2006/02/23 12:55 | 中央銀行 | コメント(21)
すきだらけの日銀・・・かあ??
すきだらけシリーズは終わった筈でした。
すきだらけの民主党なんてちっともおもしろくなくて、「すき」、というよりは存在そのものが全部すきだらけで、そりゃー、すきじゃなくてからだろ、ということで特集になりません(爆)。
ところがきのう隙をみせてくれちゃったのがなんと・・・・最近応援していた日銀さんなのですよ。実はこのブログは結構関係者の方が見ているので努めてあからさまな批判は避けてきたのですが、おもいっきり私に振ってくれた人がいたのでさわりだけ、書きますね。結構マニアックな話かもしれませんがたまにはいいでしょう。本日は日銀を知ろう!!
日銀って何よ?
一般の方は日銀ってお札発行してるんでしょ、位にしか認識がないと思いますが、実は大変重要な所なんです。金融政策を駆使し、にっくき、庶民の敵であるインフレを叩き潰す、というのがその重大な使命なんです。そう、経済のウルトラマンなんですね。
実に、日銀のお陰で我々庶民は安心してお財布に現金を入れている訳で、これが脅かされるなら、福沢先生をすててリンカーンを保有しなきゃいけないですね。アルゼンチンなんか金持ちはドルしか持ってませんし、韓国もそうです。彼等は実は円もたくさんもっていてその意味で日銀は韓国の金持ちからも信頼されている訳ですよ。
ロシアなんかに行ってみると高額商品の決済でルーブルが使えるところはいまだに稀です。自国通貨のルーブルに明日いくらの価値がついているか・・・、
「おら、しらん、だからドルよこせ!!」、
となりまして、世界中でドルが通用する訳です。
更に、申し上げますと、実は日銀がその価値をしっかり守っているお陰で円もかなり使えるのです。それは世界中の人が日本というより、その価値を守っている日銀を信用している・・・ という一面を忘れてはいけません。だからお札は日銀券とよばれるのですよ。
ところが最近自民党の一部おじいさん達がその日銀を攻撃して、
「インフレなんかをあまり気にしているようなら、君たちは退場だ!!」
、という訳の判らん事を言い始めたのですが、これに対し断固立ちはだかって独立を維持している総大将が総裁である福井さん、とまあ、こんな感じになる訳ですね。
昨日の出来事
で、その総大将がちょっとしたすきをみせてしまいまして、マーケット関係者の間では話題になっています。
『日本銀行の福井俊彦総裁は22日夕、月例経済報告に伴う関係閣僚会議に出席後、記者団に対し、同日の日銀の中長期国債買い入れオペが9年5ヶ月振りに札割れとなったことについて、「中期ゾーンの国債の需給が引く手あまたで、民間でさばけているのだろう」と指摘。』・・・ブルンバーグより
これを輪番オペと呼ぶとだいたい年がばれるのですが、要は日本国債があまり世の中でジャブジャブになると金利があがる(価格が下がる)ので適当に日銀が買ってあげますよ、というセーフティーネットですね。これだけ買ってあげるよ、とせっかく日銀がいってくれているのに、それに応じなかった訳ですね。おおばかもの!!
