2008/09/17 22:32 | サブプライム | コメント(33)
信用というもの
こうなると私も本業が忙しく、なかなか書き込めません。たくさんアクセスを頂いておりまして、恐縮です。申し訳ありませんがお許しを。
いろいろ書かねばなりませんね。が、まず、このおっさん、ほんとに典型的な昔のエリート官僚です。
リーマン破綻の影響、与謝野氏「ハチが刺した程度」
日本にももちろん影響はあるが、ハチが刺した程度。これで日本の金融機関が痛むことは絶対にない。沈着冷静な行動が求められる」と述べ、日本経済への影響は限定的との見方を示した。 (日経)
鳥取で遊んでないで、すぐ現役官僚のマーケットレクチャーを受けることをおすすめする。リーマンのせいで、足もとの日本国債は大変なことになってます。
なまじ、取引をフリーズしたもんだから、二重売買の恐れもあり、リーマンと取引したものは当然ですが、他の業者と取引したものまで本当に決済できるのかどうか、疑心暗鬼になる始末。結局米系はやっぱり心配だ、ということで日本国債の取引のほとんどが日系証券に集中していたり、新発国債のリーマン落札分が2000億円以上あり、これの取扱いが未だに不明、など、市場は大混乱。
スワップだ、CDSだとかいう前に足元の国債がこれだけ乱れていて「はちにさされた」と言われたら現場の皆様はたまらんだろう。 金融機関が連合で、セカンダリーマーケットの混乱を平気で放置するなら、入札には応じない、とストライキを起こせばよろしい。責任は与謝野さん、あなたですよ。
結局、元大蔵省のエリート官僚達は予算を決めるのが自分たちの仕事だと信じているのです。予算を決めて、国債の発行額を決める。キャリアの官僚の仕事はそこまでだ、というのです。流通がどうなろうと、実際の取引で何がどこでフェールしようと、それはキャリアの官僚の管轄外、という認識です。こういう人(々)が今や国会議員で首相を目指している訳です。
(ご指摘のとおり、与謝野氏は官僚出身ではありません。彼を「だし」に、こういうタイプの人が、と書きたかったのですが、どう見ても官僚出身と書いているように見えますね。失礼しました。若干修正させて頂きました)
国民の皆さん、特に港区のみなさん、よく覚えておきましょうね。考えてみると検査さえすれば実際の流通の現場がどうなってるかなんて関知しないよ、と言っている事故米と全く同じ構図ですね。こういうものなのですよ、実態は。
さて、なぜリーマンは救われなくてAIGが救われたのか。リーマンなんて買う人はいませんと、申し上げた通りで、あれだけの負債を背負う価値はありません。結局倒産してから、チェリーピックすればいいことで、こうなればバークレーズのようなところが出てくるわけです。北米の投資銀行部門がわずか1800億円で買えました。めでたし、めでたし。少なく見積もっても1?2兆円は必要だったでしょうから、この分野だけをほしかったバークレーズにしてみればしてやったりでしょう。
さて、AIG.
いろいろな意見があるでしょうが、ひとつはリーマンは所詮法人の世界の話です。いわゆるプロが損をする、という構図。リーマンのリスクくらい、君たちわかってたでしょ? ということですね。
一方のAIG. 個人、しかも中国もインドも、もちろん日本も世界中の個人が被害をこうむる。ここに公共性を見出した、と考えていいでしょうね。
GSEの救済も同じ発想で、オールアメリカンだったら、ポールソンも倒してたかもしれない。しかし60%が海外に保有されているとなるとそうもいかない、というのが基本的な考え方でしょうか。
今テレビ朝日のしたり顔の解説ではAIGは世界の金融取引の保障業務の大多数を受けているために影響が大きかった、と説明していますが、まあ、現場をしらないにもほどがある。
クレジットのラストリゾートとしての保障という観点から見ればCDSを大量に引き受けているリーマンはまさにそれに該当するのであって、全く理由になっていない。むしろ、エクイティーリスクを取らない保障の形態をとっている取引はグローバルでは少数で大多数はCDSでカバーされています。これが原因ならリーマンは救済されてました。
したがって、保険なら大丈夫、などということはあり得なくて、極めてドメスティックなワシントンミューチュアルなどの業態は危ない、と見るべきでしょう。
キーワードはグローバル+個人、ということになりましょうか。その意味ではメリルは双方にあてはまり、救済の道が残ったということかもしれません。
しかし、信用創造というのは単純ではないのです。そうはいっても実際は疑心暗鬼です。アメリカの金融機関は本当に大丈夫なのか・・・・
昨日までならモルガンスタンレーに100億融資をしたけれど、何となく気持ち悪いので70億位にしておくか、という企業が100社出てくればそれだけで3000億円の資金がショートしますね。これが怖いのです。現実的にはすでにこの種のクレジットクランチが始まっています。
ジャパンプレミアム、御記憶ですか? 山一が潰れたおかげで世界中が日本のクレジットを避けました。民間金融機関であるロンドンインターバンクのレートの方が日本国債の金利より低くなってしまった・・・という時期がしばらく続いたのですよ。
当時欧州系の銀行にいた私はわずか5年の金利スワップの担保をとりに東京電力!! に行った覚えがあります。本当に恥ずかしかった・・・申し訳ありません、天下の東京電力に向かって「担保をくださいなんて」・・・・という事です。
それでも日本はまだ力があり、円に関して言えば外銀の融資を受けずとも、外国政府の資金がなくとも、国内の資金で十分食えたわけです。翻ってアメリカはどうでしょうか?
