2008/10/23 23:16 | サブプライム | コメント(30)
これだけははっきりしておこう
くどいけど、とても大事なことなので再度整理しておきます。読者用というより自分用ということで読みづらいですがこらえてください。
突然、政治家も官僚も新聞もテレビも 日本の銀行が中小企業に貸し渋っているのは今回の一連のアメリカ発サブプライム損失が原因であり、そのためにアメリカと同じような公的資金による資本増強が必要だ、と言い始めている。誰が洗脳したのか??
はっきりしておかなければならないのは日本の金融機関による貸し渋りそのものは少なくともここ10年顕著に見られる傾向であって、今回のサブプライムがきっかけで突然貸し渋っているわけではない。
バブル以降、日本の金融機関はその意味で一貫しており、国債に集中的に投資する一方、金融機関本来の融資らしい融資は一切行ってこなかったといっていい。
ひたすらJGBを買いまくるJGBモンスターである。
これを補完したのがまさに外資系金融機関である。
さらに言えば、貯蓄から投資への掛け声にのった、やくざマネーに蹂躙された東証マザースであり、その他いかがわしい直接金融、及びベンチャー出資である。さらにグレーゾーンと言われる金融機関も同様これらの補完をなした。
特に、日本の金融機関による貸しはがし、と言われる行為が顕著になるのはこの3年で、これらは欧米における証券化商品の損失問題とは全く別個の原因で顕著になった。きっかけはグレーゾーンに対する規制の強化に見える。日本航空でさえ、反社会的勢力と区分させられた。これは金融庁の行き過ぎた規制、と言われてもしかたないだろう。
一方ここ1年、あるいは数か月の金融機関による新しい融資方針についてはむしろ同情すべき点が多い。
これら、日本の金融機関が貸せないと判断した領域・・・ここに付け込んだのはシティー、RBSなどの外資系。かれらは反社会的勢力に対してはもともと寛容で、サラ金融資の残高も圧倒的に多かった・・・その意味では不動産、しかもSPCを経由したノンリコースローンであれば地上げにやくざが絡んでいても直接的に融資するわけではないのである意味無尽蔵に資金を供給した。
これがサブプライム問題ではじけたのだ。つまり貸しはがし、というのは、不動産を中心とした外資系金融による融資がはがされただけにも拘わらず、これが日本の金融機関による貸しはがし、及び融資の停止と理解、報道され、公的資金の議論につながってしまっている。
もともとこのエリアに日本の金融機関はろくに融資していない。 当然、外資系の融資が止められた日本の企業はあわてて日本の金融機関に駆け込むが、何をいまさら、というのは当然で、これをもって貸し渋り、というのは本末転倒。
これには驚くべきことに地方自治体も含まれるのだ。
外資系金融の甘言に乗せられ、CDSのアービトラージ目的の地方債発行をふんだんにしておきながら、今になって外資系が撤退して困り果て、公共サービスが実行できずに困っている、などと、テレビで被害者面をしている地方自治体の連中は一回全員給料を返上した方がいい。
普通なら貸せない状態の財務状況にあった地方自治体を延命させていたのはほかならぬ外資系金融機関なのだ。
しかし、焼け太りながら、ここで公的資金がただでとれるなら日本の金融機関にとってはこれ以上の話はなく、ここでとれるだけとって、今まで倒産させる余力がなかったために「追い貸し」をして延命していた企業をここで倒産させることができる。 建設業に突然倒産が増えたのはこのためである。彼らは元来10年前に倒産していなければならなかったのだ。
血反吐をはいたアメリカの金融機関の現状を見れば、日本国内のサブプライムが本格的にはじけ始める前に身ぎれいになろう、とするのは当然で、皮肉なことだが、公的資金を注入すればするほど貸し渋り、貸しはがしは酷くなる・・・という ことだ。
要するに今潰れているのは安易な外資系金融機関の融資に頼ったところがほとんどなので自業自得。