ではなくて、実は証券会社はその日のマーケットであまり売れない、売れ残りを日銀に押し付けるのが常なんです。債券というのは不思議なもんで、10年債が高くても2年債が売られたり、一方で20年債はまた買われたりなど、年限によって変幻自在に変化(これをイールドカーブの形状変化と言ってます)致しまして、このあたりの読み具合で我々が金儲けをする訳ですが、商売の常として売れるものはさっさと売ってしまうので、日銀さんには売れ残ったとしまの芸者さんを引き取っていただく事になります。
従って福井さんの解説ですと、
「いやー、2年債券が売れに売れて、日銀にまわす分がなくなっちゃったのよ」、
という一見当たっているようなのですが、そういった我々の常識からはかなりかけ離れている訳です。売れに売れる売れっ子芸者さんはもったいなくて日銀には渡せん訳ですよ、福井さん(爆)。
イールドカーブが世界的にフラットになっている・・・というニュースを見かけられたことがあると思いますが、日本も同じでして、2年債券はまさに売れない芸者状態・・・だれかひきとってくれ?!!となっているのが現状なのです。
で、売れっ子芸者さんは誰かというと、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いの20年債でして、各社とも在庫が揃わん状況でかなり深刻であります。
そして、昨日は・・・
というとその余った2年債券がなぜか(突然)強かったもので、もったいながってこれを日銀に売り飛ばす女将はおらず、実は何故か昨日に限って一番安かったがその売れっ子ゾーンの20年だったという訳です。
こうなると置屋の女将は何もせっかく値上がりした2年債券を日銀なんぞにくれてやるこたーないわい、20年も既に玉切れ状態だから応札そのものをやーめた・・・・と止めて見たら札が割れてしまった・・とうのが正解です。
余りまくっていたのに、たまたまその日だけ高くなっちゃって、まさかねーと思ってたら買い付け量に達しなかったという何とももったいない状況だった訳です。
通常ですと2年債券がじゃぶじゃぶで最弱のセクターなので日銀に思い切り投げる訳ですが、それが昨日はイールドカーブの一時的形状変化により一時停止した、という訳です。(その証拠に日銀の保有債券を見て頂きますとまさに2年債だらけの、まんだらけ・・・な訳です)
細かい話のように見えますが、やはり総裁ともなればこのイールドカーブの形状を認識して発言して頂かぬとまずい訳でして、そのあたりが「すき」になってしまったという、お話でした。
所で、この話、なんで、芸者に例えるのか不思議に思われましたか??
実際に証券業は花柳界になぞらえられる事が多いんですよ。さっき言った在庫のことを我々は普通にぎょく(玉)と呼びます。これは置屋にいる芸者さんを「玉」と呼ぶのと一緒なんですよ! 債券や株の呼び名は芸者だった訳ですね?。
また、東証の場所があの場所(兜町)にあるのもむかし、稼いだディーラー連中がそのまま隅田川を上って吉原に直行しやすいからだ、なんて話まで有りまして、このあたりの江戸風俗話はおもしろいのでまた改めまして。
なお、本日の出典はこちら。
かなりマニアックなページですが勉強になりますよ。→債券市場の片隅から
うまく、飛ばないみたいなのでこちらを貼り付けておきます・・・
http://www.h5.dion.ne.jp/‾bond7743/
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21 comments on “すきだらけの日銀・・・かあ??”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
>ところが最近自民党の一部おじいさん達がその日銀を攻撃して、
小泉おじいさんや竹中おじいさんや中川おじいさんや安倍おじいさんがですか?w
まあ、日銀にはインフレと同じくらいにっくき庶民の敵であるデフレも叩き潰してくれないと困るんですが。
いつも為になる情報ありがとうございます。
恐れながら「債券市場の片隅から」からでは無いでしょうか。
インフレがにっくき庶民の敵となるのは、二桁以上の高いインフレ率の場合ですよね。2?3%くらいであれば、別に憎くはないですよ。
韓国のお金持ち(財閥系)は北朝鮮と統一したら自分の財産が保障されると思っていないみたいでそのお金が日本の株式市場や円に流れていると聞いたことがあるのですが本当でしょうか?
