2008/01/25 11:54 | 金融全般 | コメント(36)
日本は世界のごみばこか・・・
昨日の世界の珍名につきましてはたくさんの応募(?)を頂きましてありがとうございました。コメントで頂いた分は公開させて頂いておりますので是非ご覧下さい。メールの方は「公開が憚られるような」、しかしかなりマニアックなものもあり、そのうち何らかの方法で公開にこぎつけたいと思います。
さて、少しマーケットも落ち着いたので書きたかったテーマの一つを取上げます。いつものように、誰もマッタク取上げないのでやはりここは私がやるしかない。
このサブプライム騒動のなか、昨年からコンスタントにサムライ債で調達を続けていたシティー。そして突如同じサムライ債で資金調達をしたモルスタ(二年4ヶ月ぶり)。メリルもちろんうわさがありますね。オーストラリアの銀行も予定しておりますな。
このサムライ市場。実はあのエンロンがアメリカで資金調達に苦しんで、もうL+300以上でも資金が集まらなくなったにも拘わらず、このサムライ債でごちゃまんと日本から金を調達したという歴史があります。そしてすぐ倒産した。債券のごみばこ・・・といっていい。
定義としては日本国内市場で発行される外国籍企業の円建て債券をサムライ債と呼び、国内市場ですから100%日本人にプレースされる所がミソ。これに対しユーロ円債というものは海外における円建て債(オフショアーといいます)の発行で、これは日本人以外でも買えます。
さて、そのサムライ。もちろんそれなりに金利を払うならいいですよ。しかし、今回のモルガンスタンレーのサムライ債は4年でLibor+120BP!! というレベル。おーい、400の間違いじゃないのかよ!!
だって、先日CICが出した変形CBは転換期限までの金利はなんと2yr Libor +600BP!! この差はなんでしょうか。債券のごみばこと言われるゆえんがここにあるのです。
もちろん、モルガンのセールスマンは
「向こうは株です。飛んだらゼロですからね。こっちはシニアの債券ですからスプレッドが小さくてもあたりまえでしょ」
と言って売る訳です。理論的にはその通り。
しかし、先方(CIC)は最後に株式転換権をもっており、すべて転換すれば約10%という、首根っこを押さえ込める株数をもつ権利がある。また、通常CBであれば株がスウィートナーの役割を果たすので、実は債券よりむしろ金利が低くて当たり前なのですよ。 本当につぶさない覚悟があるのなら株式は当然スイートナーとして機能するのでその分支払い金利は低くて良い。CICがこれだけの高金利を要求したのは株価の下落まで織り込んでいるからです。
更にこの説明には重大な誤謬がある。
金融機関における株式と債券の位置づけをよく考えた方がいい。一般の製造業なら、倒産しました、株はゼロです、工場や設備を他に売り飛ばして債券を支払いますという経路をたどる。
しかし金融機関で資本金がゼロ、ということは何の生産設備もないので営業不能。国債などの優良在庫がある、と主張するかもしれないが、そんなもの倒産に追い込まれるまでにすべてレポに出して資金調達の担保になってるに決まってるではないですか。飛んだら在庫を含めて資産がゼロというのは当然でしょう。
また、この業種、高いROEを要求されますのであまり無駄なもの(例えば本社ビルとか)を持たない傾向が強い。
また、製造業のような誰かがオペレーションすればすぐ物を作り出す生産設備があるわけではないので、資本がないのだから価値はない。その証拠にエンロン破綻で株も飛んだけど債券も飛んだじゃないですか。1995年に破綻したベアリンングはどうでしたか?? ミルケンのドレクセルは? キダー・ピーボディーとかどうなりました??
