2011/09/16 12:08 | マーケット | コメント(5)
欧州版TALFだそうですが・・・・はじめからやれ!
Treasury Secretary Timothy Geithner is likely to suggest to European finance ministers on Friday that they leverage their bailout fund along the lines of the U.S. TALF program, EU officials said.
…
Under TALF, the New York Fed would lend out up to $200 billion, taking ABS as collateral with a haircut and the Treasury offered $20 billion credit protection for the Fed.
全文はこちらへ
http://www.cnbc.com/id/44536704
これはガイトナーが音頭をとって、要するにCDOを作り、レバレッジを効かせて欧州国債を買い集める、という作戦を提案するということです。
ちょうど2008年、リーマンショック時にアメリカがTALFというCDOを作ってごみになったABSを買い集めたのと全く同じやり方で、あのときは約10倍のレバレッジをかけた(当ブログでは日本も参加すべし、と書いたが結局日本は参加せず、三菱のモルガンへの出資など、より直接的なアプローチとなった)。あの時はこの記事にあるように20Bilの連銀の負担で200Bilを買い上げた訳ですね。同じようなれレバレッジで今回ガイトナーはEFSFを使おうとしているようです。
今回も2010年4月にギリシアが白旗を上げたときに市場を止めるにはこのアイデアしかない・・・と各所でいわれ、こちらのブログでも早くECBやドイツ、フランスがエクイティーを出資して、この際日銀も参加してCDOを作って国債を買い支えれば市場は止まる・・・と主張していたのですが、救済そのものに腰が引けていたドイツ、フランス、及び状況をあまりにも過小評価したその他の国々のせいで(当事者であるギリシアも含む)まるまる一年犠牲にして延焼がここまで広がってしまい、今になってガイトナーにいわれて渋々やる、という状況で、ドイツ、フランスの罪は誠に重いといえます。ここまで市場を混乱させてしまっては、いかん訳ですよ。
その結果最早生半可な対応策で市場の売り圧力は制御不能となり、「伝家の宝刀」を抜くことになりました。
(余談ですがBS11の私の番組でご覧頂いたように、私はこの仕組みを震災復興に使う事を提唱しています。余計な予算は最小限にとどめ、国とともに東北・東京電力などが出資、レバレッジを賭けてあらゆる震災被害を買い取ってしまい、新規ビジネスの出資も行い、返済はそれらのビジネスの利益で賄う、という、きわめて合理的判断が可能な仕組みです)。
しかし、この伝家の宝刀、「ゴミの回収」に使用する場合長所もありますが短所もあり、当のアメリカのTALF自身もまだそれを解決していないという「ねじれた」状況にあるのも事実です。
まず、長所はこの仕組みだと相当なレバレッジがかかるため、さすがに「売り向かう」のは難しいと市場が判断するので対象になるアセットの価格下落は確実に止まる。実際アメリカでもABSやMBSはこれで下落が止まった。
短所はそのまましばらく抱え込んでしまうため、根本的な解決のためには最終的にそのABSを解体してどこかで損失を確定しなければならない訳です。しかし当のアメリカも今でもこれは完了していない・・・
実際はそれどころかTALFの中に入っている各種アセットが、当初のもくろみでは抱えている間に住宅市場が回復して価値が上昇し、当初の買い取り価格を上回る、という作戦だった訳ですが、ご存知のように住宅価格は一向に回復せず下がる一方で、TALF組成当時より状況は悪くなっている点です。(アセットの価格そのものが買い取り価格をかなり下回っていると想像されます。)
この短所はそのまま欧州国債買い取りにもあてはまる訳ですね。抱え込んでいる間にアセットになっている国の経済状況が確実に上向くようにしなければ永遠に抱え込み続けねばならない。
もうひとつの短所はヘアカットの設定(つまり元来100%の価値があるものをいくらまでディスカウントして買うか)で揉めること。TALFの場合もこれでかなり紛糾してほとんどゼロのものを20とか30とかで買うのはどうなのよ、という議論があった訳ですね・・当時のブログを是非参照してください。
