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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2006/10/17 15:39  | JAL |  コメント(4)

日本航空・・・今後の株価を占うキーポイント


さて、こういう時期に突発的に起こりうる事件、事故の一つとして日本航空、9205を再度とりあげておこう。今、株価の動きは出来高も少なくなり、公募価格すれすれで展開。一見すると何事もないような感じだが事はそれほど単純ではないのだ。嵐の前の静けさ・・・かもしれない。

1.公募増資
ここでも取り上げたように株主総会で全く一言も言及がないまま、その2日後に発行総額の4割!! にもあたる公募増資を発表、300円あたりでうろうろしていた株価は一気に200円まで墜落。7月25日が最安値の197円となった。コノあたりの経緯もこちらで触れているのだが、要は希薄化で株価が急落する事を見越した外資系が思い切りショートをふり、その決済にこの公募増資株を使用したに過ぎない。


その結果、公募価格は19日の東証の終値から更に4%もディスカウントという211円というとんでもない値段にされてしまい、300円から売りを仕掛けた外資系はそのさやを全て懐に入れたという具合だ。当然大口株主として名前が出てくるわけだが、寝ぼけた経済専門誌が「外資による乗っ取りか」、などというとぼけた記事をあちこちに書いているというテイタラク。だれがこんな会社を買うんだろうか(笑)JALもJALなら専門家も専門家、空いた口がふさがらない。
その後株主の移動を見ていただければ一目瞭然、ここ数週間でモルスタなど、空売りの決済を済ませた連中の株式保有比率はあれよあれよと落ちてきている。おもちゃにされて捨てられたわけだ。そりゃー、発行株式の4割を突然発行すれば当然であろう。


さらに言えばそれでも当初目標の2000億円を調達できなかった。つまり、これだけの空売りによる「実需」があったにも拘わらず売れ残った訳だ。それだけ魅力がない、といえばそれまでだが、実は実際にショートの決済以外の目的で買った企業のその実情はあまり知られておらず、それらは正に時限爆弾として残っているのだ。彼等がいなかったら実は1000億円の調達もあやしかったかもしれないのだが、これはあとで触れよう。


2.時価総額
現在の株価を原油価格の下落による追い風、と書いている連中が多いのだが、であれば公募増資前の価格に戻るであろう。公募価格すれすれの価格で推移している事自体がショートカバーが終わってしまい、市場に買い手不在になっているいい証拠である。


実際現在航空業界全体には追い風が吹いている。
景気回復によるビジネス需要の効用で、サーチャージという形で原油高による燃料コストをそっくりそのまま転嫁されており(実際今出張などに行くと価格は27万据え置き、一方でサーチャージが3万円などといわれ、事実上の値上げ状態になっている)、一方で原油価格はすでに下落しているから実はまるもうけ、なのである。


ライバルの全日空の時価総額をみてもらうと、9200億円もあり、JALはその半分の5000億円というテイタラク。
JALのナショナルフラッグとしての暖簾代や実際に運行しているネットワーク(航空権といって、東京ーNYKなどのドル箱路線を需要の多い時間帯にどれだけもっているか、というものが所謂企業価値そのものに直結しており、当然昔から飛んでいるJALの方が有利な時間帯を持っている)が全日空の倍もある、その日本航空の時価総額が全日空の半分しかない、という状況は異常というしかないだろう。


因みに倒産していまったアメリカのUAですら、現在の為替で見ても約3500億円も時価総額があるのだ。仮にJALの株価が150円まで下落するとその倒産したUA並みの価値しか無いという話だからこれはかなり深刻といっていいだろう。


3.ボディーブロー
今回の公募増資により実は時限爆弾が仕掛けられている、と先ほど書いた。


というもの、公募増資に応じた企業は決してJALの株価を評価したり、将来の値上がりを狙ったものではない。彼等は値下がりを怖がった企業が多い中でこの株券を「利回り商品」として勧誘されたというのだ。


そう、株主優待券の存在だ。

現在無配のJAL株であるが、実は10,000株に対して6枚の優待券が発行される。ご存知の通り、優待券は予約も自由にとれる、まったく普通の航空券であり、2枚あると日本全国どこまでも往復で行き来ができるものだ。


今回公募価格で1万株を投資すると、211万円の投資、それに対し6枚の優待券が取得できるので、東京ー札幌往復換算で3往復分、すなわち約18万程度のコストに相当し、利回りは何と年間8%を越える勘定になる! 今時8%の利回りの商品となればよほど危なっかしいものであるからして、出張などの実需のある企業は、日本航空の株でコスト削減をしつつ、同時に利回りが確保できる「案外悪くない投資ですよ」という証券会社の勧誘に乗ったという面が強いのだ。最悪、実需がなくとも金券ショップに持ち込んで一枚6000円程度で取引が可能なので、これでも約2%程度の利回りが確保できる計算だ。


その一方でこれらの優待券が仮に実際に使用されればそれはただのり、であり、その分有料で乗る乗客の減少を意味する。今回の公募増資だけで7億株発行しているから、実際はもっと多い計算になるが、少なく見積もっても7万枚の株主優待券が出回りこれらが今後の収益を圧迫する要因になる訳だ。東京ー札幌間に換算すればなんと20億円相当!! これだけの運賃収入が目に見えない形で削られていると考えたら如何であろうか??


従って下期のJALの営業収益もこれらによりかなり圧迫される恐れがあるということだ。


ボディーブローその2
デットサイドはどうだろう。事実上デットファイナンスが出来なかったためこれだけ苦しい公募増資をしたというのが実情だ。いくらメインの政策投資銀行が民間銀行ではないとは言え、これ以上の「おい貸し」は将来民営化したときにその責任をとらされる恐れは十分ある。


一方民間金融機関にとってみれば日本航空は既に投資適格ではなく、これ以上の「おい貸し」はおいそれとできない。さらにいうと・・・・


これは実際に証拠を持っているわけではないし・・・というのは関係者が口を濁すからだが・・・


私の睨む所、金融庁は既に日本航空に対する融資は反社会的勢力に対する融資という範疇に分類しているのではないか、と思っている。これだけの航空法違反が問われている会社である。コンプライアンスを重視する立場から、これらが反社会的勢力に対する融資と分類されていてもちっとも不思議ではないのだ。


これらが一気に表面化した時は株価全体に対する影響はもとより、日本航空という伝統的日本企業に対する危惧が表面化することにもなり、その影響ははかりしれない。既に、前述の様にUAなどアメリカの航空会社は多数破綻しており、ビジネスモデルとして従来の航空会社自体が存立の危機に立たされている。その中で日本航空の置かれた状況は決して生易しいものでは事だけは確かである。そして現在の経営陣がそれをまともに認識しているようには・・・・とても見えないのである。


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4 comments on “日本航空・・・今後の株価を占うキーポイント
  1. 通りすがり より
    ・・・。

    たまたま立ち寄り読んでみました。日航の優待券は 割引なので、利回りはさらに落ちるのではないかと・・・。

  2. とおりすがり より
    内容が

    日本航空の優待券は、1区間の割引のため

    記述の利回りよりさらに落ちるのでは?

  3. 通りすがり より
    利回りについて

    たまたま立ち寄り読んでみました。

    日航の優待券は一区間 50%の割引。ということは

    記載の利回りはさらに落ちるのでは?

  4. 知ろうと。 より
    結論?

    株主優待目的でJALをかうつもりでしたが、買わない方がいいのでしょうか?

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