又、日本の将来を見越して円のドル建て等財産の海外への分散なども今日本のお金持ちはやっていると言われてますがどうでしょうか?ご教授お願いします。
すいません、非常に面白かったのですが債券相場の片隅から、というページが見当たりません。
アルゼンチンも韓国もロシアもフィリピンもタイも。。ついでに台湾から中国まで・・金持ちは信頼できない自国の通貨より基軸通貨たるドルや、同盟国(属国)の通貨円(冠たる貿易黒字)での財産保有を志向しますよ。それも日銀が円の価値と信頼性を守っているからです。これだけ財政赤字を抱えても円が紙くずにならないのは感謝感謝です。これがいわゆる金融戦争って奴で日本は高信頼社会だからやっぱり強みがあるんです。一方ドルは信頼のバックに巨大な軍事力と何でもかんでも運用できるNYがありますからねぇ・・
東京でも一極で商品から株まで自由に円で取引できたら、もっと大きくなるんでしょうけど。
でも・・なんで昨日だけ2年債が高かったのでしょうか。
いつも楽しく読ませていただいてます。
(q\’te)
ロシアなんかに行ってみると高額商品の決済でルーブルが使えるところはいまだに稀です。自国通貨のルーブルに明日いくらの価値がついているか・・・、
(unq\’te)
ここ数年でかなり状況が変わって来ているように思います。マーケットで見かける電気製品や家具の値段の表示はすっかりルーブル建てに変わりましたし、決済はもちろんルーブルです。
自動車や不動産になるとやっぱりドルみたいですね。
日銀攻撃のおじいさんと言えば、急先鋒は山本幸三自民党金融政策小委員長でしょうか。いやー、HP見ててもすごいですよね。
http://www.yamamotokozo.com/menu.htm
多分、「債券市場の片隅から」だと思います。
これで検索すると出ます
>実際に証券業は花柳界になぞらえられる事が多いんですよ
つまり?、同じ「水商売」な訳ですね・・・・深いなぁ
世界中のお金持ちが、ある程度とはいえ価値保存手段としての
価値を認めてる我等がJP-Yenですが、決済手段としては、
実際のところ、どの程度世界で受け入れられてるのでしょうか?
やっぱり、日本人観光客のいくところだけ?
大変恥ずかしい質問ですが、
金融のことよくわからずに
金利が上がる = 値が下がる
の仕組みを教えてください。
素人考えですが、
100万で 0.1% の 債権より
100万で 2% の 債権の方が
高く売れそうな気がするんです...
2%も金利がつくなんて、
危なくて買えない? ってことでしょうか?
南アフリカ債だとか、メキシコ債とか
売れまくっているみたいだけど、
それとも、金利を上げないと売れないほど
あふれているから、安くなると言うことで
しょうか?
そんなことも知らないくせに、
読むな! と 怒られそうですが、
猿にもわかる金利の話し
お願いいたします。
ms@Moscow様
ルーブルの価値は、現在は石油と天然ガスによって担保されていると考えられます。
ぐっちー様
日銀がゼロインフレを選好するのはやり過ぎかと。
ところで、株式市場は落ち着いてきたようですが、ぐっちーさんはどのように見られますか。
「そして、昨日は・・・というとその余った2年債券がなぜか(突然)強かったもので、もったいながってこれを日銀に売り飛ばす女将はおらず」(byぐっちーさん)
と
「中期ゾーンの国債の需給が引く手あまたで、民間でさばけているのだろう」(by福井さん)
って、こんなに力を入れて書かれるほどは違わないような・・・。
さすがに、日銀も輪番が「としまの芸者」を押し付けられてることは分かってますよ。みんなに嫌われちゃった芸者さんを、選り好みしないで引取ることで、花柳界全体の安定を保つ役割を果たしてることも。また、「としまの芸者」でも、安値で引き取って大事に最後まで抱えれば、それなりに働いてくれることも。
福井さんの発言も、「今日は、いつも人気がなかった○○奴が、珍しくあちこちで引っ張りだこみたいですな、はっはっは」という感じなんじゃないですか?
これまた15日のぐっちさんの記事通り、先週は年金売りだった様ですね。この様な情報は一般素人にも手に入るものなのでしょうかw
最後に紹介されている「債券市場の片隅から」はぐっちーさんも書かれているように、本当にとても勉強になりますね。
私にはなかなか理解できない部分も多いですが、時間がある時に過去に遡って読んでみようと思っています。
ちなみに、かんべえ先生の溜池通信もぐっちーさんのブログで紹介されていたことから、毎日読むようになりました。
また機会があれば、ぜひおすすめのブログ等を紹介して下さいね。お願い致します。
お詫び
どうも、私が債券相場の片隅、と書いてしまったみたいでとばない! ない! とかクレームを頂きました。はい、申し訳ありません。債券市場の・・でしたね。皆様にお手数をかけたこと、深くお詫び申し上げます。
Baatarismさん
基本的にデフレは日銀の政策目標にはならないですね。急先鋒はぼてやんさんお書きのとおりでしょう。私もそのつもりで書きました。インフレについてはその通りです。ことば足らずですみませんでした。
Zumaさん
日本は世界に稀に見る通貨分散の少ない運用者が多い市場でして、全体の個人資産の1%程度しか外貨に回っていない、という統計もあります。ひたすら円ロングですね。
ただ、孫さんの個人資産を運用しているファンドがあるのですが、彼くらい金持ちになると、やはり30%程度、外貨資産に分散していますね。さすが・・・でしょうか。
SAKAKIさん
その通りかと存じます。2年債・・・不思議でしたね。実は理由がよくわかりません。前場の引け値をみてびっくりしちゃった・・・のも札割れの原因かもしれません(笑)。
ms@Moscowさん
ありがとうございます。ご指摘の点、そのとおりかと思います。大分よくなってきているそうですね。思いのほかいい、という話も聞いています。またよろしく!
