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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2007/04/09 15:04  | 金融全般 |  コメント(2)

西武裏金問題と企業のコンプライアンス


今のうちに書いておかないともう書けなくなるかもしれんので、ちょっと遅いですがこの件に関してひとこと。


おかしいなと、思われませんか?なんで西武ばっかり??ですよね。西武だけが正直だとは思えんし、一番ブラックに決まってる「なべつねジャイアンツ」なんて余裕かましてますよね。


実はこの問題、M&Aなんかやっている我々にとっても決して無縁の話題ではないのでちょっとひとこと触れておきます。


 まあ、デューデリなんて普通に紙を見ているだけではわからんのであります。その辺の作業は会計士さんにお任せしまして、我々投資銀行家は何かおかしいぞ、という臭いを嗅ぎ分けに行く訳です。その点堤義明率いる西武グループは充分「においます」が、それにしては随分あっさりと出てきた。このあたりのギャップはなんなんだろう、という訳です。決して彼らがただ正直だったとは思えない。本当に正直ならこんなことやらんでしょうからね。


例えばあるA企業の数字を見ていたとします。経費など、結構なものがまぎれていますので要注意ですが、まあ見た所、所謂字面はどーってことない。特に交際費が突出している訳でもない・・・・所が、支払い伝票まで見ているとどうも特定の数件に支払いが集中しているぞ、なんてのが出てくる訳。


これが銀座のクラブかなんかであれば、社長が女を囲ってると見ればいいわけですね。所がそれがどうにも色気のない店だったりすると??となります。そこでその店を張り込む訳ですね。そうすると社長だったり、部長だったりとかがその店のオーナーとかなり長い付き合いである事がわかってきて、経費を余計に振り込ませて裏で返してもらっている疑いが出てくる・・・


まあ、着服しているケースはまれですが、これを領収書のもらえない怪しい経費に回したりしています。講演会なんてのも要注意でやけに大量に買っている場合はこういった「逆流マネーになっている可能性「を疑わなければなりません。


万が一にでも着服が日常化している会社をお薦めする訳にはいきませんし、領収書のないお金はヤクザとの交際費に行き着くことも多々ありますので要注意という訳です。


ここで西武鉄道グループですが、オリンピックやプリンスホテルの傍若無人ぶりをみてもとてもクリーンな企業にはみえませんな。しかし、今回ライオンズがやけにしっかり正直に経理処理をしているのが不思議です。「どこのだれべえにいくら」なんてなんで正直に書いているんでしょうかね。


なべつねさんのところなんかはどうせ正直に書いていない訳です。何処の関係者と飲みました、と領収書さえもらえれば2?300万のカネは訳も無く振り出せますしね。


で、西武。複数の関係者に聞きました。これ、堤さんの独裁のせいだったようです。堤さんは自分は会社の経費を偽って愛人と旅行したり、贅沢三昧は散々していた一方、社員がそれをやることは一切許さなかったのだそうです。


プリンスホテルでは鉛筆一本に至るまで細かく管理されており、それもいつからいつまで使ったか、三菱鉛筆かトンボ鉛筆かなどの詳細が記名されていなければ伝票が通らなかったそう。コーヒー一杯を友人と飲んで、それをクライアントの名前で経費をまわして堤さんの逆鱗に触れクビになった社員もいるそうです。


だから・・・・
堤さんの経費以外の部分は西武鉄道グループは堤さんの監視用に大変クリーンな経理処理を行っていたとのこと。だから・・・・・西武ライオンズも・・・堤さんに疑われないために裏金にもかかわらず表で処理した。私は着服している訳ではありませんよ、という訳ですね。


フォーブスに載る様な金持ちがここまでせこい、というのには笑えますが、それがめぐりめぐって裏金問題の解明に結びついたというのはなんとも皮肉ですね。従ってこの問題は西武だけで終わってしまうでしょう、普通はね。我々の場合はやめた社員かなんかをたずねて実情をインタビューしたり場合によっては裁判での協力をもとめたりします。


昔経理部にいたOLなんかが見つかれば最高なんですね。怪しい伝票のコピーまで持っていたりしますから。一度びっくりしたのはご丁寧に裏金の伝票名の符牒(暗号のようなもので例えば今回のケースで言うと・・・あくまでも例ですよ・・・早稲田関係者に渡したら、自動的に日産自動車とか普通の企業名の交際費で処理したりします)のコピーなんか持ってたりしますのでびっくりです。


まあ、裏金が無くなることはないんでしょうが、そういったグレーな経理処理もあわせて、企業のコンプライアンスの観点から見ると、堤さんと違った方法できちんと把握する努力が必要でしょう。永遠のテーマですな。このへんの事情はアメリカでも似たようなもんです。ただ、動くお金の桁が違ってしまっているので見つかったときのことを考えると最初から表沙汰にしているほうが安全だ、という程度の感じでしょうかね。ということで・・・・

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2 comments on “西武裏金問題と企業のコンプライアンス
  1. ペルドン より
    西武・・・

    ぐっちーさん

    堤さんにかこつけて、都のトップを皮肉ったんじゃないでしょうねぇ?

    法令順守と言えばいいのに、横文字を官庁が氾濫させる処を考えると実感が伴わなくて済む、と言う理由でしょう。

    法令順守をしなければ痛い目に遭うと、お上が指示されているのは、談合のみではありませんか??

  2. OLのともだち より
    西武

    今回の不正の露見はクリーンな経理処理が原因ではないでしょう。露見後の調査はやりやすかったでしょうが...

    そもそもの発端は、メジャーリーグ関連の不正の発覚でしょ。逆恨みっていうんですかね。

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