2008/10/31 00:16 | サブプライム | コメント(20)
誤解を招きますよ、WBS
テレビ東京には大変お世話になっているだけに、今日のワールドビジネスサテライトはまずいだろ、とあえて指摘します。間違いやすい所ですけどね。
金融危機の最大の元凶がCDSと報道しています。混乱に陥れた最大の火種がCDSだという。バーナンキ議長の発言まで誤訳しているのだから恐れ入った。彼ははっきり行使のリスクだといっているのに・・・・
番組の中で、リーマン破綻がきっかけになり、これを保有していた、つまりリーマンのCDSを安全だと思っていて保有していた投資家が大きな損失をこうむって金融危機になっている、と解説していますね。 まるっきり間違いです。
だって、CDSのプロテクションの保有はその債券の保有と同じ意味。
あれま、まちがってしまいました。ご指摘感謝申し上げます。
「CDSのポジション・・・」、ですね。売り買いを言えばプロテクションを売る、つまりその会社のクレジットを取ること、当然社債を買うことと同じことですね。
何か特別はことをしている訳ではありませんよ、というのが主旨です。
リーマンのCDS(のポジションを)売っていても社債を保有していてもリスクは全く変わりません。ここが間違いの始まりです・・・・
それに、リーマンのCDSを安全だと思っていたプロの投資家はいない(笑)。個人投資家はまだしもね。プロなら去年くらいから警戒している。だからこそ人に押し付けようとしたんだけれども、それは置いておこう。
正しくは、リーマンの破綻によって損失を受けたのではなく、リーマンの破綻が他の金融機関の与信に対する危機感までも想起させ、いざ、倒産した時の保険であるCDSを行使してもそれに応ずるべき相手がいない、もしくは支払い能力がないのではないか、という信用不安が起き、そのために金融危機が拡大した、となる(だからこそAIGを救済せざるを得なかったのだ。世界中の投資家の行使に対し支払い能力が欠如してる、と危惧された)
くどいほど言っているように、これは信用危機によるカウンターパーティーリスクなのだ。
つまり、これはCDSに限ったことではなく、カウンターパーティーリスクという意味ではアメリカ国債のオプションも、金利スワップも、通貨オプションも、ありとあらゆるデリバティブの行使リスクに直結した為に一大事となったのです。もっと言うと現物の売買リスクにも直結しているのですね。
行使していたときに相手が(リーマンのように)潰れていたら、あるいはその行使に応ずる余力がなくて潰れてしまったらどうするのか、ということですね。
特にCDSに特殊性を求めるなら、国債のオプションのようにFEDワイアーを通過しないので総額が把握できなかったこと、国債のように実物の国債の存在を前提とせず、差金決済前提のバーチャル取り引きが多数を占めていたこと、さらに国債などのカウンターパーティーリスクをヘッジする手法にこそCDSを使っていたためで、直接的なCDSの損害ではない、という点はよくよく注意して欲しいものです。
実は証券化商品の原資産にも使用されるわけですが、危ない資産の証券化という意味ではサブプライムと同根のリスクといえますね。
もし、CDSそのものの損失で世界の金融機関が危機に頻するなら、株の下落とさほどマグニチュードは変わらない。本質は信用危機から派生するカウンターパーティーリスクにあるが、それはCDSに限ったことではないということです。
むしろ、我々から見るとCDSは予想よりはるかによく機能した、と考えられています。実際はカバーされる率がかなり低いのではないか、と予想されたのだが、少なくともリーマンのCDSを売買していた当事者同士は資金のやり取りのリスク以外は適正にカバーされた、というのが現状です。 しっかりヘッジは効いていたわけ。
そうなると国債のオプションを行使してみたら相手が倒産したとすると、金融危機の元凶は国債オプション取引ということになりますが・・・・違うですよね。
せっかくの数少ない経済専門番組なんですから、がんばってくださいよ・・・
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20 comments on “誤解を招きますよ、WBS”
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>>だって、CDSのプロテクションの保有はその債券の保有と同じ意味。
↑プロテクションのショートですよね
小谷真生子サマサマ
にそんな事言って言いの?
