2005/05/25 12:33 | 金融全般 | コメント(5)
債券の強さ 上がれば上がるほど買うメカニズム
閑人さんのご質問に対しては「十分有り得ます」となります。昨日今日と書き込みましたようにこれは金利感ではなく完全にFTQ「Flight to quality」・・・質への逃避(どうでもいいけど変な訳)です。
将来のインフレ見通し、だとかは「一時お休み」で、とにかく、解約に備えてキャッシュポジションを高め、一時的にそれを米国債に置いておくファンド、或いは直接的に社債を売って米国債に置き換えて様子をみるファンド、などの動きの中で起きているものです。更に、私の良く知っているハイイールドのファンドマネージャーには、自分のポートが下がってきているが、ここでたたき売るととんでもない価格を叩かねばならないので、クレジットラインを使って資金を借りて米国債を買って並行して持っている、なんてこともやってる輩がいます。(これは意外にリーズナブルです)
ですから、金利感に関係ないという意味で、普通の米国債のプロなら躊躇する4%という防衛ラインも、彼等米国債の「しろーと」にとっては何の意味もないという事で、平気で踏み越えてくる可能性があります。ただでさえ、先日の失業率の27万人を見て、景気が強い→ショート、というポジションを構えた人は少なくありませんので、ここで「踏まれる」可能性は十分です。
翻って日本国債は如何でしょうか?
6月高値の140.94まであと一息の140.74を本日高値で叩き出しました。こちらも先日のGDP 1.3% なんてのを鵜呑みにしてショートでもしていたらひとたまりもありませんでした。
日本の場合、FTQではありません。断言するのは乱暴かもしれませんが、まあ、断言できる。なぜか??
ハイ・イールドマーケットがないから。簡単です。
日本国債を「質への逃避で買われた」などとしばしばコメントする、日経新聞。アホです。判ってません。質への投資をしなきゃーいけないようなハイ・イールドマーケットが存在しないことはおろか、そういうアセットミックスを持っている投資家がいないのだから、起きるはずはない。全て一緒に上がってくるので、要はみんなで買ってるだけです。単純明快。需給です。買う奴が売る奴より多いだけ・・・
敢えて批判を承知で言うと、本来、質への投資が起きるならば、ハイ・イールドに一番近いアセットは銀行が抱えている例えば中小企業向けのローンがそれに近い訳です。引当金を積んでいる位ですから、カテゴリーとしては立派な「ハイ・イールド」「ジャンク」であります。
Flight to quality・・・質への逃避、があるとすればそういったローンをぶん投げて日本国債を買うことです。本気でそういうことが起きていると、思っているのでしょうか??? それで質への逃避なんて言ってるんでしょうか?? クレージーです。
そういう機動的な動きができない(能力が無い、仮にあってもそういうオペレーションができない)日本の金融機関は質への逃避でJGBを買うことは無いのです。もし、それが出来て、不良債権をブン投げて、日本国債をFTQで買っていれば今の「うしなわれた十年」は起きようもないじゃーないですか??
日本の金融市場では「質への逃避」は存在しないのです。
ただ、唯一こういう発想はあるかもしれない。
今の日本の株式、不動産の好況を支えている(不動産は大部分)外国人投資家、HF,その他の人たちが今回のGMなどの混乱で、本国で傷ついて、例えば倒産してしまいました。そうなると日本で買っていたビルなども投げるでしょうね、と言うことは景気に悪い影響がでますので、債券を買いましょう、という結構まだるっこしい思考回路をたどって、結論として「買い」というポジションを持つ、という奴。あんまし頭のいい事だとは私は思いませんがこれはアリでしょう。認めるよ。
でもこれはFTQではない。また、アメリカの場合、潰れてもそのアセットをすぐ次の投資家が買ってしまいますから今回の一連の事件が波及して日本の景気を直撃することはないでしょうね。あったとしても随分先ですな。
要するに日本国債はなぜか、マジで、みんなで買っているんです!!!
思い出されましたか? そう、債券は上がると買う、下がると更に売られるという典型的なサラリーマン相場です。何かショックがあるまで上がり続けるでしょうね。
わかりやすい例をあげましょう。
昨日ある親しい投資家さんから面白い話を聞きました。上がれば上がるほど買う理由。
今月いくらのインカム(利息です)が必要だと既に数字が決まっているので、価格が上がればあがるほど、つまり利回りが下がれば下がるほど利息収入は減っていくので絶対化された利息収入を確保する方法は??
その分サイズを増やすしかない・・・・・・
という恐るべき(私にとっては)ものでした。これで、日本国債が上がる理由がお分かりですね。
元来ここまで金利が下がると、いわゆるオルタナティブ(クレジットを含む)或いは資金の国外逃避(より利回りの高い国に逃げる)が起きると経済学では教えますが、日本は当てはまりません。死ぬまで日本国債を買い続けるでしょう。
個人的には
とてもおつきあいできませんが(笑)
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5 comments on “債券の強さ 上がれば上がるほど買うメカニズム”
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いつも楽しく拝見させて頂いています。
初めてレスさせていただきました。
全くもってAgree!です。「こいつらバッカじゃねぇの?」と思っています(声には出せませんが)。かといってジャブジャブのお金をどこに?と言われても株は動いている銘柄は新興市場の昨日今日創られた会社の株ばかりですし、為替を取りに、と思っても年老いた爺さまたちが「為替は危険!」と訳のわからぬ解釈で。。。じっくりトヨタとか新日鉄なんかを50年ぐらい持つつもりで買えばいいのに(銘柄的にいいのか悪いのかは別ですが)。いつか来た道をまた歩むのでしょうね、人呼んで「VaRショック!」。懲りない面々です。
目から鱗でした。
私は株式専門ですので債券は全くの素人ですが、なぜここまで日本国債の需要がタイトなのか意味不明でした。
でもその理由を聞くと、日本の金融業はここ数年の試練を経て欧米に追いつきつつあると思っていただけにショックでした。
なんとも情けない話ですね。
実際、GMってのは一回潰せないんでしょうか?
潰して、レガシーコストを面チョするって事は無理なんでしょうか?。
あと、「サラリーマン相場」ってのは日本固有のものなんでしょうか?。
夜露死苦!。
FOMCの議事録のせいか、いつのまにか景色が変わっていました…
measured paceは次のFOMCで消されて利上げも終了!?
もう少し利上げが続くと思っているんですが。。
皆さん債券買い(JGBだけでなく米国債も)をバーカとおっしゃっていますが、踏みあげられている身としてはなかなか声高に言えないですね。。。
ぐっちさんのコメントはいつもためになります。まだまだ甘いですね。
個人的には、JGBの代替としてトヨタ株は真剣に考えてもいいと思います。。
大胆に言ってしまえば、そういうことになりますね。もっとも、人口が減少する今後の日本の平均的経済成長率を考えると、1%台前半の10年国債利回りも決して低くないという理解も可能でしょう。