2006/04/12 09:58 | 金融全般 | コメント(15)
不可解な債券のリスク管理
昨日はたくさんのコメント、メールを頂きまして感謝、です。やはりこういう話題はリアクションが大きく、書いていて楽しいですな。もちろんわざと声を大きくして書いている部分もあるのですが、いずれにせよ、様々なご意見がだされ、当方としては大変参考になり、感謝申し上げております。また、機会を見つけて噛み付いて見ましょう(笑)
さて、今日はちょっと一般の方には難しいかもしれませんが、必要な知識の一つ。債券のリスク管理について、であります。債券を時価会計によって、買った値段ではなく、マーケットの値段でリスク管理をする、ってなはなしをお聞きになっていると思いますが、一見合理的にみえるこの管理手法、主にVAR(Value at risk) という方法を用いる訳ですが、ぐっちーから見るとちょっと???な訳ですね。VARそのものについては野村さんの解説がいいかしらね。 http://www.nomura.co.jp/terms/japan/ha/var.html
これ、 一件合理的なわけです。数値としては上がる事も下がる事も「リスク」と捉えてその確率を求めていく。その範囲内での損失予測額に応じてリスク対応しなさいという話ですね。
しかし、です。
上がる下がるは確率的には確かに50%ずつ、ですが、今回のように日銀の金融政策の変更(量的緩和の解除)についてみると、金利が下がる訳が無い訳で、一方的に上がるに決まってるでしょう。どうひいきめに見ても今回に限っては50・50ではなく、80・20(ほんとは100%だけど)で金利は上がる訳です。だから銀行などが持っている債券ポートフォリオは損失がでて当たり前であって、別に驚くほどのことは無い。それを「リスク」として認識して更にヘッジをかけるために先物を売ったりする・・・更に相場が下がる、という悪循環を辿るのはなんともナットクできない訳です。2年国債が0.7%をオーバーした時、殆どの投資家は買えない訳です。実際、買いが殺到・・・なんてことはなかった。何故かというと、皆さんこれ以上、VARによるリスク量を負いたく無い訳ですね。
でも 2年たったら、国債なんですから、絶対に100円で返ってくる訳。政府が潰れない限り。今97円で買えるなら、最後、しかもたった2年で3円も儲かる訳ですから、途中がいくらになろうが買う、べきだと思われませんか。たった、2年ですよ・・・
確かに「取り付け騒ぎ」みたいなことがあって緊急に国債を売らなければならない、とい事態を想定すれば2年債といえどもマーケットリスクを考えるべき、という意見もありますが、じゃあ、銀行のポートフォリオ全体はどうなのか、ローンとか全部合わせて見たときに債券部分は多くて50%です。しかも国債である限りレポ、という市場でいざとなれば担保で借り入れる事ができますので、全てが塩漬けになる確率は限りなく低い・・・・
スマートな方はお分かりと思いますが、このVARという考え方は、資本金、或いは総資産の20倍!! とかのポジションを張ってしまう、トレーディングタイプの投資家のリスク管理として考えられた方法です。
そりゃー、1億しかもっていない人が20億の相場を張れば、実際今いくらになってるの(時価)、とかこれ以上相場が下がるといくらやられるの(VAR)という事は絶対に必要な指数でしょう。けれども銀行のような所がもっているポートフォリオ(長期に安定した資産)、しかもそれが国債であった場合にこの手法を当てはめるのはとんでもなく無理があると思われる訳です。これは2002年に既に私がRisk Fainance というアメリカの雑誌で書いていることなんですが、少なくとも残存5年程度の国債についてはVARでコントロールする意味は殆ど無いと思われます。
更に言うなら、金利上昇により資産価値が毀損するのは債券に限りません。実際はローンだって毀損している訳で、ローンは時価会計では無い訳ですから、債券だけに当てはめるのは訳がわからん、ってな話になる訳です。マーケットの健全性から考えてもこういったリスク管理の手法を金融庁や日銀が一方的に押し付けるのは本末転倒であり、少なくとも債券のポートについては自主性に任せるほうが一方的に相場が傾くリスクも軽減できる筈です。もちろん、これを可能にする各銀行のリスク管理手法のディスクロージャーが必要なことは言うまでもありませんが、ポートフォリオという観点に立ち戻ってVARを見直す必要があると私は思ってます。そのためにポートフォリオの分散とか、いろいろ考えている訳ですから、そういう範疇で考えるべきでしょう。
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15 comments on “不可解な債券のリスク管理”
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こちらに手を出すなら、もっと金持ちになってからですかね・・2年後の結末は確実なのだから、1億円単位でのんびり預ける身分ならばっちぐーですね。株だけでなく債権も勉強したいけど時間が足りません・・悲しいサラリーマンです。そこで貧弱投資家へ古典的投資法を伝授します。金利上昇ならビッグですよ!!(笑)
英語の件ですが、文部省をバカにしてはいけません。少なくとも10年前は、あそこの受付のねーちゃんがイチバン可愛いかった。どこに委託してんのか会計検査院の友人に調べてもらったことがあります。いまは経費節減で・・
金利リスクは、負債の性格
(個人投資で言えば、資金の性格および使途)
とマッチした形で評価しないと意味が無いものです。
例えば財団や生保にとって、長期で受取利息を
固定したとしても、金利上昇でその時価が動くこと
自体は、本質的なリスクではないはずなのですがねー。
山崎元氏が時価評価主義にとらわれていて、
「個人がその資金使途によって運用方法を分類しようと
するのは、ファンナンス理論を判ってない」という
ご意見を安易に垂れ流されているのを見るたび
(ご主張はわかるのですが、贔屓目に見ても舌足らず!)
