2021/03/01 00:00 | 今週の動き | コメント(1)
今週の動き(2/28~3/6) シリア空爆とイラン核合意、カショギ事件報告書、サプライチェーン見直し、米経済対策、CPAC、全人代
3月になりました。もう春が近い・・と何度も書いてきましたが(笑)、本当に春が来ました。コロナのせいか、何か季節の移り変わりも感じられにくくなっているような気がしますが。
緊急事態宣言の影響の厳しさは私の周りでも聞かれます。オリンピックもあり、感染拡大を早期に終息させたい事情もあるのでしょうが、政府の対応には疑問を感じるところもあります。まずは予定どおり7日に解除できることを願います。そしてワクチン接種を迅速に実現して欲しいものです。
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先週の動き
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2/21(日)
・サリバン大統領補佐官がWHOによる中国での新型コロナウイルスの調査における中国の情報提供について疑問があるとCBSのインタビューで発言
・イランがIAEAによる現行の査察を最大3か月間受け入れると表明
2/22(月)
・米連邦最高裁がNY州検察当局によるトランプ前大統領の納税申告書を含む財務記録の開示を求めた訴訟でトランプ側に開示を命じる判決
・国連人権理事会の通常会期(オンライン、~3/23)
・中国の王毅外相がウイグル族の人権問題についてバチェレ国連人権高等弁務官が率いる調査団を受け入れる用意があると国連人権理事会で発言
・カナダ下院が中国のウイグル族の人権問題について「ジェノサイド」と認定する動議を可決
・EU外相理事会(ロシアとミャンマーへの制裁について合意)(ブリュッセル)
・ミャンマーで数百万人規模の抗議デモとゼネスト
・ロシア・ベラルーシ首脳会談(ソチ)
2/23(火)
・米国防総省が中国海警局の船による尖閣諸島海域への侵入を非難
・米上院がリンダ・トーマスグリーンフィールド元国務次官補の国連大使指名を承認
・米上院銀行委員会が公聴会を開催(パウエルFRB議長が証言)
・イランがIAEAの追加議定書の履行(抜き打ち査察等)を停止
・G7外相がミャンマーの治安部隊によるデモ弾圧を非難する声明を発出
・EU欧州問題担当相会合(オンライン)
2/24(水)
・米・カナダ首脳会談(オンライン)
・バイデン大統領がサプライチェーンを見直す大統領令に署名
・バイデン大統領が就労ビザと米国永住権の発給停止措置の解除を表明
・米下院金融サービス委員会が公聴会を開催(パウエルFRB議長が証言)
・米上院財政委員会がCIA長官(バーンズ)の指名承認公聴会を開催
2/25(木)
・バイデン大統領とサウジのサルマン国王が電話会談
・米軍がシリアの親イラン武装勢力「カタイブ・ヒズボラ」の施設を空爆(2月15日のイラクのエルビルでのロケット攻撃への対抗措置と説明)
・米上院財政委員会がUSTR代表(タイ)の指名承認公聴会を開催
・保守政治行動会議(CPAC)(フロリダ州オーランド、~28日)
・EU首脳会議(オンライン、~26日)
・インドとパキスタンがカシミール地方での停戦順守で合意したとする共同声明を発表
・アルメニア軍の参謀総長ら軍高官がパシニャン首相の辞任を要求する声明を発表
2/26(金)
・バイデン大統領が寒波の打撃を受けたテキサス州を訪問
・米国家情報長官室がカショギ記者殺害事件に関する調査報告書を公表
・ブリンケン国務長官がメキシコとカナダをバーチャル訪問
・G20財務相・中銀総裁会議(オンライン)
・オランダ議会が中国のウイグル族の人権問題について「ジェノサイド」と認定する動議を可決
2/27(土)
・米下院が1.9兆ドルの追加経済対策案を可決
・米FDAがジョンソン・エンド・ジョンソンが開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認
●バイデン政権のシリア空爆とイラン核合意交渉
バイデン政権がシリアの親イラン武装勢力「カタイブ・ヒズボラ」の施設を空爆しました。2月15日のイラクのエルビルの米軍基地への親イラン武装勢力によるロケット攻撃への対抗措置と説明されています。バイデン政権発足後の初の軍事攻撃となります。
国防総省はイラクとシリアの国境管理地点にある施設を「防御的な精密照準爆撃」で破壊したと述べています。衛星写真からもピンポイントで該当施設とみられる地点を攻撃したことがうかがわれます。