ぼてやんさん
おっしゃるとおりです。ほんと、ちょっと??な人なんですけどね、竹中さんとか上手くお使いになってますよね(笑)。
kaiouさん
そういうことですな(笑)
おおみや%バイト君さん
そうでもないですよ。ナイジェリアなんかでもOKですし、珍しい所ではリビアなんかもあります。キューバではドルよりも評価されてたりする(そうです)。
金利について
いや、おっしゃるとおりですよ。債券が同じ価値かつ年限のもの、例えば日本国債ならそれは2%の方が絶対価格が高いです。それが同じという事はそれだけその債券の信頼性が落ちる、つまり無くなる可能性が高い、ということで、これは借金の世界と同じですのですぐおわかり頂けるかと・・・
Schuldさん
恐らく0?3%位の範囲で制御するのが大変難しいのでしょうね。0か、あとはノーブレーキかという感じで振れていくのが現実ですかね。
株につきましてはもう少し様子見を決め込んでいます。大分いいんですが、ここに来て為替が変でしょ? 何も無ければいいんですが。
ラスト何マイル?さん
一般の方から見るとそんな感じでしょうか。債券のトレーダーたちはこういう「行間」を読むのが好きなんですね(笑)。あとは福井さんはなにせ前科が多いのでこういう発言も話題になる訳です。
マイクさん
うーん、どうでしょうか。我々も年金の人から直接聞いているわけではなく(解約してるぞ、なんていいませんからね・・・笑)、銘柄などをみて判断している場合が多いんですね。経験を積めばある程度判るようになりますよ。
ぜい肉マンさん
いつもどうもです。そのうち特集させて頂きますね。
債券が売られる(値段が下がる)と金利が上がることが分からないということであれば、クーポンの金利と、債券価格と、償還損益の違いの説明が必要なような。
例えば、以下のサイトの説明あたりとか。
http://www.findai.com/yogo/0210.htm
http://www.moneyjoho.co.jp/save/tsubo/tsubo05.htm
まぁ、結論の「危ない債券は金利が高い=安くしないと誰も買わない」というのは同じわけですが。
>債券が売られる(値段が下がる)と金利が上がることが分からない
素人的な立場から言うと、例えば人気の高い馬券ほど、当たった時の払い戻しが少なくなる、というのが感覚的に捉えやすいんじゃないかと思います。
だから逆に人気の無い馬券の人気を高めるには金利を高める必要があるけれども、人気のある馬券は放っておいても金利(払い戻し)は安くなる、とか。
(債券も馬券も私は扱ったありませんが。笑)
>基本的にデフレは日銀の政策目標にはならないですね。
僕はこの点が納得できないんですよ。
このデフレの大きな原因の一つに、日銀による過度の金融引き締めがあったわけですが、「デフレは日銀の政策目標にはならない」というのであれば、日銀は自らの政策失敗の責任を取ることができなくなってしまいます。
そういう組織を信頼しろと言われても、僕には無理なんですよ。だから山本おじいさん(w)が言うような、「政策目標は政府と日銀で協議して決定し、政策手段については日銀が独立して行う」という意見に賛同するわけです。責任を取れない組織に目標まで任せたら、何をされるか分からないという疑念があるので。
発言そのものではなく、記事(それも政治部?)の行間を読むってのも、なんだかなあという感じですね。。。