2007/11/13 09:17 | サブプライム | コメント(34)
CDOと日本の金融機関
アメリカのサブプライム問題で日本の金融機関はどのくらいの被害があるのですか?? まだまだたくさんあるのではないですか? と言う質問を多数受ける。
もちろん、これに端を発するCDOによる損害については当初ゼロ回答からスタートしている訳で、こちらのブログでもそれはないよ、大手になるとせいぜい1兆円くらいは投資していただろうから、その価値が毀損して20%くらいになっているとすると8000億円くらいのやられはありうると書いきましたね。
実際みずほ証券が1000億やられていたとの報道(わたしがみずほが発表した、と書いたらそれは報道か発表か、と問い詰めてきたコメントがあったが、あまり気にして使っていない。天下の日経の報道なのだ)が、先週出て、たかだか中間業者のみずほが1000億やられているということになると、実際自分のアセットで投資をしていた銀行は大体8000億くらいやられていても不思議はないね、という感覚でしょう。
問題は当初「何もありません」、といっていたいつもの体質で実際はこのくらいのやられはあるのです。
ただし、これを針小棒大にもっとやられているはずだ、と申し上げる気はありません。どうも「そう書いて欲しい」、向きもあるようですが、うそはかけませんし(笑)、もっと大事な本質は別なところにあります。
背景は、幸か不幸か、日本の金融機関におけるドル投資、というのはなが?い円高のせいできわめて限定的で総資産の10%程度というインパクトなんですね。生保は円投なのでもっと少ないかもしれない。
銀行は基本的にドルを調達してこういうドル建てCDOに投資をするので、一般的な意味での為替リスクは無いはずですが、評価を一度円に引きなおすので円高になっていればマイナスになってしまう・・・従ってそんなに大量に保有できない仕組みになっているのです。
某お米屋さんに至っては、海外に支店がありませんから、恐ろしいことにすべて円投なんですが、図体が大きいので1兆円くらい飛ばしても平気でしょう、乱暴に言えば。住専問題の比ではないですね。
某民主党の国会議員が日銀の低金利のせいで銀行が海外投資へ向かったなんて国会でのたまわっていたがそんなたーありません。(こういうあほな質問にまじめに答えを書かなきゃいけない官僚の方はほんとに大変だと思います。一度もっと勉強して出直していらっしゃい、と本でも渡すってのはだめなんですか・・・笑)
まあ、ここは「ふつー」のブログではないので、実はいま問題にしなければならないのはこのサブプライムで問題を引き起こしたCDOという仕組み、これ自体は日本中できわめてポピュラーな仕組みで、バブルと言われる不動産、所謂ノンバンクに対する貸付、更にはM&Aに対する資金など、特に外銀が出してになっているローンはすべてこのレバレッジがかかったCOO仕立てになっているのだ、ということです。
だから何かがあれば今のアメリカで起きていることと100%おなじCDO惨禍が日本でも起きます。
サブプライムで思い知ったように、切り刻んだ資産が一方向に値崩れを起こして言った場合に、所謂シニアの部分も毀損するということは確認済み。
例えば六本木ヒルズ一棟を資産にしたCDOがあったとしましょう。
良くも悪くも六本木ヒルズを見ていればいいですね。特別な場所にある特別な建物ですから、資産価格が毀損したとしてもたいしたことはないという判断はできるかもしれない。いづれにせよ、六本木ヒルズのリスクをとるかとらないか、これだけ。
しかし、世の中に出回っている不動産ファンドの大多数は、本当の値段はよくわからない、つまり当面家賃を払っている人たちのキャッシュフローをベースに計算して、例えばオフィスビル30等を集めて証券化していたりする。(サブプライムCDOとマッタク一緒ですね)。
エクイティーは個人投資家もしくは外国ヘッジファンドに押し付けて銀行は上のローン部分を受け持つ訳です。このオフィスビル30棟を考えた場合、渋谷のビルが急に値下がりして来たとき、その他のビル(例えば新宿、恵比寿、大宮など)が逆に値上がりしていると考える根拠はあるでしょうか?