ツッコミたくなります。
Fainance → Finance
ぐっちーさんのブログの大ファンです。細かくてすいません。
あなたのブログの価値 2006年04月11日 20:54 ブログの価値を計算させてもらいました。 デザイン、質感、スタイルが価値のあるブログ として、当社としては一度お話をしてみたいと 思いました。よければ一緒にブログを盛り上げて みませんか?あなたが所有者で、当社が運営者 です。当社概要をご覧ください。
雪斎先生のところで見つけた成分解析ですが、
グッチーさんの解析結果は以下の通りでした。
グッチーの47%は世の無常さで出来ています
グッチーの35%は気の迷いで出来ています
グッチーの6%は成功の鍵で出来ています
グッチーの6%は理論で出来ています
グッチーの6%はミスリルで出来ています
とでました。因みに私の友人は88%の大阪のおいしい水からできています。
PCR法やエライザ法でも調べてみたいもんです。個人情報ですので何とか内密に。ゴメンネ!
今晩は、お久しぶりです。
> トレーディングタイプの投資家のリスク管理として考えられた方法です。
VaRは現時点での資産のリスク量に固定されている為、短期的なリスク管理には
適しているが、長期的なリスク管理には向かないとお考えですね。
ぐっちーさんは、銀行のような所がもっているポートフォリオ(長期に安定した
資産)とも、仰ってるので、長期的なリスク管理で考えると、現時点ではVaRとE
aRを組合わせたモデルが適切でしょうか。
けっきょく、VaRですか。邦銀がリスク管理に投資していないとは思えないのですが、横並びは変わらないのでしょうか。以下は、「妄想」ですが、行内の担当者自身は過度にrisk averseでなくても、7:3ぐらいで行内の評判を見ていないと、上に上がれない。本当は、もっとよさげなリスク管理の手法があるんだけれど、よそがやらないと動けない。仮に利益のチャンスを逃しても、あるいは損失をだしても「他行がやってますから」で逃げられるVaRでやらざるをえない。くだらない「妄想」で申し訳ありません。
会計基準の強化とか、リスク管理の高度化とか、それ自体は正しい方向性ですが、どうも実態と運用がうまくかみ合っていない印象を受けます。この手の話では滅多に正論は聞かれないので、すっきりしました。多謝です。
難しいことを考える必要もないし、未実現損を抱えても、上がるまで待てばよいのですけど。(未実現利益は、ぬか喜びに過ぎない。)債権は満期まで保有すれば、お約束の金額を手にすることができる。(手堅い。定期預金と同じ。)
XX理論に疎い私は、ファイナンスにおけるRISK(市場リスク)は、下ブレだけではなくて、上ブレも含めて、平均からの乖離なんだあ?!へぇ?!と驚いたものです。
RISKって何なんでしょう?新BIS規制って何なんでしょう?分母と分子に不確実性をブチこまれてもなあ、みたいな。
債権のリスク管理という話題からは、逸脱するのかもしれませんが、信用リスク、市場リスク、オペレーショナルリスクって、どうやって計るんでしょう?私には、細かく理解する気も、その必要もないですが、一生懸命にリスクを精査して、時価評価しても、手を抜いても、結果(精度)は同じなんじゃないのかなあ、という予感はしますです。何となくですが。違うのかもしれませんが。
日本語だけでは、外国人相手に嘘をつけません。
石原のような考え方は古い考え方ですね。
リスクを定量化するにあたっては、実務上は多少現実的でないものであっても、一定の数学的仮定をおいて計算せざるを得ないのでしょうから、まあ仕方が無い部分もあるのではないかなとか思います。
リスク管理手法の限界とか問題点をしっかり理解した上で利用するということが重要なのだと思いますが、そのあたりが不十分な金融機関が多いということでしょうか?
皆が同じ手法を使っていて同じ方向に動くなら、目ざとい外資系金融機関はそれを逆手にとって儲ける事とか考えていたりして…
表題のものをわきまえろ、ってのは文系でも
当方の所属する理(σ(^_^;の場合狸)系でも
一緒なんですね。って当たり前か
>少なくとも残存5年程度の国債についてはVARでコントロールする意味は殆ど無いと思われます。
おっしゃる通りです。
MMFの元本割れを起こしてしまったところに以前勤めていた立場からすると、VARもそれなりに使える物だと思います。
結局
>リスク管理の手法を金融庁や日銀が一方的に押し付けるのは本末転倒
に尽きますね。
VARで長期公債を評価されたら立場上キツイのはXX省(?)。
VARって財政のガバナンスには効くのかなあ。
誠心誠意、嘘はつけないシステムを作ろうとしているのかなあ(?)
バーゼル2第2の柱の金利リスクアウトライヤー比率の計算は、資産負債オフバラネットの現在価値の変動幅になっとりますな。
金融庁の押し付けとかいってる人は、第2の柱の実施方針を読んだほうがよさそうです。