2007/06/12 12:12 | 中央銀行 | コメント(6)
中央銀行の苦悩
昨日の書き込みに関しましてさまざまなご意見、補足を頂きましたが、そのうちこれは取り上げたほうがいいだろうな、というアドバイスが某中央銀行の方からありましたのでまず、こちらからご紹介。さすがと言うべきご指摘でございます。
ところで、「中央銀行のテマセック化」について、1点超細かい技術的コメントを。外貨準備をどの組織が持つか、あるいは運用方針を誰が決定するか、国によって違いがあります。中央銀行が資産を持ちかつ運用方針を決める例が多いと思いますが、いくつか例外があります。 ?外貨準備を中央銀行ではなく政府が保有している例:日本がそうです。日銀も数兆円外貨資産を持ち運用していますが、それをはるかに上回る外貨を外為特会が保有し、運用しています。介入もこの資金で行われます。この金に関し、日銀は「財務大臣の代理人」として、運用指図、決済、帳簿管理等の実務のみ行っています。 ?外貨準備を中央銀行が保有しているが、運用は他の機関に決定権限がある例:韓国や中国がそうだと思います。例えば韓国では介入の決定権限等は政府が持っていますが、B/S、P/Lは中央銀行にブッキングされる形になっています。最も可哀相な(中銀にとって)姿です。中国では、人民銀行にブッキングされた外貨準備の運用を政府の別主体が運用していると思います。ただ、中国では中央銀行(人民銀行)も政府の一部ですから、大きく言えば政府が持ち政府が運用する日本型ともいえます。
誰が書いたかばれそうですが(笑)、正しいご指摘ありがとうございました。 それからテマセックは日本の資産をそれほど買っているようには見えないというお話もありましたが、テマセック自らが持っていると言うよりはGIC,であったりGIC Investment であったり、フロントエンドはほとんど別働隊ですのでなかなか見えない部分がありますね。ただ、ディールひとつひとつはほとんど公表していますのでそれを丹念に拾っていけば彼らが何をどのくらい買っているかはおよその見当が付きます。
HFの場合はそれぞれの運用者によって、宣伝になるのでGICに頼んで公表を許可してもらっているケースがありますので、それが参考になります。あとは口コミ。その為には信頼できるニュースソースを日頃から確保していないといけないのは当然ですね。日経がろくな記事を書かないのはこういうニュースソースを確保していないからです。誰が本当に知っているかがわかってない(笑)。投資銀行業務はもちろん、債券も株もほんとに見当はずれの人に取材しているので笑ってしまいますな。だから日経は読んでもだめなんです。スポーツ面はいいけどね(爆)。
さて、中央銀行としてはまさか!! と思われたニュージーランド中銀による介入。当然、このところばかに強いKIWIを必死になって叩いた訳ですね。昨日の動きを円で見ると一瞬90円台に突っ込みましたが結局91円台に逆戻り。直近3月の78円がボトムで、わずか2ヶ月で20円と言うのですからこれはすごい。もちろん世界的にKIWIは強いのですが対円に関しては円が弱すぎる・・・と言うべきでしょう。
2001年には46円25銭という安値がありますので、ここ7?8年でKIWIはほぼ倍になりました。NZに家でも買っていれば今頃は引退でありますね。円がこれだけ安いのはやはり円キャリーの影響が大きい。何せ「世界のファイナンス通貨」に成り下がっている訳です。
まずは、金利が安いので借りるのはいいですね。でも実際返すときに円高になっていたら・・・・そりゃー、借金が倍増する可能性がありますので、怖くて円で借金なんかできません。逆に返すときに円安になっていて200円くらいになっていれば借金は半分になりますから、これはおいしい訳です。それだけ日本が舐められている、とも言えますし、これだけみんなが円で借金をし始めると円高になると困るので何が何でも円安にせざるを得ない・・・・と世界中が考え出したとしてもおかしくありません。北朝鮮にミサイルを打たせたりする・・・なんて事はないでしょうけどね。
ニュージーランド中央銀行(RBNZ)は苦悩が深いです。ここでKIWIを売りに出て、その額も一説では10億NZドルとも言われ、1000億円近い売りを繰り出すのですからたまりません。ただしこれ以上KIWIが強くなっては農産物の輸出競争力などにダメージがでますし、かといってインフレ制御の面から考えるなら金利を下げるのは憚られる・・・苦しいですね。
しかし、彼らとしては、これだけサイズの小さいKIWIが世界のHFに弄られるとは思わなかった・・・・というのが本音でしょう。HFの巨大化というのはこういう所にも影響が出てくるのですから特にG7以外の国の中銀は苦悩が絶えませんね。
一方、日銀も円高に対しては介入すればいいのですが、この円安をコントロールするのは容易ではありません。散々円高の恐怖に苦しんだ日本ですが、そろそろ止まらない円安に対して手を打つ必要がありますが、安易に介入する訳にも行かず、こちらも苦悩は深いものになろう、というのが私の予想です。ということで本日はこういう題名になりました。
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6 comments on “中央銀行の苦悩”
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何処かの中銀が、ハムレットの台詞で悩んでいるとしたら、それはポーズに過ぎない。
事実上官邸が握っているとすると、取り敢えずは参議院選が終わるまでは、現状維持ではありませんか?
僅かばかりの日銀の利上げで、世界が震撼したとするならば、してみせた・・・犯人はアレだと都合良い身代わり羊を指したにすぎないとしても、我が国は元祖神風のお国であります。
民主党は国民の為に、立場でと主張する以上、政権を取れば、利上げに踏み出さざるを得ない。円安の功罪、と総裁が今更唱っている要では、哲学がない、信念がないと、御仲間から笑われているのじゃ・・・
いつも楽しく読ませていただいています。
重箱の隅をつつくようですが、 実際に為替市場で介入してるのは確かに日銀ですが やつらは財務省の為替介入担当部署の指示で実弾撃ってるだけですんで、日銀の苦悩というより 財務省の苦悩ですよん。 昨日のプロの方のコメントの繰り返しになってしまいましたね。
さっさと利上げすれば良いんじゃないでしょうか、日銀が。多分、利上げは当初の予想よりも前倒しされると思いますよ。
日銀としては利上げしたいのでしょうけど財政的に無理でしょうね。国債キャンペーンが大きくなればなるほどデフォの恐怖が増してきました(笑)
さて、日銀(財務省)が円安介入とはドルを売るという事でしょうか?無理ですよね?現在日本の貿易黒字は金利収入が五割を超えるとか。これで儲けてるんだからこのままどんどん円安で良いのでは?
原油穀物高騰すれど貿易黒字ですべてまかなえるのですから。
それが出来たら財務省も苦悩してないでしょ。
円安はどのくらい続くんだろ。個人の実弾の
流れ込みは今まで無かったから、機関投資家が
取り残されてる印象が。
推測の域を出ませんが、利上げを躊躇してるのはどちらでも良くなく八方塞の状態だからなんでしょうか。少し昔は360円でペグされ、プラザ合意前は240円、今は120円ですから国が莫大な借金をしてしまったのはこの円高が根本かもしれません。もう一段の円安が財政再建に繋がっていけば良いんではないかと素人考えを巡らしています。