2022/03/07 00:00 | 今週の動き | コメント(2)
今週の動き(3/6~12)ロシアのウクライナ侵攻、一般教書演説、韓国大統領選
ウクライナ情勢のフォローに一日の大部分を費やす状況が続いています。私の仕事はこれだけにかかりきりにはなれないのですが、それにしてもあらゆる意味で、国際政治の根幹を揺さぶり、世界の姿を一変させる歴史的なイベントです。私自身も、情勢が安定するまでは「戦時体制」を続けることになりそうです。
世界中で熱狂的ともいえる関心の高まりがあり、情報も膨大で錯綜していますが、本メルマガは引き続き、多角的な視点から情報を精査し、冷静な思考で緻密な分析をお伝えします。「心は熱くとも、頭は冷静に」という姿勢は、こういうときだからこそなおさら意識する必要があると思っています。
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先週の動き
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2/27(日)
・ロシアのウクライナ侵攻(継続中)
・ウクライナ・ベラルーシ首脳電話会談
・ウクライナのゼレンスキー大統領が「前提条件なし」にベラルーシとの国境地帯で停戦交渉を行うことでロシアと合意したと発表
・ロシアのプーチン大統領が核抑止部隊に高度な警戒態勢に移行するようショイグ国防相らに指示
・ロシア・イスラエル首脳電話会談
・EU臨時外相会議(ロシア制裁で合意)(ブリュッセル)
・日本がロシア制裁を発表(ロシアの一部銀行のSWIFT排除とプーチン大統領らの資産凍結)
・G7外相緊急会合(オンライン)
・ドイツが国防予算の増額を発表
・スウェーデンがウクライナへの武器支援を発表
・BPがロシアのサハリン2からの撤退を発表
・ベラルーシの憲法改正を問う国民投票(賛成多数で承認)
・北朝鮮が平壌の順安付近から日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射(北朝鮮は「衛星実験」を行ったと発表)
2/28(月)
・ウクライナとロシアの停戦協議(ベラルーシ・ゴメリ)
・ロシアのウクライナ侵攻に関する国連総会の緊急特別会合の開始(NY)
・バイデン大統領が核戦争の可能性はないと発言
・米欧日首脳会談(オンライン)
・日・ウクライナ首脳電話会談
・ウクライナがEU加盟を申請
・仏ロ首脳電話会談
・ロシア中銀が政策金利を引き上げ(9.5→20%)
・米国がロシア制裁を発表(ロシア中銀の取引禁止)
・スイスがロシア制裁を発表
・トルコのエルドアン大統領がモントルー条約を適用すると発言
・シェルがロシアのサハリン2からの撤退を発表
3/1(火)
・一般教書演説
・米・ウクライナ首脳電話会談
・欧州議会の緊急会合(ゼレンスキー大統領がビデオ演説)(ブリュッセル)
・中国・ウクライナ外相電話会談
・G7財務相・中銀総裁会議(オンライン)
・ロシア・ベネズエラ首脳電話会談
・エクソンがロシアのサハリン1からの撤退を発表
・アップルがロシアでの製品・サービスの提供を停止
・IEA臨時閣僚会合(石油戦略備蓄6,000万バレルの放出で合意)
・韓国の「三・一運動」の記念式典(文在寅大統領が演説)
3/2(水)
・米国がベラルーシ制裁を発表
・米国防総省がICBMの発射実験の延期を発表
・EUがロシアの銀行7行のSWIFT排除を決定
・EUがロシアの国営メディアのRTとスプートニクの放送や配信を禁止
・国連総会の緊急特別会合でロシア軍のウクライナからの撤退を求める決議が採択(141か国が賛成、5か国(ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリア)が反対、35か国が棄権)(NY)
・印ロ首脳電話会談
・ロシア国防省がウクライナでの軍事作戦でこれまでにロシア軍の498人が死亡、1,597人が負傷したと発表
・ロシア中銀がルーブル建ての国債を保有する外国人投資家に対する利払いを停止
・ズベルバンクが欧州市場からの撤退を発表
・ロシア軍がウクライナ南部のヘルソンを制圧したとの報道
・台湾の蔡英文総統がマイケル・マレン元米統合参謀本部議長率いる米代表団と会談(台北)
・米下院金融サービス委員会が公聴会を開催(パウエルFRB議長が証言)
・韓国大統領選挙候補者のテレビ討論会
・OPECプラス閣僚会議
3/3(木)
・ウクライナとロシアの停戦協議(戦闘地域での住民の避難ルートの設置で合意)(ベラルーシ・ゴメリ)
・ロシアのプーチン大統領がロシア人とウクライナ人は1つの民族だという信念を放棄することは決してない、軍事作戦は計画どおりに進んでいると表明
・ロシアのラブロフ外相が一部の国の指導者がロシアに対する戦争を準備している、核戦争は考えていないと発言
・仏ロ首脳電話会談
・ロシアのラジオ局「モスクワのこだま」の解散とテレビ局「ドシチ(TVレイン)」の活動休止が発表
・日米豪印(クアッド)首脳会議(オンライン)
・米国がロシア制裁を発表(オリガルヒらへの追加制裁)
・米上院エネルギー・天然資源委員長の民主党のマンチン上院議員と同委員の共和党のマコウスキ上院議員らがロシア産の原油輸入を停止させる法案を発表
