2008/02/04 10:09 | 金融全般 | コメント(25)
投資銀行からSWFへ
あまりこれといったニュースの無い中、飛び込んできたのがこれ。アエラで書いたようにやっぱり出てきましたね。
シンガポールGIC、ウェスティンホテル東京買収・770億円
シンガポール政府投資公社(GIC)は月内にも、米モルガン・スタンレーが保有するウェスティンホテル東京(東京・目黒)を約770億円で買収する。米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の余波で世界的に不動産取引が冷え込むなか、日本の優良不動産がなお割安とみた海外政府系ファンドの大型投資が実現する。 GICは2日までにウェスティン東京の土地・建物を取得することでモルガンと基本合意。今月下旬をメドに取引を完了する計画だ。GICはホテルの営業をそのまま継続し、長期保有により価値を高める方針とみられる。サブプライム問題に端を発した世界的な金融市場の混乱で、米欧のほか日本でも大型の不動産取引がほぼストップする環境のもと、GICは異例の規模の不動産投資に踏み切る。(03日 07:00) 以上日経ネットより。
大筋正しい記事ですが、GICにとってこの程度の投資は「異例の規模」でもなんてもありません。ちょろいもんです。日経がGICを直接取材していない、というのがみえみえです。(多分GICの残高が2000億ドルとかいうのみて勝手にでかいじゃん、とか書いたんだろー、と思われます。)
また、GICは日本の不動産、特に商業施設については「割安」との判断をここ数年変えておらず、その意味では” On the cource” の投資だ、という認識が大切です。
東京の一部の商業施設はニューヨーク、ロンドンはたまたパリに比べてまだまだ割安、というのが彼らのスタンスで、まさにその通り。サンジェリゼ通りに比べればまだ表参道は安い。日本国内のマーケットとしてではなく、グローバルマーケットの一部として捉えているところがユニークなのですs。
彼らのユニークな所はシンガポール人、つまり中枢は殆ど華僑な訳ですが、東京の不動産への投資意欲のかけらも中国(例えば上海)には無いと言う点。彼らは中国の土地保有形態、あるいは現在のビル、ホテルなどの保有形態がリーガルにも極めて不自然、と判断しており(いつ中国政府に接収されてもおかしくないと考えている、まじで)、その分を東京に集中しているという頭のよさ。(中国人なんて信じられないよ、という方までおられますからね・・・笑。ってかあんた何人よ!!、ってな笑い話はしょっちゅうです)
日本の外貨準備はいずれ国債の返済に充てなければならんので、損したらどうするのか、という議論が横行する中、2000億円が5000億円になったら、その分減税できるだろう、と考えるシンガポール政府のコンセプトを少しは学んだらいいと思うよ。
このままいったら日本なんてジリ貧な訳ですよ。どうやって稼ぐつもりなのか。
国民自身が
「損したら増税、結構じゃないの、その代わり損させた役人も責任とって退職金なし、かつペナルティーだからね」という具合に(実際GICの連中は準国家公務員扱いで損失を出すと退職金はない)是々非々で物事を考える必要があると私は思います。9000億の外貨準備のうち2000億だけでもSWFにまわして有効活用するという議論も必要でしょう。人口がどんどん減っていく、生産基地は海外に出て行く、この方向が変わることは未来永劫ない。
シンガポール政府にしても、あの国土、あの人口で将来を見た場合、お金に働いてもらう以外に道はないと考えたからこそ1970年代からテマセック、GICを立ち上げた。やられたことだって勿論あります。だからこそ、日本もいい加減考える時期に来ているのです。労働人口がどんどん減っていく国内でこれ以上税金を搾り取るという議論はデッドエンドで、ここはお金に働かせるという発想が欠かせません。
話がそれましたが今回のディールはやはりモルスタ救済という見方が出来るでしょう。GICにしてみると汐留でホテルも持ってるし、ホークスタウンもあるし、違和感のある投資ではない。個人的なゲスでは当初は資本出資を要請されたと思います。GICは私のいる頃からモルスタのグッドクライアントっだったのでパイプは十分にあります。
しかし、恐らく、中国が10%にも及ぶ出資をしたので「奴らと一緒はやだ」、GICがだだをこねた、というのが真相だと僕は見ています。そのくらい中国が嫌いなんですね(笑)。その代わり不動産なら買ってやるけど、どうする??、ってな具合ですね。
その意味で、遂に金融市場の主役はインベストメントバンク、ヘッジファンドからSWFに移りつつある・・・のかもしれません。
