2008/01/23 10:09 | サブプライム | コメント(29)
ヘリコプター野郎
何の根回しもせずに0.75の利下げ。まあ、仕方ありませんね。しかし皮肉なモンで、バブル崩壊以降苦しむ日本に対し、
「ヘリコプターで金をまけばよいのだ」、
とえらそーにノタワマッテいたのがなにを隠そうこのバーナンキ。「ヘリコプター・ベン」というあだ名まであります。まさか自分がヘリコプターで金をまく側に回るとは思ってなかったでしょうね。最初に言い出したのは多分ミルトン・フリードマンですが、このヘリコプターマネー、マジに有効だと思いますか?
金融緩和に次ぐ緩和、遂にアメリカの短期金利は3.5%です。更に1600ドルもクーポンを配ると言う。ルイ・ビトンのバック買っちゃったらアメリカ経済の役にはたたないような気がしますが、一方でインフレ制御とか言いながら、こうやって金融緩和とばらまきをやる訳ですから元来矛盾する政策を同時にやる訳です。アクセルとブレーキを同時に踏むんです。
で、実は日本はこれをやった。ゼロ金利政策。更に国民にクーポンを配るとどうせろくな使い方をしないだろう、といういつもの国民はばかだ、と思っている政府の方針によって(比喩ですからね)、このヘリコプターマネーを広義に解釈をして、減税をして、その分国債を発行し、更にそれを日銀が買い支えれば同じことだろう、と考えた。そしてある意味成功した訳ですね。
元来こういう政策をとれば将来のインフレリスクを恐れ、更にこれだけ財政赤字のある日本は長期金利が上昇する訳です。しかしいまだに1.2%に維持されている。同じような政策を発動したアルゼンチンやロシアが破綻したことを考えるとこれは奇跡に近い。
この理由は・・・・
国民の皆さんがなぜか律儀に郵便貯金や銀行預金にお金を貼り付けた為に、これが国債を買い支えることに結果的になった、と見ています。日本は90%以上の国債が日本人によって購入されている。だから、こういう「サイレント・マネー」がある限り破綻する懸念はない。しかし、アルゼンチンは国債の70%が外人による購入でした。その中で こういう政策をとれば債務をインフレで棒引きにかかるわけですから、期待インフレ率及びリスクプレミアムが国債の利回りに即効で反映され、長期金利が間違いなく上昇する。
従って今の国債水準が保たれている日本はある意味奇跡です。みんながリスクに鈍感だったってのがあるかもしれない。事実、アルゼンチンの特に富裕層はどんどんアメリカの銀行に資産を移していった。日本人は自分の預金がこんな赤字の日本国債に投資されているとは知ってか知らずか、ずーっと「ゆでがえるの」ように銀行にお金を貼り付けていた。この差は大きいですね。
アメリカも国債の約7割が外人によって支えられているいわばアルゼンチン型。しかも貯蓄率は低く、既にアメリカ国内で国債入札を支えられる状況にはなく、今回のバーナンキの政策で長期金利があがらん、という保証はマッタク無い。第2のアルゼンチンかもしれない訳です。
唯一の頼みは中国や日本が外貨準備の大半をドルでもっているので仕方なくアメリカ国債を買う、ということだけです。
日本の占領政策が大成功だったのでイラクも大丈夫だろう、とイラク侵攻を始めたという説が最近言われていますね。鬼畜米英とか言ってても日本は占領後テロなんか起きなかったでしょ。イラクも同じでいいんじゃねー・・・と思ったらテロだらけ。
日本でヘリコプターマネーが成功したから大丈夫、とまさか思ってないだろうね、と私は本気で心配している訳です。ヘリコプター・ベン、大丈夫か??
