2011/10/06 08:59 | マーケット | コメント(14)
Screwflation
こちらのブログでは既に何度もエリザベス・ウォーレン ハーバード大学教授の名著 Two Incomes を取り上げてきたのでかなり早くから中間所得層の貧困化については議論してきましたし、私の講演会でも今年のキーワードになりつつあります。
現在これ以上、的確に経済状況を説明できる理論を私は知りませんのでウォーレンの主張を私が補足しますと・・・
要はアメリカでは賃金の上昇が止まり(主に生産拠点の海外移転による)中間階層が崩壊したことにより、1970年代から専業主婦がどんどん少なくなり、夫婦二人で稼がないと生活ができなくなり、一方女性の社会進出は一面喜ばしいものではあるものの、経済学的に考えると男性を労働市場から駆逐する役割を果たし、現在の失業率に見るように、失業の増加は圧倒的に男性ホワイトカラーに偏っている。一連のIT革命がそれまでのブルーカラー失業という特殊な現象が、一般的ホワイトカラー管理職の職場を奪うのに一役買う事になる。
その結果 アメリカの中産階級の崩壊は更に深刻化、特に単純労働者は労働賃金の安い海外での調達が加速することになり、リストラ、人員削減がアメリカ国内では発生し、消費停滞が起き、経済活動はますます停滞する。
中央銀行は当然金融緩和に向かうが、低金利で調達した資金で株式を買い戻す企業が増えるため、株価と配当は上昇、更に高所得者の収入(株主)は増えるが、従業員の給料が上がらない、という悪循環に陥り、ますます2極化が進む。つまり、グローバリゼーションのメリットを取れる人(大企業の経営者とその株式を大量に保有するウォーレン・バフェットのような人)とダブルインカムをもってしても中産階級の生活が維持できない層に分裂する・・・彼らは膨大な借金を住宅を担保にして抱えたために今、それが大きな負担となり、ますます生活が困難になりつつある・・・
こういった中間層の没落(貧困化)がこの前書いたような Sugar Daddy を生み、今回のような一連の騒動につながる訳です。
グローバリゼーションはアメリカ企業の利益を著しく増大させ、途上国の生活を向上させますからここに向かって商品を売れる国、企業はますます潤うものの、彼らの生活高度化により、食糧、エネルギー価格などが上昇に向かうため、通貨高(通貨高ですよ!!)で輸入メリットを享受できない国(アメリカ)の生活費はますます上がり、貧困化した中間層を更に直撃する。
因みに日本は通貨高で相当相殺効果があるものの、それでも2010年の物価統計によれば食料、光熱・水道、通信・交通分野では物価が上昇しており、中間層の生活を圧迫している点ではアメリカを追いかけていると言える。
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一言でいいますと、グローバリゼーションにより安い労働賃金にとってかわられる職業についている人は失業、通貨高により輸入物価が下がればその分を取り返せますが、そうでなければ没落していくしかない・・・ということになります。これがアメリカと日本の違いになりますが、日本の中間層の崩壊も既に始まっており、1998年から、戦後最高のあのいざなみ景気を経てもなお(貿易黒字はあのバブル全盛期の倍!!)皆様の給料があがっていない、というのはどの統計を見ても明確になっています。
この状況で増税する、というのですあら開いた口がふさがりません。
ギリシアの蔵相、ヴェニゼロスでさえ、この一年間ギリシア経済に最後のダメージを与えたのは増税と財政削減による景気後退だった・・・・と言ってますからね。
いずれにせよ、このスクリューフレーション、世界的に起きつつあり、アメリカだけが特別な訳ではありません。くどいようですが、安い労働力で代用するということは
円高による国内産業の空洞化
ではありあせん。グローバリゼーションの必然の結果であって、それは世界中の企業がやっていること。
逆に、それどころか、日本は円高の御蔭でまだ、中間層が為替と言うメカニズムにより所得を取り戻している、ということになります。つまり物価がそれほど上がっていなくて良かったですね、ということです。
円安になったら日本の企業は海外に生産拠点を移すのをやめるとでもいうのでしょうか?
トヨタにしても東芝にしても、では1ドル100円になったら日本人の雇用を倍に増やし、給与も倍にする、と約束できるのでしょうか? できる筈がないのです。
グローバリゼーションと円高は全く別の事項であり、混同すべきではありません。
このあたりをごちゃまぜに議論する人が多くて辟易としますが、わたしゃー頑張りますよ。
では!
最後に、スティーブ・ジョブス。巨星墜つ、であります。
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14 comments on “Screwflation”
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一瞬、スタグフレーションと読み間違えておりました。
Winer takes all.
というバブル時よりも、
Only winer gathaers everything.
