2015/07/08 00:00 | 欧州 | コメント(2)
ギリシャ危機
■ ギリシャ、ピレウス港民営化の規模を縮小=関係者(5月2日付ウォールストリートジャーナル記事)
■ プーチン氏がギリシャ企業に資金供給用意、ガスパイプライン延長で(5月8日付ロイター記事)
混乱が続くギリシャですが、ご存じのとおり、米国も日本もリスクのエクスポージャーは極めて小さく、マーケットに与える影響は限られています。それに、最後に落ち着くところまでいってもらわないと何とも言えないのが正直なところです。
国際政治の観点から気になるのは中国とロシアの介入です。まず中国ですが、ギリシャのピレウス港は、「一帯一路」構想において、陸のシルクロードと海のシルクロードが交錯する重要拠点です。中国の海運会社は、既に同港のコンテナターミナルの運営権を取得していましたが、今般、ギリシャが同港の民営化を決定したことを受け、その株式の大部分を取得しようとしています。
次にロシアですが、ロシア産天然ガスを黒海経由でトルコに供給するパイプライン「ターキッシュ・ストリーム」をギリシャまで延長する計画をギリシャと話し合っており、合意すれば資金供与する可能性があるとのこと。ターキッシュ・ストリームは、昨年12月に黒海・ブルガリア経由でEUに供給するパイプライン「サウス・ストリーム」が撤回された後に発表された、いわくつきの計画です。
チプラス首相は、EUとの交渉が続いている中でサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムに出席し、顰蹙を買っていましたが、これもロシアへの接近の可能性を感じさせる振る舞いでした。もともとギリシャは、ロシアと同じく正教会を信奉していることから同国との精神的な絆が深く、しかもSYRIZAにはソ連とつながっていた共産主義勢力が含まれていますから、両者の接近にそれほどの唐突感はありません。
このように中国とロシアの草刈り場と化しつつある状態ですが、加えて闇社会による侵食、さらに、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーがギリシャの島を買い取ることを検討・・・(笑)。危機の中で、なにやらギリシャが解体していくかのようなイメージがわいてしまいます。
実際のところ、粉飾が発覚して危機が始まってからチプラス政権が成立するまで、ギリシャはそれなりにやれることをやっていました。しかし、緊縮財政を続ければ国が蘇るわけではありません。問題は、ギリシャに産業らしい産業がないことです。
有名な海運業についていえば、オナシス、ニアルコスといった「ギリシャ船主」は世界第2位の船腹量を保有していますが(1位は日本、「愛媛船主」が有名)、その企業は外国法人ですから、ギリシャ財政にはまったく貢献しません。しかも、ギリシャ籍の船舶保有については非課税。課税する動きもあると聞きますが、他の非課税の国(シンガポールなど)に逃げてしまうことが予想され、実効性に疑問が残ります。結論として、ギリシャを支えるのは観光業だけということになります。
稼ぐ力がない以上、いくら支出を削減しても国は元気にならず、国民はひたすら我慢を強いられることになります。スティグリッツやクルグマンも、緊縮を続けても経済は縮小するだけ、今の状況では国民投票に対してはノーと言わざるを得ないと述べています。
ギリシャを安定させるには構造改革と投資の両方が必要で、そのためには支援が必要となりますが、今の欧州には受け入れがたい現実でしょう。こうなると、米国の出番が期待されますが、今のところその気配はなさそうです。オバマは(第二次大戦後にギリシャに介入した)トルーマンとは違うというところでしょうか。
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2 comments on “ギリシャ危機”
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ECBからの輸血が止まれば・・
大闇組織が・・ユーロ札トラックに積んで・・やってくるな・・
露西亜からも・・シルクロードから中国も・・
ぐっちーもクルザー買に行くな・・馬鹿安だから・・
もうすぐ・・ユーロ札の洪水かな・・インフレになるか・・・(笑
具体的に何が起ころうとしているのか、また起きているのか、大変わかりやすい「まとめ」をありがとうございます。
一儲けするチャンスは、国が成り立つ時と崩壊する時と「風と共に去りぬ」でレット・バトラーが言いいますが、改めて実感です。