2007/11/26 10:26 | サブプライム | コメント(11)
問題の本質
ミシュラン片手にワインなんぞを開け(うふふ、ランシュ・バージュの99年を倉庫から出しておいたのだよ)、濃い目に味付けたラグーやブルーチーズをなめなめちびりちびりと一杯やると・・・・うーむ、よい休日じゃ、
などといいながら、いつのまにか「すきやばし 次郎」の文字がなぜか「二郎」に見えてきて目黒に走った・・・という迷走ぶり。うー、にんにくくせっ!
まあ、おかげで幸田先生を久々にテレビで拝み、サンプロも見られたのでよかったんですが、相変わらずサブプライム問題に関する分析は甘いですな。山場が12月に来るって皆さんおっしゃいますがね、確かにサブプライムだけ見ていればそうでしょう。しかしいくらとろい金融機関でもサブプライムはゼロだと思って計算していますからこんなもんがこれからいくら飛んでも関係ない。
RMBSとしてサブプライムが固まって入っていると思っている人も多いみたいだけれどそんなこたーはありません。クレジットカード債権も、所謂レバレッジトローンもみんなごちゃ混ぜに入れたわけです。
格付けが低すぎて、或いは一つ一つみると余りもリスキーなものを「分散」と言う名の下に集めているので、確かに分散しているが、実際サブプライムが飛び始めてみると、同じ格付けのほかのレバレッジドローンは大丈夫なのだろうか、とみんなが思い始めるわけです。
もともと一つ一つ分解して売る予定なのないローンを集めている訳だからこうい時にその一つ一つのローンが一体いくらなのか判断がつかないのは当たり前といえば当たり前。特にローンの場合、コブナンツという奴がついている。これはかなりエキゾチックな内容になっているものも多く、実際そのコブナンツに抵触しているか否か判断に苦しむものも多いのですよ、いざとなると。
そういうものを一つ一つみて、値段をつけていくには膨大な時間と労力がかかるわけです。更にそれらを原資産にしたCDOの債券を保有している金融機関はAAA,とかAAとかの格付けがついた社債だと考えて、常に流動性が確保されていると考えていた。原資産がいっぺんに飛ぶと思っていなかったのだから、甘いと言えば甘い。
実際、売買もしていた訳だが、いざこういう事態が起きると、お互いにこんなものを大量に持っている金融機関同士なのでたちどころにビットが出なくなってしまい、流動性の喪失に苦しんでいるというのが今のフェーズ。既に第二段階入りしてまして、従ってサブプライムがこれ以上飛ぼうがもう関係ないわけで問題の本質はこちらの信用収縮なのであります。
このCDO債券の流動性を回復するにはCDOの原債権(債券ではありません)をひとつひとつ見て、妙なコブナンツ(財務制限条項)が付いていれば「ゼロ」と評価せざるを得なかったり、売れるものはたとえ1%という備忘価格でも売却して・・・・と言う膨大な作業が必要な訳だが、これらを一つ一つ「診察して手術できる人」は世の中に実はそれほどいないのです。(コブナンツは開示義務がもちろんありますが、あらゆる方法で目立たなくしてあるのはエンロンの時に経験済みで実際さらに巧妙になっています。こういうのを見るとアメリカ人の金儲けに対する執念を感じますね)
こうした込み入った資産を本当の意味で扱えるのはここにもよく登場してくれるラリー・ポストなど、マイケル・ミルケンの愛弟子やその兄弟弟子などごく一部に限られる訳でして、彼らが数人で集まって一体何日かかるのか・・・という事態なのですね。だからこそ一度どこかに隔離して、よってたかって手術するしかない・・・ということでしてほうっておけばみんな腐っちゃいますよ、ということです。
実は残された時間はそれほど長くないと見ます。なにより、もう、これ以上耐えられないほどぎりぎりの状況まで金利を下げてしまった。これによるドル安はアメリカ経済の根幹を揺るがし始めています。
万が一、アメリカに対するリスクが今以上ふくらみ、アメリカ国債や政府の信用力をバックにしたMBSに対するリスクをヘッジしなければならないという事態になったり、何よりも金利が少しでも上昇をして価格が下がるような事態になれば世界中の金融機関の担保になっているこれらのものの担保余力がたちどころになくなり、それこそ世界金融危機になってしまう。
その前になんとかCDOを隔離しなければなりません。 日本も対岸の火事ではありえませんね。何せ日本円の価値の裏づけはドルですから。中国もかなりの部分をドルで抱えていますが、何せあの成長力ですから多少の資産の毀損はカバーできると考えられるでしょう。一方価値の裏づけがドルで、かつ成長率が2%もないような国は叩き売られても不思議ではありません。まあ、この程度の事くらい、榊原さんには言って欲しかった、と言う訳で。
PS
またまた日経の皆様へ。
本日一面、サブプライム関連損失7兆円に、と言う記事。甘い。大甘。もっとしっかり取材しなきゃ。SIVに代表される簿外の部分をマッタク考慮していないですね。多分ゼロが一つ違う。カントリーワイドの簿外を含めたローンの毀損が1兆ドル、という取材まで出ており(東洋経済に詳しい)もう少しつめる必要があるのではないか。一面だからね、なにせ。
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11 comments on “問題の本質”
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いつも貴重な情報提供を有り難う御座います。
桁が凄過ぎて、私には全然分りません。(笑)
ところで連休中に長崎へ家族旅行してきました。勿論?あそこへも行って手を合わせてきました。飯が旨い所なのに・・食文化の未熟な国は考えなかったのですかね?