金融業は自己資本を含めて資本金が飛んでしまえば何も残らないと言う意味ではデットがエクイティーより保全されているのだと言うのは机上の空論でしかありません。リッキーやリッシン(金融債)が保全されたのは政府が資金を入れたから。アメリカではこれは絶対にない。
また、ドルと円のスワップスプレッドがあります、という線もあるけど、それを考慮してもせいぜい30BPもあればいいところなので、少なく見積もっても400BPは完全にぼられている。だって、それが日本市場の実勢なんだからさ、と開き直られてる訳です。
恐らく(確かめてないけど)セカンダリーでモルスタのドル債を拾ってきてアセットスワップをかければ同じ円でL+600位に仕上がる筈。1990年のシティーが潰れかけたときもそうだったから間違いないと思うよ。(アセットスワップのディーラーの方、コメントくださいね)
要するになめられてんですよ、日本は。なぜみんな黙って買うのか・・・まあ、モルスタの販売力からすれば500億しか売れなかったという見方が出来なくも無いのですが、それにしても500億もこれだけ悪条件で販売できるのだから立派と言えば立派です。それに、サブプライムの損失を発表してから調達しているだけまだ紳士的かもしれませんぜ。
シティーの方は実は昨年も五月雨的にこのサムライ債を発行しており、こちらはもっときなくさい。だって、サブプライムのやられは十分分かっていたはずなのに、「男は黙ってもくもくと」サムライ債を売り続けた訳。
これねー、エクイティーファイナンスなら完全に犯罪です。が・・・サムライに関してはこういうディスクロの基準があいまいなので実情をしらされない買い手は泣き寝入りな訳です。(サブプライムの損失可能性を一切隠して販売したという点については道義的責任は問えるでしょうけどね)。
個人的な意見ですが、そういう意味で日本市場はまるでごみため扱いなので、突然サムライを発行したり、何度もサムライを発行してくる企業は、外国で相手にされない為に苦し紛れに日本で調達をしていると考える方が無難です。つまり危ない。
実際エンロンしかり、シティーしかり。まあ、これを言うと、サムライに限らず、日本に来ているヘッジファンドも本当にいいものはアメリカで一杯になってしまい、クローズされてしまうので、日本でしか金が集められない(程度のもの)と考えるのが妥当だと思いますよ。
ですから、見抜くコツは唯一つ。
ファンドにせよ、債券にせよ、とにかく販売アロケーションに本国の投資家や海外の投資家が最低半分は入っているかどうか見極めること。つまり、サムライ債は100%日本の投資家向けなのでいくらでもだまされる。買っちゃだめな商品の筆頭。
ヘッジファンドでも例えばラリー・ポストのファンドは80%がアメリカ人だからOK。一方他社の同じゾーンのハイイールドファンドは70%が日本向けだったりするので要注意。外資系が持ち込む投信は「よもや、100%日本向けじゃないでしょうね」、と疑ってかかる事が大事です。投資戦略なんか二の次。
日本人向けの商品は「こいつら、何やっても絶対さわがねーから」と思われてますからね。半分アメリカ人が入っていればなにかあったら、彼らのおしりにくっついていけば半分くらいは取り返せるかもしれないね。
事実エンロンのサムライ債はとんじゃったけど、なんと返済順位の低いはずのエクイティー(殆どアメリカ人保有)は激しい裁判の末、かなり戻ってきた。債券の方が安全だなんてのがいざ飛んだら机上の空論だ、というのはこういう事です。
万国の労働者よ、立ち上がれ!! ならぬ 日本の機関投資家よ、立ち上がれ!!
であります。
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36 comments on “日本は世界のごみばこか・・・”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
でありますか。
朝食にしては遅すぎて昼食にしては少し早い昼食中、消化に悪い話をまた・・・
警告にしては遅すぎて、忠告にしては早すぎるのでしょうな。
まぁ、いつも悩ましい限りであります。
ぐっちーのオンブレ・コーニョは。
意は次の方のコメントが正しいが、珍しく男女兼用でありまして、流石に異訳しましたが・・・しなくてもよかったか。
サブプライム関係の損失が繰り返し発表される中で、なぜサムライ債が発行されるのか不思議でなりませんでした。
日本の個人投資家始め、まさか金融機関までこの手の債券を買っているんですか?個人ならまだしも、プロである金融機関が手を出しているとすれば、完全に思考停止状態です。そうでない一縷の希望を望みます。
もしかして日本の機関投資家ってバカなんでしょうか?人の金を預る機関投資家には厳しい資格制度が必要かもしれません。一般企業がせっせと稼いだ外貨を簡単に放り出すのはもはや罪かと。
エンロンが破綻したときに、その影響で一部のMMFが元本割れした記憶があります。
もちろん、MMFも元本割れする可能性はあるのですが、一般的には元本割れすることはまずないと思われている商品ですから。
今回は、同じようなことが起きないといいですね。
サムライ債はいろいろ事務経費がかさむので、最終的に企業が支払う実質利回りは、高くなってしまうときいてます。
どれぐらいめべりしてるんですかね>モルガン債
欧米では、環境負荷や開発倫理(人体実験とかね、最近ではPのナイジェリアとか)に問題がある薬剤は承認されないようになってきてます。しかし日本は外圧によってスピード承認の方向へ。
農薬や食品添加物、油脂(メタボの原因)、あっちで使えなくなったものたちは、規制のゆるい国へ捨てられている現状、、、
これは日本側が小口の資金しか出せないのも悪いのでは?