中小企業に資金流れていないのは10年前から一向に変わっておらず、サブプライム問題は一切関係ない。この10年間、融資の必要のない企業にどれだけ低利で拝み倒して融資をして来たか、晴れた日に傘をカス、と言われる金融機関の本領発揮である。
本当に中小企業金融を増やすつもりがあるのなら方法は二つ。ひとつは社会主義を覚悟で融資能力のない民間銀行から余剰資金を国が召し上げて、国の判断で融資をすること。それがいやなら自らの判断力をフルに発揮して融資を積み上げるしかあるまい。
二つ目はくだらないバーゼルII を早くやめること。事業法人は事業法人のリスクであって、それはAAAでもAでも100%としないと、紙屑のAAA 証券化商品とダイアモンドのB 中小企業向け融資がトレードオフにならず、とにかくAAAに投資をするという判断は永久に変わらない。これのお陰でAIGもシティーも潰れかけたのだから日本だけ独自の道を行く勇気をもつべきだ。
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30 comments on “これだけははっきりしておこう”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
お忙しい中ご苦労さまです。
時価会計を簿価に戻すのと、バーゼル?の廃止はセットで実施されるべきだと考えております。
日本単独でもとのご意見ですが、こういう時こそフランスに頑張っていただくのがよろしいかと。
サルコジ氏の発言を見るに、ヤル気だけは十二分ですので、お望み通りに正面はお任せして・・・・というのは腹黒過ぎでしょうか?(笑
パチ パチ パチ
であります。
ブログAAA
結構読みやすかったです。
グレーゾーンでもなんでも 個人に貸す事の出来たサラ金はまだマシって感じなのでしょうか? 結局お金貸すのが仕事じゃなくてキリトリもきっちり出来てこそなんですよね… 一番楽そうなとこにお金まわしてるなら 別に銀行さんじゃ無くてもいいと思いますし、そもそも農中や信中、銀行の存在意義ってなんなんでしょうか? 考えさせられます。
金融界の問題点をバッサリと一刀両断。
まさに目からハム。
歯切れのよさにうっとり。
「10年前に倒産していなければならなかった」ゾンビ企業が今倒産しているという点については最近つくづくそう思います。
はじめまして、たかきちと申します。
ド素人の質問ですが、よければ教えてください。
日本の金融機関の融資姿勢は、やはりバブルの後遺症で、おかげで世界的には現在の信用が相対的に高い→円高なのでしょうか。
あと、無理のある借金に頼った企業経営(日本の自治体、政府もですが)って何とかならないものかと思います。
非上場の中小企業においてだと思うのですが、「少しの赤字くらいがよい経営」って聞いたことがあります。そういう企業はやはり、危機に対する体力が無いということでしょうか。
突然の質問攻めですがお許しください。
今日は更新していると思わなかったです。
日本の金融機関、特に地域金融機関の「貸し渋りの件」その通りだと思います。
いわゆるサブプライム関連の残高総額に占める国内金融機関、特に地域金融機関は微々たるものであったことは、9月に金融庁が発表したとおり。
今回中小企業の「貸し渋り」が表面化しているかのように見えるのは、昨年からの改正建築基準法による建築確認申請遅延、不動産への事実上の融資規制、原材料高、人材不足、後継者難・経営者の高齢化、それらにより中小企業の業績が悪くなっていることが原因。
そこに、金融機関側ではリスク管理体制強化の一貫でスコアリングによる格付けが中小企業向けにも浸透して、赤字ならそれ「だけ」を理由に貸し出しを断れる大義名分が整ってきたこと。
サブプライムが影響ゼロとは言えないけど、それが犯人とはとても言えないな?
日本航空に否定的だったのに、どういった心境の変化ですか?
お!今回の記事はなかなか素晴らしいです。
共感できます!!
