2008/10/03 23:07 | サブプライム | コメント(18)
終わらない夏
マーケットにどっぷりつかっておられる皆様は、おい、かんべんしてくれよ、ってなことが連日おきるのでもうぐったりでしょう(笑)。
正直、ぐっちーもこの仕事を1986年からやっている訳ですが、はじめてのことに次々と遭遇します。まあ、「おどろく」というよりは「あきれる」、ということになるのですが。
となりの業界はプロでも見えないこともあるのでこのへんでちょっと整理してみましょうか・・・
1.GE(超優良会社、ばりばりのAAA)の債券のビットが出ない。
これはびっくりする・・・というか勘弁してほしい。GMの債券ならある種諦めがつくのだが、GEの債券を売ろうとすると、リーブオーダー(その場では決められず、買い手が現れてから決めます、という話)とかになる。 無理やりとらせれば取ると思われるが、こんなことが起きるのは・・・そう、業者の資金繰りがきついのでできるだけキャッシュを出したくない、ということで、買い手が現れるのを待っている、というよりは資金の都合がつくまで待たされている、というのが正解ではないでしょうか。
業者のファイナンスコストが軒並み高く、こういった高格付けの債券を長くポジションにいれると「逆ザヤ」になってしまうので、妙な話だけれど格付けが高いほどビッドしにくいという呆れた状況が続くと思われます。
そうなると、アメリカ国債も、今のように金利が「ゆるゆるのゆるふん」状態ならまだしも、何かの拍子に金利が上がる、ってな話になると、一番スプレッドのうすい商品ですから投げざるを得ない、という事態にもなりかねないですね。したがって連銀が受けるしかない、という筋道になる訳でFRBも日銀も髪を振り乱している。命綱です。
2.日本について・・・JGBは本当に大丈夫なのか。
リーマンから買ったJGBは未だにフェールしています。証券会社から絶対安全なはずの国債を購入して、リーマンみたいになると、国債なのにフェールする、という奇妙な事態が日本では起きています。
当然、投資家さんは少なくとも「危なそうな外資系」から買うのはやめよう、となりますよね。でも国債の入札トップ10はほとんど外資系です、実際は。仮に野村證券に札をいれても、入札後の流動性は大半が外資系のマーケットメークに頼っていましたから、入札後スムースな売買が滞るだろう、ということは十分予想できますよね。
投資家からすると、入札で購入するのは(その後の売却まで考えるなら)とんでもなくリスキーな状況ですね。リーマンのような事態が起きれば渡してもらえませんし、先物を売っても現渡しの債券がやっぱりフェールするかもしれませんし。
財務省もリーマンの2800億位なんとかなりましたけど、もっと大きい金額で応札していたらなにが起きるのでしょうかね・・・・
こんな状況ですから、私が銀行の資金証券部長だったら絶対に入札は見送ります。だって、ずっとフェールしたら、証券会社みたいに借りてくるわけにはいかないのですから、私はくびになってしまいます。フェールしている債券を売ってしまい、セトルを強要されたら逃げられませんしね。たぶん金融庁は許してくれないでしょうし。
それにフェールした日本国債のリスクウェートをどうするのか、だれか教えて欲しい・・・・ 入札が未達になる、という幸田さんの小説の世界が本当に起きるかもしれない。
3.そもそも資金はちゃんとまわっているのだろうか・・・・
さはさりながら・・・
金融機関には最後は日銀がいる。JGBでも何でも、最近は担保の許容範囲も広いので、最後は「なべかま」を質屋に入れるつもりで調達すればなんとかなる訳だ。リーマンだって、民事再生だから、脳死かもしれないがぎりぎり心臓は動いている。人間の体と違って「頭脳移植」は可能です。
しかし、これが事業会社となると、ひっくりかえって日銀にいっても絶対になんともならない訳ですよ。それはアメリカでも同様だから、GEはある意味モルスタより厳しい。金融機関に余裕資金がないとなると、いったいどこから取ってくればいいのか? アメリカには日本のような潤沢な個人預金すらない。確かにバフィットかビル・ゲーツしかいないかもしれないわね(笑)。
その意味でこの所どたばたつぶれている日本の不動産会社も、どうも妙なつぶれ方をしている・・・・。
実際、金融機関にとっては民事再生がかかっていいことは一つもない。踏み倒されるわけだから、株主は助かるけど、金融機関はたまらないわけですね。 U社の倒産も金融機関が引き金を引いたから、というんだけど、僕は怪しいと思っている。
