2009/09/19 11:08 | JAL | コメント(14)
日本航空問題を改めて考える。
態度が悪いと筆がすべるのですが、今日の乗務員の人はすごくいい。
久々にびっくりです。こうなると従業員のためにも何とかならんかい、とも思う訳ですけど。でもこの会社、このまま行くと何ともならんのです。
まず、この会社は金融取引の現場として見ると、この会社、すでに完全な倒産企業として取り扱われる可能性が高い。健全な、生きている企業としての金融取引はCDSを含めて極めて難しいだろう、ということです。
デルタ、アメリカンによる「買収」ならともかく、資本提携やら救済的資本注入という話が出てきましたね。国交省のリークといわれていますが、アメリカの会社が相手だけに嘘をつくならもう少しましな嘘をついたほうがいいくらい筋の悪い話です、これ。
株式では(つまりエクイティーファイナンス)ではもはや出資する人が誰もいない。ということはこの時点で倒産と認定さえできるかもしれない。
担保付きのローンも新たな担保がとっくにない。
無担保で貸す人(事業の再生、将来性にお墨付きをつけて)も当然いない。
だからこそ・・・誰も貸さない状態だからこそ政府資金が入っていると見るべきで、そうなると少なくとも資本主義の企業の論理、資本の定義からするとこの会社、つまり日本航空は事実上倒産企業と認定せざるを得ない。アメリカの企業の発想で見れば更にその可能性は高いです。
事実上の倒産会社の株式を買うとなると、デルタにせよ、アメリカンにせよ、株主代表訴訟にはとても耐えられない訳で、経営者がそんなリスクを冒す筈がない。
つまり端から出まかせだ、と判断するべき筋のニュースなのです。国交省が出どころで誰も出まかせとは書けないようですが、これは論理的でっち上げ以外の何でもない。言下に否定しないでくれ、という根回しはしたでしょうが、筋が悪いというのはこういうことを言うのです。
実際このニュースで株式を買っちゃった人はどうなるのか??
全く根拠のない、理論的整合性の無い話を市場に出して、株価を変化させるというのは私が与太話をしているのとは全く異なり、これを「風説の流布」というのです。JALも国交省もわかっているんでしょうかね・・・・
逆に言うと、もし、実現するとなれば、彼ら(交渉相手)が株主代表訴訟に耐えうるものを握っている可能性しかなく、これは評判の悪いかった長銀型売却、「瑕疵担保条項付きまくり」であり、これだけ国民の税金を投入してきた、郵便貯金とならぶまさに「国民の財産」なのですから、それこそそういう状態で売り飛ばすことは許されない、ということは国交省の皆様ならわかっておられるでしょうね。(そうこうしているうちにワン・ワールドグループによる救済型提案があると、リークされ始めた。やるとするとこの救済型資本提携、瑕疵担保付、だめなら全部もらいますよ、というスタイルでしょうかね。それでもかなり厳しいですがね)
内部の組合に対するブラフでしかない、という見方もあるでしょうが、ブラフならもう少しましなものを使った方がいいでしょう。
結局GMを見てわかるように、聞き分けの悪い組合を相手に条件をのませるにはCHAPTER11をかけるしかない。そのうえであらゆる条件の悪いものを切り捨てて再出発する。
通常の企業と違いすでに国民の財産が死ぬほど投入されていますから、ただ踏み倒したり、株式をふっ飛ばしたりする訳にはいかず、裁判所監視のもと、あらゆる重荷をおろして再生を果たし、利益を上げて国民の財産を返す、というところまでが政府の責任になります。これが民主党の仕事ですよ。
そうこうしているうち前原新大臣は絶対につぶさないとか言いだしてしまった。あわわ・・・だれか止めろよ・・・・
それなら世界中のJALのCDSを買い占めてもいい、って話だ。最悪行使に至った場合、日本政府相手に訴えることになります。その場合、金融機関救済と同じで、国交省大臣がつぶさないといったのだから、潰してしかも債権が全部とんだしたら日本政府が訴えて負ける可能性はとても高い。
あの金融危機のさなか、金融システムは守ると言いましたがリーマンを個別に救済すると宣言していたらアメリカ政府だって訴えられていますよ。それを日本航空という一民間企業を金融機関ならともかく一国の大臣自らが真意はともかくもつぶさないと宣言するのは絶対にまずいでしょ。市場経済性取引がまったくない日銀をつぶさない、と宣言しているのと訳が違いますから。
