2008/02/01 08:45 | 金融全般 | コメント(29)
情報というもの
先日のモルスタのサムライ債券についての書き込みのほか、複数の書き込みに対し、ブルーンバーグの情報では・・・・ブルーンバーグの価格で計算すると・・・等々のご意見が多数来る。
ブルーンバーグで債券やCDSのインディケーションが見られるということは多分プロの方だと類推するので敢えて言うが、だったらブルーンバーグはその価格での取引を保証してくれるのか。
あれは複数の証券会社から出てきた価格を平均しただけのことで(或いはモルガンスタンレーなどはっきり出所を示すこともある)それがトレーディングプライスとはマッタク限らない。新規発行債券などで値崩れを起こしたようなものは各社談合してずーっと100のまま、なんてことはざらにあるし、今問題のCDOなどでも平気で100なんて表示してあるものまである。5社6社の社債のトレーダーが示しあわせるなんざー至極簡単な話。
通常ではトレーダー自らブルンバーグにわざわざ価格を提供することはなく、「はーい、ゆーこちゃん、今日は全部10銭ずつ下げといてね!」 と言う感じでアシスタントのおねーちゃんが勝手に入れているような代物。今回のように激しく価格が動いている場合はマッタクあてにならない事を申し上げておく。
ということで、この端末は計算機やチャート表示としては優秀なことは認めるが、情報端末としては新聞と同じ。まず、疑うべし。 モルスタを辞めて最初に移った欧州系銀行ではおどろくべきことにすべてのトレーディングポジションをこのブルーンバーグで管理していた。何千億にも上るUSTやブンズなどのポジションをブルーンバーグのシステムで管理しているのだ!!
ブルーンバーグにスパイがいないという保証はない。これをポジション管理に使うならば、彼らは各社が例えばUSTの何年債をいくらロングにしていてヘッジで先物をいくら売っているかすべて把握できる立場にある。こんな危なっかしいことをよくできるもんだ、と感心した。
もし、ブルーンバーグが悪意をもってコンマ1でもデュレーションをいじったら損失は何千億にも上るはず。これで投資銀行業務をやるのはおこがましい、と会議で発言したら、じゃ何を使えばいいのか・・・と聞かれて唖然とした覚えがある。
が、大多数の欧州系が今でもそうではないだろうか。何かの拍子に情報が消えてしまったバックアップなどを考えて米系では独自のシステムを開発し、瞬間的に(15秒程度)すべてのデータを別な場所に逃がすようなシステムまで作っている。当然独自のシステムでありかつ高価だ。しかし、それは必要な投資なのであって、このあたりのリスクに対する認識にはかなりの違いがあるように思う。
もっと言えばブルーンバーグはもともとメリルリンチの子会社だ。すべてのデータがメリルリンチに漏れていた・・・・としてもその意味ではなんら不思議はない。だから使いたくない、と少なくともモルスタは考えていたのだ。これがリスク管理というものだろう。
実際にいくらでトレードしたか、リアルな価格を把握できるルートを確立するのは絶対条件だ。時間もかかるし、金もかかる。しかし、これが確立できないのであればトレーディングをする資格はあるまい。業者に聞けば必ず騙される。彼らがいまだにCDOをいくらで評価しているか、皆さんご存知でしょう。その価格でトレードするのかどうか、といえばしない。インディケーションだと言い張る。所詮その程度、と言う事。
金融業の基本はまず相手を疑うことから。
そして本当に信じられる相手が出てきたら絶対裏切らないこと。ゴールドマンが強いのはこの鉄則を守っているから。
そういえば・・・
どらさん、取上げて頂いていたのですね。ありがとうございました。今度のみ行きましょうね♪
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29 comments on “情報というもの”
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>金融業の基本はまず相手を疑うことから。
>そして本当に信じられる相手が出てきたら絶対裏切>らないこと。ゴールドマンが強いのはこの鉄則を守>っているから。
付き合いの原則ですね。ありがとうございます。
日々の仕事をしていて忘れていました。
そして、自分にとって本当に信じられるという判断ができるようになるよう日々研鑽です。
いい話だな、改めて考えさせられる。情報の深さを。
と同時に
欧州勢の弱い下腹、ストリートチルドレンにも負けない我等の国の貧困さも教えられた。
風の中の
羽根のように変わるもんでっせ、女心と情報は
と
意地悪い喜びにに輝くぐっちーのメン玉も・・見える。
「取上げて頂いていたのですね。ありがとうございました。今度のみ行きましょうね♪」
この通俗性が堪えられない。
リップサービスに泣かされた、可哀想な女の子の多さ・・・
いつも勉強させていただいております。
今回のお話も興味深いですね。
今回の話ってシステムに対する投資の話だけではないですよね。
ビジネスそのものリスクに対する認識に関わる話として読まさせていただきした。