こういう記事期待してます。
あと以下の記事貼っておきます。
貴殿はこの金融危機はバーナンキが引き起こしたとか書いてましたが、グリーンスパン自らが認めてますよ・・・。
【ワシントン23日時事】グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長は23日、下院政府改革委員会で開かれた公聴会で、低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題に端を発した金融危機に関連し、融資監督で議長時代に「過ちを犯した」と語り、政策運営のミスを認めた。
2006年1月まで18年にわたりFRBを率い、「マエストロ(巨匠)」と政策手腕を高く評価された前議長だが、サブプライム問題が世界的な金融危機に拡大する中で、議長時代の低金利政策や、規制を嫌って野放図な融資を放置したことが問題発生の原因になったとして、批判の矛先が向いている。
急に貸し渋り、貸しはがし→資本注入が新聞紙上で姦しくなったので、不思議に思っていたのですが、そういうことですか? そこでグッチーさんへ質問ですが誰がそういう事を言い出したのですか? 何を誤魔化したいのですかネ。
あのバブル破裂時の信用保証協会融資を思い出して仕舞いました。あの後始末で協会にはシコタマ不良債権が溜まっている筈ですが、あれはどうなったのでか?2,3の県の協会が潰れたとの話は聞きましたが、多分回収不能債権の大きな山の中で天下った元役人がノウノウと無駄飯を食っているのでしょう。
そうなると、騒ぎの火元は新たな天下り先の確保を狙う金融庁、財務省、経産省の役人と選挙恐怖症に陥った議員達の共同作業ということですか。
通りががりでした。
実は私2年前に、持ち金の殆ど全部をアメリカのハートフォード生命の変額個人年金保険(最低保証付年金)にしたんですが、大丈夫でしょうか?
購入後7年以内に解約するとかなり損するけど、今のアメリカの状況を見てると、ものすごく不安です。
アドバイスいただけたら幸いです。
書評ありがとうございます
今回のはおもしろそうですね。
1年前外資企業が日本の株を買い占め
利益剰余金を運用できないなら株主に分配せよ論
が盛んだった事を思い出しました。
ROEがどうだとか…
内部留保自己資本比率を高める日本経営の
何が悪い?と思いました。
すみませんでした
貴殿の相場観は世界一です
いつも興味深く読ませていただいています。
今日も為替が大変な一日でしたが、アメリカはもちろんのこと、世界の主要な国がすべて日本のような借金まみれになった場合、あり得る可能性としては何が考えられるのでしょうか。
徳政令はないにしても、やはり日本のように超低金利で堪え忍び金融機関を養う日々が続くことになるのでしょうか。
海外は株安、為替安なのに、日本だけ円高になっています。
外資は日本の株や不動産を買うために円を買っているのでしょうか。
急激に円高が進んでます。外人は円を買っても株には投資してませんし国債も買ってませんよね?10年物国債1.5%くらいですから。
外人は円を買って何も運用しないで放置してるのでしょうか?
株安が止まりませんね。
対策を打ってもだめですね。
もうすぐバブル後最安値・・・
日本の銀行がリスクの大きい投融資をせずに国債ばかり買っているのは財務省がもっと買えとの圧力があるのではないでしょうか。
金融の競争時代になったとはいえ、未だ日本の金融は90年代までの護送船団から降りられないのかも。
素人ですが適当に言ってみました。すみません。
ぐっちーさん始めまして。
今回の金融危機について理解したくてたまたまグッチーさんのサイトを知ることとなりました。
いままで新聞はラテ欄から家庭欄までしか読まないという体たらくで、経済のお話はさーっぱり判らず・・・。(?▽?)状態です。
イチから経済を知り、ぐっちーさんみたいに理解&判断できるようになるのに、最適な始め一歩になるようなオススメの本はありますか?
(おバカな子でもついていけそうなもので・・・。)
おっしゃる通りです。外資が乱入したメガバンクも、まねした一部地銀も、追加の融資なんてほとんどしてません。不動産バブルに加担した程度です。
中小企業には信金が必死になって運転資金を若干回す程度で、金は回してません。もちろんこの時期に新たな設備投資なんてできた中小企業はほとんどないです。
実際、前のバブル引きずってる中小企業ばかりです。
平成8年とか10年くらいまでの借入でしょうか。
これから出てくるとは思いますが、中小企業の倒産、競売や任売が、昔のRCC全盛の頃と異なり、比較してみると数が少なすぎます。債務者区分を下げることでの、引当金を充てられない金融機関があまりにも多いからだと思います。金融庁も緩やかにしてんじゃないかな、違うかな?。
今はもう、SPC経由も経由無しの直接金融も、静かになりました。その筋の方々は潰れてますからね。
ファンド自体がインチキでしたからね。インチキノンリコースローン。
中でもシブトク生き残ってる輩もいますが、何らか守られてます。
業界の淘汰が国策のようなので、健全な面はあると思います。
日本が本気で中小企業対策をするならば、単純に返済期間の再延長の通達と金利の一部免除を銀行に押しつける通達だけです。
ダメリカと同じやり方であり、さらに札束刷らない方法論であり、向こう10年の延命としてはベターな方法だと思います。
今,日本の金融機関が平気なのはバーゼルIIに真面目に取り組んだ結果であるように思えますが,いかがでしょうか.