壁に写真を貼りまくっている、と聞いてるのに。
振られたな!
ガセネタぽいのを寄越して・・机の下に潜りぱなしだったのか?
マッケンが彼女を選んだのは、
ハノイヒルトンの五年間、彼を支えたピンナップガールに似ていたからだ、
とCDSぽいガセを教えくれたなぁ・・
>少なくともリーマンのCDSを売買していた当事者同士は資金のやり取りのリスク以外は適正にカバーされた
これは、AIGが救済されたから、という可能性はないですか?
だとしたら、それでもCDSは『よく機能した』のでしょうか?
「CDSプロテクションの保有と債券の保有が同じ意味」というのは根本的に誤った理解です。
CDSプロテクションの売却=現物社債の保有
です。
http://japan.pimco.com/LeftNav/Bond+Basics/2007/Bond+Basics+CDS+JPN.htm
初めまして。
WBSを見ていて、あれ? 自分が間違っているのか? とドキドキでした。バーナンキさんそんなこと言ってないよ…と思いつつ、データを洗ったり、ニューズを見返ししつつこんな時間まで。
自分が間違っていないことが確認できて安心しました。ありがとうございます。
ぐっちーさんの仰るとおり、マスメディア、巷の経済評論家や学者達の中には、金融危機の最大の元凶がCDSであると思っている人が大変多く、本当に情けない限りです。
こちらがいくら口を酸っぱく説明しても、彼らの口から出るのは「CDSが全ての元凶」の一言です。彼らは何が何でもCDSを悪者にして、安心したいようなのです。本当に困ったことです。
いつも楽しく見ていますが、一部ではユーロ対ドルの基軸通貨の地位を巡る「金融戦争」の側面があるとの説も出ていますが、そのような見方をグッチーさんはどう思いますか・・・
またこの後、基軸通貨としての「ドル」の地位はどうなるのでしょうか。どう見ても「ユーロ」は基軸通貨にはなれないように思いますが。(私には最近の金融危機により少なくともこの後10年はユーロの基軸通貨化は無いと見ていますが・・・・
知らない人があの放送を見てしまうと勘違いしてしまうと思います。 あれはなかりはしょり過ぎた故だと僕は思います。はしょらずにやろうとしたら多分あれじゃ尺足らないんではないでしょうか? あの辺特集するときはトレタマとかは削らないと足らないような… 大浜さん席にぐっちーさん週1でも座ってもらえませんかね?
このブログのおかげで、今回の暴落前に逃亡した者ですが、いつも鋭いご指摘に感謝しております。テレビや新聞などがさらには政府の高官などの状況判断や発言や表現が決して正しいことばかりではないことが、いや今回に関しては誤っていることが多いことを教えていただきました。(立場上、影響を考えると怖すぎて口に出来ないのかもしれませんが…)
これからもどこにも遠慮することの無い鋭い切り口でご教示ください。
確かにAIGの場合、オプションの売り手としての決済リスクの大きさが救済への道を開いたわけですよね。急拡大したCDS市場=外人主導=見えづらい商品=リスクという短絡的、万人受けする論調が蔓延ってしまうのは変わりませんね。素人の私でも感じてしまいます。ぐっちーさん、素人にも分かるように教えていただければと思うのですが、アップフロントベースのCDSって何ですか?通常のCDS取引との違いを教えてください….
私はwbsの大ファンですが、昨日のcdsについてのコーナーはひどかったです。
まるでどっかの新聞の記事を読んでそれを鵜呑みにした人が、何も分かっていないでコピペして伝えているだけと映りました。
>CDSのプロテクションの保有はその債券の保有と同じ意味。
>リーマンのCDSを持っていても社債を保有していてもリスクは全く変わりません。ここが間違いの始まりです・・・・
すいませんがここの意味が良くわからないのですが?