私は事業リスクの見積りは「疑わしきは黒」として判断しその上で、対応シナリオと優先度などで複数の売上げ・コストモデルをつくり「事業を始める・続ける・撤退するなど」 検討するべきと思っています。
事業構成要素の中で情報システムが重要な役割(=リスクの影響も高い)を果たしているからこそ、多くの会社はその重要度に応じてCIOなどのポジションをつくり対応したと思っていたのですがうまく機能していないでのでしょうか。
まあ、どの業界でも事故・事件が起こらないとリスクに関して本気で対応しないのでしょうね。
予防で防げれば安いものなのですが・・・
ぐっちーさん、そんな本当のことを言っちゃうと債券市場はもっとコモディティー化して証券界はメシの食い上げになっちゃいますョ。
うすうす胡散臭さに気づいてる優秀な方も日本の金融機
関にはいる。しかし、頭に血が上ったバカな上司に意見す
れば、出世コースから外される。
自分に責任が及ばないのなら黙っていよう、尻は国が持
ってくれるだろうから。
新興市場などの下落に多少なりとも影響を与えている乗
っ取りボンドはスルー?
おっしゃるとおりです。現場の人間はBBGの気配値なんて単なる参考であってトレード可能な値段なわけがないです。
金融機関のシニアだって破綻したときに株同様ほとんどかね返ってこないんだから、シニアのホルダーはバカにされているっていうご意見には賛成です。Bloombergのプライスが当てにならないのも賛成です。
しかしMSのドル債をSwapかけて円になおしてL+600は明らかに誤解を与えるでしょう。YL+600にリパックしてくれる業者があったら紹介してください。。内外価格差があまりに広いというご意見には賛成ですし日本の投資家が足もとみられているというのも全く仰る通りですが、MSのシニア債がYL+600で買うことも可能というご意見は、素直に賛成できません。Bloombergのプライスがあてにならないとしても、CDSは少なくとも5年で120ぐらいでしょう。また、確かに内外価格差はまだあるものの、大分マシになってきましたよ。特にUSネームは・・・。なお、Bloombergがどこの子会社だろうと、いちいち個別銘柄でえこひいきするほどヒマじゃないでしょう。株ほどマーケットがオープンでないことに問題がある気がします。
本日のコメントは素晴らしい。出色ですね・・。でもここまでこだわる機関を私は知りません。皆、面倒くさいことは嫌いですからね・・
すべて非上場ですので(店頭取引)、上場株式のように「一物一価」ではありません。従って投資家は、様々な情報画面を見ながら、各業者に問い合わせながら、取引するわけです。情報画面と業者のレベルがあまりに違うなら、投資家からスポイルされるだけです。
モルスタ以外の外資系数社に聞いたら、CDSのレベルはほぼ合っていました。モルスタで本当にドルL+600のシニア債があるなら買いますよ。CDSでヘッジして5年間480が確定しますから。スポイルされないようがんばって下さい。
十数年前の事ですが、事業会社で外為関係のフォワードやオプションの買い付けを担当していおりました。私がチーフで他に後輩2人でしたが、昼飯は交代でとっていました。私が指示を出して飯を食って来たら、目標レンジにきたので10本買ったとのことでした。そんなはずは?(為替表示の出るポケベル持参していました。)と思い、懇意のカスタマーディーラーに電話したら1円違っておりました。そこで10本売って数十万円の損確定にしました。後輩を叱りつけたら、ロイターの画面が云々と言いますので見ると確かに目標レンジ・・・。端末が故障しておりました。今度は電話で注文する際、数字を全部確認しろ(銭単位しか気にとめていない後輩でした。前から注意してたんですが。)と叱りつけました。まあ、他にも通信社の入力ミスなんてありましたね。ぐっちーさんの話とは大部レベルの違う話ですが、思い出を書いてしまいました。
同感です。Bloombergの情報はかなり当てになりません。間違ってることなんてザラですよ、たとえ、通常の情報(とくにバリュエーションとか)でさえも。ゴールドマンの強い理由も納得がいきます。この業界なんていわば虚業みたいなものですから、情報が命である以上、それを命がけ(どんなに金を使っても)で守ることが、この業界を生き抜く条件ですよね。あと、Bloombergで働いてた友人が言ってたんですけど、まぁ、とにかくいい会社ではないみたいです。まるで日本の会社のようだと。。。
一昔前ならサムライとかダイミョーの気配値を入れてるのが、どういう奴か知ってるから、そのつもりで見てましたが・・・・。
ブルームバーグが何チャラと理屈を吐いてくるのは間違いなくイマドキの若手ですな。情報操作に弱いというか何と言うか・・・ある意味素直なのか世間知らずなのか。便利になるのも一長一短ですね。
一体この止まらない連鎖、金融危機はどんな形の結末を迎えるんでしょうね、、、
以前ぐっちーさんがそれを考える上でアジア通貨危機を思い返してみるといい、と書かれていましたが、まさかアメリカがデフォルトに陥るなんて可能性はないですよね?