・米上院銀行委員会が公聴会を開催(パウエルFRB議長が証言)
・EU内相理事会(ウクライナ避難民の一時保護で合意)(ブリュッセル)
・AIIBがロシアとベラルーシに関する取引の停止を発表
・トヨタがロシアでの工場稼働を3月4日から停止すると発表
・フロリダ州議会が妊娠15週より後の中絶を原則禁じる法案を可決
・台湾の蔡英文総統がポンペオ前国務長官と会談(台北)
・台湾で大規模停電
・韓国大統領選に出馬していた安哲秀候補が出馬を辞退し、尹錫悦候補への支持を表明
・ジョージアとモルドバがEU加盟申請を発表
・アルメニア議会がハチャトリアン工業相を新大統領に選出
3/4(金)
・独ロ首脳電話会談
・ロシア軍がウクライナのザポロジエ原子力発電所を制圧
・ロシアがフェイスブック、ツイッター、BBC、Radio Liberty、DW、Meduzaへのネット接続を遮断
・ロシア下院がロシア軍の軍事行動に関して虚偽の情報を広げた場合に刑事罰を科す法案を可決
・米・ウクライナ首脳電話会談
・日・ウクライナ首脳電話会談
・G7外相会合(ブリュッセル、オンライン)
・NATO外相会合(ストルテンベルグ事務総長はNATOがウクライナ上空に飛行禁止区域を設定することはないと表明)(ブリュッセル)
・EU外相会議(同)
・マイクロソフトがロシアでの製品・サービスの提供を停止
・米労働省が2月の雇用統計を発表(非農業部門雇用者数前月比+68万人)
・中国人民政治協商会議(政協)の開幕(北京、~10日)
・北京パラリンピック開会式(北京)
3/5(土)
・ロシア国防省がウクライナのマリウポリとボルノバハで市民退避のための休戦を発表(ロシア軍の攻撃は継続し、マリウポリ当局は市民退避を延期)
・ロシア・イスラエル首脳会談(モスクワ)
・米・ウクライナ外相会談
・米中外相電話会談
・フィンランドのマリン首相とスウェーデンのアンデション首相が安保協力の強化を発表(ヘルシンキ)
・VISAとマスターカードがロシアでの事業を停止
・IAEAのグロッシ事務局長がイランを訪問
・第13期全国人民代表大会(全人代)第5回会議の開幕(北京、~11日)
・北朝鮮が平壌の順安付近から日本海に向け弾道ミサイルを1発発射(北朝鮮は「衛星実験」を行ったと発表)
●ロシアのウクライナ侵攻
2月24日に始まったロシア軍によるウクライナ全面侵攻は、本日(3月7日)で12日目を迎えました。
ロシア軍は南部のヘルソンと南東部のベルジャンシクという主要都市を制圧。さらに南東部ではザポロジエ原発を砲撃し、これを制圧しました。原発への攻撃は世界を震撼させました。
ウクライナとロシアの停戦協議が2回行われ、戦闘地域での住民の避難ルートの設置が合意されました。これを受け、ロシア国防省は、南東部マリウポリと東部ボルノバハでの限定的停戦と「人道回廊」の設置を発表。しかし、マリウポリでの攻撃は継続し、マリウポリ当局は市民退避の延期を発表しています。
北部ではキエフ周辺での攻撃が激化しています。南部と東部に比べるとロシア軍の侵攻は遅れているように見えますが、キエフでは市街地へのミサイル攻撃により市民の死傷者が増加。近いうちにキエフ、ハリコフ、ミコライフ、そしてオデッサで攻勢が始まると予想されています(地図はこちらのリンク参照)。
国連では、総会の緊急特別会合が開催され、ロシア軍のウクライナからの撤退を求める決議が採択されました。141か国が賛成し、5か国(ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリア)が反対、35か国(インドなど)が棄権という結果になりました。
米欧・G7は、相次いで制裁を強化。ロシアの銀行のSWIFT排除については、VTB、バンク・オトクリティエ、ノビコムバンク、プロムスビャジバンク、バンク・ロシヤ、ソブコムバンク、VEBの7行に適用されることが決定しました。
米国は、オリガルヒへの制裁を拡大。プーチンと極めて近い関係にある金属・鉱業王アリシェル・ウスマノフやペスコフ報道官を含むロシア人エリート8人に対する完全制裁と、他のオリガルヒ19人とその家族・関係者47人に対するビザ制裁を発表しています。
一方、NATO外相会合では、ストルテンベルグ事務総長がNATOはウクライナ上空に飛行禁止区域を設定することはないと表明。ロシアとの直接衝突を避ける姿勢をあらためて示し、ゼレンスキー大統領は深い失望を表明しました。
プーチン大統領は、国家安全保障会議で、ロシア人とウクライナ人は1つの民族だという信念を放棄することは決してない、軍事作戦は計画どおりに進んでいると表明。「非軍事化」と「非ナチ化」を追求する方針をあらためて強調しました。
また、3月5日には、アエロフロートの女性スタッフとの会合をTV中継で放映しました。そこでは、欧米の対ロシア制裁は宣戦布告に等しいと述べ、ウクライナに飛行禁止区域を設ける試みは世界に破滅的な結果をもたらすと警告しました。
ロシア国内では、各地で抗議デモが起こり、プーチンに極めて近いオリガルヒのオレグ・デリパスカが「平和が大事だ!」というテキストをSNSに投稿。ウクライナ出身のオリガルヒのミハイル・フリードマン、エリツィン元大統領の娘(タチアナ・ユマシェフ)、オリガルヒのロマン・アブラモビッチの娘、ショイグ国防相の義理の息子、ペスコフの娘も抗議のメッセージを投稿しています。