今回の空爆の意義について、イラン核合意交渉に与える影響とその展望を含めて解説します(※メルマガに限定)。
●カショギ事件報告書の公表
米国家情報長官室がカショギ記者殺害事件に関する調査報告書を公表しました。トランプ政権において作成されましたが、公表を見送られてきたものです。
報告書には、サウジのムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子が殺害を「承認した」との結論が示されていました。そして国務省と財務省は新たなサウジ人の制裁対象を発表しましたが、MbSは含まれていませんでした。
報告書が公表される直前にバイデン大統領はサウジのサルマン国王と電話会談を行っています。会談後の米国の発表では、サウジとのパートナーシップを強調しながら、女性活動家ルジャイン・アル=ハズルールさんらの釈放を評価したと書かれていました。
さらにバイデンは、3月1日にサウジに関する政策を発表すると表明しました。これらの動きと今後の展望についてコメントします(※メルマガに限定)。
●バイデン政権のサプライチェーン見直し
バイデン大統領がサプライチェーンを見直す大統領令に署名しました。関係省庁は、100日以内に半導体、高性能蓄電池、レアアース等の重要鉱物、医薬品の4分野における米国のサプライチェーンの問題点を検証し、改善に向けた提言を提出することが義務付けられています。
さらに、防衛産業、公衆衛生・生物学的製剤、情報通信技術産業、エネルギー産業、運輸産業、農業コモディティ・食料製品の6分野のサプライチェーンのリスクについても、1年間で検証することを義務付けています。
また、サプライチェーンの見直しは、同盟国やパートナーと緊密に連携しつつ取り組むとも定めています。今回の措置の意義についてコメントします(※メルマガに限定)。
●米経済対策の下院可決
米下院が1.9兆ドルの追加経済対策案を可決しました。現金給付(1人当たり最大1,400ドル(昨年からの累計3,200ドル))、失業給付の上乗せ(週400ドル)、コロナ対策(ワクチン展開、検査、学校再開等)、中小企業・地方政府支援を主な内容としています。最低賃金引き上げ(時給7.25ドルから15ドル)も含まれています。
あとは上院での可決ですが、財政調整措置による可決を狙うにしても、以下の記事で述べたとおり、最低賃金引き上げがネックになります。しかしこの点について、上院の議事運営専門委員は、最低賃金引き上げが予算に与える影響は付随的に過ぎないとの判断を示しました。
・「米経済対策」(2/22)
財政調整措置による可決は予算に関係する場合にのみ認められるので(バード・ルール)、最低賃金引き上げについては認められないということになります。今後の展望について解説します(※メルマガに限定)。
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今週の動き
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2/28(日)
・保守政治行動会議(CPAC)最終日(トランプ大統領が演説)(フロリダ州オーランド、~28日)
3/1(月)
・バイデン大統領がサウジ政策を発表
・IAEA理事会
・ナイジェリアのオコンジョイウェアラ元財務相がWTO事務局長に就任
・韓国の「三・一運動」の記念式典(文在寅大統領が演説)
・フランスのサルコジ元大統領の汚職容疑の裁判の判決
3/2(火)
・ASEAN外相特別会合(ミャンマー情勢の協議)(オンライン)
・ASEAN経済相会合(オンライン、~3日)
3/4(木)
・中国人民政治協商会議(政協)の開幕(北京)
3/5(金)
・第13期全国人民代表大会(全人代)第4回会議の開幕(北京)
・ローマ教皇がイラクを訪問(~8日)
●CPAC(トランプ登場)
「アメリカ保守連合(ACU)」が主催する年1回の政治イベント「保守政治行動会議(CPAC)」が行われ、最終日の大トリにトランプ前大統領が登場します。トランプは大統領退任後、初めて公に演説を行うことになります。
