ブログ記者によるオンライン新聞 グッチーポスト

The Gucci Post [ぐっちー編集長の金融・経済を中心としたオピニオンブログ News Paper]

2009/04/21 22:50  | 金融全般 |  コメント(27)

ソロモン・ブラザーズの名誉を回復するぞ

あのNHKのたこ番組のおかげでこのまま行くとソロモンブラザーズがただのこそ泥並みの大たこやろう、と誤解されたままで終わってしまう恐れがあり、ライバル社に身を置いてしのぎを削ったものにとって、それではあんまりだ・・・という思いが強くなってきました。


そこで、ソロモンがどれだけすごい会社であったか、そしてむしろ、今債券市場があるのはソロモンのおかげです、ということをわかって頂きたく、ここに書くことにしました。


この機会に複数のソロモンOBの方とも久々に話せたしね。


もー、NHKの諸君、君たち イッキだぞ!


プロフェッショナル、なんてすばらしい番組をやっているのに、まったくなんてこった!


さて。


いまではみなさま、ごく当たり前だと思っている取引があります。


S: Offer 100Mil of UST 10YTR 5-19(5/2019) with regular!


T:99-02/32!!


S:If you are still there, you can sell 100Mil of …. at 99-02/32!!


T:It’s done!


Sはセールス君、Tはトレーダー君。日本の会社ではセールスのことをトレーダーとか呼んでるみたいだけど、間違ってますから・・・・


それからダン! はセールスから言ってはいけません。(と、よく怒ってましたね) 


それから1/32というのはアメリカ国債独特の刻み方。1円未満を32分の1づつ刻む、というのが基本なのです。おもしろい?


まあ、かっちょよく英語で表現したわけだが、要するにアメリカ国債の値段をその場でなんぼやねん、と聞いてその場でトレードする。しかも100Mil,つまり約100億円のロットをプライシングしてその場で決める訳ですね。


まあ、国債だからさ、あったりまえなわけよ・・・と思ってるでしょ?


日本国債でも同じ事で、こういう引き合いを受けたときに「ちょっとまってね」とか「ちょっとだけよ」など言っていては仕事になりませんよね。


しかし、こういう完全クォーテーショントレーディングシステを考え出したのはまさにそのソロモンブラザーズだったのです。


それまではどうしていたかというと、たとえば100MIl 買いたい! といわれても、かなりの時間がかかり、逆に99?02なら20Mil 買ってください、というお客様の注文を受けてからおっとり刀で証券会社が買いにいくというのが普通だったのです。


当然99?02で本当に買えるかどうかの保証などあったものではなく、100Mil 買いたい投資家さんがいても、


「99?02では10MILしか買えませんでした、次に買いに行くと99?05になってしまいますけどどうします?」 


などというたわけたことをやっていた訳です。今なら死刑だよな(笑)。


そこに颯爽とソロモンがやってきて


「その場でいくらでも仕切りまっせ」、とやった。


更にすごいのは


売り 99?02 買い 99?00


などと売り買いを明確に示し、投資家がどちらをとってもいいですよ、という完全なる2?WAY プライスを保証したこと。


今は当然のものと思われているこの2WAY プライスですが、それを常に提供するというビジネスモデルを考え付いたのです。


当然、それを支える膨大な在庫管理のための資本力、ヘッジの技術が必要で、それらを用意周到に兼ね備えたソロモンブラザースが他を圧倒するのにそれほどの時間はかかりませんでした。


このソロモンの発明によりその後の国債大量発行時代にも荷もたれ、未達ひとつせずに流動性が確保され、更には同じ事を社債でも始めたために社債の流動性が飛躍的に増した(当然発行機会が増えるので相対的にコストの軽減にもつながった)ことは特質すべきで、その意味で現在の債券市場の基礎はソロモンによってもたらされてといってよいのです。


一方それまでの伝統的手法にあぐらと書いていたモルガン・スタンレーやゴールドマンはこれによりシェアーを奪われ、引き受け主幹事獲得でもポジションを積極的にとるソロモンの後塵を拝する様になるわけです。