確かに基軸通貨ですよ。でも国債の60%は外国頼み、GSEも合わせればさらに外国頼みです。アメリカの金融機関の信用収縮はジャパンプレミアム以上に深刻だという可能性があるのです。
ポールソンはゴールドマン出身ですから、よくわかっている筈で、事実90年のS+L危機時にはシティーが潰れるかもしれないと言われ、結局RTCを使った公的資金の投入で切り抜けたのです。ただし、無謀な融資の経営責任を追及された逮捕者がウォールストリートからは続出しました。彼らを牢屋にぶちこむことの引き換えに税金の投入を正当化したのです。
今回公的資金を投入するなら、CDOなどというインチキ商品を広めた自分が逮捕されるかもしれない・・・と考えて躊躇しているとは、思いたくもないのですが、どうでしょうかね(笑)。
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33 comments on “信用というもの”
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お忙しい最中の更新おつかれさまです。
いつも楽しみにしております。
首をなが?くしてブログ更新を待ってました。
今回も詳しい解説ありがとうございます。
素人には事の真偽が良く判らないので“ぐっちー”さんのコメントは助かります。
日本の政治家や官僚の姿には呆れているますから国民は(笑)
近頃は全ての分野で偽装が流行ってますし、
どうせ選挙公約なんかは偽装のオンパレードなんでしょうね。
>今回公的資金を投入するなら、CDOなどというインチキ商品を広めた自分が逮捕されるかもしれない・・・と考えて躊躇しているとは、思いたくもないのですが、どうでしょうかね(笑)。
↑この部分を“ぐっちー”さんがハッキリ書くとは思ってませんでした。
今回の金融不安に関心のある方々の多くが同じ考えだと思います。
与謝野氏は首相候補とはいっても、
小池を落とすための捨て駒でしかないので、
まぁどうでもいいのですがね。
中央官僚が現場無視に徹しているというのは
財務・金融に限らず、あらゆる業態を蝕んで
いるのですよ。彼らは想像の世界で遊んでいると
言っても過言ではない。我が国の国民は不幸ですな。
AIGを助けた??? やはりハゲタカにもハゲタカがたかるのです。AIGが・・・
「あると思います」
「男は黙って現金 男は黙って円」
揚げ足取り申し訳ありませんが、与謝野議員は官僚出身ではありません。
与謝野氏の発言はご指摘のとおり現状に即していないですが、この一事をもって(キャリア)官僚を否定されると、ぐっちーさんの官僚批判も与謝野氏の発言同様的外れになってしまいます。
>ほんとに典型的な昔のエリート官僚です。
ということで、実際現役エリート官僚様から即席レクチャーを受けたからこの回答、だったりしませんかね?
日本では、毎年ハチに刺されて30?40人は亡くなっているそうで、野生動物としては熊よりもはるかに恐ろしいですぞ。
与謝野さんは、ハチに刺されてショック死するかもしれないので、様子を見て症状が出たらアドレナリンを注射する必要がある、と言いたかった・・・わけありませんよね(笑)
あのおっさんに入れるくらいなら又吉に入れます。
お忙しい中解説ありがとうございます。
この信用収縮でデフォルト率が上がってくるとますます大変なことになってきますね。
住宅の方はひとまず落ち着いてますけど商業用不動産の方はまだまだこれからなんじゃないですか?