資金繰りに厳しくなった某外資銀行及びその系列のファンドが最後になって買い取る筈の不動産売買契約をキャンセルして、そのためにアテにしていた入金がなく、倒れた、というのが読み筋としてはあたり・・・でしょう。
手形と違ってキャンセルしてもその場のペナルティー以外には痛みはないですからね。 そういう意味では金融機関の流動性喪失による倒産という事態は既に起きていて、今後本格化するかもしれない。
2?3か月先に決済が来る売買契約は不動産業者のみならず、もう、ひやひやでしょう。無理やり手形でも振らせるか、現金決済しかできないということになれば経済活動は思い切り停滞しますね。
ということで、どうも状況はあまり楽観できないように僕は思います、はい。
なかなか書き込めなく、申し訳ありません。皆様におかれましては、辛抱強くお待ちいただいて感謝申し上げます・・・
いつにもまして暗い話で申し訳ありませんが(笑)・・・。
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18 comments on “終わらない夏”
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Flair*【ふれぁ】と申します…私自身はまだ専門学生で、ゆくゆくは経済・経営に関する勉強をしたいと思い、日々英語やら簿記やらパソコンやらの勉強をしておりますm(__)m
ぐっちーさんのブログは日経を読むよりも難しいけれど、現場で働く方の生の声なので読んでいて新聞からは見えてこないニュースの側面が分かり、大変勉強になります(o^-^o)
ここ最近はブログが更新される度にドキドキワクワクしながら読ませていただいております【まぁ、本当はそんな感想を持つのは不謹慎なんでしょうが…。】
ではでは、最近めっきり寒くなってきましたので風邪などひかれないようにお気をつけください…また何かの折に書き込む機会があればその時はよろしくお願いします。次の更新、楽しみにしています♪♪
ドルが危機的状況なのに、日本の民主党はこんなことやってて大丈夫なのか?任せてもいいと思えるようにしっかりしてください!!
大塚先生、閣僚なら即辞任ものの発言です!菅先生のパフォーマンスには食傷気味です!大久保先生、財務省は為替ディーラーじゃないですよ!
[東京 2日 ロイター] 民主党の大塚耕平・金融対策チーム座長は2日、財務省の視察後に記者会見し、外貨準備の規模が大きすぎるとした上で、現状で国内総生産(GDP)比で約20%に達する外貨準備の規模を、約10年間で10%程度まで半減を目指すべきとの考えを示した。
(略)
視察には、菅直人代表代行も同行した。
(略)
また、金融対策チームの大久保勉事務局長は記者会見で、外為特会について「約100兆円の資金をわずか18人で運用している。大手金融機関のディーリングルームに比べて(財務省の)設備は貧弱だ」として、リスク管理体制の問題を指摘した。
いつも貴重な話、ありがとうございます。
債券市場のことはさっぱり分からない(自分に知識もないし、ニュースもあまり出てこない)ので、とても助かっています。
株式市場もリクイデーションによるものと思われる緊張感のある値動きが続いていますが、債券市場はそれ以上のようですね。
アメリカで救済プランが可決されてNYダウは
一時200ドル以上の上げから
終わって見れば157ドルの下げに転じました
やはり規模が小さくあまり機能しないと思われる
救済プランでは、材料出尽しだったみたいですね
持ち株はすべて月曜の寄り付きで処分です
でも今週持ち株のほとんどをトントンで処分しておいて助かりました
また書き込みさせていただきます。
金融法案がなんとか通過しました。
でも週末がこわい。
月曜日の朝のニュースが。
怖いニュースがありませんように(合掌)
自転車でひょこひょこ邪魔なくらい現れていた町の銀行屋さんと、証券屋さんがすーっと気配を消しています。以前は上司まできてたのに、最近は若いのだけが申し訳ないように来ています。彼らが欧米金融と私を結びました。
クローズアップ現代で放映した不動産会社倒産を見てて、どうしても腑に落ちないと言うか納得が出来ないでいたのが、
“ぐっちー”さんのコメントで納得です。
リーマン国債の件も、近況が素人には判らないのでありがたい情報です。
でも、角栄さんの列島改造論後に起きたバブル崩壊を少年時代に見てた者からすれば、
今回のミニ不動産バブル崩壊は当然のように思います。
そもそも事業は、自己資本が低ければ嵐に遭えば遭難確率高い訳ですし…
何だか、いつか通った道を再度歩いてるように思います。
ぐっちーさんならすべて分かってるんでしょ?
