2007/07/03 09:47 | 金融全般 | コメント(9)
ドルの落日
今日はこれを書きましょ。
ポンドは現在2.0164ドル。普通為替は1ドルいくら、って表現しますけど、イギリスは7つの海を制覇したせいでいまだにポンドだけは1ポンドいくら、という表現をします。ドルに勝る唯一の通貨なんですね、みかけだけは。
しかし、見かけだけなんて言ってられなくなりました。
昨日1ポンド2.0171をヒット、これはなんと26年ぶりのドルの安値であります。うーん、26年前か・・・ まだ大学生だぜ、おい!
イギリス病と言われぼろぼろのポンドがここまで復活するとは全く思いませんでしたし、ドルの弱さにも目を覆うばかり。いかにぼろぼろか。
KIWIで見ると、78ドル37セントは1985年3月以来、これはKIWIが変動相場制に移行したとき以来の安値。なんてったってプラザ合意ですぜ。
オージーも85.99セントとなってこれも1989年2月以来となります。ついでに対ノルウェジアンクローネあたりをみても5.8600というのは約10年ぶりの安値・・・・もちろん円も弱く、オージーはなんと104円!! 90年の122円には及びませんが今となっては60円は夢のようなレートですね。
これを見て円安という人が多いんですが、違います。ドル安です。で、円が道連れになっている訳。しかも、ドルの安値があのプラザ合意時のレベルに近づいている、ってことは今我々が住んでいるこの世の中は為替に関しては、このプラザ合意のパラダイムで動いている訳で、その大前提が崩れかけてるということになるのですよ、あなた。実は大変なことなのだよ。
で、くどくど言ってるけど、なぜかと言えば、世界から見るといまや円とドルを区別する理由がほとんどない。経済的にも日本がアメリカの赤字をまるまるかぶっているし、世界最大の債権国といってもあのイラク以来軍事的にもアメリカのと限りなく同質な国と見られている訳です。そしてもっている資産がほとんど米国債ときたもんだよ。
どうやって区別しろっていうの、というかわざわざ金利がゼロの円はもたんわね。
20%でもアメリカ株とかもってればこりゃー、日本のアメリカに対する支配力は侮れんぞ、ということできっともっと円高に(ドルに対してね)なるんだろうけど、どうやら日本はアメリカの言いなりだぞ、となれば円を独立して保有する意味はなくなってきます。だからドル円はたった5%動いただけで円安だ?とか騒ぐ羽目になったのです。それだけ動かんようになっている訳ですね。(思えば一晩で10円ぶっ飛んだ、なんてのが懐かしいですよ)
更にくどいようですが、中国はそれでもまだ地道にドルを保有しています。アメリカ国債に集中していない所が曲者ですが、通貨としてはまるまるドルなんです。まだドルペッグですから。中国が少しでも売り出したらどうなるんでしょう??
じゃ、どこがどうなっているかというと・・・
少なくとも現在のユーロ及びポンド高の原因の大多数は産油国にあります。ロシア、中東に尽きます。彼らの保有外貨が戦略的にも分散されていて(ドルに集中させたくない)地理的かつ歴史的につながりのあるイギリスに向かっているのがこのポンド高の背景です。
ロンドンにおける中東の存在感の大きさはいまさら申し上げるまでもありません。今回のテロでもわかりますが、デパートのハロッズなどもすでにアラブ系資本です。なにせアラビアのロレンスですからね、つながりは深いのです。
ロシアの資産も歴史的にはイギリス、フランスに持ち込まれていたという背景があります。アブラモビッチがチェルシーを買っちゃったのもこれの一環で(冗談です)ロマノフ王朝の管理資産なんて大多数がイギリスに行ってたんですから(これはほんと)。
こういう人々がお金を持つとイギリスが浮上する訳です。もちろんユーロが強いのもそのせいです。彼らからみると、ファーイーストにあって、アメリカの一部分みたいな円に資産をおいておこう、という気にはなかなかならんのです。モスクワからシベリアのさらに向こうに資産をおこうとは・・・思わんでしょうな。為替っていうのは結構人間臭いもんで金利差とかでは動かんのですよ。こういう歴史的背景とかが実は効いてくるのです。
次の面子を考えるとインド・・・まあ、親日的ですがそりゃー、イギリスの植民地ですからね。ポンドは身近でしょう。この期に及んで中国が分散を始めたらまじでひとたまりもない。だんだんアメリカが中国に気を使い始めたのはこのせいかもしれないね。
VISTAが登場するのはまだ先でしょうからね、ドルがマジ切れするリスク、あるんですよ。
かんべえ先生が丁寧にまとめていただいているので詳細は避けますが、所謂アセアンプラスロシアの外貨準備に占める割合は1996年で、日本が35%を占めロシアはたったの1.8%。それが2006年には全体で5倍にふくれあがりましたが、日本はそのうち28%を占め、ロシアはなんと10%の占有率。影響力が計り知れますね。
逆説的ですが、日本のように大半を米国債でもっているならそうそう売買を繰り返す必要もなく、実は為替に対するインパクトも小さい訳です。しかし、日本以外の国はファンド経由とはいえ、不動産や株式といったリスクアセットに相応の比率を投入していますから、いざ、そのマーケットがクラッシュするといっせいに資金を引き上げることになり、そのボラティリティーは正直いってはかりしれん、という訳です。
プラザ合意の枠組み崩れ始め、G7のコントロールが効かないという時代がもう来ているといっていいでしょう。
じゃ、何をするか・・・・円を持たないないこと。大体日本のような財政赤字の国で95%の国債が国内で保有されているというのは異常です。なぜだかわかりますか?