MSの500億にしても、50億ずつ10社で出せばもっと(国富ファンド並みの)利率を取れるでしょうに・・・
日本のリスク許容度の低さが裏目に出ている気がします。
要するに、日本の機関投資家も個人投資家も、
外人の悪徳訪問販売に騙され続けたってこと?
リフォームや浄水器、羽毛布団買わされる老人と同じじゃん・・・。
このこと、もう少し分かりやすくしてアエラで書いて欲しいですね。
でも書くとゴルゴとかに狙われたりするのかな?
少し勉強すると、個人投資家でも日本の機関投資家が情けないということが分かってきます。
彼らはサラリーマンだから仕方ないですよねぇ。
お代官さまに納める「年貢」なのですよ・・・
理不尽な事があっても、どんな事があっても納めるものそれが「年貢」
農耕民族に染み付いた哀しい性なのかもしれませぬ
今日は為になる内容を有り難う御座います。
相当おばかな自分でも何回も繰り返せば
サルよりは学習するんだけど。
機関さんたちって「こりゃあかん」と思う普通の人はたくさんいても、
組織となると一気にダメ男さんたちになっちゃうんですね。
何かふと思ったんですけど、
ブラジルあたりが持ち上げられたところでポシャン、
んで、やはり持ってたサムライ債。なんて。
きたかチョーサンまってたホイじゃないんだから。。
で、サブプライムはこのグッチー理論(?)に当てはめると、どのように判断されるんでしょうか?
Liborは1ヶ月物で 今3.77%ですか?
すると 4.89% 誰が500億円も買ったのですか?? 地銀、信金、宗教法人?
最後なら幾ら損してもいいのですがね・・。
日本にオープンな債券マーケットをあえて作らなかった 竹中平蔵のせいと思ってます。
コリアネームのサムライ債も増えてますよね。ドルで調達できなくても円では調達できるこの不思議。しかもスプレッド馬鹿安。
情報が少なく韓国の金融界の実情がつかみにくい!
難しい専門用語が多くて今回はサッパリでした。
金利の部分はせめて武富士やプロミスが良く使うなん%とかの表示にしてくださいよ、4年でLibor+120BP!! さっぱりですよ!
そうなんですよ。かっちまうのですよ。日本て機関投資家さまにはご丁寧に、運用ガイドラインだとか、運用何チャラ委員会なんてあるのですが、当然ここにいる委員に人たちとか、このガイドラインなんて、セルサイドのひとたちに言われて作ってるわけでー。
今までこの理事の人タッチって農業委員会だとか、公正しょうの血液製剤とか、郵性賞の規制行政とかいた人たちがやってるわけで、素人なんですよ。
での一番のど素人は大蔵省のリザイとキンユウなんちゃら局のやつらでした。
市場の予想は当たらないのですから、こういうタメになる話を書いてください。
製造業の生産設備が資本ですかぁ・・・・。金融屋の視点は面白いですね(^^;
エンロンの時、当時「日興シティー」が「ソロモン」だったかは覚えていないが、エンロン債を日本人が投げまくっていたのを安値で買い叩き、本国に売り返した記憶が・・・そして、なぜか日興シティーは大儲け???今回も、多分シティーもモルスタも、金は頂けるわ、儲けさせていただけるわで、ウハウハですね。日本の金融機関は、サブプライムでの損傷は軽微だったかもしれませんが、結局ぶっつぶされのではないのでしょうか?それとも、それらが組み込まれた金融商品を買わされる個人投資家が飛ぶのか?まぁ、どちらかでしょうね。
だって白いのとケンカできる奴いねーもん、この国
向こうに気に入られたくてシッポ振ることばっかうまくなったって奴しか見ねーし
向こうから帰ってくると、ホント哀しくなるよ、この国は
サブプライムで投資信託売り元本割れしないで僅か利益がで良かった。からくり知りました、日本の将来は底無しだ
私も専門用語はさっぱり分かりませんでしたがそれでもとてもためになりました。お話の大体の筋と本国が最低でも50%、これだけでも助かります。
ところで米投資家ですが昨年日本に来た時は日本の大手不動産屋に興味を持っていました。地○や三○です。
彼らは入ったのでしょうか、もう出たのでしょうか、留まっているのでしょうか・・・。