リーマン倒産による生活の激変ぶりのシミュレーションが出てました。それにしても、衣装代だけで年に10万ドルも使っていたとは。
2007 2008
Cash bonus $2mm $0
総収入 $9,500,000 $500,000
総支出 $1,411,000 $548,000
Clothing $100,000 $10,000
http://www.newyorksocialdiary.com/node/70923
ぐっちーさん、はじめまして。
下記、ニュースに関し、どのように思いますか?
三菱UFJ、最大1兆円増資へ 年度内、株価見極め判断
三菱UFJフィナンシャル・グループが今年度中に最大1兆円規模の増資を検討していることが
25日、明らかになった。米モルガン・スタンレーへの90億ドル(約9000億円)に上る出資も踏まえ、
保有株の価格下落に伴う自己資本の目減りを補い、財務の健全性を強化する。金融危機が
世界的に深刻化する中で、自力で大規模な増資を実施することで金融安定化につなげる。
公募による普通株の増資と、私募による優先出資証券の発行を組み合わせて調達する計画。
普通株の増資は6000億円規模を想定しているもようだが、国際的に金融・株式市場が混乱して
おり、市況を見極めたうえで実施する方針。増資計画を縮小したり、先送りしたりする可能性も
残る。(07:00)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20081026AT2Y2500425102008.html
農林中金がピンチだ。とてもひどい損失が出ている。
「貸し渋り」うんぬんは、ただの目くらましではないかとさえ思う。
>今,日本の金融機関が平気なのはバーゼルIIに真面目に取り組んだ結果であるように思えますが,いかがでしょうか
貴殿は鋭い!2007年に相当処分しましたからね?
でもアウトライヤーのために金利リスクまで落としちゃいましたから。。。残念。(←古っ!)
いつも読ませていただいております。
初めてコメントさせていただきます。
今外銀勤めですが、ここ最近になって急速に貸し剥しといいますか、ロールオーバーを切っています。
前務めていた邦銀の同僚の話を聞いたらそこでも超優良先以外ほぼ全て貸し剥ししてるそうです。もちろん新規案件は基本的に全面停止。
目的はリスクアセットを減らすためであり、原因はサブプライムを含むマーケットの下落から生じる有価証券の含み損で自己資本が毀損したためと私は認識しております。くだらないバーゼルIIですが、銀行にとってTier 1 capital ratioのキープはルール上とりあえず大事ですから。
もうひとつの原因としてcost of fundsがかなり上昇したため金利が高くて借りれない/マージンが悪いためリスクと見合わないので貸さない、ということでロールオーバー打ち切り&貸し渋りになっていると思われますが、いかがでしょうか。
私の知ってる範囲でも、貸し剥し、貸し渋り状況だよ。
メガバンク含めて、これまでも融資は当然もうバンバンあって、どうつないでいくかで、企業は四苦八苦。
ぐっちーさんは、一体どういう根拠で、銀行は「一切融資してない」なんて言ってるの?
この「一切融資してない」は一体どういう基準で見たどういう意味なんだ?
状況を知らない一般人は、単純に誤解するぞ(怒)
↑一切融資をしていないのは日本の金融機関と書いてあります。
外銀の方の話ですから、話の内容はぐっちーさんが書いてある内容に含まれると思います。
状況を知らない一般人に誤解をさせようとしているのはあなた(日本の金融機関?)の方ですぞ(怒)
失礼ですが、貴殿は私の書いたコメントの意味をご理解されてないのでは?
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↑それはどうかな (Unknown)
2008-10-30 00:41:00
↑一切融資をしていないのは日本の金融機関と書いてあります。
外銀の方の話ですから、話の内容はぐっちーさんが書いてある内容に含まれると思います。
状況を知らない一般人に誤解をさせようとしているのはあなた(日本の金融機関?)の方ですぞ(怒)