2007/02/22 09:26 | サブプライム | コメント(11)
アメリカの抱える爆弾とは?
書かなければと思いつつ、時間が無く書けなかった重要な話を一つ致します。
アメリカ経済は絶好調。昨日のCPIもコアで+0.3と何ら過不足の無いレベル。巡航速度で驀進中といえます。株価を見ていただいても、ここで再々指摘しているクレジットを見ていただいても問題らしい問題は見当たらない。アルトマン教授が警告するくらいで、これといって懸念を表明する専門家も見当たらない。
そりゃーそうなんですよね。ウォールストリートの平均ボーナス(年収じゃなくて、ボーナスだけ)が25万ドルって状態なんだから、全所得層の上位5%(調査機関によっては3%となるものもある)が全米消費の90%を占めるアメリカでは経済全体をみれば悪くなりようが無い。
所がここもとサブプライム向けの住宅ローンの延滞率がえらい勢いで上がってきているという事実を見過ごしてはならないでしょう。サブプライム住宅ローンというのはその名の通り、低所得者向けの住宅ローンのことで、ここでいうサブプライムとは通常年収で25,000ドル(正に年収300万ですね)以下の世帯のことです。日本ではこの収入で住宅ローンを組むのは不可能でしょうが、MBS(モーゲージバックセキュリティーズ)の発達したアメリカではこのあたりのリスクを取れる金融機関が発達している・・・まあ、その意味ではさすがなんですが・・・この世帯の延滞率がここ半年、飛躍的に増加したために、例えば昨日発表されたこのサブプライムローンを得意とするノバスター・ファイナンシャルの決算は予想外の赤字になってしまったという訳です。
このあたりは、数字を見ても明らかで、所謂BBB-(投資適格の最低水準のもの)のCDSを見ると1000万ドルあたりの与信費用が1月には38万9000ドルだったものが昨日はおよそ110万ドル要する状態にまで悪化してきている、という状況です。それだけの費用をかけないと与信リスクが回避できないという事になります。
住宅市場の状況は複雑で、所謂高所得者向けの例えばマンハッタンのど真ん中、であるとか、サンタモニカであるとか、サンディエゴであるとか、はたまた彼らのセカンドハウスの受け皿になっているアリゾナ、フロリダなどは引き続き住宅価格が上昇しているのですが、一方でサブプライムの住宅が集中している所、例えばロスアンジェルスのダウンタウンなど、そういう地域の住宅価格は昨年末から頭打ち。治安も悪く例え安くても金持ちが買うような場所ではないのでそういう地域の住宅価格の頭打ちにより借り換え不能に陥り、たちまち焦げ付いている、というのが実情であります。
一言で申し上げれば金持ちは順調に消費を続け、株式投資を続け、当然住宅投資も続けますが、一方で貧乏人はどんどん破綻するという、アメリカ格差社会の典型的な例がここに見られます。経済全体への影響は先ほど申し上げたとおりで、低所得者層の消費に占める割合は極めて低いのでマクロの数字をみている限りなんだかなー、で終わってしまう訳です。
一方こういうサブプライムに貸し出している金融機関の収益は直撃しますので、それが他の金融機関に波及しないか、しばらくよく注意をして見なければいけません。日本に入ってきているHFもこのあたりのMBSを得意にしているものは結構ありますので、要注意。外物の投信をお持ちの方は一度ポートフォリオの中身をチェックする事をお薦めします。
FRBの統計によりますと、こういったサブプライム、年間所得25,000ドル以下の世帯は4000万世帯以上あり、全世帯の実に38%を占めています。このあたりの数字も実にアメリカらしく、数では優勢なのです。経済統計に表れなくとも社会問題としてはかなり深刻になりつつあるということは覚えておいて頂いても損はないでしょう。このあたりの仕組みが東京都心部の地価高騰にも直結してきているのですが、その話はまた機会を改めて致しましょう。
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11 comments on “アメリカの抱える爆弾とは?”
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>全所得層の上位5%が全米消費の90%を占めるアメリカでは
フィリピンやブラジルなども一握りの資産家と貧困層に分かれてますがこの構造だと内需が伸びないと論じられてます。なぜアメリカだけは内需が伸びるのでしょう?
それと日本なら好景気な東京に一極集中してしまうのですが、金融街のNY以外のアメリカの都市が多極化できる理由はなんなんでしょうか?
ものすごく単純な見方として、
あれだけイラクに金を注ぎ込んでいるのだから、下の方にまで滲み出てなきゃ、というのは、何処かで滞っているとなるのか、
まだ足りないと言うことなのか、
いずれにせよ、民主党の出番が回ってくる条件が整っている流れでしょうね。
我が国は如何でしょうか?
中国では共産党政権下、革命が必要とされる雰囲気が生じているし・・・
世界的傾向ですね。
世帯数に万が抜けているかと。
MAT.Nさん
ご指摘ありがとうございます。なおさせて頂きました。
バブルの生成と崩壊は富の偏在が招く・・
学生時代に聴いたことがあります・・いまの株高はもしかしたらバブル?なのかなぁ・・
双子の赤字も資本収支の黒字といくら国債を発行しても買ってくれるからやって生けてるんでしょうか。しかし、これから何十年かかるか分からないテロ対策費はどう賄うんでしょうか。テロリストは標的をアメリカに絞ってるでしょうし、もうこう言った世界になれば中途半端な考えは許されず日本はアメリカを支え続けて守っていくんでしょう。これがベストだと思います。世界第二位の経済大国日本はアメリカに次いでの標的になるでしょうから。
たまたま先週ロスで1泊した感想ですが・・・・
なんで皆あんなデ○なんだ??? 大人から子供老若男女国民総力CHUBBY合戦のような感じで、恐ろしかった。昨年と比べても格段とCHB率上昇だね。
ブッシュさんイラクの事より、自分たちの肥満解消のほうが大事では?
朝日のスクープ?○洋電機の今後の展開はいかかがお見立てでしょうか?コメントを期待しておりますです。
今回は、セントラルブルーの破綻にあわせてなのか?日興のにあわせてなのか?
なんだかよくわからないタイミングのように思えるんですが。。。
ぐっちーさんの御身に危害が及ばないような範囲でお願いいたいますです。
ではでは。
来週月曜に発売される『日経ビジネス』に、
「アメリカ 萎える超大国」という特集があります。
貴殿の書き込みに関連することが書かれていますよ。
膨大な財政収支と国際収支の双子の赤字をたれ流しているのに、これがメインテーマにならないのは何故なのかもう一度考えてみると、アメリカのすごさが見えてきますねー。
なにせ米国国債の主要海外格付機関の格付けはどんな理由があるにせよ最上級のAAA格、それに引き換え日本国債はA格です。どう考えても説明のつかないと思うのですが、これが資本主義の掟なのでしょうか。
サブプライムという言葉が分からなくて検索していたら、貴殿のBLOGに辿り着きました。とても分かりやすい解説で勉強になりました。これからはちょくちょく来て更に知識を深めたいと思います。