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29 comments on “ヘリコプター野郎”
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日本の場合、減税で国民に対してヘリコプターマネーをしたのではなく、非不胎化の為替介入で円高を阻止することによって、輸出産業に対してヘリコプターマネーをしたのではないでしょうか?まあ、日本であの政策をしなければ、未だに日本は不況に沈んでいたでしょうから、必要な政策だったとは思います。
アメリカについては、クーポンを配る財源を国債で賄うとして、その国債を中央銀行が買い支えれなければ金利が上がる可能性があり、買い支えればインフレが進む可能性があると言うことになるのでしょうね。利下げをしているということは、注目すべきは高金利よりもインフレなのでしょう。
>日本の占領政策が大成功だったのでイラクも大丈夫だろう、とイラク侵攻を始めたという説が最近言われていますね。鬼畜米英とか言ってても日本は占領後テロなんか起きなかったでしょ。イラクも同じでいいんじゃねー・・・と思ったらテロだらけ。
イラク解放戦争直前、サンデープロジェクトで特集をやったときにこの政策をせせら笑ったのが「あの」宮沢元首相でした。
宮沢氏曰く、「日本とドイツは少なくとも先進国だったんですよ。何を考えてるんですかね」
何やっても貧乏くじを引かされた人でしたが、流石に外交交渉だけは専門だけあって的確でしたね。
日本のまねですかー
差し押さえた物件を管理しないから朽ち果てて行っているみたいだし
家は、凄く管理が大変
其の点日本の差し押さえ物件は、税金は掛かるが
朽ち果ててなくなることは無い
もしかして日本のシステムて結構優れもの?
有名なJim Rogers氏もバーナンキ氏のことを「(お金の)印刷機を回せば問題が解決するなんて言っているあいつはアホか?」と発言していましたね。ドルがどんどん弱くなると予想して昨年シンガポールに移ってしまったみたいですが、昨年末頃から彼がしきりに勧めていた農産物への投資は、ここに来てかなり値上がりしています。伝説的な投資家の先を読む強さに感心してます。
ヘリコプターマネーによる解説、とてもわかりやすく思いました。
ところで、米国債等の利子はどの程度まで、日本は受け取ることができているのでしょうか?
郵貯が支えてた日本国債 ハハハ
国営化して、信用保証協会融資を独占すればと思っています。
何故、民間金融機関が、ノーリスク(今は、改正されたかも)融資ができるのか?
まぁ、せっかく空中散布してくれているので、日本にある米国債 全部売って、シティー・メリル・ノーザンロックを買収しては、100兆円あれば、足りそうに思いますが?
忘れてた、シティー エンロン事件の負債 まだ隠してるかも。
今のアメリカではヘリじゃなく、ジャンボで札束をばら撒かねばならない、
知恵がないと、
誰もが酷評するが、グリーンスパンが選んだ男である。素晴らしい男に違いない。テンサイに違いない。
こんな場合、
古代ギリシャでも生贄は必要だった。チョッパー男が相応しいのでは?
グリーンスパンの「波乱の時代」では、希望は消えない・・が結論であります。パンドラの箱であります。
ですから
パンドラの箱を覗いて、まだそれ以外にめぼしいのが残っていないか、
ぐっちーさん確かめたら・・・
おっしゃる通りインタゲ論者のバーナンキがインフレそっちのけで利下げに走るのは矛盾してるんですが、利下げしないと株式市場崩壊の危機に瀕していたのも事実。利下げで金融危機が収まるかどうかはともかく、株式市場の好感を呼んで急場を凌ぐ苦肉の策だと思いました。
流動性を供給するだけで果たして不況は立ち直るものなのか、サプライサイド経済学は本当に正しい方法論なのか真価が問われる時ですね
台風が過ぎ去るのを待つ以外に何かできるという人を私は信じません。
私が権力か、軍事力か、一兆円持っていれば別でしょうがね。もちろん政権入れ替えます。
アメリカも違う相手に同じ方法が使っているとすると、まだまだ違いがわかるところまではいってないということでしょうか?
日本では、巻いたお金は、掃除機で回収されて銀行へ、そして日銀へ。きちんとサイクルされている。
意外にも、クローズドシステムで健全なのでは?
>従って今の国債水準が保たれている日本はある意味奇跡です。みんながリスクに鈍感だったってのがあるかもしれない。
この一節ですが、日本人にとって、自分の資産を失うリスクよりも、日本国という安住の地を失うリスクが大きいのだと思います。
欧州と新大陸って、京都と北海道みたいなもので、景気がいい土地に住めばいいという感覚があります。国境の敷居は日本人が考えるよりも低いです。だから国の財政についても、経済原則が働く、一方、日本は無一文を覚悟で支えるスポンサーがいる、その違いだと思います。
大変勉強になりましたが、
アメリカは、、日本のバブル崩壊でお勉強してる筈なのに、分りきってて、、、何故そんな無謀な貸し込みをしたのですか?