今回の場合、相手が国債なのでこのヘアカットでは相当揉めそうですね。イタリアに向かって、お前、どうせゼロだろとは言えない訳で、ふざけるな、そんなに安くないぞ、などと揉める訳です。
このあたり、きちんとしたデューデリジェンス組織を調整しなければならない。まあ、ガイトナーが間に入ってせーの! で仕切るしかないと思われます。
ギリシアで20%位でしょうかね、実際の買い取り価格は。
まあ、現在考え得る最良の手段であることは間違いなく、みんなでレバレッジをかけて買い支えましょう、というアイデアです。まったく、はやくやれ、って(笑)。
これを受けてギリシアの1年債利回りはは80%から61%へ急騰、2年債も150から129%へ急騰となりました。
返す返すも一年無駄にしましたよね。
思い返してみると当初は欧州の事は欧州に任せておこう、ECBもさすがにそこまで間抜けではないだろう、というような雰囲気が蔓延し、そのままドイツ、フランスのふらふらした救済姿勢に振り回された結果になりました。経済的には処方箋がはっきりしていただけに政治の犠牲になってしまった、というクルーグマンの指摘は実に正しいと思います。
更にこれもガイトナーのリーダーシップで FRB、ECB、日銀などG7の中央銀行によるインターバンクへの更なる資金供給をコミットして銀行の経営をプロテクトする事も決定されそうです。
これもリーマンショックの時に実績がある手法で、東京→ロンドン→ニューヨークと24時間取引が続いていく銀行がどっかの市場で資金調達ができなくなって潰れてしまったら大変だ、ということで世界中で銀行が資金調達できる様に中央銀行が裏をつけた・・・これの再現ということになります。まあ、これは当然です。
実際リーマンは東京時間で国債の決済ができなってしまい、結局その分はチャラにされてしまった。ただ日銀がクレジットラインを潤沢に出したので他の銀行が巻き添えになることは避けられました。
このあたりは本ブログ強力執筆陣の一人、CRUにコメントを求めたい所です。書いてくれる?(笑)
ということでこれがさくさくと実行に移せれば市場の下落は止め得る筈です。
・・・・が、問題はそのあと。
担保の中身になっているのが国そのものだけにABSより問題は厄介でしょうね・・・
以上取り急ぎ解説! (急いで書いたのであとで修正する可能性あり)←今結構なおしました!)
あついっす、台湾・・・・
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5 comments on “欧州版TALFだそうですが・・・・はじめからやれ!”
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ガイドナーは口だけ・・指図だけ・・
ヘッドが日銀・・
なんてのは・・
我等ジャパニーズにとって・・一大事・・悪夢の悪夢・・
二十%でも・・過大評価・・偽債権を握るが如・・
いくら・・万歳突撃の伝統があっても・・
ここは・・一番最後に・・
出来れば・・塹壕から出ないように・・・!!
EU finance ministers seek debt crisis solution
http://www.bbc.co.uk/news/business-14943320
無料で詳しい解説を長々としていただきありがとうござんす。なんかよく分からんが、取り合えずはヨーロッパが落ち着きを取り戻し、つれて米国、アジア、日本の株も上がりましたな。
これで少しは落ち着いてくれればいいが、誰かが犠牲にならない限り、そうは問屋が卸さないでしょう。
一方、4日で国会を閉じて逃げようとした民主党ですが、野党の総攻撃に怖気づいて14日だけ延長ですとさ。何だか出来レースみたいで見え見えですなあ。だったら初めからそうしておけよ。
復興税も財務省の思惑に従って法人、個人からふんだくることになりそうです。強引にやるなら自分達の給与も当然半分くらいに、公務員も2割カット位するんだろうな。議員定数も半分でいいよ。それでないとみんな納得しないぜ。
このCDO作戦ですが、政治的に実行可能なのでしょうか。
7月21日のEFSF強化案を各国で議会承認し、その上でEFSFにレバを掛けるっていう話ですよね。
こういう話が出てくると議会承認は難しくなると思うのですが。
いつも貴重なコメントありがとうございます。
今回はまさにアルタイルさんのご懸念がそのままあたってしまいましたね。
他にもぺルドンさんもご指摘されていましたが、信じちゃいかんと(笑)。
さすがに何か決めるだろうと思った、私が一番ダメオヤジでしたね〜。
またよろしく!