2006/10/20 09:47 | 国際問題 | コメント(0)
インドの現状
昨日は元駐日大使で現在慶応義塾大学におられるアフターブ・セット氏(Aftab Seth) の講演をお聞きする機会がありまして、かれこれ5年も行っていないということもあり、インドに関する知識がかなり古い事を気にしていたのですが、お陰さまで大変勉強させていただきました。
折りしも、ミタルに続いて、ついにタタも欧州の製鉄会社(英国)コーラスを買収するというニュースも出て、どうもインドが気になっていた所で実にタイムリー。
ミタルは籍こそヨーロッパにおいていますが立派なインドの会社です。我々は「ブリックス」とひとくくりにするのですが、所謂ドメスティックな企業でこのクラスの企業、すなわち世界的大会社を飲み込んでしまえるなどというのは中国企業にも存在せず、ましてロシアは企業自体が無いくらいで、ビヘイビアだけ見ればインドはもはやブリックスとは呼んでられないかもしれませんね。その位影響力が大きくなってきた訳です。
セット氏の話によると実はインドと日本は国防(安全保障)というレベルでもかなりの交流があるのだという。1999年のマラッカ海峡での日本籍船舶がハイジャックされ、それをインド海軍が救出したという時点から両国はその安全保障上の地理的条件などを理由に交流を緊密化し始め、その後日本のインド洋、東シナ海に於けるイージス艦の派遣などを経て、これらの補給給油の強力、ひいてはイラクへの米軍のy補給級路の支援という側面でも日印の海軍の協力はかなり深い関係になりつつあるとのこと。
++船が乗っ取られたらハイジャックじゃなくてシージャックだろ、とのご指摘が三人さまより御座いました。じゃむさん、くみさん、よんさま(!?) ありがとうございます。英語では(米語ですな)船、飛行機、船舶などすべてハイジャック・・・Hijackを使います。確証はないのですが、seajack は和製英語かなと。因みに飛行機だけを特定して skyjack と使う事はありそうです。ご参考まで・・・
更に言えば、2006年に行われた閣僚級メンバーの交流は既に実に20回を超えているそうで、中国が「政冷径熱」などと言われるのに比べるとこちらはむしろ逆で、安全保障が経済をリードしている感さえあります。
感心したのは、小泉首相らしいプログラムが既に実行されていることで、インドの3万人の選抜された高校生に対し政府が第2外国語として日本語を教えるなんてのがその中にあるそうでして、私の予測に反して日印関係は実にかなり進んでいるのであります。中国、ロシア、ブラジルなどとの交流に比べればこれはすごいアドバンテージですよ。
経済に関しては既に皆さんご存知の通りでして、「中国が世界の工場、インドは世界のバックオフィス」などと言われてきたわけですが、その製造業のレベルでも世界的規模の企業が出てきたのは前述の通りでありまして、その余力もまだまだ十分ありそうです。
金融面について質問した所、GDPに占める銀行貸出の比率はわずか3%しかないそうで、シンガポールあたりで35%ですから、銀行にとってもここはラストリゾートかもしれません。独特の難しさはあるでしょうか、この市場は中国などに比べると大変魅力的に見えます。
更に、中国は労働賃金の上昇が未だに年間2%も無いために世界の工場たるわけですが、インドは既に14%を超えてきているものの未だに海外からの進出が続き、恐らくIT,通信など付加価値の高い産業に労働者が集まっている事が原因だろう、とのこと。これは全くアグリーですね。
この点に関しては シスコのチェンバース会長が講演でおっしゃっていた言葉が全てを物語っていますのでご紹介しておきましょう。
「インドに関しては我々は最初コスト削減を求めてやってきた。しかし、品質を求めて留まる事を決定し、そして今は開発のために投資をしている段階である」と。
これが今のインドを表現するのに一番あてまっているのかもしれません。
すごいな、と思うのはやはり人口で、全人口の65%が25歳以下というのですから、これはまともにやっていてはかないませんね。同じブリックスのロシアは何せ人口が減っているんですから。この用語もそろそろ使用不能になりつつありますね。
10年も前ならこの人口問題こそインドのアキレス腱などと揶揄された訳ですが、こういった現状からはむしろそれをアドバンテージにしてしまったインドの姿が見えます。
余計な話ですが、インドはもともと対日印象のとてもよい国です。特にエリート層といわれるシーク教徒の中には日本の陸軍士官学校の卒業生などが多数おり、彼等はインドの独立に関する日本の関与に関しては極めて積極的な解釈をしています。「日本のお陰で・・・・」などというのは中国では口が裂けてもいえませんが、インドではあり、なのだそうです。
もちろんインフラの整備が足りない、など全てがばら色な訳ではありませんが、これだけの親日国ですから、いろいろな意味で今後とも交流が深まっていくのではないでしょうか。
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