アメリカのサブプライムで見たようにこれは幻想です。
オフィスビルたるもの、東京中心地が下がれば必ず周辺部、地方も下がる。従って何かの拍子で下がり始めたらあっという間にエクイティーは吹っ飛ぶでしょう。
ここでリスクは二つ。
日本の不動産投資の直接、間接投資に外銀が大量に資金を供給していること。既にこれまで外銀(RBS,ドイツ、UBSが代表的)から融資を引っ張っていた不動産業者はこのアメリカのサブプライム問題以降、資金が引っ張れなくなって四苦八苦している。(わたしの所にこれだけ駆け込まれればわたしでも分かる・・・笑)。
従って、転売目的で保有された不動産を抱えて倒産するであろう中小業者が恐らく年末にかけて続出する。 (大手も相当苦しそうだが倒産はしないんだろうね)。
第2のリスク。
既に直接融資の資金を引き上げにかかってる外銀がCDOに出している資金まで回収にかかると・・・そのCDOは即時解約となり(コールオプション)、すぐに資産となっている不動産を現金化して回収しなければなりません。
つまり、ひとたびコールがかかれば一気に売り手が増えてくる可能性があるわけですね。まさに・・・・いつか来た道、という訳です。
今回は80年代とは違って株の値崩れが原因ではなく、不動産市場に大量に資金を供給してきた外銀の撤退がきっかけになると言う訳です。そしてCDOという商品の性格上アメリカで起きているのと同じことが日本で起きます、間違いなく。
外銀が最初に撤退を始めたノンバンク、パチンコチェーンに倒産が増えてきたことをみれば次は不動産、というのが衆目の一致したところ。その受け皿になるだけの力があるのは、日本の金融機関ではなく、実際は中国、ロシア、中近東などのマネー、ということになる筈です。しかしながら、これらのCDOに関するトラブルは今アメリカで起きていることとマッタク同じことだ、ということを再度強調しておきます。
アメリカの(ドル建て)CDOの毀損によるダメージは繰り返しますが限定的です。(ゼロだといったのでわたしが噛み付いた)。しかし、この問題に端を発する外銀の撤退が日本国内のCDO問題に火をつけるとわたしは見ています。これは早ければ年末にも発生する筈です。その準備はみなさんできていますか??
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34 comments on “CDOと日本の金融機関”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
とりあえず、5年返済予定の住宅ローン。
あと、3年残ってましたが、来年1月に完済する
ことにしようかと考え中です。
銀行倒産しても、借金の額は減らないもんねぇ。
なるほど。
次は、不動産の「バーゲン・ハンティング」になりますか。」
これはCMBSのことをおっしゃっているのでしょうか?であれば、デリバティブのからんでいるCDOとはやや事情が違うような気がいたしますが・・・CMBSもJ?REITも、オフィス賃料や賃貸マンションの家賃がキャッシュフローの源泉となっているので、CDSというデリバティブマーケットが強烈にワイド化したCDOと同列に論じるのはちょっとどうかなと・・・不動産の証券化は出口部分で必ずリスクがあるのは分かります。その意味で外資が撤退云々のリスクは合っていると思います。
日経の番組でウィークリーマンションの創始者が、
同じ事を言ってましたね。
「わたしの所にこれだけ駆け込まれればわたしでも分かる」
不動産バブルは崩壊しはじめているんでしょう。
東京の不動産ラッシュは端(名古屋)から見て異常です。
誰のお金で建ててるんだ?といくたびに疑問に思う。
その点名古屋は堅実です。全然ビル増えてませんよ(笑)3本増えただけです。
噛んで含める・・
だけでなく「口移し」にしてもらえる・・・ぺッぺッ・・レクチャー有り難い限りであります。
となりますと、
不動産の乱暴狼藉の嵐が起きつつあるとしたら、乱立している絢爛豪華ホテルは如何なるのでありましょうか?乱立したばかりなのに!!
サービスランチが小さくなるな、グラスワインもコーヒーの量も少なくなるか・・・
しかしな
お米チャンが円投だって・・??きっと無神論者でアナーキストで、きっときっと日経の大磯小磯を愛読してるんだな。
その民主党議員も狂信的愛読者では?
まさか金融アナリスト出身では???