WBSの言うところの「リーマンのCDSを安全だと思っていて保有していた投資家が大きな損失をこうむって金融危機になっている」
のどこがどう違うのか?
バフエット?あたりが言ってたCDSの危険性は実際はそれ程でもないとかいう報道もありますよね?
リーマンあたりの補填額も実際のCDS10%にも満たない金額とか?
何故そうなるのか良くわからないのだけれど…
基本、経済の素人向けの番組ですし。
そう言う意味では、逆に大して
問題でもないかもしれません。
テレビ東京の経済番組はどんどん
素人向けになっていっているので、
最近はBlooombergしか見なくなりました。
キー局は最近コスト削減でどんどん
番組の質が落ちていると思います。
そもそもの原因となるものがこちらにすべて書かれています。ぜひ、ブログの記事で触れてください。
▼金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った (5次元文庫 あ 3-1) (文庫)
http://www.amazon.co.jp/dp/4199060383/
▼エンデの遺言?「根源からお金を問うこと」-河邑-厚徳
http://www.amazon.co.jp/dp/4140804963/
いつもブログ面白く読ませていただいています。
テレビ等での報道見ていると首を傾げたくなる報道も多いですね。
CDSを含めたデリバティブそのものが悪者だ、といったような報道やコメントも見られます。
確かに使い方によっては破壊兵器的には成り得るかもしれないのですが、デリバティブがあるおかげで企業のさまざまなリスクのヘッジを行えたり等、その他さまざまなメリットもあると思うのですが・・・。
WBSもひどいですが、NHKや日経も相当いい加減な内容です。金融以外の記事もきっとこの程度のレベルなんでしょうね。こちらのブログが参考になります(http://dbsb.blog116.fc2.com/blog-entry-140.html)。
金融派生商品の基本を理解していないいない人たちに,金融危機の本質を理解させること事態が難しいと思います。
金融工学の専門家でさえその使い道を誤って,金融工学を「打ち出の小槌」と勘違いし,多くのリスクを抱えた金融派生商品を生み出してしまったのですよ。
素人には単に,「金融危機」=「信用危機」とし,「信用危機」を招いた原因は「証券化商品の下落と不信」に留めるべきであってそれ以上は説明しても理解不能だと思います。
先日の日本人ノーベル賞に置き換えると,小林・益川理論は,何とか理解できますが,南部陽一郎先生が受賞した「自発的対称性の破れ」は素人にはどう説明しても理解できないはずです。
従って,今回の金融危機の本質を理解するには,金融派生商品の基本と証券化の基本を理解していないと無理なのです。
参照体としてのリーマンとカウンターパーティーとしてのリーマンとの違いすら理解してないってことでしょう。
アップフロントCDSというのは最近出てきています。
普通のCDSは3ヶ月にいっぺん、保険料の支払いがあるんですが、破綻リスクが高い企業のCDSにおいては、将来の保険料もアップフロント(今)でくれないと嫌よという人が多い。来月ににも破綻しちゃったら、その先の保険料とりっぱぐれちゃうから。
A社が社債を1億×10回発行し、10の相手が買ったとする。それぞれにおいて、A社の信用度の何ほどか考慮して買うことになる。
しかし、A社発行の1億×10回の社債のCDSを売買するとする。その場合、社債とCDSをいっしょに買う側はA社の信用度を真剣に見なくなる。よってA社は分不相応の社債額を発行、それに対するCDSを売る側も分不相応のCDSを売ることになり、信用創造は実態より極端に膨張する可能性がある。これが例のような単独の例ならともかく、関与する当事者が複数、膨大になるようだと「可能性」は現実となるのは必然。さらに、それを膨らませることが実利にともなうというインセンティブがあるんだから。
というようなデリバティブおよびレバレッジの原理からすると、カウンターパーティーリスクなんだよ、っていうのはどういう見識だろう?
CDS自体、粉飾決算への足がかり的な
その仕組み自体悪どくないですか?