サブプライムローンとやらを、、
素朴な疑問。。 経済音痴kikinian
兎に角、株ガ下がると連動してるゴルフ会員権はいい事一つもないので、株よ、、上がってーーん。。。
日銀も財務もチンパンもみんな無為無策であっても日本の円が没落しないのは、日本の輸出産業がいつでも莫大な貿易黒字を出しているからで、これがどこぞの国みたいに貿易赤字垂れ流しだったら、日銀と財務とチンパンが経済対策を血相変えて発表しているんでしょう。どこの中央銀行だって毎年貿易黒字が10兆円超えるような国だったら、怠け者になっちまうんだろうな。
日本人は、これっぽっちも日銀も財務も政府も信用してないけど、日本の輸出産業は鉄板と思って日本に財産を置いてるんじゃないでしょうか。
日本はデフレだからヘリコプターマネーが有効だし、もっと徹底的にやれば、今頃デフレからも脱却し「奇跡の高成長」を達成していたでしょうね。残念ながら日銀の逆噴射で成長はついえましたが・・・。
しかし、デフレの日本ではなくインフレ率が3%にも達するアメリカでヘリコプターマネーなどやれば、それはインフレ加速のリスクが高いでしょうね。
それでも、FRBは緊急利下げし、いまだデフレの日本の日銀は利下げもせず無策を決めこんだ。金融当局の姿勢の差がハッキリ出ているし、それがそのまま90年以降の両国のパフォーマンスの差となってあらわれてますね。
ここで、国家資産の切り売りですよ!
現在日本が保有している米国債で「第七艦隊」を
メンテナンス用技術情報込みで日本に!
・・・と、主張するモンロー主義者がでてくるかも?
んな利益を産まないもんを買えと言われてな・・・
ヘリコプターマネーは馬鹿にするようなネタではないと思いますよ。というか、アメリカはまだ3.5%も金利を下げられますので、流動性の罠に入らずに済む可能性があります。
日米の違いは、緊急会合をやってまでサプライズ利下げをする機動性ある金融当局と、逆に自分たちの意思決定をごにょごにょ文言で解説しつつ徐々に見解を悪化させていき最後まで利下げしない機動性皆無の金融当局の差だと思います。
なお、アルゼンチン・ロシアは通貨制度が違いますので、日米欧英豪加などハードカレンシー国家と同列に論じる事はできません。アルゼンチン・ロシアはバーツやウォンと同列に論じるべき対象であり、元もルピーもまだその仲間です。固定相場制的な通貨制度(管理フロート制やバスケット通貨制度は事実上の固定相場です)が何かの拍子にハイパーインフレに近い通貨危機を引き起こす経緯については、既に多数の実例と解説がなされており、1970年代にその洗礼を受けて比較的ロバストな相場制度として仕方なしに先進国で採用されているのが変動相場制度です。
逆に言うと、変動相場制の国であれば、変動する為替を許容してしまえば(変な買い支え介入をしないという意味)、通貨問題は起きないと考えてよいと思います。
宮澤さんの言わんとした事はよくわかります。
第二次大戦は人類史上、最後の大国同士のガチンコ大戦争ですからね。
ベトナム、朝鮮やテロとの闘いとはまるで意味が違います。
戦後の占領政策もドイツや日本が元々民主政治、技術や経済の下地があった上での成功ですからね。なんかそのあたりがあろうことか日本でも混同されているようで、違和感を感じます。
イランや北朝鮮やテロ組織が国旗をつけた国産戦闘機や空母で戦いますか?
米国が破綻するのでは?ってとこまで出ると相場も大底のような気がします。売り方は何処か、いつまで買い戻すか!ぐっちさんも情報持ってると思うのですが・・・・
何故、アメリカ様は日本の預貯金を強制徴収しないのでしょうか?