案外民営化された郵貯か農協系だったりして…
>当面家賃を払っている人たちのキャッシュフローを
>ベースに計算して、例えばオフィスビル30等を
>集めて証券化していたりする。
いろんなものを混ぜて、リスクをわかりにくくして、とりあえず今の時点で収益上がっています。
年利○%のリターンを現時点で得ることができますって商品を開発したら、
リスクを十分に評価できない人が喜んで買ってくれるという仕組みですか?
こんなお客さんがたくさんいたら最高だね。
東京でもっていいのは、土地だけです。
建物は地震で壊れちゃうかもしれないから、証券化して誰かに売りつけるのがよいですよ。
海外で起きたサブプライム問題が、直接の被害より外銀撤退→不動産の資本減→資金引き上げ→転売目的の不動産業者の資金ショート
ここで、素人の話として、CDOはコールオプションで即時解約されるものなのでしょうか?
これがよくわかりませんでした。
実際フィンテックのような企業は、メリルリンチからの融資が受けられなくなって先日下方修正を発表していたり、経営計画外の資産売却をするような流動化企業もいましたので、ぐっちーさんの話には納得です。
上記の話では、大手不動産会社に影響がでるとのことでしたが、大手各社が資産売却に走れば一時的には、業績が上方修正されていく可能性が高いと思うのですがいかがでしょうか?
経済の用語も詳しくわからないけれど、勉強のため一生懸命読んでいます。
いつもありがとうございます。m(__)m
ところで、「準備」というのは・・・
具体的にどんな準備をさすのでしょうか。
株や家の価値が下がる覚悟ということでしょうか。
素人質問ですみません。m(__)m
ぐっちーさんのブログで、いつも勉強させていただいてます。CDOやSIV等の危険性については、私なりに勉強して、自分のブログでも書いています。
今後もよろしくお願いします。
小渕政権時代の140兆円公債償還問題もあるし?
次から次へと○をつけて回るような事書いちゃって
一生懸命値崩れしないように売り抜けてる人たちが
居るんだからそんなこと書いたら恨まれますよ(>_<)
地獄の釜の大きさはどのくらいなんでしょう?
いつもブログを拝見して勝手に勉強させてもらってます。自分も金融業に携わるものとしてこれからがんばります!よろしくお願いします。
夜は冷えますので風邪などひかないでください!ブログ読めなくなってしまうし(笑)
ありがとうございました
なんとなく納得できました
手出し無用みたいですね
考えさせられる話ですね。
バブル以後日本の株・土地資産を積極的に買っていた、欧米資金の逃避が起こりうる訳ですね。
ただ1点、ぐっちーさんは中国を新たな資金供給側と見ている様ですが、これには私は別の考えを持っています。
ロシアやアラブは油の代金で投資していますが、中国の構造はこれらの国とは異なります。
中国は欧米および日本などから多数の資本を輸入(あえてこの表現をします)し、製品を製造しています。私もこの流れの中で現地で立ち上げ等に係わりました。
安価な労働力は見方を変えれば、国内での植民地支配というべき側面が強く。(共産党員による主に地方出身者の支配)又、広大で多数の人民が居るとはいえ、近年単価面での魅力は薄れています。
外貨準備の多さを強調されてましたが、高金利の元は常にマイナススワップで外貨を持つ必要を政府にもたらします。加えて元の切り上げ圧力は必然として高まり続けるでしょう。
この局面を中国が打破するには、内需を中心とした経済構造へ以降せざるを得ませんが、中国内での資本は投機に向かいすぎていて、経済の基本である再生産にはあまり向かっていません。
今まではこれを海外からの資本の輸入で補ってきた訳ですが、今後はこの手法は行き詰まるでしょう。
オリンピックや上海万博まで持つのか?私は疑問に想い始めています。
確かに「あつものに懲りてなまずを吹かす」を地で行っていた邦銀は、今回は損失限定的でしょうね(銀行皆、バブルのときに何もしなくて傷が浅かった某東海地区の地銀を目指せだったでしょうから)。
でも、いつか来た道については前回バブル時に大阪市内中心部の不動産取引でヤクザと掛け合っていた私には良くわかりますよ。。。結局、学習効果はリスク分散だったのだけれども、10年前と比べて金融技術が発達したと錯覚していただけで、大局的には同じ大皿に乗った料理は全部腐るしかないでしょうからね。。。
こんばんは。
