2007/06/22 12:54 | 国際問題 | コメント(8)
中国とアメリカの間で
昨日の書き込みに対しさまざまな質問が寄せられているので、今日はそれに対するお答えという書き込みになりますか。
集約すると、ご意見の大半は、中国はそれだけ一生懸命お金を使ってロビイングをやっているのに日本がやっていない、というのはにわかには信じ難い・・・だって、日米関係はそれほど悪くないし、アメリカに対する企業進出も進んでいるでしょ?? と言う事ですね。これは半分の部分では大正解。でも変化しつつある日米関係というい視点が欠けていますのでそのあたりのお話になります。
今はブッシュ大統領ですから政界はもちろん、官僚、財界ともに共和党人脈で動いています。例えばここに私が何らかの見返りを期待してアプローチをかけて何かをしようと思っても、彼らは現役の閣僚、官僚ですから不正行為があるといけないので会うことはできてもそれ以上のメリットは受けにくい訳です。
所が民主党の人々は国会議員であっても野に下って言います。現役の閣僚ではないし、民主党人脈の元閣僚たちも学校の先生をやっていたり、ゴールドマンに勤めたりしていますので、割と簡単に合えますし、脇も今なら甘い訳です。もっというと今のうちに彼らに寄付なんかをしておくと、当然後で役に立つので中国は今この工作を今必死にやっていると言う訳です。
これもいずれ詳しく書きますが、日本の政治家は政治資金を運用すると言う発想はありませんが、アメリカの議員は普通に運用します。HFなどに入れてできるだけ不透明な資金運用をしないようにするのは日本と全く反対ですね。いずれにせよ、彼らが投資をしている先は透明性の高くかつ高収益の運用ですので、こちらとしても仮にお金があれば一緒に運用することで共同運用者、場合によってはパートナーシップという関係に簡単になれる事になります。
中国はこのあたりが実に上手く、政府の金はもちろんですが、有力な財界人のお金もそういうところに入れて、まず、お友達になる作戦をとります。いい例が、4月に開かれたジャンクボンドキング、マイケル・ミルケンのカンファレンス。
ここにはこういうファンドマネージャーや政治家も含めた世界中の出資者や実業家達がが一同に会し、600人余が集まり、ヒラリーもいればアル・ゴアもいるし、ウォーレン・バフェットやらビル・ゲイツやらがその辺をうろうろし、同じ共同運用者として気楽に話ができるわけです。(もちろん裏に引きずりこんで違う話をするのが本当の目的ですよ。だからロビイングな訳です)。
因みに出席者リストを見るとそこに出席した中国政府関係者は50名、民間人10名の総勢60名。これに対し日本人はなんとゼロです。私が行ったおととしもわたくし一人でしたから、この傾向はここ数年あまり変わっていませんね。日本はすっかりそういうことを官民ともしない様になっている訳ですね。(日銀あたりはここにシニアな人を出張させて、日本の金融政策を大いにアピールするべきだ、と僕は思いますけどね。何なら口利きますけど・・・笑)。
この差はいずれ間違いなく出てきます。民主党が政権をとれば彼らは間違いなく重職に付く訳で、このパイプはものすごい価値を生み出します。電話一本で呼び出せますからね。また、中国マネーを取り込んだファンドは次の投資先として日本を飛ばして中国を選ぶでしょう。日本のお金が入っていない優良なHFなど、ごまんとありますから。
一方、日本及び日本人がこういうことをしなくなったのには理由があります。
恐らくキャノンの御手洗さんがヒラリーに会いたいと言えば、何のロビイングをしなくても会えるでしょう。それはヒラリーが御手洗さんを好きだとか嫌いだとか言う以前に、それだけアメリカにとってはキャノンは無視できない位大きいし、もし地元にキャノンが工場でも作ればそれは大変な票につながることになります。だから会うのです。決して友達だから会う訳ではない。だから例えいやな奴だと思っても彼らは会うでしょう。
しかしそれもキャノンが落ちぶれてしまったり、もっというと日本がGDP5位くらいのランクに下がったらヒラリーも会わないでしょう。つまり今こういう人々と友好関係が保てているような気がするのは日本と言う国がとてつもない力を持っているからに他なりません。その影響力の元に会ってくれているだけです。
その証拠に、政治家よりより利害の薄い、しかし実力を持っている人々・・・日本なしでも何も困らない人々・・・・はどうか、というとこれはかなり様相が違ってきます。
例えば全米ユダヤ人協会の会長をやられているキンメルマンさん。村上ファンドがアメリカでお金を集めそこなったのは村上さんがこの人を怒らせたから、と言うのは有名な話です。
住友銀行の西川頭取のアポが取れなかったのもこの人です。あとでなぜかと聞いたら、「嫌いだから」だそうです。(もう少し詳しく言うと送ってきた西川頭取の経歴書に偉そうな事しか書いてこなかったのでつまらん奴だと思って会わなかったそうです)
しかし、私はある方を紹介し、アメリカのユダヤ人救済ファンドに寄付をしてもらったことがあるので今でも連絡があり、自分の金でなかったにも係わらずそういう関係をとても大事にしてくれています。中国流にいう「井戸を掘った人を大事にする」訳です。