あの時はロシアが財政破綻になりましたが・・・
女性蔑視の発言なのでは?
アシスタントが女性であるという前提の発言は、すでに発言の大きさを自ら自覚しているようなブログでは犯罪です。それが現実だとしてもね。
まさか色んなアワードもらったなんてことを書いてるブログで”ただの個人的な日記みたいなもんだからぁ”なんて言い訳しないですよね?
昔、ブレイディ債ってありましたね。ルクセンブルグで「上場」していて、取引所価格で銀行は決算しました。市場実勢価格は全然違う水準でした。
銀行をつぶさないという落としどころを踏まえての出来レース。「上場価格」ですら色々あるという好例。
さて、CDOと交換にポールソン債は出るかな?
中国が「全部引き受けてやる、但しユーロ建てね。それと、選手村の食堂の安全性について査察団送るとか言わないと約束してね(泣)」なんて言ったら面白いなあ。
いつも楽しく拝見させていただいてます。
さて、ちょっと調べてみました。メリルリンチの子会社の件。
でてました、秋ごろに。
ブルーンバーグの売却を検討か!?ってニュース。
もちろんブルーンバーグ以外の情報端末ですけどね(笑)
これからもぐっちーさん頑張ってくださいねぇ。
様々な判断の指標となるモノサシがとても危ういものにあるような気がします。金融という経済の源がそこまでとは考えが及びませんでした
うーん、ご意見ごもっともです。
昔話ですが、マーケットメーカーは、そのオファー、ビットで取引するのが義務だなんていわれてまして、でー相場が荒れてわかんねー時は思いっきりオファービット離して、「だから○○のディーラーはようなんて」陰口たたかれてました。
でそれでも万が一引き合いがあったときの殺し文句が。「あっそれちょっと前のインディケーションなんですよ。今玉がなくなっちゃて」で大抵の方が「あっそう」で引き下がってくれるか。
相手が大投資家様の場合は「何寝ぼけたこといってんの、死んでも取って来いよ。じゃー決めね。ガチャン」でなくなくショート振って必死にカバーに走るわけですが。当然その後は電話がかかってこなくなるか、食い物にされてしまいにマーケットメーカー撤退てなことのなったことを思い出します。
しかし今は電子トレーディング(これも相当古い言い方ですね)かつ、売買執行もコンピューター様が瞬時にやっちまうのでねー、古きよき?時代のお話でした。
金融業の基本は、まず相手を疑うことから。
いいですね?、この言葉。
私は、金融の基本は、詐欺だと思いますね。。
ジョージソロスと組んで投資をしていた人が言ってましたね。
雨が降っていますねと言われたら、自分で窓を開けて空を見ると。
自分での目で確認しないことには気が済まない性格だからこそ、驚異の利益率を20年間上げ続けられた。
情報は全て恣意的に流されていると考えるべきだ。
農薬入り餃子にしても技術的可能性を考えるなら、製造段階から口に入れるまで。
ときには、口にいれていないのに手を上げる便乗組がいることも周知の事実。
信じるものは救われるか?
歴史を見ればわかること。
先日、ゴールドマンサックスの5年サムライ債がL+110で1300億発行されたので、ついでにこれも論評してくださいよ。CDOと違ってシングルネームだから、ちょっと調べりゃ適正かどうかすぐに分かるだろう。
面白く読めるようになったと思います。ぐっちー
様がメジャーデビューして以来
それにしても、情報の裏とり+信頼関係の確立ってのは、
金なぞぜんぜん動かない小職でも基本なのですが、
どこの世界でも、これらを徹底するのは難しいんですねぇ。
>女性蔑視の発言なのでは?
