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2020/08/31 00:00  | 今週の動き |  コメント(1)

今週の動き(8/30~9/6) 米共和党大会、ウィスコンシン黒人銃撃事件、ベラルーシ反体制運動


安倍首相の辞任表明。病状に関する報道が出てから、その可能性は高いとは聞いていましたが、驚きましたね。残り1年の任期や次の政権への引継ぎも考えながら、悩み抜いた上での決断だったのでしょう。

連続在任日数が佐藤栄作元首相の記録を更新してから4日後の発表になりました。7年8か月の長期政権、大変お疲れさまでした。まずは総裁選(両院議員総会)ですね。

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先週の動き
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8/22(土)
・トランプ大統領の姉のマリアン・トランプ・バリー元連邦判事がトランプ大統領を嘘つきで節操がないと批判する発言の録音をワシントン・ポストが公開

8/23(日)
・トランプ陣営が政権2期目の公約を発表
・ポンペオ国務長官がイスラエル、UAE、バーレーン、スーダンを訪問(~28日)
・ビーガン国務副長官がリトアニア、ロシア、ウクライナ、オーストリアを訪問(~27日)
・米食品医薬品局(FDA)が新型コロナウイルス感染症の回復者の血液を投与する治療法を特別に認可したと発表
・ケリーアン・コンウェイ大統領顧問が8月末で退任すると発表
・ウィスコンシン州ケノーシャで黒人男性ジェーコブ・ブレーク氏が警官に背後から銃撃される事件(抗議デモが発生)
・イラン原子力庁の報道官が7月のナタンズの核関連施設での火災は破壊工作だったと発表
・ベラルーシで10万人規模の反体制デモ・集会

8/24(月)
・米共和党全国大会(ノースカロライナ州シャーロット、~27日)
・米中閣僚級通商電話協議
・ポンペオ国務長官とイスラエルのネタニヤフ首相が会談(エルサレム)
・ビーガン国務副長官とベラルーシの野党候補チハノフスカヤが会談(リトアニア・ビリニュス)
・米下院監視委員会の公聴会でディジョイUSPS総裁が11月の大統領選挙終了までコスト削減を凍結すると発言
・米共和党の元議員27人(ジェフ・フレーク元上院議員含む)が11月の大統領選挙でトランプ大統領ではなくバイデン前副大統領を支持する方針を表明
・NY州司法長官が「トランプ・オーガニゼーション」の資産価値の不当操作の捜査のためエリック・トランプ副社長らへの召喚状の執行を裁判所に請求
・TikTokが米国の事業の禁止と売却を命じる大統領令の取消を求めてカリフォルニア州の連邦地裁に提訴
・中国が南シナ海で軍事演習(~29日)
・IAEAのグロッシ事務局長がイランを訪問(~26日)
・ロシアの野党勢力指導者アレクセイ・ナワリヌイが意識不明の重体になったことについてドイツの医師団は毒を飲まされた疑いがあると発表(ベルリン)
・タイの王室を批判していたフェイスブック上の非公開グループ「ロイヤリスト・マーケットプレース」への国内でのアクセスが遮断(フェイスブックはタイ政府から強要されたと説明、同政府に法的措置をとると発表)
・日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄の通告期限(通告はなされず自動更新)

8/25(火)
・ポンペオ国務長官とスーダンのハムドク首相が会談(スーダン・ハルツーム)
・ビーガン国務副長官とロシアのラブロフ外相が会談(モスクワ)
・米国が求めるイランに対する安保理制裁を復活させる手続きについて、安保理の議長国であるインドネシアが安保理理事国から同意を得られず手続きを進める立場にないとの見解を表明
・イスラエル・UAE国防相電話会談

8/26(水)
・トランプ大統領がウィスコンシン州ケノーシャでの抗議デモが一部暴徒化したことを受け現地に州兵と連邦政府の治安要員を派遣すると表明
・ポンペオ国務長官とバーレーンのハマド国王が会談(バーレーン・マナマ)
・米商務省が中国による南シナ海における軍事演習実施と人工島の建設に関与したとして中国交通建設の傘下企業を含む24社を輸出管理規則に基づく「エンティティ・リスト」に追加(米国務省はこれらの活動に関与した個人にビザ制限を発表)
・ウィスコンシン州ケノーシャで銃撃事件
・中国軍が青海省と浙江省から中距離弾道ミサイルを南シナ海に向けて発射したとの報道
・香港警察が民主派の立法会(議会)議員ら16人を暴動罪の容疑で逮捕
・イランのサレヒ原子力庁長官とIAEAのグロッシ事務局長が共同声明(イランは核査察受け入れの方針を表明)