こういう資本取引や金融取引の現場に精通していない大臣が妙な発言をするのは今後命取りになります。元来官僚が指導する筈ですが、足元の国交省はとにかくJALをつぶしたくない一心なのでこういう情報は上がりにくいと思われます。
前原さんだけでなく、民主党の各大臣は自分の担当範囲の企業と金融資本取引の関連性について早急に勉強する必要がありますね。抵抗勢力となった官僚がこうやって情報を遮断するのですから。早急に対策が必要です。
今回も私がCDSの責任者なら、有り金はたいてJALのプロテクションを売りまくりますね。日本政府リスクですよ、これは。民主党政権の最初のハードルですかね、日本航空は。
民主党には峰崎参議院議員などの論客もおられるのだから、しっかり対応するべきだと思います。
前に書いたことの繰り返しになりますが、JALが経営陣の説明で100年に一度の不況に巻き込まれたというのは全くのうそ。
ここ10年間ずっと業績は悪かった訳よ。好況期の2003−2005年でさえ売り上げはあがったものの利益は吹っ飛んだ。原油の高騰が原因とか言うんでしょうけど、条件は世界中一緒ですって。シンガポールでは儲かり過ぎてボーナスが出てました(笑)。
つまり構造的赤字体質・・・人件費とフリンジベネフィットが高すぎる・・・に原因があるのは明らかで2005年あたりで利益の出ない会社は金融危機もくそもない。
要するに倒産している企業です。「おまえは死んでいる」なのです。
まずはGM型の救済が一つの方法。これは前から言ってますね。
次善の策ですがアメリカンなどワン・ワールドグループから出てきた提案、つまり救済型資本提携をのむかどうか、というところ。さまざまな瑕疵担保条項でずたずたにされるでしょうが、日本航空という躯体は残るかもしれない。
こうなると交渉相手は限りなく政府による保護を受けていて、お互いに生き残る必要に迫られている相手がいいでしょうね。
その意味ではBA(ブリティッシュエアーウェイズ)を含むワン・ワールドグループも選択肢、ということかもしれませんが、もしマイルドな形でナショナルフラッグとして日本の航空会社をどうしても残したいということであれば、より国営色の強いルフトハンザ、シンガポールエアラインなどの航空会社に限られると思います。国交省たるもの対極を見てそういう交渉をしていかないと、世界中のスペキュレーションマネーのターゲットにされて食い散らかされて終わり、ということになりますね。
彼らがそういう方針、例えばシンガポールなどを交渉の相手に選べない理由は恐らくただ一つ。
日本航空が天下りの巣窟だからです。
これは政府相手に交渉するとなると完全にギブアップするしかないのですが、日本航空という会社は生き残っても国交省の天下り先がなくなるのは意味がない、ということだけで、こういう本筋の救済策が議論されることなく無視される訳です。「おれの使えないJALは生き残っても意味がない・・・」と言っているわけで、国民をばかにするのもいい加減ん意してほしい訳ですね。
それを支持する新聞もどうなのよ、ということですな。
結局国交省はJALそのものを守ろうとしているのではなく、自分たちの天下り先としてのJALを守ろうとしているだけ。本当に国民のためのナショナルフラッグとしてのJALを守るというなら別の選択肢がある訳です。
ほんと、子供でも分かる理屈だろうよ・・・・・・・
という訳で、この300便快適です。
PS
翌日の帰りの305便もなんと同じチームが乗って来ました。
でも判明しました。快適だったのはそのチームでは無く、約2名の特定の乗務員さんがすごく良かっただけでした。誤解の無いように伝えておきますが、まあ、どうでもいいか(笑)。
来週からいよいよフェルちゃんがCA今昔物語をスタートさせるそうです(笑)。では!
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14 comments on “日本航空問題を改めて考える。”
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前原大臣のコメントに腰を抜かしたのは、
ぐっちーさんだけではありませんよ。
彼は自分の言動がもたらす波動砲効果を理解出来ていない。
まぁ、政策通との評判は、この一言で潰えたのでしょう。
抜擢ではなく、懲罰にかけられたが実態では?