実は両社ともディスクロージャーがうるさくなる上場なんてしたくもなんともなかったんですが、ソロモンに対抗するためには在庫を支える資本力が不可欠でした。


結果として不本意な上場に追い込まれるという事態に至り、その結果、一株あたりの利益率をめぐる過激な競争の中で利益の高い証券化商品に傾注せざるを得なくなる・・・という流れの中でこの金融危機の引き金を引いてしまった、というなら、その意味においてはソロモンが主犯だというのは正しいのです。


しかし、それは国債であり社債であり今の我々の金融市場の流動性の根底を支えるシステムの開発がソロモンによってなされた・・・・という重大な事実の重みを軽んずるものではありえません。


80年代既に日興証券で債券部門の責任ある立場におられた三原御大は当時、このソロモンの出現で、


「これは大変な時代になったぞ、日本の証券会社も資本力をつけないと大変なことになるぞ!」、


とひどく警戒したものだ、おっしゃていました。


そして、この国債や社債における膨大な引き受けシェアーの獲得とセカンダリーにおける圧倒的市場占有率を利用して、相場操縦まがいの「荒稼ぎ」が始まり、最終的にアメリカ国債でインサイダーを行うという極めつきのインサイダー疑惑でこれらの債券トレーディング部門を育て上げたジョン・メリウェザーは退場させられ、ソロモンはその歴史に幕を閉じます。


彼が編み出したトレーディング手法やリスクヘッジの方法は現代でも用いられている訳ですが、一方メリーウェザー自身はその後この手法を更に進化させLTCMで大勝負をかけることになります。


結果はみなさんのご存知のとおりですね。ですからLTCMに一言も触れないあの番組は本当に変、なんです。


従って、当然、ソロモンといえばメリウェザーそのものなので、ああいう「ミミズ程度」のおっさんにインタビューをして「歴史的インタビュー」とかあほなことを抜かしておるNHKはなんなんだ、というお話をした訳です。


おまけですが、その後市場における一定の占有率を占めることで特定の現物債券が先物に比べて相対的に割高に推移する、という現象を使って日本市場でも大もうけをすることになるのですが、そのときの担当者Mさんはフェラーリ1社分くらい稼いで、今ではフロリダあたりで草むしりをしているとのことです(笑)。 黄金の80年代であります。


いづれにせよ、テレビでやる前に当時現役だった三原御大あたりに話をお聞きになっておけばこんな番組にならんかったでしょう。なぜでしょうかね?。


取材する相手を間違えるなよ、といつも申し上げてます。


ということでソロモン、偉大な会社だったんですよ。

覚えておいてくださいね。今の債券市場があるのは大筋ソロモンのお陰なんですから。その意味で彼らこそ債券市場の風雲児、だったのです。


おまけ


僕らの間ではソロモンのことをホルモンブラザーズと呼んでいました。なんとなくパワフルなんでホルモン、がぴったりだったかな。
モルガンスタンレーはよく、モリナガスタンド、と間違えられた。


ゴールドマンサックスは ゴールド万作さんからお電話です、なんてメモが机の上においてあったりしました(笑)。関係ないけどアンドリューって日本語の上手い外人がいたんですけど、ずっとお客様に「安藤竜さん」だと信じられてました。会うと、まんま外人なんでみんなびっくりしたりした。では♪


 

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27 comments on “ソロモン・ブラザーズの名誉を回復するぞ
  1. 債券市場はめちゃくちゃ より:
    あほか

    あーあですね。君がいうか近いところにいたので、身ひいきですが、そんなあんた時価なんておまえらが勝ってにやってた時代ジャン。
    先物いたよせ連続で、それでも私は売りをうけますねんて馬鹿いねーだろ。そりゃ、10B(昔はそういった)1Mデ動き法もねー時は、そりゃOBなんていくらでも出せるだろ。俺はそこに行ったときいわれたよ。玉なしってな。これは流動性の問題だろ。
    で債券のリスク管理なんて意味ないのわかっててそこまでいうか。

  2. ペルドン より:
    ダァァン・・

    そこでメビウスの輪になるんだな。

    そんな賢い人達が、
    何故穴ぼこに揃って落っこちたか?
    何故気付かなかったか・???・・

    そこに触れていないのは、
    NHKスペッシャルと同じ狢になるな。

  3. Audley End より:
    Unknown

    「おまけ」に爆笑しました
    アンドリューを見たお客さんが、
    一瞬 絶句している様子が目に浮かぶようで。。。

  4. 悦子 より:
    何を信じたら良いのか?