私の友人はサブプラの影響で、資金ジャブジャブ、不動産アゲアゲでバブルは続くと言ってましたが、私にはどうしても信じられませんでした。
だって麻布十番で1坪3000万円という不動産バブル並みの売買と聞き、いつ弾けても可笑しくないと思っています。
お金は臆病者と言いますから、グッチーさんのおっしゃる通り外人マネーが逃げ始めたら、あっという間に弾けるでしょう。
不動産セクター注視したいと思います。
年末から来年3月の決算期に向けて、持ちこたえられなくなった不動産会社が泣く泣く物件のバーゲンセールをするのではないかと噂されていますよね。
J-REITの場合、また違った様相を呈してくるのではと思います。J-REITは出口を必要としませんし、融資の部分は邦銀が多いかと。むしろ、エクイティの部分に、外資が結構資金を投じているようです。既に外資の撤退でJ-REIT自体下げていますし、外資の割合が大きい銘柄の中には、ストップ安まで売られている、たたき売られている銘柄もあります。
PMさんに一票。
CMBSやとJ?REITと一緒にしちゃいけません。
いつも勉強させていただいております。
これまでの流れからしてCDOの波及は銀行ばかりではないような気がするのですが、日本の総合商社は大丈夫でしょうか?まだそんな話はあまり聞かれませんが…。よければわかる範囲でコメントよろしくお願い致します。
金融株、不動産株、REITは手出し無用ということでOKですか?
マスコミに非公式情報をリークするくらいだから・・・
早めに情報を取って儲けた人もいるんでしょうねぇ?
だから証券会社は嫌いだ
でも既にJリートって8月以降ほとんどの銘柄が半値以下になってますよね?
利回りも5?7%がザラになってます。
おっしゃる通りなら
更に売られるということですか?
それとも今のJリート・バーゲン市場を
ご存知ないの?
文章中程にある「COO」とは何の略ですか?
高値つかみなんでしょうか。
「某お米屋さんに至っては、海外に支店がありませんから、恐ろしいことにすべて円投なんですが、図体が大きいので1兆円くらい飛ばしても平気でしょう、乱暴に言えば。住専問題の比ではないですね。」
農協はどれくらい傷ついているのでしょうか。東京駅近くの※ビルの証券化・売却のニュースもあったかと思います。今年のコメの先渡し価格がいきなり去年の半分スタートになったのもこのせいでしょうか。
ぐっちー様、シロウトにもわかりやすく、某日経新聞をはじめ主要メディアが絶対書いてくれない実状解説をいつもありがとうございます。
そして、常連コメンテイター(?)のぺルドン様、「日経の大磯小磯」最高です!主人と二人で大笑いしました。皮肉のスパイス効きまくりのコメントを楽しみにしております。
いつも大変勉強させていただいてありがとうございます。
もしかして、年末って言うのは・・・45日ルールでってことですか?
売却するおおよその額は明日からでもすぐに計算はできるでしょうが、実際に売却する額は・・・?
>Jリートって8月以降ほとんどの銘柄が半値以下になってますよね?
人気化した銘柄以外は、半値までいかず3割減が多いように見えます。
今後、ほとんどの銘柄が半値以下になっていくということでしょう。
バーゲンというのは日経平均の7600円とか、いすずの31円とか、神戸製鋼所の42円くらい安いのを指すんじゃないでしょうか。
利回りは維持可能という前提が無いと、7%でもおいしくないかと思います。
>某お米屋さんに至っては、海外に支店がありませんから、
まちがいでしょ。ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、香港、北京に支店がある。
というよりは、より多くのオフショア(バミューダ債など)を買っているのは常識だから。
このあたり、本当にNYにいたんですか。信じられない.
日本のCDOはかなり簡単(中身が5-7くらいのLoan、Bond,Equityで構成)されているのに対し、アメリカのは100以上。それだけでなく、そもそもCDO発行数が、キャピタルマーケット全体から見て、かなり少ない額であり、また間接金融がメインという性質がら、CDOはそこまで強く普及しているとはいえないのが日本の状況。つまり日本で同じような惨禍が起こるというのは、ちょっと違うような気がします。
今は日本のCDOは、外的影響を受けて、投資家のApititeが低迷状態ですが、また経済が低迷して、銀行が貸し渋りし出したら、CDOが出てくると思いますよ。