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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2005/05/12 16:28  | 中央銀行 |  コメント(8)

日銀のバランスシートと日本の財政


朝からおもしろい議論がなされております。いつも取り上げさせていただいてる

いそろぐさん http://www.tez.com/blog/archives/2005_05.html
本石町日記さん http://hongokucho.exblog.jp/

のお二方でそれぞれお話をコラボレートしながら大変貴重な書き込みをされています。

いそろぐさんのブログを見ていただくと日銀のバランスシートに異様なくらい国債が存在することがわかります。これはまさに、「意外だ!!」という方が大変多い。ただし日銀は隠れて買っているわけではなく、きちんとHPでもその内訳まで公表しています。
日銀HP   http://www.boj.or.jp/

本石町日記さんはこれと同じ事をシニョリッジの観点からご指摘をされている訳です。しかし、一体全体これだけの国債を日銀が購入しているというのは、まるで「蛸足」ではないのか、自分で自分の借金を引き受けているような物ではないか、という議論は当然出てきます。

関係者には怒られてしまいますが、これは金融緩和政策を打ち出しているにも拘わらず、国債の大量発行(GDPの150%もあります)により、金利が上がってしまうと元も子もなくなるので日銀に買わせてしまおう、ということなんだ、と正しいかはともかく大多数のマーケット参加者は(外人も含めて)そう理解している訳です。或いは日銀も買ってるから安心だよ、というメッセージともいえましょうか。

これは現在国債が10年で1.2%などという低レートで定着している大きな原因の一つです。予断ですが10年で1.2%と言うことはたった1.2%価格が低下するだけで、10年分の利益が吹っ飛ぶことになり、実際国債の価格が100円から98円80銭に下落するなんて事はしょっちゅう起きている訳で、個人的にはこの投資を正当化するのはかなり無理があると考えています。

現在この日銀買い入れは、相当「ずるずる」になってきており、当初直接引き受けを想起させるのはまずい、ということで発行後一年たたない物は日銀は買ってはいかんよ、としていたのが平成14年に更になし崩して、一年以内でも直近の2銘柄を除けば良いよとした、即ち今のように10年国債が毎月発行される状況下では、発行後3ヶ月もすれば買えてしまうという、ことで

「まるで直接引き受けではないか」

という批判を受けかねません。

確かに日銀のHPを見るとそれほど直近銘柄を買っている訳でもないので、そうはなってないよ、と日銀は反論するでしょうが、ルール上は殆どすべて買う事ができるのです。(30年債は除く)

現実的に歯止めは「通貨流通量を上限とする」という事しか残っておらず、それもかなり上限近づいておりまして、これを取っ払う、という議論はあまり目立ちませんが恐ろしいことにしょっちゅう起きている訳です。

そうなるとGDPの150%も国債を発行しておいて、郵貯、簡保、日銀で大量に買っているのは(およそ70%くらいを占めると言うデータもある)まるで「たこあし」ではないか、ということになります。この日本国債の信用力と、もっというと日銀の発行する日銀券(お札)の価値はどうなんだ、と考えるとかなり頭が痛くなる。

お札を発行している日銀の資産の大部分は日本国債だ。
しかし、その日本国債は将来的に返済可能かどうかもわからない状態まで発行額が膨れ上がっている。
しかし日本には外貨準備が8000億ドル以上あり、その大半を米国債で保有している。

えっ!? なんじゃい、日本の信用力はアメリカそのもじゃねーか??