    最近は、これぞと思う日は、コメントも含めて全部プリントアウトして色鉛筆で囲みながら読んでる(フルッ)。それでもわからん!

    数年前のNHKのベネズエラ、チャベス大統領の特集も間違っていた。

    日本人も日本の政府も、他の国の政府の発表は、正しいと思っている。全然事実でない事をいけシャーシャーと発表する政府も、世界にはある。

    NHKも見当違いなことを言っていることがある。じゃあ何を信じたら良いのか?

    私は、実は、NHKのファンなのです。

    主婦が経済がわかるわけがない。日本にずっと暮らす庶民が、世界の状況がわかるわけがない!

    NHKは、賢い人も一杯いるだろうし、賢い人を採用する事もできるだろうし、お金も一杯ある。真実をきちんと伝えて欲しい!

    「NHKさん、あんたが頼りなんょ!」

  5. RJ-45 より:
    ライアーズポーカー

    ロンドンで美術史を専攻した著者がソロモンブラザースに就職し内幕をファニーに描く秀作。アメリカ・ヨーロッパで100万部突破の大ベストセラー。
    ともかく笑える。
    ライアーズポーカーに興ずるグッドフレンドやメリーウェザーが冒頭に登場。
    角川文庫に翻訳本(1990/11)あり。

  6. 八百屋 より:
    なるほど

    早漏モンブラザーズは、すごかったんだ!

  7. じん より:
    当たらずとも遠からず

    商品の世界でやってたことを債券の世界でもやったというだけで、そんなにすごいですかねえ。
    フィブロの連中は冷ややかに見てたんじゃないかなあ。

    あとNHKの全てはMBSから始まったというのは
    そんなに外れてないと思いますよ。
    わたしはS&L救済からおかしくなったと思います。

  8. Phanatic より:
    Unknown

    国債のマーケットメイキングを始めたのはソロモンだったんですか。勉強になりました。

  9. Unknown より:
    Unknown

    ヘイ ブラザー! のサロモンブラザーズ
    によく間違われてませんでしたか?

  10. TT より:
    Unknown

    間接的にはボルカーが金利のボラティリティを高めたことがソロモンの栄光につながったんですかね。
    で、FF金利史上最高値を演出した人が、史上最低のときにも登場、と。
    名目金利はゼロ以下にはなりようがないからなあ・・・。

  11. 五右衛門 より:
    懐かしい名前ですネ…

     このブログの当初の頃から読んでいますが、今回懐かしい名前が色々出てきたので、思わずコメントを入れました。
     私は80年代後半から90年代にかけて、銀行と証券の合弁会社に銀行から出向していたのですが、その時証券から来たオジサンが2,000億を越えるポジションで運用をやってました。半分くらいはUSTだったと思います。円投でやってましたので、あのプラザ合意以降の物凄い円高で為替損をしこたま作りましたが、凄かったのは、その大損を国内の株と転社で全て取り返したうえ、大きなプラスにしていた事です。

     私は銀行からの出向でしたが、その時証券の人間は百億単位の損にも動じない凄い人たちだと、心底ビックリしました。その頃ソロモンだの、メリウェザーだのジャンクの帝王ミルケンだのの名前が飛び交っていましたので、思わずコメントしました。

     これからも、グッチーさんの投資銀行時代の話を色々書いてください。(失礼、今も現役でしたネ)

  12. 愛読者です より:
    Unknown

    おっとり刀の使い方が間違ってます・・

  13. arujp66 より:
    ちなみに

    メリルは千葉の奥のほうのじいちゃんに
    「メンチカツ証券」って呼ばれてました・・・。

    うーん。なつかしい・・・。

  14. ベルドン より:
    ダン・・

    フランク・パートノイ 「大破局」は、
    アマゾンで一円で売られている。
    是も市場の評価かな・・(笑)

  15. ふろー より:
    仕組みを作ったら勝ち。

    要するに、仕組みを作った物が「 勝 ち 」

    ってことでしょ?