いつも拝読させて頂いておりますが、このように情報に飢えている中、いつも以上にありがたみを感じます。ありがとうございます。
>結局倒産してから、チェリーピックすればいいことで、こうなればバークレーズのようなところが出てくるわけです
顧客が逃げ散り、信頼が地に堕ちたch11適用会社をチェリーピックするお人よしがバークレイズということになってしまいますね。
>北米の投資銀行部門がわずか1800億円で買えました。めでたし、めでたし。少なく見積もっても1?2兆円は必要だったでしょうから
クレディビリティがないから安くなっているだけで、潰れる前の部門の価値評価が高くなるのは当たり前のことですよね?
>クレジットのラストリゾートとしての保障という観点から見ればCDSを大量に引き受けているリーマンはまさにそれに該当するのであって、全く理由になっていない
そんなことを言ったら、規模の大小だけで考えて判断すればいいってことになりますね。CDSに限らない話ですし、リーマンだけがリスク資産を引き受けるラストリゾートだったわけじゃないですよ。
>したがって、保険なら大丈夫、などということはあり得なくて、極めてドメスティックなワシントンミューチュアルなどの業態は危ない、と見るべきでしょう
これは報道の通りの内容ですね?
それ以降の文章も与太すぎます。。分からないなら書かない方がご自身のためにいいんじゃないですか?
まさに信用って構築するのには長い年月がかかるけれども、失うのは瞬時ですね。わが身可愛さ、ポールソン、、、
いつも勉強させてもらっております。
お忙しいところ大変恐縮なのですが、文字のサイズをもう少しだけ大きくして頂けるとありがたいです。
例えば、Googleと同じぐらいの大きさが希望です。
結局何が言いたいのか伝わりませんので簡潔に説明してください。
ぐっちーさんの本が読んでみたいです。
いつも大変勉強になっております。
しかし、最後の一行が、、すごく笑えました。
ただ、既存のCDOがインチキ商品だらけであることは事実であるとしても、CDOおよび証券化商品自体がこれによって無くなってしまうことは少し勿体ないような。
それとも構造的にモラルハザードをはらんでいる商品で再起不能なのでしょうか。
はじめまして。MSやGSまで下がり始めましたね。
この前総理大臣に質問した記者は、本当に世相を代表していたと思われます。
「総理の会見はいつも人ごとのようだ」
総理をいろんな立場に置き換えてもぴったりきます。
ポールソン?
どうせ今回も、この騒ぎに便乗して巨額の利益を上げてるんでは?アメリカの政官財軍エリートって、そんなんばっかり。
まぁ、それらが元々一体なのがアメリカの強みだけど、危機の場合には弱みにもなるんですね♪
今回の信用収縮の連鎖を止める手立ては残されているのでしょうか?
ぐっちーさん、こんな意見もありますよ。
おばかが助かる。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/f34ddb07c52a056d5822cfb665ddd660
ハチの一刺し
って、昔聞きませんでしたか?
「毒作用は《マムシ毒》や《ハブ毒》に似て、日本の毒虫の中では唯一の《致死毒》 (Leathalvenom)」
とハチ毒は説明されています。
スズメバチや熊蜂と対峙してごらんなさい、一匹でも威圧感があり、恐ろしいのであります。
それが五匹も集まって、全国中飛びまわれていては、怖くて怖くて・・・ね。
やっばり外出控えよう。
アメリカは一兆ドルの公的資金が必要、
と米経済学者がイギリス紙に乗せましたね。
バーナンキは八千億ドルと試算してますね。
1兆ドルとは、
今回のイラク戦で費やされた・・ウルトラ控えめに計算された数字、と同じであります。
間もなく第二次大戦でかかった総費用を超える、
と指摘されているから・・・
その数字も控えめなのかな・・?