ですから、西川さんのアポは断っても私がお願いした某中央銀行の女性のインタビューのアポは入れてくれました(もちろん会ってみたくなるほどこの方の経歴が立派でいらっしゃる、という事は当然ありますよ)。こういう関係を築くことがロビイングの本質だ、という事です。私は一民間人なのでこんなことをいくらやってもたかが知れている訳ですが、少なくともキンメルマンさんに話ができる数少ない日本人であることは間違いありません。それはあくまでも「友人」関係がベースになります。きっかけはお金でもなんでも構わないんです。
別に自慢している訳ではなく、そういう関係を日ごろから作るべく努力をしていないと、いつかはしごが外れますよ、と言いたい訳です。
ですから何度もいいますが、お金のある今のうちにあれこれ友人と呼べる関係を特にアメリカでは作っておくべきだ、と言いたい訳です。中国人は家族でお金儲けをしますが、アメリカは「フレンズ」とお金儲けをするのです。その意味で「フレンズ」のもつ意味は日本でのそれの比較ではありません。
小泉さんはブッシュさんの本当のフレンズだった訳で、それがどれだけ日米関係のピンチを救ったかみなさんよくご存知でしょう。あの評判の悪い「プレスリー踊り」も大いに意味があった訳です。
その意味でミルケン・カンファレンスの参加者の顔ぶれを見ても、10年後の日米関係は相当困難になるだろうな、と一方で中国とアメリカの蜜月時代を予感しつつ考える訳であります。
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8 comments on “中国とアメリカの間で”
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今日の書き込み読ましてもらって、
なんだか笑っちゃいました。
日本だけなのか?
先生と呼ばれる人、
# 今は保護者からの突き上げで美味しくないか?
大企業の従業員等々、
自分の実力と、会社の実力を見誤ってる人
多いですよね(^^;)
こっちは、
あんたに頭下げてるわけじゃなくって、
仕事やお金に対して頭下げてるわけだし、
かわいい我が子を取られてるから、
先生、先生って、持ち上げるわけだし(笑)
まあ、立派な人もたくさんいるんだろうけど、
鼻持ちならない奴ってのも
たくさんいるわけで(笑)
温室から出た瞬間に、
寒さを体験しても、もう遅いんじゃないかな
なんて思ったりしてます。
国までそんな状態だったら、
こりゃ、円資産もってる場合じゃないですね(爆)
静かに拝聴いたしました。
ただ一点、中国とアメリカの十年後の蜜月時代云々に関しては、軽い疑問があります。
まず共産党政権とは米国側に心理的なラインがある点。
中国に驕慢の体質が根深く、不注意に露わにする事。
アメリカの好意を獲るには、常に経済的発展を持続せねばならぬ事
十年後も蜜月が続いているか??
日本の経済力が強いうちに色々な事をしておかなくてはいけないのは確かなのですが、社会の雰囲気的にはそういった危機感をあまり感じませんね。(強いて言えば水産物の値段くらいでしょうか)
先日からの労働力のお話も併せてコメントしておきたいのが、外国人労働者にとっての円の価値です。
将来的に円安傾向が継続するかどうか私には分かりませんが、外国人労働者にとっての円安は、稼ぎの減少に直結します。つまり、日本に来て働くというインセンティブの減少につながります。
将来の民主党政権に備えることはもちろん重要だし、私もぐっちーさんの意見に同感ですが、もっと身近な部分で既に身の回りにいるたくさんの外国人労働者やその家族を積極的に受け入れる体制を築いていくべきではないかとも思います。
「金の切れ目は縁の切れ目」であることは間違いなさそうですね。
アングロサクソンだろうと日本の村社会だろうと所詮人間同じなんですね。ロビー活動の話しで、映画「ゴッド・ファーザー」を思い出しました。これ、今でもアメリカ人が好む歴代映画二位なんだそうです。ちなみに1位は市民ケーンです。
しかしこのまま円安が進むと、GDP5位転落もあり得ますかね・・・。
人間社会で人脈が如何に大切か分かりました。誰か言っていましたが「家柄かどうかは人脈で判断される」と、お金より人脈が優先されるのですね。
こんにちは。
「白河の清きに魚も住みかねて、もとの濁りの田沼恋しき」
ってやつも必要なんですね。
「エライ人は忙しい」に尽きる、ということですね。価値のある人(高利益、恩のある人)が一番で、表敬訪問のような目的のハッキリしないもの(ご挨拶に。。という類)は嫌われると。
わかりやすくって良いと思うのですが、日本人はそういう計算を嫌う風潮があり、苦手な人が多そうですが。
一方で、中国人とアングロサクソンとなると良い勝負をしそうな気がします。どっちも打算的な感じ。
中国でも家族だけじゃなく、利益をもたらしてくれる「関係」が大事だそうですよ。
家族は無条件に大事だそうですけど、それだけじゃ、金儲けにならないですからね。