こうした動きを受け、ロシアはフェイスブック、ツイッター、BBC、Radio Liberty、DW、Meduzaへのネット接続を遮断しました。また、体制に批判的だったラジオ局「モスクワのこだま」の解散とテレビ局「ドシチ(TVレイン)」の活動休止が発表。さらにロシア下院は、ロシア軍の軍事行動に関して虚偽の情報を広げた場合に刑事罰を科す法案を可決しました。
このように、ウクライナの戦況、国連、米欧・G7、ロシアとそれぞれにおいて様々な動きがありました。情勢は刻一刻と変化しており、流動的ですが、現時点での情報に基づいて、先週の動きと今後の展望について分析を述べます(※メルマガで解説)。
また、読者の方から質問を数多くいただいています。これについては、今週、別稿で私からの回答をお伝えします。
●一般教書演説
バイデン大統領が就任後初の一般教書演説を行いました。そのポイントを解説します(※メルマガで解説)。
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今週の動き
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(※韓国大統領選挙など。メルマガで解説。)
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あとがき
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■ 「電車好き」駐日米大使、京急で横須賀基地へ 異例の移動「期待裏切らない体験でした」(2月17日付読売新聞)
■ 米大使館、ウクライナ国旗色に エマニュエル氏「支援表明重要」(3月2日付時事)
ラーム・エマニュエル大使、以下の記事で述べたとおり、非常に濃いキャラクターの持ち主ですが、霞が関まで歩いたり、鉄道で移動したり、大使館をウクライナの国旗の色に変えたり、予想どおり、パーソナルなカラーを全面に出して存在感を発揮しています。
・「次期駐日米国大使」(21/5/13)
前職はシカゴ市長で、シカゴの野球チームを応援しているということで、岸田首相には球団のユニフォームを贈呈。背番号を第100代首相にちなんで「100」とする凝りよう。プロ野球が開幕したら、どこかの球団の始球式に登場するのではないかと思っていますが、どうでしょうか。
「ベースボール外交」で思い出すのは、かつて私もお仕えしたことがある加藤良三駐米大使ですね。退官後、プロ野球コミッショナーに就任したので、おぼえておられる方も多いかと思います。
こちらの記事の「あとがき」にも書きましたが、この方はとんでもない野球マニア、特にメジャーリーグオタクで、米国人と野球の話題になると、データやエピソードが湯水のように溢れ出し、相手を圧倒してしまうほどでした。
エマニュエル大使との任期があっていれば、きっと両大使の間で活発な野球外交が展開されたことでしょう。見たかったような、見なくて良かったような・・。
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2 comments on “今週の動き(3/6~12)ロシアのウクライナ侵攻、一般教書演説、韓国大統領選”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
残念ながらこちらで働いていると、ロシア支持、敵の敵は味方、無関心、そんな捉え方をしている人が多いように感じられ、衝撃、幻滅すらしてしまいます。
報道のされ方にも問題があるのでしょう、子供が殺された、ロシア兵士が何千人も亡くなっている、そんな基本的な情報すら知らない人もいました。
数年経ったらまたロシアに旅行したい、ウクライナ在住中国人は周囲の風当たりが強いから「自分たちは日本人だ」と言うようになった、とか、どこか冗談の対象にもされていて、ここは世界が違うんだな、と感じてしまいました・・
少なくとも今回日本が欧米と協力して制裁に参加し、可能な限りウクライナを支援する姿を見て、一日本人として大変誇りに思いました。
最後に各大使のお話、面白いですね。こんな暗い時代に、少し明るい気持ちになりました。
どうもありがとうございます。中国での現地のお話、大変参考になります。
私も、中国の知人らから、中国のSNSなどではロシア支持の話が多いと聞いています。中国人がロシア人にウクライナ侵攻を支持しているとメッセージをしたら、ロシア人が怒ったというエピソードも聞きました。これはご指摘のとおり、中国メディア(当然、当局の意向を受けたもの)の誘導が大きいのでしょうね。反欧米の論調の延長でもあるのでしょう。
私も、ネットを見ても、世論調査でも、大多数の日本人がウクライナを支持しているようで、安心しました。親ロシアのバイアスや陰謀論は、この機会に歪みが暴露されて、批判的にみる人が増えたようですね。それも良かったです。
あとがきへのご感想もありがとうございました。私も書いた甲斐がありました(笑)。