2005/11/09 14:31 | 音楽 | コメント(13)
倍速ベートーベン!!
本日は朝から地上げ関連(!)のお仕事でマーケットを見ておりませんもので、マーケット関係の方には何の役にもたたん、猫の手のような書き込みですので飛ばしてくださいませ!
ということで、以前申し上げたとおり先週からぐっちーはこのために生きていたのだよ!!、というイベントが続いております。そう、あのマウリツイオ・ポリーニの公演がある訳ございます。日曜日に上海帰りでサントリーホールに直行、ベートーベンプログラムを聞きまして、本日がショパンプログラム。ということでベートーベンプログラムのレポートを忘れんうちに慌ててさせて頂いている次第です。
さて、そのベートーベンプログラム。演目を聞いて驚かないで頂きたい。
ソナタ1番、3番の連荘、休憩を挟んで後半はなんと29番ハンマークラーヴィーア!!ときたもんでい!フォ?、3連発!!
彼が63歳という年齢を考えると信じられん暴挙・・といってよろしいかと存じます。
ご存知の方も多いと思われますが、ベートーベンはピアニストとしても超一流で、ものすごく上手かった。ただ、耳が悪くなってきたためにピアニストとしての活動を、諦め作曲活動に傾倒していく訳です。そのため、彼のシングルナンバーと呼ばれるこの初期のソナタはまだ、ばりばりのピアニストであり、かつ若いという事も手伝って、心臓破りの丘が3つも4つも続出する技術志向の、これでもか、このやろー的な超難曲ぞろいなのであります。20代のピアニストでもシングルナンバーを一晩で二つ弾くのは嫌がるモンでして、まして2曲連続!さらにソナタ中一番の難曲といわれる29番(オクターブを掴み続けるためプロでも指がつるといわれます)が後半に控えるなど、フルマラソンを2回走って、そのあとにトライアスロンに出るようなもん・・・と言えば解っていただけるでしょうか?そういう感じの演目な訳でして、もう始まる前から大興奮状態、途中でたおれるんじゃないかと囁きつつ演奏会を迎えた訳です。
そして・・・・はじまりましたよ?・・・・・
おお、最初の2秒でぶっ飛びました。普通のプロの演奏者の凡そ倍速でそのソナタは始まったんです・・・フルマラソンを200メートルハードルのようなスピードで走り始めたんですからそりゃー驚きますわな。もう私はずーっと心臓が止まりそうでどうなることかと緊張していた訳ですが、結果はご想像の通りであります。
すごすぎる・・・まずこのスピードでミスタッチが一つもない。皆無・・・
音の粒が見事にそろって、全くなんの乱れも見せないまま、絹の織物のように音があみあげられている・・・ベートーベンの理想とする演奏はこれだったんだろう・・・と思わずにいられないすさまじい演奏でありました。正直後半のハンマーの時は聞いてる私が息も絶え絶えになってしまい、呼吸困難に陥りそうな状況でして、左の前から6列目にいたせいもあり、指をじっと見ていたためコンタクトレンズは落ちそうになるし、もう終了した時には拍手する力も残っていませんでした・・・・全く、これは凄いものを見てしまいました。ほんとに。
ポリーニはホロビッツと違い極めてオーソドックスな指使いをします。指も猫手で大変スムースな指運び。フォームに無駄がないとボールが飛ぶんです・・というゴルフの話を思い出しました。フォームに無理無駄がないのでこれだけの難曲を連続してこのスピードで弾けるわけですね。晩年に極めて演奏が雑になったホロビッツや、リヒテルなどを思い出すにつけ、基本の大切さを改めて考えさせられると共に、このクラスのピアニストはもう出てこないだろう、と改めて確信した次第。どうやら来年も来るみたいなので次回は是非皆様もお出かけください。決して損はいたしませんよ。
最後に自慢話を一つ。私はなんと!!このポリーニの前でピアノを弾いた事がありまして、シロートにしては「大変上手だ」というお褒めの言葉頂いたんでありまーす、えへん!
でもこれにはオチがありまして、「本当は音大に行きたかったんです」と調子ぶっこいて申し上げた所、にっこり笑って「行かなくてよかったね・・・」と言われてしまいました。はい、すみません(笑)。
といいますのも指使いはトレーニングでいくらでも上手くなるんですが、叩いた時の音はほぼ先天的なものでして、これが悪いと絶対にプロではやっていけないし、アマチュアでも聞いてて頭が痛くなるような音を出す事になりまして、ホント迷惑以外何者でもないんです。下手な奴が弾くピアノは正に公害であります。その意味ではお嬢様などにピアノを習わせよう、なんてお考えの方は大いなる無駄遣いになるリスクが高いのでお気をつけくださいませ・・・
という訳で本日はショパンプログラム。今から体調を整えて準備している所でございます。
これ、仕事せいよ!!