こういう批判ってさぁ?
以前、お産の経験の無い産婦人科医の例えと同じで、
ぐっち?さんの言わんとしていることの意味を、理解していないだけの、軽率な批判になりますよ。
例え話に噛みつく時は、よく注意しないと。
例え話をする時も、細心の注意が必要だけどね。(笑
のだめの件、あれは悪かったと、今でも思うよ。
ぐっち?さんに、悪かったという意識が有ったのなら、謝罪した方が良かったね。
人間ってね、きちんと詫びを入れられるか否かで、真価が問われるからね。
格式云々とか、言いたい気持ちも、わからなくもないけどね。
今回驚いたのが、
>おどろくべきことにすべてのトレーディング
>ポジションをこのブルーンバーグで管理していた。
って、信じ難い管理してますね。
どの金融系も、時価データでさえ自前のシステム
を構築して、分析用に溜め込んでたりするのが当
たり前と思ってました。
外部から来た情報を疑うこと、必要ですね。
提供者が本当に勘違いで間違ってる可能性もあるし、ポジショントークの可能性もあるし。。
ドル暴落と声高の著名な方も、こっそり裏でドル買
ってるんじゃないかと疑わしく思っちゃいます。
今のアメリカ経済を見ていると経済学って何なんだと思いますね。宗教みたいな机上の空論じゃないかと。人を幸せにする学問だという事になっていますが、苦労して創り上げた政治や社会を滅茶苦茶にしているのが経済だと言われても仕方ない。ノーベル経済学賞なんてノーベル賞の権威に傷を付けてる様なもんだ。そんな経済の情報を鵜呑みにするのは間違ってますよ。経済って学問とは言えないんじゃないのかな。
以前、「サムライ債は100%日本人にプレースされる」と書いておられましたが、私の勤務先を含め、多くの外人がサムライ債を買っています。周りにいる同僚の方は、きちんと教えてあげるように(アサヒらないように)今後注意してください
中国企業は、現物か書面をおさえない限り非は認めません。
【例:日系自動車メーカーに納入してる中国部品メーカー】
図面で5mmの製品を1mmに間違って作って納入してきたので、数個を送り返して確認させたのに、全て寸法通りだと言い張ります。諦めて、現地で一緒にモノの寸法を定規で測ると、ようやく認めた。でも、逆に客のこちらに、部品を載せる製品全体の寸法変更を提案してくる。腹立ったので、全力で取引停止に追い込みました。
ま、中国というか、むしろソレが日本以外の常識なのです。
今回は、早々に中国政府が出てきてるので、もはや中国の面子にかけて、中国企業が悪いという結論は無い。米国相手ならまだ妥協はありえるが、日本相手に頭を下げるなんて、100%あり得ない。もしも証拠があったとしても、既に抹消済みでしょう。日米韓がセットになって非難しても、一切非は認めない。
やはり、マスコミは中国叩きには乗り気でないようなので、ボチボチJT叩きに路線変更するような気がします。雪印は会社消滅のような話になったのに、それが外国企業だとこんなもんですもんね。叩き易い国内企業に矛先が向いてくる気がします。
今回の余波(予想):
ボチボチ、プライベートブランド見直しが起きないですかね?いくらOEMだろうと、○○の名前で打っている限りは必ず○○が叩かれる。記者会見で、うちは生産してないんで、生産先の××が全て悪いと社長言ったところで、日本のマスコミ様は許さないでしょう。コンビニあたりで、まずプライベートブランド撤退の動きは出てこないですかね?
どうしても、これだけは言いたかった
中国が何よりも恐れているのは、国内外の嫌中感情の爆発。政治・経済ではない、世論の爆発。日本の政治家を攻め立てる要領で、日本マスコミが結束して中国を攻め立てれば、中国はあっさり折れる。
それだけの力をもっているのだから、たまにはマスコミも簡単な視聴率争い以上の、日本人を守るための戦いをして欲しい。政治家以上に、マスコミにそれをやって欲しい。それだけの力を、マスコミは持ってる。と思っても、政治家以上に毎回裏切られ続けてるが、それでもマスコミ以外にやれる所はないので、他力本願にも期待してしまいます。