副大臣が辻本女史?
自分で選んだ?
だとしたら
政策通と現場通との違いを、まず知るべきでしょう。
組合対策にもならんでしょょょう!
危機対策は、後援会幹部の選挙違反対策とは違うのです・・(笑)
自国で海外政府って訴えられないのでは?NHKが国営放送だと言って、訴訟を回避しています。
日本政府を訴えるには、日本で訴訟を起すしかありません。
勝ち目が薄いのでは?
誰か、これを前原氏に読ませろ!
大凶のくじを引き、大吉と勘違いしてるわけでもマカロニウエスタン。
ダムに高速道路、ビンボーくじ引きまくり。
前原大臣、ネオコンの一人のように言われ、少しはホネのある方だと思いましたが、いきなり役人の天下り先、センセイ方の利権先確保とはねェ。
百歩譲って実態ご存知ないという好意的な見方もありますが、もう野党ではないんだから、その場の信念だけで発言されるのはいかがかと・・・。
でも、新政権、毎日いろいろ話題提供してくれますわな。久しぶりに毎日、政治ニュース見るのが楽しみになってきました。
それと、JALですが、いい加減株主優待やめなさいよ。税金で赤字会社の株主の航空運賃を一部肩代わりしているかと思うと、腹立ちますわ。
簡単に言うと、前原大臣が税金を使って国交省の役人の天下り先を守ろうとしている。
ということを問題にされているんですか?
民主党としては当然の行為だと思いますが・・・。
前原には荷が重そうですね、鳩山と国家戦略室と前原で決定する事になるのでは、一から出直すしかないのでは、徹底的に無駄を省くと言っているんだから、厳しく対処しないと国民は納得しないでしょうね。
ぐっちーさん、すごいなぁ。。。
「アメリカの航空会社による資本提携」
ってニュースで聞いた時は、
世界の航空会社の赤字がニュースになっている中で、
日本の赤字体質の同業企業に資本を入れる余裕なんてある?
そんなことするメリットがそれほどある?
って腑に落ちなかったです。
実現したら、日本のナショナルフラッグも、
ついに外資に食べられちゃうのかな、
国の資本入れてきたのに、そうなってもいいの?
って疑問だったんですが、
ぐっちーさんのお考え読んで、なんだか腑に落ちました。
前原大臣の発言についてもなるほどなんですけど、
先ほど亀井金融相の発言を読んで、凍りつきました。
「日航ががんばると言っている以上は国としても応援するのは当然」
国として応援するのが当然・・・?
がんばると言っているから・・・?
「がんばって天下り先を確保すると言っている以上は、
役人としても応援するのは当然」
に聞こえるのは気のせいかな。。。
P.S.
今週のSPA!
最初は手に取るのもドキドキで、
今でもレジまでは持っていけないけど、
あやしい記事には目もくれず、
ぐっちーさんとフェルディナントさんの記事に
まっしぐらする術は身につけました(笑)
フェルディナントさんの不良債権回収技、
男道・・・ですね。
三原先生の「やられたらやりかえせ」も。
自分のフォースを信じるのだ☆
はじめまして。
いつも、切れ味の鋭いご意見、楽しく拝見させて頂いています。
ご質問なんですが
>そうこうしているうち前原新大臣は絶対につぶさないとか言いだしてしまった。あわわ・・・だれか止めろよ・・・・
>それなら世界中のJALのCDSを買い占めてもいい、って話だ。
上記、プロテクションの売りということなのでしょうが、本当に良いんでしょうか?つぶれなくても、クレジットイベントが発生すれば売り手側には支払い義務が生じますよね?ぐっちーさんのご発言は影響力が強いので、ちょっと文脈からはCDSに対して誤解する人が多いのではないかと。
個人的には、全部理解された上でのご意見だと思っていますので、可能であれば一般的には理解されていないと思われるCDSについてのご意見も、また、どこかでお聞かせくださいね。
それでは、失礼します。
JALに3,000億?(@@)
2000年に入ってからの
毎年の思いやり予算に
匹敵するくらいの金額よね。。
処方箋…そうだね。
ぐっちーさ〜ん、
豪カンタスが出資するかもだってさっ。
成田の重要性が考察から抜けているかも。
間違いだらけのハブ空港論:東雲の独語
http://minerva-s.blog.so-net.ne.jp/2009-04-06-1
提携話は実際あるのでしょうが、JALの詳細情報を知れば、相手は皆驚いて引くと思います。
しかし、そもそも何で高給・高額年金のために税金を投入するのか、全く理解できません。
どうして絶対に倒産させてはいけないのか?