は、すんません・・・・
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13 comments on “倍速ベートーベン!!”
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苦手ですが、ショパンだけは別格。
明日の記事を楽しみにしております!!!
さらにセレブリティに思えてきた(笑)
クラシック音楽を生で聞くと、鳥肌がたってきますよね。すごい演奏家なら、なおさらでしょう。
ちなみに、私の幼なじみは音楽一家出身で、ずーっとピアノ弾いてて音大にも行ったんですが…Jポップでメジャーデビューしちゃいました。ボーカルの隣でピアノ弾いてます。昔その子と一緒に合唱の練習をやっていたので、なんだか不思議な感じです。私もずっと歌っていれば、デビューしてたのかしら…なんちって。
私にとってショパンといえば、ポリーニ、ホロビッツ、サン=フランソワです。なんか、嗜好がバラバラだ(笑)。
次々に興味深い記事をアップされて、コメントを入れる暇がないほどです。
ぐっちーさんのクラシック話、ひそかに楽しみにしています。ポリーニのソナタ、ぜひ聞いてみたいですね。
ところで本田美奈子ファンだったという話も驚きでしたが、記事によっては「本田美奈子.」となっていて、どうしてだろうと思ったら、最後の「.」はドットと読むそうです。
何となく、「藤岡弘、」(私がリスペクトする真のラスト・サムライ)を思い出してしまいました。
http://www.samurai-hiroshi.com/
しょうもない話ですみません。私も本田美奈子好きでした。「マリリン」「Oneway Generation」「孤独なハリケーン」といった名曲とともにエネルギーあふれるダンスがまぶたに焼き付いています。
ポリーニの生演奏とは、なかなか羨ましいです。ハンマークラヴィーアの録音はもうかなり昔になっていますが、今はかなり違っていますかね?
>このクラスのピアニストはもう出てこないだろう、と改めて確信した次第
ヴァイオリンは恵まれていて、ヴェンゲーロフやシャハム、ヒラリー・ハーンとかいますからね。20世紀前半を背負って立つと今から充分期待できます。往年の巨匠からの呪縛から開放してくれた、若い天才達に深く感謝してるくらいです。ここらの人たちは、必ずや音楽の核心に向けて真っ直ぐに進んでいくと思います。
それに比較すると、ピアノではカリスマまで感じさせるくらいの人がちょっと思いつきませんね。ポリーニ・アルゲリッチの影が薄くなるくらいの人は当分出てこないでしょうか。ロシア・東欧圏出身の復活を期待したいのですが。
それにしてもピアノも弾かれるんですが。身内のリサイタル開くなら聴きに行きたいです(笑)ちなみに金さえ払えば基本的に日本のホールは誰でも借りられるのでどうでしょう。中堅どころなら50万円くらいかと:?)