みなさんが金利ゼロの銀行預金を大量に保有されているからです。で、彼らがよってたかって毎月何千億円もの国債を買うんですよ。だから皆さんの金利がゼロなんです。三菱UFJ銀行(うん?、東京がまだ付いていた??)から預金を下ろして5%のアメリカ国債をご自分で買うようになれば三菱さんが無理して国債を買うことはなくなり、黙っていても金利が上がる、というとても単純な話。
日本はまだ世界最大の債権国ですから、相応の金利が付くなら資産としてもっていよう、というインセンティブは世界にまだあるはずです(キャッシュは金利がゼロだからだめ)。最終的に国債の保有比率の30%くらいが外国人になればまあ、普通ですかね。そこまでG7が持つかな?、ってところなんですが。いかがでしょうか。
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9 comments on “ドルの落日”
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ぐっちー様、
ドル安、がしかしNYは高い・・これは
豚は太らせてから食えのフラグがたった
ということですか?
G7・G8のメンバーを増やし、実行支配を高める時期でもあり、新たな世界通貨、共通通貨の検討が望まれる?
要はアメリカの決断、戦略次第なんでしょう。
日本は附いていくだけですから。
日本では金融庁が債権以外の運用を、と言い出せば、財務省が否定する内乱状態では、ますます足下を見られる羽目になるでしょう。
ドルの覇権の崩壊は
調べればいくつも記事が出てきますよ
10年以内にドルの覇権は崩壊するのでしょう
ドルの世界支配も終わりが近いんでしょうね
ユーロ高なのは
通貨覇権が、だんだん
ユーロに移ってるからなんでしょうね
田中宇の国際ニュース解説
http://tanakanews.com/
40年近く前から言われていましたが魔法の通貨です。
要は流動性。
後、40年は持つでしょう。
何時かドル防衛策が出て来るのでしょうが、その時アジアがどんな風にして乗り越えるのか。見守って行きたいと思います。
FRB指数というドルのインデックスが毎日発表されていますが、1990年から取れるメジャーカレンシー・ベースでは2日、いきなり最安値を更新。既に95年を
下回っています。まだ崩壊しないのは、過剰流動性(円キャリートレードなど)と外準膨張でケアされているためと考えています。が、それもご指摘の国有ファンドの動きと日本の引き締めなどで危なげですね。
それとロシアは政府の外準より、マフィア財閥の持つ資金量の方が大きく、5000億ドルを超えているとの見方もあるようです。ドイツが”ヘッジファンド規制”で警戒スタンスを見せているのは、この資金だと思います。
「プラザ合意」、そして露の欧州おける位置、「仏露同盟」や英国王家と露西亜王家との関係性とか、世界史で習ったことが生きているんですね…。
身震いしました。
米国債のゼロクーポンは買ってるけど、これ以上円安が進むの?オーストラリア、欧は+になってるけど
米国債だけ赤字なんだが、、、
ロマノフ二世とジョージ五世は従兄弟でしたね。そういう背景も知らないといけない。ロシアから見たら日本は遠すぎますね。地図を見るとモスクワってヨーロッパだと納得します。シベリアは捨てられるのかな?
しかし日本の奴隷路線はなんとかならんのかね。