余談ですが、日本にとってこのシンガポールと言う国はものすごく重要な意味を持っていると思います。幸い、日本が占領してしまった国の中では圧倒的に対日観がいい。これはリー・クアンユーの功績でしょう。今のうちに彼らとがっちり手を組めば中国に対しても十分対抗できるだけのノウハウがあります。何せ元中国人なのですから(笑)。
そして日本が苦手なインドへのアクセスも十分です。人口で言うと、多分中国人の次はインド人でしょう。インドの有力な財閥もシンガポールには相当進出しています。
ま、この話は長くなるのでまた機会があったら書いて見ますけどね。
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25 comments on “投資銀行からSWFへ”
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シンガポールと中国との嫌悪があるのはおかしいです。
シンガポールは、たしかにインドが地理的にも近く、東インドの国々は、シンガポール経由で商品が入っていたのを思い出しました。
”東京の一部の商業施設はニューヨーク、ロンドンに比べてまだまだ割安”というのはよく聞く話です。ただ、世界的な金融縮小が進む中、普通に考えればニューヨーク・ロンドンの不動産も値下がりする局面が出てくるわけです。マーケットのコンセンサスが、現在の”相対的に割安”というのから、”ヒストリカルに割高”と言うのに変わる日も近いのではないかと思います。オイルプライスが下がってくれば、特にロンドンの不動産は厳しいと思うのですが。GICはそんなことは百も承知なんでしょうけれど。
山椒と図体はでかいがトロイ、
いいコンビではありませんか。
どちらも嫌われているし・・・成功するとね。
個人的にも好感度大であります。
学生時代、始めてのシンガポール、ホテルがオーバーしていて、ロイヤルスィートに気前よく代えてくれた。
両サイド繋がるサロン、バァー、会議室付き、二つの広いベットルーム、二つのバスルーム。
興奮して眠れなかった・・・今でも眠れないかも知れないが。
お互い良き用心棒になれるのでは・・・
旧国鉄の債務処理の為に設立された日本国有鉄道清算事業団が逆に債務を増やして解散し、国民にツケをまわしたように、日本の官僚&元官僚は無能揃いです。
大体、アメリカ発とはいえ、現在の経済情勢の何の対策も打ち出せないだけでも政府・官僚の無能振りが示されています。
そんな無能な連中に資金運営を任せても、必ず失敗して、国民が汗水流して貯めた貴重な外貨を失うことは眼に見えています。
しかし、その内に米ドルも暴落し、外貨も紙切れになるでしょうから、その前に日本でも地金型金銀貨を発行し、国民の財産を保全することです。
現在、世界の金総保有量は約100,000,000,000gなので、総額3,00,000,000,000,000兆円強になりますので、理論上日本人が世界中の金を買い占めることが出来ます。
実際には日本の金輸入量が増えると金価格が上昇しますのが、それで金貨を買った人は儲かるし、政府も輸入時より販売時の金価格上昇分が儲けとなります。
これをストレートに行うと、アメリカが怒りますが、天皇陛下御在位60年記念金貨はアメリカから輸入した金で鋳造されました。
この時は、政府が儲けを欲張りすぎて評判を落としましたが、それを反省して発行された天皇陛下御即位記念金貨は現在地金価格も額面に近づいていますし、皇太子殿下御成婚記念金貨は額面を超えています。
ところが、長野五輪以来、金貨はプレミアム付きで少量発行されるようになり、国民の金保有量増加には余り寄与していません。
官僚&元官僚というものは、自分たちが儲けることを第一に考えるので、何をやっても国民の利益にならず、結果国家的損失を出してしまいます。
左様な日本のアホ官僚が華僑国家の真似をしても成功する筈がありません。
どうすれば国民が汗水流して蓄積した財貨を世界中のハゲタカ共から守ることが出来るのか? それを第一義的に考えることが政府の務めだと思います。
全く切腹か懲役でないと、際限無いんじゃないスかね。この国は。
ごもっともですが、じゃあ何をどうしたらいいんですか?
我々国民がこの官僚支配体制政治に何か出来ますか?
選挙で民主党や社民党に入れれば変わりますか?
変わらないよね?
グチばかり言われても読者はネガティブになるだけ。
金融機関の人間は政府官僚の飼い犬に成り下がってるから、
『正しい資産運用』を銀行や政府、国民の誰もがやれないのでは無いでしょうか?
くだらない投信ばかり国民に売りつけ、裏で国債を買い支える。無知で無垢な国民はそれを支え続ける。
日本から出るしか無いとさえ思えてしまいます。
しかし大抵の日本人は日本でしか生きられない。
座して死を待つしか道はないのでしょうかね?
日本人は減少するのでしょうが、居住人口は減るのでしょうか?