8/27(木)
・米共和党全国大会最終日(トランプ大統領の大統領候補の指名受諾演説)(ホワイトハウス)
・ポンペオ国務長官とオマーンのハイサム国王が会談(マスカット)
・ペローシ下院議長とメドウズ大統領補佐官が新型コロナウイルス経済対策について電話協議
・ジャクソンホール会議(オンライン会議、~28日)
・ハリケーン「ローラ」がルイジアナ州に上陸
・ロシアのプーチン大統領がベラルーシの要請に応じ治安要員の予備組織を編成したとTVインタビューで発言
・EU外相会合(ベルリン、~28日)
・RCEP閣僚会合(テレビ会議)

8/28(金)
・トランプ大統領がニューハンプシャー州で選挙集会
・ワシントンDCでキング牧師のワシントン大行進を記念する集会(黒人差別に対する大規模な抗議デモ)
・中国商務省と科学技術省が「輸出禁止・輸出制限技術リスト」の改訂を発表
・安倍首相が辞意を表明

8/29(土)
・韓国の与党「共に民主党」代表選(李洛淵前首相が新代表に選出)
・モーリシャス沖で発生した日本の貨物船の重油流出事故について政府の対応を批判する大規模デモ(モーリシャス・ポートルイス)
・日米防衛相会談(グアム)

●米共和党大会

共和党全国大会が4日間にわたり開催されました。開催地はノースカロライナ州シャーロットですが、実質的には、民主党大会と同様、ほぼオンラインでの「バーチャル党大会」でした。

党大会全体のテーマは「偉大な米国の物語の称賛」とされています。4日間の主要なスピーカーと行事は以下のとおりでした。

・初日
テーマ:「約束の地」
トランプ大統領(+ペンス副大統領)、チャーリー・カーク、マット・ゲーツ、ジム・ジョーダン、ヴァーノン・ジョーンズ、セントルイスのマクロスキー夫妻、キンバリー・ギルフォイル、スティーブ・スカリス、ニッキー・ヘイリードナルド・トランプ・ジュニアティム・スコット
※トランプとペンスを大統領・副大統領候補に指名

・2日目
テーマ:「機会の地」
ランド・ポール、クドロー大統領補佐官、ニコラス・サンドマン、パム・ボンディ、ティファニー・トランプ、キム・レイノルズ、ジェネット・ニューネス、エリック・トランプポンペオ国務長官、ダニエル・キャメロン、メラニア・トランプ夫人
※トランプ大統領による恩赦と帰化の式典が放映。

・3日目
テーマ:「英雄の地」
クリスティ・ノエム、マーシャ・ブラックバーン、ダン・クレンショー、キース・ケロッグ副大統領補佐官、ケイリー・マクナニー大統領報道官、カレン・ペンス夫人、ケリーアン・コンウェイ大統領顧問、エリス・ステファニク、マディソン・カウソーン、陳光誠、リー・ゼルディン、ジョニ・アーンスト、ララ・トランプ、リチャード・グレネル、ペンス副大統領(フォート・マクヘンリーで指名受諾演説、トランプ大統領も合流)

・最終日
テーマ:「偉大な地」
フランクリン・グラハム、ケヴィン・マッカーシー、ジェフ・ヴァン・ドリュー、ダン・スカヴィーノ、ミッチ・マコーネル、ベン・カーソン、トム・コットン、ルディ・ジュリアーニ、イヴァンカ・トランプトランプ大統領(ホワイトハウスで指名受諾演説)

以下の記事でも予想していたとおり、色々な意味で民主党大会とは好対照。これはこれで非常に面白いものでした。私からのコメントは明日述べます。

「米共和党大会」(8/24)

なお、カマラ・ハリスは、共和党大会最終日、トランプ大統領の演説の数時間前にワシントンDCで演説を行いました。トランプ政権のコロナ対応などを批判し、ウィスコンシン州ケノーシャでのデモと暴動については、暴力はデモではないので許されないとはっきり糾弾。

共和党大会最終日の翌日には、DCではマーティン・ルーサー・キング牧師のワシントン大行進を記念する集会があり、大規模なBLMデモも行われましたが、ハリスはオンライン演説でデモへの共感を表明しました(なおトランプはデモ参加者を「悪党(thug)」と呼んで非難しました)。

党大会が終わり、選挙戦は本番に突入します。バイデンもレイバーデー(9月7日)明けからいよいよ「地下室」から出てきて「地上戦」を開始しますが、ハリスも前面に出てくるでしょう。先週のハリスのスピーチは、そうした動きを示唆したものといえます。持ち前の弁舌力でバイデンの弱さを補完することが期待されます。