いつも楽しく読ませていただいていますが、このブログ時々「プロ」とは思えないナイーブな誤りがありますね。先日の「金商法改正で70歳以上は株が買えなくなった」というのは小生の他法律の専門家からも指摘されたのに未だに訂正されていないようで・・・
で、本日の書き込みでサムライ債市場に問題があるという点は同意します。ただ、「CICがliborプラス6%で転換社債」というのは何のことでしょうか。CICがシティを指すのならシティが先週明らかにした公募転換証券の金利は6.5%の固定で、当時のliborとの差でみてもせいぜい200bps程度ですが・・・かつ5年後にシティの側にも転換権が発生します。従って通常のCBと異なり金利が債券より高くなるのが自然と考えられ、これをサムライ債の120bpsと比べるのはどう考えてもミスリーディングではありませんか?私自身債券のプロではありませんので、あくまで通りすがりの無責任な感想ですが。
弱肉強食のキリスト教精神と、忍耐を美徳とする儒教精神との大きなギャップを感じるね。 知り合いの整理屋が言ってました。「弁済の順番は、声の大きい者から決まるのだよ。黙ってたら1円も回収できません。」
金融立国が叫ばれてすでに20年からの歳月を浪費し国力を腐らせ続けてらっしゃる金融業者のみなさんは万死に値しますな。
これらのサムライ債が吹っ飛んだら関係者一同は洋上のガソリンスタンド送りにしたらいいと思います。
利下げの影響についてです。米国債からの日本の収益!?はどの位違ってくるのですか?
その影響はどこに出てきますか?その為に日銀は利上げを急いでいたのですか?
コメント宜しくお願いいたします。
donbonさんと同じLibor何とか さっぱりわっかりませーん。
ひょっとして、闇の?キックバックとかあるんでしょうか・・・?じゃないと、そこまで阿呆にはなれないです。
CDSなどから見ればそれほど無茶なプライシングではないともいえます。日本の社債市場全体がミスプライシングではありますが。
かなり誤解に基づくコメントとか混じっているのでひとこと。
>zzzさん、
>日本企業がせっせと稼いだ外貨を簡単に放り出すのは罪
サムライ債のおはなしなので、この場合円貨だとおもうのですが。(まあ輸出主導の経済だから円貨ももとは外貨からきているといわれればそうかなぁともいえるんですが)。
>ひーひーさん
>Liborは1ヶ月物で 今3.77%ですか?
すると 4.89% 誰が500億円も買ったのですか??
おっしゃっている金利はおそらくドル?サムライ債は円建てです。
サムライ市場に問題があることにはまったく同意ですが、間違った前提で議論が暴走しないようにとの老婆心まで。
エンロンはサムライではなく「ユーロ円」債だったですな。まあどっちでもいいけれど。
マージンは別にして、アメリカ向けでも、これからは日本並みに危険では?お金持ちの金は搾り取られる時代のようです。GSなど一部の者を除いて。
投資は難しいですね。
ドルのCDSとみてもモルスタのサムライはそんなに差はないようですが、実際に流通しているドル債とCDSではそんなに差があるんでしょうか??
だとしたらCDSはどうしてそんなにスプレッドが低いのか?
まぁ、でもサムライが大量に発行されると、その後にどうなったかは,おっしゃる通りですね。基本的にボラれてます。
もるすたのCDSって5年でもこの程度の水準ではないでしょうか??$L+400ってことは無いと思いますが。メリルでも$L+140とかでしょう。
WCDSで、主要な銘柄のCDSが見れますが、モルガンスタンレー(MS)はと見ると、120ですな(もちろんドルベース)。ほぼ同じ償還日で、ドル債のフローター(L+25)が、プライス96.30程度ですが、これもドルL+125くらいですな。ブルームバーグの情報が偽なら私は知りませんが・・・
>通りすがりの野次馬さん
CIC(The CHINA INVESTMENT CORP)は中国投資公司の事で、モルスタ発行の転換社債購入の件を引き合いに出してます。
http://china.ne.jp/2007/12/20/jp20071220_81533.html