鴎さん
もったいぶっている訳ではないんですが、そういう訳でちょっと待ってくださいね♪
さやかさん
確かに鳥肌が立ちます。ポリーニはまさに鳥肌級!!そうですか、お友達はデビューされたんですね。ポップスと言えども大変な世界ですからね。かなり努力されたんだと思います。さやかさんがデビューしてたら、どうでしょうか。今からでも遅くないかもしれませんよ♪
システム5.1さん
まあ、ばらばらと言えばそうですけど、いいとこ取り、という感じでしょう。メルセデスと、ポルシェとフェラーリを並べた感じ(笑)
やじゅんさん
いやいや、お恥ずかしい。やじゅんさんも本田美奈子がお好きだとは!! ドットの話は初めて知りましたよ。そうなんですか! クラシックもいろいろ書き込みますのでまたよろしくお願い致します、はい。
カワセミさん
おっしゃるとおり、バイオリニストにどんどん若くて優秀なのが出てくるのに比べるとピアノは世界的にもやばい状況ですね。手が大きいというのが必須条件になるので、そこで人材が限られるのが痛いですね。バイオリンはそれがありませんから、アジアからもどんどん出てきますものね。私のピアノは既に人に聞かせるようなレベルを維持しておりませんのでお許しください(笑)。そうとうお酒を召し上がって頂いているようなジャズクラブがせいぜいでしょう。アルコールで大分ごまかせますから(爆)
ノクターンはサン・フランソワ、英雄ポロネーズはホロビッツ、全般的にはポリーニって感じなんですよね。他では、アルゲリッチのクライスレリアーナが良かったなあ(ショパンじゃないですが)。また、最近のピアニストでは、ユンディ・リーが好きです。ラ・カンパネルラとか。やはり嗜好がばらばらだ(笑)。
バイオリニストの名前も挙がってますが、ヒラリー・ハーン好きです。
ぐっちーさんお久しぶり、幸せそうでなにより。アチキもつい先日、秀美さんのチェロ聴いてきました。なんかイッスよね、いい年こいたおっさんが、むっちゃマジで楽器と絡み合って、出てくるのは、美しい音だけで、終わってみれば元の世界なんだけれど、確実に自分の中で質的変化が生じているという、まさに形而上学そのものです。私はチケット代はコストではなく、Donationだと思ってます。
うらやましいです。
ピアノまでお弾きになるとは。私も昔やりましたが、もはや鍵盤を下まで叩き込むことが出来ないほどに筋肉が落ちています。リストのレクイエムを弾く、を目指して復帰しようかなあとも思うのですが、こいつは人生経験、気力、体力、技術、全てにおいて無茶苦茶なレベルを要求される曲なので、手を出す勇気が出ずにいます。
ポリーにでのソナタ、CDとかDVD出てませんか??
やはりクラシックで耳の肥えている誰かに聞いて「よかった」といわれたものから学んでいきたいです。
こんなシリーズがあるよ、という感じで
教えていただけると幸いです。
わたしみたいな素人には最初は何がいいのかも分からないのです。
システム5.1さん
ばらばら、とも言えるし、いいとこ付いているとも言えますね。ライブなら死んじゃった人は聴けないわけだし、CDならではの楽しみもありますね。
himekamiさん
どうもです。そうですね、コストとは考えてないですね。どっかの温泉に泊まりにいって3万円払うならこっちで払うよ、というような感覚を私はもってます。
Forsterstrasseさん
いやー、頑張って復帰してくださいよ、勿体無いです。それなりに・・・楽しめればよろしいのでは無いですか?最近特に電気系統のキーボードはかなり弾き易くなったます。後はプライドの問題ですが(笑)。
お勧めについて
ポリーニは比較的よくベートーベンを弾いているほうです。特に最近よく出していますが、初めてとおっしゃるのであれば、23番熱情の入っているソナタ集をお勧めします。あと、「ソナタ集」と題名の付いている11、12、ワルトシュタインの組み合わせCDがあります。これはライブなので、かなり迫力を堪能することができますよ。
ポリーニ・・・。まあ、注目度が高いだけに、いろいろな意見があって、それがまた楽しいのでしょうね。でも、あれは凄いと思います。「鳥肌が立つ!」っていうのは、そのとおり。聞いていて「意識が(気持ちよく)飛ぶ?」っていうか、そんな感じですね。。。23番熱情は、こっちが聞き込んでいくと、ますますベートーベンの天才ぶり(「入ってる」感じが分かる(ような気がする)だけじゃなく、「このおっさん、やっぱり、只者じゃない?!!!限界まで突っ込んでるよ!」ってな感じ(半分「狂気」のような、まさに熱情そのもの)も、感じられるような気もしてます。多分・・・。ありゃ、作曲する方も、演奏する方も、めちゃめちゃ、すごいですよ?!指のタッチが、おっそろしく上手で、生々しくて・・・。震えますね?。
ポリーニ、マウリッィオ 1942年生まれ>今時60代半ば
ホロヴィッツ、ウラディミール 1904年生まれ>歴史的なカーネギーホル復帰リサイタルは1965年で61歳。初来日1983年のヘロヘロ演奏は79歳。
リヒテル、スビャトスラフ 1915年生まれ>1970年万博初来日時55歳。1990年頃以降のムラの多い演奏は既に75歳過ぎ。
あの、ピアノを自ら弾くのは素晴らしいけれど、ちょと考えると分かることを書くと笑われちゃいますよ。ポリーニも1974年初来日当時の30歳代から比べれば、悲しいくらいテクニカルには取りこぼしが多いのだから。
せっかく、ホロヴィッツやリヒテルのピアノ・テクニックの「異端」さを認識されているのに、もったいない。
遅いコメントですけど、気づいたもので。