●ウィスコンシンでの黒人男性銃撃事件(抗議デモと暴動

ウィスコンシン州ケノーシャで黒人男性ジェーコブ・ブレーク氏が警官に背後から銃撃される事件が発生。現場の衝撃的な映像が拡散されました。

ケノーシャでは抗議デモが発生。暴徒による破壊活動や放火、17歳の白人少年がデモ参加者を銃撃する(2人が死亡)といった事態に発展しました。

ケノーシャ以外でも、ミネアポリスなどで暴動が発生。NBAのミルウォーキー・バックス(ウィスコンシンが本拠地)はプレーオフをボイコット、スター選手のレブロン・ジェームスも同調する姿勢を示しました。また前項で述べたとおり、ワシントンDCではマーティン・ルーサー・キング牧師のワシントン大行進を記念する集会があり、大規模なBLMデモが行われました。

トランプ大統領は暴動を批判し、現地に州兵と連邦政府の治安要員を派遣すると表明しています。この問題は、今後の大統領選を見る上でおそらく最も重要なポイントになります。この点を解説します(※メルマガに限定)。

●ベラルーシの反体制運動

ベラルーシではルカシェンコ体制に抗議するデモが続いています。週末には再び15~20万人規模の抗議デモが発生しました。

これに対し、ルカシェンコ大統領は、防弾チョッキにカラシニコフ銃で武装した姿で現れ、指揮官のように前線に出てきて兵士や自身の支持者を鼓舞しました。

なお、ルカシェンコの横でフル装備で護衛をしている兵士は息子ニコライ(15歳、イケメン)です。

その中で、米国はビーガン国務副長官をリトアニアとロシアに派遣。ヴィリニュスでチハノフスカヤ、モスクワでラブロフ外相と会談しました。

そしてプーチン大統領は、ベラルーシの要請に応じ、治安要員の予備組織を編成したとTVインタビューで発言しました。国内の治安情勢がエスカレートしてコントロールを失った場合に限り投入を検討するとしています。

今後の展望については以下の記事で解説しましたが、最新の状況を踏まえてコメントします(※メルマガに限定)。

「ベラルーシでの反体制運動」(8/24)

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今週の動き
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8/30(日)
・チェコのビストルチル上院議長、フジブ・プラハ市長らが訪台(~9/4)

9/1(火)
・トランプ大統領がウィスコンシン州ケノーシャを訪問
・EU主催のイラン核合意に関する6か国(英仏独ロ中イラン)の会合(ウィーン)

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あとがき
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「韓国のマスクに感謝」も 金正恩氏の写真をツイッターに掲載したアルゼンチン外務省(8月20日付中央日報)

アルゼンチン外務省、雑な仕事ですね(苦笑)。

まあ、米国も、中国と台湾の呼び名を混同したり、シンガポールのリー・シェンロン首相をインドネシアの首相と紹介するキャプションを付けたり、今月も、パキスタンの独立を祝うとしてインドの国旗をツイートするといったことがありました。外交業務でも、事務的なチェックが甘いと、こういうことは起こるものです。

なおインドとパキスタンの独立記念日はそれぞれ8月15日、14日とされています。両国とも同じタイミングで英国から独立したのでは?と思われる方も多いと思います。それはそのとおりです(以下の記事参照)。

「パキスタン現代史(1):イスラム国家誕生の苦難」(18/9/14)
 
実際、インド独立法、ジンナーのスピーチ、当時の記念切手を見るとパキスタンも8月15日を独立の日としていたように読めます。では、なぜ1日早まることになったのか。

これには公式な説明がありません。(仲の悪い)インドとは違う日にしたかった、マウントバッテン総督とジンナーが最後に会ったのが8月14日だった、8月14日が当時ラマダンの27日目(祝祭の日)にあたった・・など諸説あるようです。

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One comment on “今週の動き(8/30~9/6) 米共和党大会、ウィスコンシン黒人銃撃事件、ベラルーシ反体制運動
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    正直

    メルマガ内で仰っておられますが、JDさんが、トランプの「法と秩序」について「逆転に向けた最大の武器」と仰ったとき「!??」でした。しばらく・・・。
    でも、こうしてBLMが激化することで、トランプの法と秩序キャンペーンが功を奏する。支持の実態を見てもそうなっているのを見て、成程そういう原理なのか、と驚くとともに納得です。
    こうしたことの可能性を、だいぶ以前に示唆されていたことも、改めてさすが、と思いました。

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