敗戦後日本を占領した連合軍に対してテロが起きなかった最大の理由は、昭和天皇の戦争責任を問わない事にした政策が一番大きいのでは?もし昭和天皇を戦犯にでもしていたら・・・当時の日本人なら国中が沸騰したに違いないと思うのですが。
ホワイトハウスの廊下をクリントンはそっぽを向き、宮沢は足元を凝視して離れて歩いている写真を思い出しました。激論を交わして部屋から出てきた所だと思いました、クリントンは米国のアジア政策に就いて中国重視で行く事を理路整然と自信を持って宮沢に説明したんでしょう、宮沢は米国のアジア政策のあやうやさや傲慢さを厳しく諭したんだと思いました。
宮沢は「日本とアメリカは友達だ、アメリカの良くない所、悪い所は言ってやらないといけない、これが本当の友達じゃないですか、言いなりになってはいけない」とテレビで厳しく言っていましたね。
アメリカは宮沢がアメリカに就いて言った語録を研究して、これからのビジョン、政策の糧にしてもらいたい物です。
アメリカで生活していますが、外から見てみるると、日本はなんて素晴らしい国なのかと感心します。
もちろん米国にも良いところがたくさんありますが、私は日本をとても誇りに思います。
これからも外国の良いところを取り入れ改良し、さらに繁栄して世界から信頼される国になって欲しいです。
頑張れ日本!
インフレについてですが、心配しています。
すでに食料・日用品が値上がりしています。
ガソリンは、10年前は1ガロン1ドルしなかったのに今は$3近いです。NYやCA州ではもっと高いのでしょうけれど…
Interstate(高速道路)の出口で、この何年間かいなかった物乞いを見るようになりました。
近所のTargetで売り切れてしまったヒーターを求めて、低所得者が多く住む地域のお店へ行ったところ、沢山売れ残っていました。
安全な地域で日中、引越しを装って大型電化製品などを盗む泥棒が多くなりました。
犯罪が多くなるのではと心配しています。
いいんじゃないかと思うのですが…。
塩漬けの金融資産(現金預金→国債)よりも、預金金利分(だけ)でも消費や寄付に回った方が好循環ではないかと。
低金利が一般庶民(含お金持ち)の将来不安と国と金融機関のモラルハザードを煽っているように思えてならないけれど。
>日本の占領政策が大成功だったのでイラクも大丈夫だろう、とイラク侵攻を始めたという説が
占領政策では日本娘が無数に強姦されています。たとえば交通事故でも占領軍兵士にひかれて死亡しても全く賠償されませんでした。それが7年は続きました。
米軍兵士に殴られて障害者になってもちっとも問題にはなりませんでした。負けた国だったからです。
日本の占領政策が成功したのは日本人がおとなしい民族だったからです。戦後もその時代の悲惨な状況は日本マスコミは取り上げません。
問題がないのではなく、忘れる民族だから、見かけ上問題がないだけです
。
内緒で、、、
黙?って、、、
輪転機廻して、、、
もちろん、モノホンです。
それで、どっかの国の王子だかに頼んで、、、
出して貰ったことにすれば良い。。。
まあ、、バブって得たカネも、内緒で刷ったカネも、同じようなもんでしょ?
って、思うの危険かな?
市場参加者の一員としては、「俺に断りもなく!」という気持ちがあるのかも知れませんが、そういう要素を受け入れて読める方だけが金融市場で生き残っていくのではないでしょうか。サブプライムローン問題におけるぐっちーさんのスタンスを見て、関心していただけにちょっと残念なエントリーに思います。
大きなトレンド転換を目指す金融政策は、市場を多少びっくりさせるくらいのものが無いと駄目なんですよ。織り込み済みでは、現状追認でしかありませんので。
バーナンキは、まだグリーンスパンほどの市場の信任は得ていませんので、色々な事が言われてしまうのでしょうけど、行っている事はそれほど狂っていないどころか結構良い線だと思います。少なくとも、日本の金融当局と比較したら雲泥の差です。
ぐっちーさんは今回の利下げをサプライズとは思っていないのでは?ただ単にお金をばら撒いてもそれは
インフレに拍車をかけるものにしかならず、米国民の政府への信頼はますます弱まり、国を支えるものが無くなってしまうのを心配されているのだと私は思いました。間違っていたらすみません。
CPIは遅行指数にすぎないのだからバックワードを見て対応してて政策が遅れてしまうのではないでしょうか?
長期金利などを見て期待インフレ率で行うフォワードルッキングモデルでは正しい対応ではないのでしょうか?
債券屋なのに長期金利に触れないのはなぜでしょうか