絶対更正法でスッキリした方が絶対良い。
ナショナルフラッグだってそれで問題なし。
問題は、貸し倒れが起きて、誰かの責任問題になるから、くらいしか思い付きません。
一体誰だ?
天下りは近年は全日空の方が凄く、JALは少し前には独立心があった気がします。
確か社長か誰か幹部人事で、天下りを断ったことがあった記憶も(?)
それ以来、国交省は全日空びいきに見えます。
ぐっちーさんの仰る通り、そんなJALを国交省の言うなりの企業にしたいのもあるのかも知れません。
民主党は、折角の政権交代ですから、国交省にとってではなく、国民にとって、良い政策を採って欲しいです。
旧建ならともかく、旧運に金融の知識があるようにも思えないのですけどね。日航を潰したくないのは確かでしょうけど。
前原さんが日航を潰さないと最初に表明したのはいつだったか覚えてないけれど、民主党政権は記者会見に相当気を遣っているので、労組ならいざ知らず役人がコントロールできる余地はないように思えるのですが。
そのあたり、具体的に何か情報をお持ちであればお示しいただければいいと思うのですが、役所は自分の専門以外は耳学問的なところが多いので、あまり全能視するのも問題の所在を間違えるように思います。
ぐっちーさんごぶさたしております。新しいウェブサイト発足おめでとうございます。
JALの件ですが、役所もさすがに天下りを守れると思っている人は少数派、ほとんどいない模様です。それよりも、今まで投入した政策投資銀行の融資数千億円を吹っ飛ばすわけにはいかない(財務省が許さない)というところなのではないでしょうか。
提携先についてのご考察、非常に鋭いと思いました。デルタの裏の金主は某投資銀行という話ですし、米系相手では、結局三洋電機みたいに転売前提になってしまいます。LH・SQ・AFとやってこそ、本当の戦略提携になるのでしょう。それだけで少々の信用補完でしかなく、根本的な収支改善が別に必要なのは明白ですが。
金融的な事は専門外で詳しく述べられませんが、日本航空のPilotとか機内乗務員の給与が競合Airlinesと比べて異常に高過ぎる。
或る調査でPilot平均給与が1950万円、
乗務員で600万円以上もあるのは、不況の
中で益々赤字を積み上げている原因とも。
市場平均給与体系を組み入れなお勝つ高年令者を若い年層に組み替えてこそCost-downに
大きく貢献する。 また1Seat当りでは、
Costの高くつくB-747から、より効率の高いB-777にReplaceするべく社内努力、B747転売を早く実施する事、機体整備部門の合理化で
自社整備格納庫を最小限に絞り、なるべく、
信頼性の高い海外整備会社の使用で整備学校の削減と低人数整備士の実施等で、相当額の
削減が実現できる。 業務実績ヨーロッパ1と言えるRyna−Airは整備は全て外注で何の事故も起こして無い。
合理化を考えるならこのAir-lineを見習えばかならず成功するといえましょう。
不要な外注の機内清掃(飛んだ先での)は
使わず、機内乗務員が即座に手袋をして客席のPocketからゴミを集めるなど徹底した合理化対策を打ち出さない限り毎日4億5千万円の赤字を積み上げている巨体なお化け会社。
今までの社風を変える勢いが無いと。
もし、全日空がー日本航空は民間会社のトレイド競合法から違反しているーWTOに訴える事もできる訳です。
その中で実際に航空業界で健全な業務実績を上げた経験の無い人々が日航の業務改善委員になっている事もおかしい、全日空やRyna-airの人々を導入してこそ上手く出来る訳でしょう。
何だか全てが空回り状態であると思えます。