貴重な情報(日本円貨の価値について)どうも有難う御座いました。僕も懸念はして、家計のほぼ全資産は株式に移しておいたのですがね。こちらでも明日、仲間達、読者の皆様に周知しておきます(あくまで予定ですが・・・)
凄腕の弁護士の領分でもある、と思いますが、弁護士の首切りが始まってますね、あちらさんでは。
不作為の行為、と言うのは犯罪である、
と日本の司法が断罪して大騒ぎになった。欧米ではどんな概念で捉えているのか知りませんが、各国の司法も落ち着けば乗り出さざるを得ないでしょう。
それまで患者が保つか、とぐっちーさんは言う。
しかしこんな経済的カオスは、独裁者的存在が出て、三方一両損で解決しない限りね・・・実態は仮死状態でしょう。
SIVは詐欺だと叫んだ方いるし、言えるのはローチ三の独占場ではありませんか?
ぐっちーさんもランシュ・バージュを舐めてないで、葡萄園を買い込んで一流に育てませんか?
えぇもう手当しているって!!
絵文字にワイン関係がないぞ!!
日本円はドルが後ろ盾
うーん。言葉の意味は分かるのですが、言葉が示している内容はよくわからないです。
アメリカ次第ということなのでしょうか?
ぐっちー先生と松藤民輔先生のブログにはいつもお世話になっております。
色々大変とは存知あげますが、何卒私のような「情報無き個人投資家」の為にも頑張ってください。
ブログ閉鎖は私の投資生命にも大きな影響があります。^^;
今後とも健康に御留意され、我々のような「情報無き個人投資家」の為に頑張ってくださいね?
因みに私、ぐっちー先生同様「虎キチ」を45年以上やっております。
草々
上海株式市場が大暴落しちゃいましたね。
石油製品輸出禁止になっちゃうし、10月末日分以前の融資は凍結するなんてニュ?スが流れているし、イギリスのお偉い学者は中国の本当の経済状況の数字は1/4だ!なんて叫んでいますよ!
金持ちが日本の3倍いるのは確かに魅力ですが、見栄張るのが大好きな国民性なのでどこまで本当なのか?
中国の明日に注目ですね…
楽しく拝見させていただいてます。
中国の成長率については、他の方も疑問をもたれてるようですが、本当に当てになりません(笑
何しろ党のお偉いさんにとって実績=経済成長ですので、農民・工員の人たちが藁を齧ってても10%成長してると言う、笑えない風景を見ました。
上海など大都市の発展は中国の真実なのか?私には疑問です。
後一つ、ぐっちーさんの専門である債権について質問なんですが、現在1兆4000億$と言われる中国の外貨準備の内、米国債は今年の5月時点で4000億$しか所持してませんでした・・・他の1兆$はもしかして・・・
より利率が良くて格付けがそこそこ良い債権に流れてませんか?これってひょっとして・・・
ブッシュはイラクもサブプライムもほっぱらかして辞めるんだろうな。しかし、何とも思っていない所が凄いよな、少し頭が可笑しいかも知れない。シカゴ学派の小さな政府、市場至上主義も机上の空論の様に思われ、結果はマルクスと同じだったりして。早くヒラリーに代わって一からやり直さないと世界が可笑しくなるわ。ほんと、ブッシュのおかげでいい正月が迎えられるわ。
中国のバブル崩壊は、近い。
すぐそこだ。
気をつけましょう。
ブッシュ「ら」はやはりおかしいのでしょう>stさん
時代遅れにも華氏911をみて、感心するやらあきれるやら…(-_-;)
CDOの中には、きっとこんな債権も入り込んでるのでしょうね。
病める米国医療、無保険者の悲鳴
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071130/142016/