とでも形容したくなる 「21世紀ほとんどみんな貧乏 」へ移行完了中が正しいのでしょう。
世界でみるよりも、漏れ聞こえてくる中国の様子にも適用できそうです。
目先の利く人間や20世紀末の都市に住む官僚が国営企業をほとんど0で譲り受け、それを元手に親族と一緒に金稼ぎまくり師弟を大学に送り込みステータスを確立してしまう。ひとたびステータス内グループに入り込めば内部情報が入り、現官僚と仲良くし都合のよい指導をお願いし、賄賂を還流し、さらに黒いサイクルを作り上げ、IT機器もネットも手に入れ余分な末端人員を整理し地上げでも農地入手でも自由自在。蓄えた資金で海外の休眠会社をM&A後そこそこの業績をつくりあげ海外市場でIPO、その後経営が傾いたり情報公開でメーク失敗すれば現地責任者が詰め腹を切って…
使われる人間は単に使い捨て要員
もちろん、私の勝手な推測です。
妄想はさておき、円高がなかったらLNGにせよ原油にせよどう確保してこの夏を乗り切ったんでしょうか。電力確保のために契約にいたるまで苦労した人の声を聞きたいですねぇ。札びら切って売ってくれるとも限らないでしょうし。仮に$1=100円ならエネルギーソース3割アップです。電気代が高いから生産業は国外へって言ってるはず。
スクリューフレーションというキーワード解説
今の自分が日本経済に抱いているモヤモヤを説明してくれるもので大変勉強になります。
グローバリゼーション→円高→国内雇用悪化で中間層崩壊→外国相手に商売できない日本国民オワタ
だから、グローバリゼーション=円高=悪
っていう議論はわかりやすいし、ネトウヨさんからサヨクさんまで、信じてる人が大変多いと思います
ここの誤解を解き、尚且つグローバリゼーションに対応できない国民に対する処方箋を提示できなければ(つまり、日本人はこれから何をメシの種にして食っていけばいいのか?)円高悪玉論は無くならないんじゃないかと思います
リーマンショック直後の世界のデリバティブ残高が6京円。その後、この数字が大幅に減少したとは思えません。
借金によって借金を積み上げた6京円を、世界が返済出来るかどうかを考えれば、最早結果は見えています。
日本の様に、地道に返済しても、20年経っても未だに返済は終わっていません。
円高はとても結構な事ですが、これはドルの弱さと、ドルの崩壊を先延ばしするヨーロッパの猿芝居の結果と言えないでしょうか?
「ドルは基軸通貨だから崩壊などあり得ない」という考え方は、「6京円の借金を地道に返済すれば」という前置きが付くはずです。
一方、「6京円の借金など踏み倒してしまえ」と考える者がいるとすれば、ドルの存亡など世界経済の破壊の前には、そのきっかけ程度の出来ごとになってしまいます。
日本人にとっては「借金は返すモノ」ですが、西洋人にとっては「借金は踏み倒すモノ」では無いでしょうか?
リーマンショックで家を追われた者とて、ノンリコリースなので、家を手放せは、個人の者金はチャラになります。そもそも、借金を地道に返す習慣の無い国の人達を、日本人と同様の尺度で測っていては、判断を見誤ると思うのですが・・・。
無責任な発言ですが、現在世界に蓄積している様々な歪は、戦後60年以上、どうにかツギハギで維持してきた社会や経済の歪です。システムはツギハギでは維持できなくなる時がやがて訪れ、「更新」の時期を迎えます。
戦争という分かりやすい「更新」が人道的な見地から不可能な時代に、どのような「方法」が用いられるのか・・・大規模な戦争に匹敵する程、社会秩序を根底から覆す事が起きなければ、世界はこの次の成長軌道に乗る事は出来ません。
但し、新しく訪れる社会で、私達が「平和で豊かな中流」で居られる保証はありません。既に新興国の発展の為の投資として、私達に貯蓄は使われています。この資金が手元に戻って来ると信じるのは、平和な時代の幻想では無いかと、私は考えます。
だから、グッチーさんが、「タンス預金が一番安全」と言われるのでは無いのですか?