という袋小路のような議論に陥る訳です。

現実的には外貨準備と国債の間ではこういう単純な図式が成り立っている訳ではないのですが、「観念的」には判りやすい議論です。

そこで前にも申し上げましたように、一つの国の信用とは正に軍事力を含めた総合力だという議論も当然出てくる訳です。小泉さんのお陰で日米が完全協調になってきているので(まあ、要はなんでも言うことを聞いているわけです)、通貨も国債も一蓮托生だと、見て見れないことはないでしょう。事実一部HFではこういう見方で金利為替を分析しており、ドル円のボラティリティーをショートしまくるなんて事までやっている訳です。

数字だけ追っているととても支払いきれそうもない金額を既に日本は国債として発行しているのですが、金利を支払い続けられるなら日本国が潰れない限り、借り換えを続けられるのではないか、という考えでこれを「プライマリーバランス」と呼んでいます。これが保たれている限りいくら借金してもOKということですね。これが崩れると借り換えが出来ずにたちどころに行き詰ります。(NYCのアルトマン教授のジャンクボンド理論と全く同じですね、これは)

ですから、うそみたいな話ですが今後、こんな借金をしてそれを中央銀行が大量に保有しているような国は信用ならん、という話になれば(なればですよ)、まずは円安で調整されます。輸出企業は信用力のない円をもっているよりドルをそのまま持っていたほうが安全だと考えるとすると、ますます円安になり、更に国内で円で再投資する資金が枯渇し、国債を買わなくなる・・・国債がプライマリーバランスを失うと言うことは現象としてはこういう事態を引き起こし、アルゼンチンのように国内でも信用力のあるUSドルが流通することなるでしょう。アメリカにこれだけファイナンスをしている国のプライマリーバランスが失われた時は一体どうなるのか、これはだれも経験したことが無いので全く未知の世界です。日本は人類史上壮大な実験をしている訳ですね。

長くなりましたがこんなことろでしょうか。
最後に日本国債の細かい議論、歴史に就きましては私の友人が書いております以下の著書をお勧めいたします。
題名に関しては異論がありますが(笑)内容はしっかりしております。

「日本国債は危なくない」 久保田博幸 文春新書

ほんとかよ!?

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8 comments on “日銀のバランスシートと日本の財政
  1. Unknown

    ぐっちーさん、TBありがとうございます。
    膨大な借金を抱えた日本が、これまた借金に苦しむ米国のファイナンスを支える構図。ダ○エーを必死に支えるU○Jのような…。

  2. minomino より
    日本国債は危なくない

    日経新聞の一面に預金封鎖等の本の宣伝を最近よく目にします。インパクトのあるタイトルで感心してましたが今日の著書のタイトルには度肝抜かれました。迷わず買います!

  3. minomino より
    日本国債は危なくない

    日経新聞の一面に預金封鎖等の本の宣伝を最近よく目にします。インパクトのあるタイトルで感心してましたが今日の著書のタイトルには度肝抜かれました。迷わず買います!

  4. mor より
    10年分の利益

    いつも楽しく読ませていただいております。
    今回一点よくわからなかったのは、1.2%の
    国債の10年分の利益が、価格が1.2%変動
    すると吹っ飛ぶというところでした。直感的には
    10年分の利益は、価格の12%に相当しそうな
    気がするんですが、違うんでしょうか?

  5. ぐっち より
    morさん

    ご愛読感謝申し上げます。
    ご指摘の通り、表現がへたくそですね、まったく。1.2%の利回りで購入すると10年間それ以上の利回りで回ることはなく、ずーっと年利1.2%ということなので、毎年毎年1.2%の価格下落によりインカムが吹っ飛ぶリスクを持ち続ける、よって合計はそのとおり、10年持ち続けると12円になる、と書かねばなりませんでした。すみません、誤解を招いてしまい。言いたかったのは10年にもわたる利回りを固定してしまい、1年で1.2%しかのりしろがない投資です、ということでした。ご指摘深謝いたします。適切な表現に後程修正させて頂きますね。

  6. mor より
    ありがとうございました

    ぐっちさん
    なるほど、そういう意味だったんですね。
    よくわかりました。これからも楽しみに
    読ませていただきます。

  7. システム5.1 より
    Unknown

    日銀の保有国債量が多いとは思わないですよ。
    日銀券の発行の引当資産は国債が最も適していますから。

  8. ぐっち より
    Unknown

    あー、システム5.1さんだ!!コメント有難うございます。もう何も申し上げられないですよね、その通りですから(笑)

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