今後の予想や買い推奨売り推奨銘柄は何?
いまこそ8411、みずほFG、買いですか?
それともこのまま糞CDSに引きずられて
株も奈落の底へ落ちるのですか?
どう考えてもおかしくない?
なんで糞証券化商品のおかげでここまで株も為替も振り回す?
もしかしてこれを利用して誰かが裏でボロ儲けしてるのでは?ぐっちーさん含めてさ。
散々言ってた、世界の金余り、ってどこ行った??
ではなく、
来年の夏が来ているのです。
足りなければ、再来年の夏を使い、
と今世紀末まで、夏が続くかも知れない。
暗い話・・・?
いえいえ、明るいとも言えるのです。
もっと悪くなると判ったのだから、判ると言う事は解決の重要な一歩で、癌か否かと悩んでいるより、ずっとずっと前進なのであります。
危篤を告げられても、
まだまだ終わっていないと楽観力の競い合いが、お次を決めるのでは・・??
氷河期、
胃袋に入れるのは冷たい水以外ない場合も、我々は悲観ではなく、楽観力で生き延びてきたのだから。
ぐっちーは旨そうだなぁ・・とヨダレが・・
アメリカ経済のトレンドは清算して一からやり直すと言う事なんでしょうか、それなら金融機関の高給や企業経営者、映画俳優、プロスポーツ選手の高額年収は可笑しいと言う感覚に変わらないと又同じ失敗をする気がしますね、カリスマオバマが国民にどう喚起してチェンジするのか、中流階級を沢山創り出す政策がいいのでは。
今回の予想外の動きについての冷静な分析について特に納得です。
国債のみならず株も債券も為替も先物も警戒しなければならない時期だとつくづく思います。
今後ともご示唆よろしくお願いします。
111ページから421ページに水増しして緊急経済安定法は通過したものの、不良資産救済プログラム部分はほとんど変わっておらず、結局は45日以内にだされるはずのガイドライン待ち、これではメッキが剥がれるのも時間の問題かも。Treasuryが間に合わなければFRBということでしょうが、FRBのアセット棄損にドルは耐えられるのでしょうか?もっともこれからの財政負担でAAAが維持できるかも疑問ですが。SECは前例のない措置を連発しており、米国証券市場のパラダイムは完全に変わってしまいました。世界からリスクマネーが隠れてしまった後の行き着く先を考えるとぞっとしますが、まだ3合目というところでしょうか。この状況に日本の政策担当者はついていけるのか大いに疑問です。
日経新聞によると、バフェットが引き受けた優先株の利回りが10%となっていますが、そりゃ株も下がりますよね。
金銭と物品の移動もしくは交換できていない状態は信用が成立していないというか、無茶苦茶な話です。 ただぐっちーさんの仰るフェイルというのは金銭を渡した上で商品の受け渡しのない状態なのですか? もしそうだとしたら 確かに驚きからあきれるほどのインパクトです。 こういう状態に制約か期限はないのでしょうか?
また連休あるけれど10月17日までほんとに正念場ですね。まずは月曜日オセアニアの通貨から。
肌で感じられ、重みのある現場視点のコメントをいつも楽しく拝読させて頂いております。
今後ともよろしくお願い致します。
皆様ご待望の金融安定化法案が可決されたのになぜこんなに株式市場って下がるんですか。これでは可決するのしないのと議論したアメリカ議会がばかみたいですね。
いつも勉強させて頂いています。
ところで、今月中旬はシティの第3クォーターの決算ですね?
当局では、それを見越して時価会計凍結の動きも
ありますが、「時価会計凍結」と「SIV」について、どのようにお考えか?お聞かせください!