田舎在住ですが、正月明けに免許書替に運転センターに行くと、外国人の多さにビックリしました。(前回はそんなにいなかったと思う)
一般人が知らないうちに、緩和されているのではないかと、感想を持ちました。
うちの嫁さんも一応エスニシティとしては「中国人」だが、中国人と一緒にされることは断固拒否!です。
さて、そんな嫁は、うちの子供たちには早くから「お金に働かせるために、どうやって自分が働くか?」という命題を与えて教育しています。そんな私は、そういった境遇にはまだ達しないのだが…。
自分で決定権を行使する財閥は第2次大戦でつぶされました。以後はサラリーマンと小金もちだけです。それが原因ですよ。それくらいご存知ではないですか?
シンガポールは、中国系とインド人とマレー人ですね。マレー人はどっちかというと下層にいます。中国人と一くくりにして海外にいたら全部華僑と考えるのは僕らの感覚でして、彼らの中には華僑と客家(台湾だと外省人も)は違うとか、出身地別の民族意識が結構あったりします。インド人も多分色々あると思う。
あと、国というのは他所の国と経済戦争するために存在しているわけでもないし、日本人が作った企業体でもないですから、外貨を稼ぐとかの重商主義的発想はやめた方がよろしいかと。仕事をしていると自然に自分の仕事から類推してしまいがちですが。シンガポールは絶対にメジャーになれない大きさ故に企業国家を標榜せざるを得ないし、国単位で経済活動を行ってもお目こぼしをもらえるだけだと思います。
SWFなんて国がやったら、民間の金融機関は勝ち目無いですよ。そんなに公的な機関が欲しかったら郵貯を残しておけばよかったのにと思う今日この頃w
ちなみに、円を国際通貨にしたかったら、日本は経常収支赤字にしないと駄目です。だって、他所の国の外貨準備にするに足る円を世界中にばら撒く事ができませんから。
総額3,00,000,000,000,000兆円→総額300,000,000,000,000円つまり300兆円ですね(汗)
序でですから・・・
国内に金がある今のうちに、遷都なんかは如何でしょうか?
遷都の財源として特別国債を発行し、現在の首都圏にある国有地を売れば捻出可能でしょう。
ドサクサにアメリカ国債も売却してしまいましょう(笑)
遷都となれば、オリンピック開催など比較にならない経済効果により、国内景気が上昇し、税収も増えるでしょう。
いつも楽しく読ませていただいてます。
> 圧倒的に対日観がいい
シンガポールでエコノミストをしていますが、こちらにいて受ける印象は、「親日感情が強い」というよりは、「いびつな嫌日感情にはとらわれていない」という程度のものです。リー・クアンユーだって、若い頃には日本軍に殺されかけたりしてますから、色々と思うところもあるんでしょうけれど、日本に対しては戦略的にオトナの接し方をしているという印象です。
華僑は、中国皇帝の圧制から海外へ逃れたのが期限。
シンガポールの華僑が中国中央政府に不信感を抱いているのは、当然です。
nyantaでーす。
>シンガポールと言う国は・・・彼らとがっちり手を組めば中国に対しても十分対抗できる・・・
どっちにしても「相手の嫌がる事はやりたくない」福田とか中国にご機嫌伺いに行く民主とかがやってる限りだめ。
政治と軍事が強くなければ何やっても駄目な事に気がつくべき。世界史上、軍事が弱い国が強い経済が続いた事がない。金融や経済でちょこちょこ頑張っても限度がある。例イギリス、スペイン、モンゴル、アメリカ。
本項は流石と唸らせていただきました。
「お金に働かせる」と言う発想は、特に日本の個人には欠けた認識で、お金の使い道について政府もそうですが各人心に留め置くべきだと思います。
華僑が中国人を嫌う話はある意味当然です。中国人は自分の属する集団以外の同属を一番嫌います。
アンケートで朝鮮人、日本人が嫌いと言うのは良く報道されますが、ここに中国人を入れたら間違いなく圧倒的1位に輝くでしょう(笑
金持ちな中国人は貧乏な中国人を侮蔑し、貧乏な中国人は金持ちの中国人を憎悪する。同じ階層でも信用は出来ず、結局最後は同郷や血縁といった物に頼ります。
国民国家としての成立過程が浅く、巨体を強権で維持してきた弊害の一面と言えるでしょう・・・この理由から彼らが真の意味で大国となることは無いと考えています。
日本の未来像については、ぐっちーさんとは若干異なるビジョンを私は持っています。
日本人とドイツ人は物造りを止める事は多分出来ません。これは遺伝子レベルで魂に刻まれた性です。
国家の成長過程で工業から金融へシフトが起きるのが常識とされてますが、おそらく日本とドイツは工業国で有り続けるでしょう。
これは技術技量に対する尊敬という文化から来る物で、金になる物かが評価基準の絶対である他の民族との違いだと考えています。
ぐっちーさんにも思い当たる節があるはずです・・・美味しい料理を作る料理人とお金持ち・・・どちらを尊敬されますか?(笑
東京の価値が落ちてきてる感じがするのですが、GIC的にはまだ行けるなんでしょうか。
このまま行くと金融世界大戦的な形相になりそうですね。
マスコミは役人のいいところを見つけて、たまには褒めないと、大戦で生き残れないのでは?
