような最悪の事態を想定して、先日かなりの量を決済しているのでは?
円、ポンドの米ドルに対する急騰はこれが背景なのでしょうかね。そろそろアホボラの再来ですね^^。
銀行間短期金利と米国債イールドカーブが落ち着いてきたと思ったら、これですかって感じですね?。またあさっての方向に飛びそうですね。
これはわかりやすい。
GMが破綻すると悪材料出尽くしで6月のNYは上昇するという人と下落相場が始まると言う人がいます。どちらの確率が高いのでしょうか。シロウトにはわかりません。
誰も言わないので。。こういうのは、エグゼキューションリスクではなくてセトルメントリスクというのでは?エグゼキューションリスクは市場でのヘッジオペレーションを失敗するリスクを一般には呼ぶと思います。
こんなになるまでなぜほっておいたんだ?というのが1つ。
こういうデタラメな金融商品を何故売ったウォール街は、巨大な詐欺グループか?というのが1つ
ひでええええ
としか言い様が無い。
やっぱ外資ってバカなんじゃないの。
グッチーさん
今回の記事、わかりやすく勉強になりました。
ありがとうございます。
>GMが破綻すると悪材料出尽くし・・・
>シロウトにはわかりません。
これは玄人にも分かりませんよ(きっと)。
日経マネーにロジャーズさんが、「世界同時
株安は終結していない」と書かれていた。
自分も同じ考えなのですが・・・。
今井さんなどは強気一辺倒なんですが、少し前の記事では中国の持続に疑問符を出してました。
アメリカを横目で見ながら中国を注視で良いのでしょうか?
市場参加はまだ早いのかな?
昨年9月 プットで1億7千万getしたよ。