おっしゃるように現場を知らないようなメディア報道には、翻弄されています(翻弄されるのも悪いですが)。
それに対しいつもグッチーさんはプロの金融マンから見解を端的に分かりやすくブログに書いてくださる。
しっかりとした金融知識を持ちたい私にはたいへんありがたいです。
さて、与謝野氏の言ったハチに刺された程度。刺されても人体にさほど影響のないハチもいれば、スズメバチのように死に至らしめるようなハチもいます。
今の米国金融収縮の状況はまさに後者ですね。
与謝野さん発言「ハチが刺した程度」と言うのは言い得て妙、だと思っていました。ハチに刺されると死ぬこともありますからね。「蚊が刺した程度」と類似の言い回しを使うことで過度の恐怖を防ぎつつ、それとなく危機の大きさを伝えていて…
たいしたことないという意味なら、「蚊に刺された程度」というハズなので「ハチ」ならば、影響があるということでしょう。「ハチ」に刺されて死ぬ場合もあることだし。
某ブログからきましたAnakinと申します。お疲れ様です!不良債権投資で寝る間もなく働いていた日々のことが、まるで昨日のことのように思い出されます。我々ポストバブル採用組にとっては、日本のバブル処理にITバブルにエンロンにサブプライムと、作ってはつぶしの繰り返しでした。学ばない、懲りないw。とはいえ、いつかこれも終わる時が来ると信じるしかないねえとw。だから、ここまでこれたんだから。
ぐっちーさんも、どうぞお体大切に。またお邪魔させてください。
日本の政治家の対応は
とても楽観的に感じますけど
本当に大丈夫なのかしら?
(国民を不用意に不安にさせない
という配慮かしら/笑)
私はたぶん大丈夫じゃない
って思っているから
ぐっちーさんのブログなどで
しっかり心の準備!
ぐっちー様
初めて投稿させていただきます。いつも本当にシャープなコメントを無料で拝見させていただいてますことを心より感謝しております。
今回の”信用というもの”のコメントとは直接関係ないのですがどうしてもぐっちーさんに聞いていただきたく投稿いたしました。
いま国債市場が大変なことになっておりますが、中でも物価連動債がひどいことになっています。10y real yiel が1.74% で10y nominal yield(JGB)が1.485% です。こんな中で10月にまた物価連動債の発行を財務省は行おうとしてます。。ありえません。こういう状況下にあるときだけでも、予定の物価連動債の発行を普通債の発行にかえるべきです。でないと、利払い費の観点から税金の無駄使いです。それに、元本保証はありませんが、こんな好条件の債券をほっておく投資家も理解できません。。。。
”シイーデェーエス”て専門的には言うらしいですが(ーー;)
オラッチど田舎で・・・コンニャクイモしか栽培した事ないんで
”シイーデェーエス”てもんがどんな作物かワカンネーだ
おねげーです・・・グッチ?さんはその道の専門家見て?だから
”citiのサムライ債”保証料てドンナモノが妥当か教えてくだされm(__)m
ポールソンの今後の行動ですが、
(1)身の保全即ち、GSで金融工学なるものを駆使して訳の分からない物を作り、信用不安の原因を作った事に対して、身の保全を図る。
(2)自身の責任はさておいて、世界的な金融恐慌を回避する道を探る。即ち自身はどうなろうが、世界経済の安定を第一とする。
それぞれにおいて、ポールソンはどういう言動を取るのでしょうか?
ぐっちーさんにしか、答えられない事だと思いますので、質問させて頂きました。
本当に業界の人ですか?保証を保障 そんな間違えは見たことがない...ただの売り子ですかね
お忙しい中ご苦労さまです。
さて、本項の与謝野氏に対する苦言ですが、的外れと言わざるを得ないと考えています。
総理・大臣ともなれば、その発言は市場に対して影響を持ちます。民衆に対して「大変です。世界恐慌です!」とでも言えというのですか?嘘を承知で大丈夫と笑ってみせるのが「マツリゴト」でしょう。
プロとして見るなら、演説の順番を届出順から変更して与謝野氏が最初に演台に立った点から、この件に対する認識の重さを読むべきだと思います。
実際にきったはったやっているぐっちーさんから見ると、何をのんきな!と激昂なさる事も判らなくは無いですが、批判をなさる時は間を取って頭が冷えてから書かれた方が良いのではと・・・。
しかし・・・ぐっちーさんは意外と短気な方ですか?ブログでも怒ってる文章が多い気がします。
その後の部分はともかく、「蜂に刺されたようなもの」というのは、意外と的確かも。
健康体なら問題ないかもしれませんが、抗体があれば病院送り、下手すれば死亡してしまうことも、時々ニュースになっていますよね。
さてショック死しなければいいんですが。
本当に業界の人ですか?保証を保障 そんな間違えは見たことがない...ただの売り子ですかね