ウォーレン女史・・ピンクのシャツ・・
だから・・ぐっちーさんも・・ピンクシャツか・・違った・・
彼女は・・手当たり次第に・・着ている・・
ウォール街デモ・・スティグリッツも・・顔を見せたとか・・
グローバル経済は・・余にも弊害があると・・スティグリッツが・・指摘してから・・久しい・・今・・格差を生まない経済システムを・・彼は提唱している・・
ウォーレン女史のアイテムは・・下院・上院を通過しない限り・・紙のドラゴン・・紙の虎・・銀行家は怖くない・・
オバマは気付くのが遅かった・・
このままなら・・日本も数年で・・アメリカの後を追う事になる・・
民主党政権・・
若旦那が失敗し・・番頭が失敗し・・手代が失敗しそうになっている・・次は丁稚がでてくるだろう・・・
米の1%の富裕者は、大幅な譲歩をしない限り、ステージから引きずり降ろされるだろう。
東電と、それを生み出した電気複合体は、元の姿をとどめなくなるくらい解体されるまで、許されないだろう。
栄華を誇った虚金産業は、そういえばその昔そんなのがあったと、わずかに思い出されるほどの存在に成り果てるだろう。
日本名義のアメリカ国債は、一度も日本人の目に触れることもなく、連銀の地下でひっそりとその役目を終えるだろう。
ただ春の夜の夢のごとし。
赤穂浪士は47か…
GUCCI氏+47=48
華々しく、どんどん対談して、論破していってもらいたい。
かなり悲観的になる今日この頃。
時間がない…。
みんなの党の江田憲司氏のブログは、今の政権がいかに財務省の言いなりか、よく分る。
この党への支持不支持に関係なく、参考になる。
やはりぐっちーさん、政治家連中をいかに動かすか、ですよ。
ぜひトライしていただきたい。
「革新」がそのまま歩いているような、スケールの大きい、本当に偉大な方だったと思います。
来年3月に出版予定だった「自伝」の発売が、今年の11月に変更されたことが報じられたとき、「もしかすると、病状が、かなり進んでいるのかも。。。」と感じていました。 残念ながら、発売が間に合いませんでしたが、きっと、空の上から、ご覧になることでしょう。 どれほど壮絶で、劇的な人生だったことか。。。 日本での発売が待たれます。
近所も浸水の恐れがありそうで・・津波アエラあっという間に売り切れてしまってまだ読んでいません・・。
で増税の件・・ちょっと小耳に挟んだのですが新聞協会って与謝野さんと取引していたんですね・・。知らなかった・・やっぱり業界ぐるみのキャンペーンだったんですね・・。↓
http://izasaburo.iza.ne.jp/blog/entry/2377405/
ジョブズ氏・・お悔み申し上げます。
法律の前に、常識的モラルでしょう。
始業時間は朝の9:00だから、毎日8:59に事務所に入って何が悪い!
あー、悪かーないよ、確かになっ!
っつー、低レベルの主張じゃないのか?
こんな人を選ぶ選挙民さん、さて、次はどーする?
理想にかられて、はたまた私利私欲のために人々が作った様々なシステム。
メンテナンスフリーとはいかず、パッチを当て続けていてもいつかは綻び壊れてしまう。
世の中便利になるに従って、壊れるまでの時間が短くなっているような気がする。
メルマガや溜池通信を読んでいると、内需も所詮は和牛商法のようなネズミ講ではないかと心配に。
国内での食物連鎖の頂点たる官も内なる高級生活保護者の増加で質が落ち利幅も減るばかり、で結局もっと無駄金使って天下りしたくて増税かい。
暴排条例、本気なら自治体警察は電力・ガス・水道の公共事業者に事務所と組長自宅くらいリスト配ってみればいい。中途半端な運用は一般企業にとって迷惑なだけ。
システムが壊れるのを待たずして壊す選択もありか。
教会は立派な長寿多国籍エンターテイメント企業、アップル社のこの先はどうだろう。
カラーのAPPLEIIはモニターも別売(モジュラー変換はできたかなぁ?)でラジオ会館内の店でヘッドオンやインベーダーゲームに惹かれても中古すら高くて手が出ず、見本売りのPET2001を選んでいらいアップル社製品とは縁がない。
・・・再建の妙薬は、費用を削減することではない。現在の苦境から抜け出す斬新な方法を編み出すことだ。
今週号の週刊文春にまさに「Screwflation
」の記事が載ってますね。ただ円高がインフレを相殺しているという事に関しては言及がありませんでした。円高をポシティブに捉える傾向はまだまだ弱いですね。
昨日の記者会見は、随分と強気でいやーな感じだった。
検察批判もいいけれど、政治家としてどーなのよ、と言いたくなる。
あれだけ強気ということは、焦りの裏返しでないか。
大多数の国民はさらに疑念を抱いただけである。
あるいはホントのことが報道されないか?
いったん権力を握ると、それを手放したくないのが世の常、人の常で、そのために策を弄する。
会社における人事権なんてのは、一番分り易い。
で、それに近いことが出来るのが、独占・寡占状態にある会社で、客にクレームを言われないように、ミスが無かったことにするわけですな。
まさしく、電力会社に、マスコミ。
でも、なぜ後者がホントのことを書かないのか?
東電広告費の影響もあるだろうが、新聞社経営で政府側、財務省そのものに媚売ってるのだろう。
時の政権批判は購読者の不満に合わせてガス抜きしてるだけで、もっと大きなところでは批判なんてする気はないはず。
明らかに左傾してるし。
後者に風穴を開けつつあるのが、グッチーポスト。