    で、その勝者はなぜ負けたの?

    仕組みをつくったこと自体が間違いだったんでしょ?

    金融工学とかそれらすべて、社会の富をあなた方が上からかすめ取るための仕組み、じゃないのですか?

    リスクヘッジだのデフォルトスワップだの。
    そんなのなくてもまともな会社はちゃんとやっていけますよ。

    あんたらが引っかき回すから、必要とさせられるのではないの??そういう「仕組み」なんでしょ??

    何か間違っていたら訂正して下さいね。

  16. surnivers より:
    なるほど

    うーん、難しいですね。
    なんとなくはですが分かったような気がする程度です。
    それにしてもGSの事はガソリンスタンドと呼んでいました。
    上手く泳ぎ切りましたね。
    と思ったらズドンと行ったりして・・・

  17. アキラ より:
    Unknown

    ソロモンのMr,シュガー、元気でやっていらっしゃるんでしょうかね。
    当時の日本債券市場の爆発的な伸びも、バブルへ一直線な経済による側面が大きいので
    そこに乗じて稼いでいたという点では今日の投資銀行の破綻に近いものは感じます。

  18. 歩行者 より:
    ソロモンといえば・・

    明神さんを思い起こしますね。

  19. 通りすがり より:
    おまけのおまけ

    私は現在日本株のファンドマネ?ジャ?をやっておりますが、新人のとき投信の事務をやっておりました。その時の同期の女性の話。

    「◎◎さ?ん、ソロバンブラザ?ズからお電話で?す」(爆笑)
    「△△さ?ん、シロフダヤ証券からで?す」(爆笑)

    彼女は現在結婚して幸せな生活を送っていると思います。

  20. yoshi より:
    Unknown

    ソロモン凋落のきっかけはインサイダーではなく不正入札です。
    You should read \”A Demon of our own Design\”.

  21. 日興OB より:
    へえー

    文中の「三原御大」とは、「三原淳雄」さんのことですか?彼は、1976年に日興証券を退職しているのだが、世の中には別の三原さんがいるんだね、しかも債券部在籍の三原さん?あなたも顔が広いんだねえ。

    ネットのくだらない落書きや、NHKの思い込み番組見るひまがあったら、次の書籍がお奨めです。ソロモンや、今回の金融危機がよくわかります

    「市場リスク 暴落は必然か」日経BP出版

  22. ミネルバ より:
    マネー革命は大丈夫?

    NHKが
    昔やっていたマネー革命はどこまでがほんとなんだろう?

  23. inoue より:
    また一つ米国神話発見

    結局いろんな時期の先進的なビジネスモデルはアメリカ発祥、という何とはなしのイメージが、また一つ強化されちまいました。自己責任を言わない日本には、麻生大馬鹿大将を始め、自ら責任をとって物事を進める、という気分がないもんなぁ。

    お役人だけは自分の将来のために天下り先造りをしこしこやってるけどさ。

  24. Unknown より:
    Unknown

    安藤

    見る
    成る
    地区

  25. まっとうな見解 より:
    NHKはぼけ、受信料拒否

    上のほうの馬鹿、発祥の元祖の功績と暴走の責任を一緒にするのかね? ぐっちーさん、まっとうですな。」

  26. けろよん より:
    買うたマイン

    本の名前はNGだそうでLTCM、
    10年前に破綻前後さんざんやりましたからね。
    単行本によると番組終了後一番反響があったのは
    伊藤の公式で私もそのくだりが好きです

  27. TAX より:
    NHKマネー資本主義

    第4回の放送で、CDSを開発したのはJPモルガンのチームだと説明していました。
    JPモルガンが開発したのは、CDSを原資産とする「シンセティックCDO」だと思います。
    放送に出てきた元JPモルガンの女性の発言も、「シンセティックCDO」に関する趣旨でした。
    NHKは、基礎知識もないままに、金ばっかり使って、浅はかな番組作りだったと思います。

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