CPACのスピーカーと日程をみると、サウスダコタ州のノーム知事、ポンペオ前国務長官、フロリダ州のデサンティス知事、サラ・ハッカビー・サンダース元広報官(アーカンソー州知事選に出馬表明)、ドナルド・トランプ・ジュニア、テッド・クルーズ上院議員、ジョシュ・ホーリー上院議員、ローレーン・ボーバート下院議員、マッカーシー下院院内総務などトランプ政権の元高官やトランプに近い人々が目立ちます(掲載順も意味があります)。俳優のジョン・ボイトもいます。
マコーネル上院院内総務は招待されず、ペンス前副大統領とニッキー・ヘイリー元国連大使は招待されたが断ったとのことで、リズ・チェイニー下院議員、メリーランド州のホーガン知事もいません。トランプとの仲が悪いか、微妙になっている人々が外されていることは明白です(親トランプのランド・ポール上院議員とリンゼー・グラム上院議員がいませんが、都合が合わなかったのでしょう)。
会場にはトランプの黄金像も展示されるなど、「トランプのための政治集会」であることが明確になっています。本メルマガが配信される頃にちょうどトランプが演説を行っているはずですが、とりあえずコメントします(※メルマガに限定)。
●全人代の開幕
全人代が開幕します。21年の経済目標や重点政策を含む「政府活動報告」や国民経済・社会発展計画案、それに21~25年の「第14次5か年計画」と35年までの長期目標が審議されます。
なお、第14次5か年計画と35年までの長期目標については、昨年10月に開催された5中全会において基本方針の提案が採択されています。
・「5中全会」(20/11/2)
上記記事で述べたとおり、5中全会の提案には、5か年計画で「双循環」(特に国内市場の強化)が強調され、35年までに1人あたりGDPを中等先進国並みにするとの目標が掲げられました。その後、習近平国家主席は35年までにGDPと1人当たりの収入を2倍にすることは可能との認識を示しています。その実現に向けた実質GDP成長率の数値目標を示すかも注目されます。
なお今回の5か年計画は、17年の第9回党大会で2期目を迎えた習近平体制が「新時代」の到来を宣言してから初の5か年計画です。21年は中国共産党設立100周年(「小康社会」の実現が目標)、49年は中国建国100周年(「近代的社会主義化強国」の実現が目標)にあたり、49年までを2つのフェーズに分け、35年までに「基本的な社会主義近代国家」を建設するとしていますが、それまでの道筋を示すものになります。
また、香港では9月に立法会、22年に行政長官の選挙が予定されていますが、今回の全人代で、香港の選挙制度の全面的な見直しが検討される可能性もあります。
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あとがき
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■ 正恩氏を「エアフォースワンで家まで送る」 トランプ氏、会談後に提案(2月22日付AFP)
さすがトランプ大統領、突拍子もないことを思いつきますね(苦笑)。それもスタッフに相談もせずに打診したようで、ポッティンジャーNSCアジア上級部長(当時)も「正気か・・」と肝をつぶしたことでしょう。
ポッティンジャーは政権交代後、頻繁にメディアに出演し、トランプ政権の功罪を忌憚なく論じています。連邦議会襲撃後に辞任しましたが、色々思うところは多かったのだろうと思います。
ところで、このエピソードを聞いて、私が思い出したのは02年のカナナスキス・サミットです。
このとき当時の小泉首相は、政府専用機にドイツのシュレーダー首相を同乗させ、一緒に帰国しました。シュレーダー首相が日本でW杯決勝(ドイツ対ブラジル)の観戦を希望したからです(直行しないと間に合わなかった)。
このとき私もカナナスキスにいて代表団を支援していたので(下っ端で雑用のような仕事をしていましたが)、よくおぼえています。日韓W杯も当時住んでいたカリフォルニアの学生寮で見たものでした。すべてが懐かしいです。
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ご了承のうえ、ご利用ください。
読んでみて、なるほどなと思いました。
トランプはブラフは多いけれど、実際に軍事攻撃に踏み込んだことはなく、「空爆」と聞くだけで、「緊迫していくのか・・!?」なんて思ったものですが、こんなに丁寧な手順を踏んでいたとは!
外交の水面下でのやり取りが垣間見れて、とても興味深かったです。
オバマ政権時のメンバーの話等もとても面白く、今後どうやってメンツと体裁を保ちながら政権運営を進めていくのか、たのしみです。