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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2006/10/24 10:03  | 金融全般 |  コメント(0)

安定している金融市場


毎年何か事件のおきる金融市場ですが、今年は本当に平穏です。


ロングオンリーのシンプルかつ基本的な投資スタンスに負けなし、の一方、我々のようなデリバティブなどを駆使してサヤを抜くようなタイプのトレーダーはサヤの抜きようがなく、特にクレジットトレーダーはこれだけシュリンクされてしまうと稼ぎようがなく、苦しい年になっています。


為替の連中も同様ですね。
これなら、ドル・ユーロロングオンリーにかなう訳がない。ここでも再々指摘しているようにドル円はこのボラティリティーではただのローカルマーケットで、年初から申し上げているドル安、というスタンスでおやりになった方は百戦百勝、下手にドル円に手をだした人はさようなら・・・という悲しい結末であります。だからいったでしょ!?
なんていうとおこられるけど・・・


 株も日米ともに順調に上がってきたし、これだけ波乱がないというもの珍しい。これも何度も申し上げましたがアメリカのクレジット市場の平穏さも特筆もんですな。

さて、これらを見渡した時に、一体何が起きていて、今後どうなるか、という事についてある一つの考えが浮かんでくる訳です。


昔はアメリカがくしゃみをすると日本がカゼをひく、などといわれましたね。
結局、ベルリンの壁崩壊以降、欧州が東欧も含めて単一市場になり、ブリックスが出てきて、ロンドンはウィンブルトンになってしまい・・・・


要はアメリカがくしゃみをすると・・・・


日本はかぜをひき
欧州は熱を出し
アラブは心筋梗塞になり
ブリックスはがんになり
イギリスは脳梗塞になる・・・


 といったような世界的な経済連鎖が相当強固に積みあがった結果ではないか、という事ですね。その結果として、これだけお互いががちがちに組み合ってしまうと、下手な事をすると自分の首がしまる、という事を当事者である市場参加者同士が十分に認知して・・・特にオイルマネーだとか新興のロシア、中国あたりが・・・従来だとこういう新興国はそれまでの価値観に縛られなかった筈だがその巨大さの故か・・・、結果、だれも引き金を引かない状態になってしまった為に妙に安定してしまった、とも考えられるのです。


言うなればお互いに損する事を回避しようという「事前事故回避システム」のようなものが暗黙のうちに醸造されつつあるともいえます。


今流行の言葉でいいますと、お互いウィンウィンの関係がベストですね、という暗黙の了承のもとに市場も動き始めている、ということです。

GM,フォードがいい例でしょう。
昨日フォードの7?9月期業績が発表されまして、決して楽観できるものではないけれど、市場の反応は極めてゆっくりしています。クレデリも飛ばない。


理由は・・・・・?
いまさらGMやフォードを追い詰めてみてもだーれも得をしない、ということをみんなが認識していてマーケットはそれを織り込んでしまっていると見ることもできる訳です。トヨタがこれ以上GMに圧力をかけていって全米ナンバー1になったとして・・・・10年前なら考えられたモデルですが・・・今のトヨタに何の得ももないだろう、そうするとトヨタはそんな事態になる前にブレーキをかけ、GMとウィンウィンの関係を結びにくるだろう・・・と大多数の投資家が予測し始めている・・・だから倒産するかもしれないような企業の株価が30ドルもする、と考えられない事はないんですね。


アメリカ自身も、GMの従業員も市場も誰も得をしないGMの倒産をライバル達も市場もは回避するに違いない・・・などという資本主義にはあるまじき予測モデルが成立しつつあるといっても間違いではないですね。少なくともマーケットを見ている限りそう言える。


それは弱肉強食の峻烈な資本主義などとは全く違う姿であります。ある意味掛け金が高くなりすぎてしまいお互い潰せないという ”TOO BIG TO FAIL” に近い状態かもしれません。


さて、そうなると波乱はないのか・・・
あるんですよ、やはり。


こういうウィンウィンの関係に興味がない、あるいは全く認めない人が市場に参加することです。例えば北朝鮮の金正日。彼はイデオローグな人間で、かつこういう市場の安定から得ているメリットはほとんどなく、どこがどうなろうと関係ないために所構わずミサイルをぶっ放す。まあ、北朝鮮ですからたいしたことないですが例としてあげます。


かなり影響があると思われるのがベネズエラのチャベス大統領を筆頭とする反米の中南米国家。
悪い事に産油国でもあり結構な経済力を持ちかつアメリカに近いのです。


こういう従来の価値観を全く無視し、かつ妙に宗教がかっている連中、アルカイダなんかが思い浮かぶかもしれませんが、そんな国がアメリカのすぐそばにある、ってな事もそろそろ考えていた方がいいでしょうね。しかも彼等は敬虔なクリスチャンで宗教観が妙に近い。にも拘わらず考え方が対極にあるわけで、ブッシュのことを悪魔呼ばわりしている訳です。敬虔なカトリック教徒のチャベス大統領がです。このねじれの関係は対イスラムよりはるかに複雑だと考えた方がいい。


今後の市場は現在のそこはかとないウィンウィンという価値観に対するパラダイム変化またはそれに対する挑戦の構図を捉える事が重要だと考えている所以です。その意味でキーワードは経済には見当たらず、むしろ国家安全保証であるとかそういった全く別の次元からキーワードが飛び出してくる筈です。

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