皮肉な言い方ですが、日本はもう少し貧乏になったほうが良いと思っています。お金を貯めて数年に一回、海外旅行に行けるくらいのレベルでしょうか。
今の政治家やマスコミ、識者と言われる方たちは、基本的に自分達の生活水準が維持されることが前提で議論しているような気がします。つまり、真剣味が足らない。現実感がない。小田原評定を繰り返すだけの、お気楽商売ですね。
貧乏になれば、さすがに国民も自分たちの税金の使われ方を真剣に考えるんじゃないでしょうか?
給与が下がったので、家計のやり繰りに真剣に取り組む奥様方のように。
ただ、このまま行けば、日本は自然に貧乏になっていきますね。
その時、国の借金をどうやって返すんでしょうか?銀行の預金封鎖をして、借金にあてたりして。
私も今朝自分のブログでGICについて書いたのですが、ぐっちーさんの見立てと遠からずだったので、ホッとしています。
日本を嫌ってるのは朝鮮人、中国人、沖縄人の一部じゃないでしょうか、金持ち喧嘩せずでこういう連中は相手にしなければいいのです(小泉はこの格言をブッシュに教えて上げたら良かったのに)、ほとんどのアジア人は手前味噌ですが金持ち日本を尊敬してると思います。シンガポールは先進工業国日本と言う事で尊敬してると思いますね。これからも国際収支は黒字を続けて行くでしょうし、この上SWFでまだ儲けようとすると又エコノミックアニマルと言われかねません。儲け過ぎると必ずひがまれます。問題は国内です、歳入に見合った政府にしないといけない事は分かっているのにどうして出来ないんでしょう。ガソリン税の一般財源化は二階と古賀を落選させて達成させたいものです。一般論で恐縮です。
大量保有報告書によると、08/02/01提出で、シンガポール政府投資公社がプライムリアルティ(8955)の投資口を5.06%保有しているとのことです。
これもシンガポール政府による対日不動産投資ということなんでしょうかね。
8955 日本プライムリアルティ投資法人
義務発生: 2008/1/25
保有割合: 新規 → 5.06%
提出会社: シンガポール政府投資公社
保有目的: 純投資。発行者の経営権を取得する予定及び支配について提案を行う予定はない。
いつも楽しく拝見させて貰ってますが、
私も車好きの暇人さんと同じで、日本はもの作りで生き残ると思います。
ぐっちーさんはやはり金融視点ですよね
#当たり前ですが(笑
ファイナンスに強くなり、お金に働かせる発想はMUSTですが、もの作り国家の本質を見失うと、それこそ亡国です。
農業国家であったアルゼンチンやウクライナがどうなってしまったか…
国家としての強みをきちんとマーケティング出来れば、金融危機の焦土の後でも日本は立ち直れると思います。
金融の人はメーカーの人を大事に考えるべきでしょう。
シンガポールは地政学的チョークポイントですから、華僑は代理人として存在してるんでしょう。親日感情なんてないと思いますよ。冷たい観察眼だけでしょう。フィリピンの財閥が日本人やアジア人に優越感を持っているのと同様に優越感を持っていると思います。白人から見れば華僑は最も優秀な召使でしょう。従軍慰安婦問題などの報道を見れば分かることです。植民地支配の構図は依然として残存していますね。
GIC中国の不動産も持ってますよ。蘇州の工業団地とか。間接的には、香港の上場リートRREEF CCT REIT (625)もIPO のときから持ってるはず(北京のソニー、NTT、ゼロックス、BMWが入居)。
中国建設銀行などの国営企業のIPOにもテマセクなどの名前が結構見受けられます。
日本の成すべき事は、世界最大の資源国家になることです。日本の近海には世界最大規模の埋蔵量があるとされているメタンハイドレードがあります。そのエネルギーを商業化まで持っていくまで国の埋蔵金を使って発掘するべきだと思います。
最初はコストが掛かるでしょうけれど、技術の進歩と効率化が進みやがて安いコストでそのエネルギーを使うことができるでしょう。
そうなればそのエネルギーを国内のみならず世界に売りつけ巨万の富を得る事が可能かとおもいます。